読み:ドゥクーニンク・クイックステップ
国籍:ベルギー
略号:DQT
創設年:2003年
GM:パトリック・ルフェーヴル(ベルギー)
使用機材:Specialized (アメリカ)
2017年UCIチームランキング:1位
(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります)
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2019年ロースター
年間73勝、驚異の勝利数で圧倒的ランキング1位を獲得したクイックステップも、スポンサー問題に苦しんだ。
最強スプリンターの一角フェルナンド・ガビリアも、ロンド&ルーベ覇者のニキ・テルプストラもチームを去った。一方、それを補強するような新たなベテラン選手の加入はなく、新加入もジュニアカテゴリからの飛び級であるイヴェネプールとトレーニーだったフローリッヒのみ。
では、2019年のクイックステップは弱体化を避けられないのか?というと、まったくそんなことはないだろう、というのが大方の予想かと思われる。そもそも、2018年も、キッテルやトレンティンやボーネンが去って一気に弱体化、と考えられていた中でのまさかの大ブレイクだったのだから。
2019年の弱体化を予想させない理由の一つは、若手の急成長である。ネオプロのホッジとヤコブセンが競うようにして勝利数を積み上げた。コンタドールを継ぐもの、と言われたエンリク・マスが誰も予想していなかったグランツール表彰台を獲得した。ちょっと前までは新人賞対象だったユンゲルスやアラフィリップはすでにチームの中心、大黒柱的な位置に座している。
そんな、若者が活躍するチームを支えているのはベテランの面々である。リケーゼ、モルコフ、サバティーニといった最強発射台たちがいなければこのチームはこんなにも勝てなかったのは間違いない。ティム・デクレルクはチームを去ったジュリアン・ヴェルモトに代わってこの最強チームの平坦をひたすら牽引し続けるという重責を担い、そしてそれを見事に成し遂げた。
きらびやかに輝くエースと、それを支えるアシストたち。その全員が主人公になりうるチーム、それがこの「ウルフパック」クイックステップである。
注目選手
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、30歳)
脚質:スプリンター
- ジロ・デ・イタリア 区間4勝
- ブエルタ・ア・エスパーニャ 区間3勝
- サイクラシック・ハンブルク 優勝
- イタリア国内選手権ロードレース 優勝
- ブルッヘ~デパンヌ3日間 優勝
- ドバイ・ツアー 総合優勝
かつては、なかなか勝てずにいた。2017年のジロには、チームから出場を許してもらえなかった。辛く、苦しい時期を過ごした。
それでも、その2017年の後半から少しずつ、勝利を手にし始めた。そして2018年。新たに、最強チームに迎え入れられ、そのチームの最強トレインを手に入れた。
あとはもう、破竹の勢いだった。
しかし、改めて振り返ってみると、彼が2018年最強のスプリンターだったかというと、そうとは言い切れないのも事実である。彼はあくまでも、最強スプリンターたちが集うツールではなく、ジロとブエルタで勝利を重ねたのである。とくに、2018年ツールで最強のピュアスプリンターだったと言えそうなフルーネヴェーヘンとの直接対決の機会は、そう多くはなかった。
だからこそ、2019年にはツールに出てほしい。フルーネヴェーヘンともう1人、ピュアスプリントで勝利を分け合ったガビリアとも、いよいよ激突の機会が訪れる。2018年は苦しい時期を過ごしたキッテルやユワンも、きっと復活してくるだろう。そんな最強スプリンターたちが集うツール・ド・フランスで勝ち抜いてこそ、真に最強の称号を得られる瞬間となるだろう。
なお、2018年である意味最も驚くべき走りを見せたのはイタリア国内選手権ロードレースであった。2位ヴィスコンティ、3位ポッツォヴィーヴォという顔ぶれを見ればわかるように、決してピュアスプリンター向きのコースレイアウトではなかった。ゴール直前の登りではヴィスコンティが猛プッシュを仕掛けて集団を抜け出したが、これにしっかりと喰らいついて離れなかったのがただ一人、ヴィヴィアーニだった。
そんな彼の走りを見ていると、やはり2019年はこのレースに期待したい――そう、ミラノ~サンレモ。
ここで勝つこともまた、「最強」の称号を手に入れる条件の1つとなるだろう。
ジュリアン・アラフィリップ(フランス、27歳)
脚質:オールラウンダー
- フレッシュ・ワロンヌ 優勝
- クラシカ・サンセバスティアン 優勝
- ツール・ド・フランス 区間2勝
- ツール・ド・フランス 山岳賞
- ツアー・オブ・ブリテン 総合優勝
2017年のフレッシュ・ワロンヌを終え、ダニエル・マーティンは「フレッシュ・ワロンヌで勝とうとするなら、バルベルデの引退を待たなければならない」的なことを言ったとか。その矢先ともいえる2018年に、ついにその「バルベルデ倒し」を成し遂げてしまった。2位が2回、悔しい瞬間を重ねてきたアラフィリップが、その力でもって、真正面から「キング・オブ・ユイ」を打ち倒した。
だが、そこで終わらないのが2018年のアラフィリップだった。ツール・ド・フランスのアルプスで念願のツール初勝利。かと思えばピレネーでもおかわりの勝利。そして山岳賞ジャージまでも持ち帰ってしまった。休む間もなく出場したクラシカ・サンセバスティアンでも優勝し、普通ならば2~3年かけてかき集めても賞賛されるようなタイトルの数々を、たった1年で積み重ねてしまった。これを躍進と言わずして何という。
しかし、いくらなんでもフルスロットル過ぎたのか。我々も期待し過ぎていた。あまりにもピュアクライマー向けのインスブルック世界選手権ロードでの最有力優勝候補というには、さすがに無理があったようだ。まあ、それでも8位って、全然すごいのだけれど・・・。
その分、2019年のヨークシャー世界選手権ロードは間違いなく彼向きのコースレイアウトとなりそうだ。唯一取り損ねてしまった栄光を、今度こそ取り戻す。
エンリク・マス(スペイン、24歳)
脚質:クライマー
- ブエルタ・ア・エスパーニャ 総合2位
- ツール・ド・スイス 総合4位
- イツリア・バスク・カントリー 総合6位
彼は決して、ぽっと出の存在ではなかった。実際、2018年のステージレースでは、バスク総合6位、スイス総合4位と、十分にトップレーサーとしての走りを見せていた。
それでもやはり、完全なるヴィヴィアーニシフトで、山岳で最後まで残るアシストなど存在しなかったクイックステップで、総合表彰台に登りつめるのはいくらなんでも驚きだった。その秘訣は、不必要なところで力を使わず、集団内で脚を溜め、そしてここぞというときにきっちりと抜け出して上位集団に入り込むという、若さに似合わない冷静さと勝負強さであった。ブエルタ第20ステージのゴール直前の牽制や位置取りなんかも、実に堂々としていた。
2019年はチームもより、本気で彼をエースとして扱うことだろう。いきなりツールというのはさすがに難しいだろうから、まずはジロだろうか。
2018年のブレイクがたまたまの偶然で終わるか、それともここから未来のグランツール王者の伝説が始まるのか、その鍵を握るのは2019年での走りなのだ。
その他注目選手
ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、27歳)
脚質:オールラウンダー
2018年はリエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝という、とてつもなく大きな成果を叩き出した。しかし、なぜか自分の中ではそんなに強い印象を残していない。それは、クイックステップ自体が大量に勝利を重ねる中、彼自身は4勝に留まってしまったこと。そして、個人的に彼に、ダニエル・マーティンなきクイックステップにおける新たな総合エースとしての覚醒を期待し過ぎていた部分があった。
だから、ツールでなかなか上位集団に入り込めない彼の走りはもどかしくもあった。初のツールでの結果としての総合11位は、全然悪くない。にも関わらず、自分はちょっと不当な評価を彼にしてしまっているのかな、と思う。
だが、彼自身の勝利には繋がらなかったとしても、2018年のクイックステップの栄光に対する働きは間違いなく素晴らしいものだった。ツールではガビリアのために、そしてブリテンではよりはっきりした形で、ジュリアン・アラフィリップのための牽引を、彼は引き受けていた。というか、ブリテンのときの彼のゴール前の牽引は本気で凄まじかった。ああ、これが本気のTTスペシャリストによるゴール前牽引なんだな・・・と心が震えた。
そして、リエージュ~バストーニュ~リエージュでの勝利も、そうしたアシスト的な動きから結びついた勝利だった。One for All, All for One の精神こそが、クイックステップの栄冠の秘訣であり、2017年のジルベールのロンドからずっと、この良い流れは継承され続けている。
2019年は、総合エースの期待はマスの方にも向けられそうな気がするし、少しは冷静な目でユンゲルスの走りを見ていくことができそうだ。その中で、どんな働きを見せてくれるか。チームとともに、期待して注目していきたい。
アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、23歳)
ファビオ・ヤコブセン(オランダ、23歳)
脚質:スプリンター
共に2018年にプロデビューを果たしたばかりのネオプロであり、共に2017年のツール・ド・ラヴニールで1勝ずつを分け合った若手最強スプリンターたちである。
そんな彼らはチームメートでありながらライバルでもあった。3/14にノケーレ・コールスでヤコブセンが勝ったかと思えば、その2日後にハンザーメ・クラシックでホッジが勝利。しかもホッジは3日後のカタルーニャ1周レース初日で勝利し、一足先にワールドツアークラスでの初勝利も手に入れた。
4月に入ってヤコブセンは負けじとシュヘルデプライスでの勝利を掴み、さらにはツール・デ・フィヨルドでも勝利。8月にホッジがツール・ド・ポローニュで再びワールドツアー勝利を手に入れると、その1週間後にビンクバンクツアーでヤコブセンもワールドツアー初勝利を飾った。10月に開かれた2つのワールドツアー・ステージレースでも、それぞれがそれぞれのレースで勝利するとか、本当にどれだけ互いに意識し合っているんだ、と見ているこっちが微笑ましくなるほどである。
彼らがいるからこそ、ガビリアが去る2019年のクイックステップにも全く不安を感じない。
なお、ヴィヴィアーニがもしもツールに集中する、となった場合、ジロにおけるエーススプリンターの座はこの2人のうちのどちらかに託されることになるだろう。
その誉れ高き地位につけるのはどちらか。1月~3月における彼らのチーム内抗争の行方も実に楽しみである。
レムコ・イヴェネプール(ベルギー、19歳)
脚質:オールラウンダー
言わずと知れたジュニア最強選手。ロード参入から2年目にしてジュニアカテゴリの各種レースを総なめにし、2018年の成績は23勝。国内選手権、ヨーロッパ選手権、世界選手権全てでタイトルを獲得した。
その規格外すぎる成績により、2019年はU23カテゴリを飛び越えていきなりとエリートカテゴリ、それも最強チームと名高いクイックステップ入りが決まった。2000年生まれの選手がワールドツアーを走るというのはなかなかクラクラする事態だ。
さて、そんなイヴェネプールの2019年出場レースカレンダーの前半部が早くも発表されている。ブエルタ・ア・サンフアン、ヴォルタ・アン・アルガルヴェ、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ、そしてツアー・オブ・ターキー。1ヶ月に1レースずつ、ステージレースばかりを出場させる。比較的小さいレースが多めではあるが、カタルーニャは2018年にはバルベルデとベルナルが鎬を削り、ホッジが初のワールドツアーで勝利を掴んだレースだ。イヴェネプールにも、つい期待をしてしまう。
いずれにせよ、このカレンダーから見られるルフェーブルGMの狙いは明らかだ。明確に未来のオールラウンダーを目指させ、厳しすぎるスケジュールではないものの、しっかりと強度の高いレースには出場させ、1年目からきっちりと経験を積ませる。そこに妥協や甘えはない。果たして、イヴェネプールはその期待に応え、存在感をある走りを見せることができるか。
いくら彼でも、エリートクラスのプロトンが山岳を登る中にまじって走ることは簡単ではないはずだ。いやあ、楽しみだ。
総評
2019年はどれだけの勝利を重ねてくれるのか。スプリント、北のクラシックの勝利に関しては他の追随を許さないであろう。アルデンヌもアラフィリップ、ジルベール、ユンゲルスの3人だけでも十分に強い。
グランツールに関しては、もちろんマスやユンゲルスには期待したいが、やはりチームとしてそれを全力で狙って行く、という態勢は作りづらい。それでも、マスのさらなる覚醒には期待したいところ。もちろん、気が早いかもしれないが、イヴェネプールの走りにも。
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