ポルトガルで繰り広げられるHCクラスのステージレース、ヴォルタ・アン・アルガルヴェ。
比較的緩やかな登りと長いTTが特徴で、TT能力の高いオールラウンダーが有利なレイアウト、そして同時期のアンダルシアに比べてピュアスプリンターでも活躍できるレイアウトが特徴のステージレースである。
今回はこのアルガルヴェで注目すべき5人の選手をピックアップ。
いずれも今大会で目覚ましい活躍を見せること間違いなしなので、しっかりと追って行きたい。
コースプレビューはこちら!
- ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、26歳)
- パスカル・アッカーマン(ドイツ、25歳)
- エンリク・マス(スペイン、24歳)
- ワウト・プールス(オランダ、32歳)
- シュテファン・キュング(スイス、26歳)
ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、26歳)
チーム・ユンボ・ヴィスマ(TJV)
現役最強スプリンターの一角。先日のボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナでも、第2ステージこそ山岳で遅れてリカバリーしきれずに敗れたものの、ピュアスプリントとなった最終ステージではきっちりと勝利を飾った。それも、結構後方から勢いよく番手を上げての、強い勝ち方で。
アルガルヴェとの相性も良く、彼が台頭し始めた2017年には区間3位と4位を1つずつ。そして完全に頭角を現した2018年にはステージ2勝。決して得意ではないはずの登りスプリントでもきっちりと勝利をさらっていくため、何かトラブルでもない限りは、今年もフルーネウェーヘンが最強のように思われる。
チームメートも、バレンシアナ以上にフルーネウェーヘン体制。盟友ティモ・ローセンとマイク・テウニッセンのほか、ツール・デ・フィヨルドでローセンと共に上位入賞を繰り返していたアムントグレンダール・ヤンセン、プロコン所属の昨年にビンクバンクツアーとプリムス・クラシックで勝利してみせたタコ・ファンデルホールンなど、強力なスプリンターが勢揃いしている。
パスカル・アッカーマン(ドイツ、25歳)
ボーラ・ハンスグローエ(BOH)
昨年はサガン、サム・ベネットの2強体制に割って入る活躍をしてみせたドイツ最強の若手スプリンター。その胸には燦然と輝くドイツチャンピオンの証。いわばグライペルの後継者である。
今期初出場のレースはブエルタ・ア・ムルシア。とはいえクライマー向きのムルシアは彼にとっての「本番」とは言い難く、真の意味でのデビュー戦はその直後のクラシカ・デ・アルメリアであると言えるだろう。そしてこの日、早速の勝利。しかも、マッテオ・トレンティンの強力なリードアウトに導かれたルカ・メズゲッツと、復調しつつあったマルセル・キッテルとを相手取り、彼らを決して前には出させない圧倒的なスプリントでの勝利だ。
紛れもなく現代のスプリンター界において、フルーネウェーヘンらと並ぶトップオブトップの存在の1人であると言えるだろう。
アルガルヴェは初出場。しかしチームメートにはアルメリアで彼を勝利に導いてくれた最終発射台ジャンピエール・ドリュケールと、2年前のジロ・デ・イタリアでサム・ベネットのアシストをしつつ自らも最高で区間2位を記録したリュディガー・ゼーリッヒ。そして2年前のブエルタ・ア・エスパーニャで区間上位を連発したミヒャエル・シュヴァルツマンなど実力者が揃っている。
そしてスプリント列車に不可欠な機関車役としてはマチェイ・ボドナル。彼は第3ステージの個人TTでも優勝候補の1人に数えられることだろう。
エンリク・マス(スペイン、24歳)
ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)
昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでまさかの覚醒を迎え、総合2位。2年前のブエルタで「コンタドールの後継者」などと持て囃されていたときも、まさかここまで早く実力を示すようになるとは思ってもみなかった。
驚くべきことはその登坂能力だけでなく、TT能力も十分に高かったということ。山がちとはいえ、このブエルタの第16ステージ個人TTで6位。あのオリヴェイラすらも超える走りを見せてくれた。
アルガルヴェの出場は2年前の1度だけ。しかもこのときは総合33位と、箸にも棒にも掛からぬ結果だった。だがそのときはまだ、彼の覚醒の兆しすら見えなかった頃である。今はもう、まったく違う。昨年の似たようなTTの存在感の強いステージレースであるバスク1周レースでも総合6位だったし、今大会も十分にイケるだろう。
ただ、昨年のブエルタ同様、登りアシストに恵まれないチーム体制。今年はツール・ド・フランスでマスをエースに仕立てて彼のためのチームを用意すると宣言されていたはずだったようだが、結局、今回もまたこの仕打ち? ツール本番、大丈夫??
ワウト・プールス(オランダ、32歳)
チーム・スカイ(SKY)
今年のツアー・ダウンアンダーから積極的な走りを見せて総合3位。昨年は同時期のブエルタ・ア・アンダルシアで総合2位。登坂力はもちろん、独走力の高さも武器である。そんな彼が今大会の総合優勝候補でないわけがない。
スカイというチームとアルガルヴェとの相性の良さも理由にしたい。特に昨年は過去総合優勝者のクウィアトコウスキーとトーマスが揃っていたことで、ステージ3勝と総合優勝という圧倒的な成果を出した。今年はその2人ともいないが、今シーズンここまで絶好調なディラン・ファンバーレ(ヘラルドサン・ツアー総合優勝)やルーク・ロウ(同ステージ2位)、エディ・ダンバー(ツール・ド・ラ・プロヴァンス総合7位)などが揃っており、チームワークは十分に活かせそうだ。
シュテファン・キュング(スイス、26歳)
グルパマFDJ(GFC)
今大会ある意味最も期待している男。第3ステージの個人TTでは絶対的優勝候補なのは間違いないが、総合においても十分に狙える男だと思っている。
もちろん、本来的にはステージレースの総合優勝を狙えるタイプの男ではない。だが、アルガルヴェにおいては初出場だった昨年、今年も第5ステージにあるマルハオ峠山頂フィニッシュで優勝者クウィアトコウスキーから13秒遅れの4位。このときは第2ステージのフォーイア山頂フィニッシュで10分ものタイムを失っていたために総合は狙うべくもない状態だったが、本来フォーイアはTTスペシャリストでも比較的登りやすい、長いけれど緩やかな登りである。今年はここで失敗しなければ、TTでかなりのタイムを稼げる分、総合優勝の可能性は十分にあるはずだ。事実、過去にはトニー・マルティンも2度総合優勝している(とはいえこのときは、山頂フィニッシュがマルハオのみだったのだが・・・)。
他にもアルガルヴェと相性の良いスプリンターのアルノー・デマール、若手スプリンターのファビオ・ヤコブセンとジャスパー・フィリプセン、今年こそ結果を出したいファビオ・アルに最近調子の良いパトリック・コンラッド、あとは地元ポルトガル人のルーベン・ゲレイロ、ホセ・ゴンサルベス(TTにも期待!)、アマーロ・アントゥネスなどに注目していきたいところ。
白熱の集団スプリントから個人TT、そして山頂フィニッシュと非常にバランスの取れた魅力的なステージレース、それがアルガルヴェ。
英語コメンタリーのみではあるが、ぜひDAZNでの視聴をお勧めしておきたい。