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ブエルタ・ア・アンダルシア2019 注目チーム&選手プレビュー

コースプレビューに続き、 今回の「ルタ・デル・ソル」で注目すべき選手を・・・と思っていたのだが、アスタナとミッチェルトンがあまりにも豪華な面子のため、この2つについては「チーム」で紹介していく。

正直、それぞれ3名はエースを抱えている状態で、誰が勝ってもおかしくはない。ただもちろんディフェンディングチャンピオンのウェレンスや昨年ツールとブエルタで活躍したクライスヴァイクにも有利なステージレースであるのは間違いない。

今大会でシーズン初レースとなる選手もいるため、彼らの状態の良し悪しにも注目しておきたい。

 

www.ringsride.work

 

 

アスタナ・プロチーム(AST)

テクニカルな下りを含む丘がちな16.2kmの個人TTの存在と、クイーンステージとなる第4ステージが下りも重要なステージとなることを考えると、最もコースプロフィールに合っているオールラウンダーは、バレンシアナ総合優勝したばかりのヨン・イサギレ(スペイン、30歳)だと考える。

唯一苦手だと思われていた激坂も、バレンシアナで(ビルバオの助けを借りつつも)4位に入り込む強さを見せつけており、隙はなさそう。

ただ、ルイスレオン・サンチェス(スペイン、36歳)も非常に好調。

ツアー・ダウンアンダーから、スプリンターやパンチャー顔負けのスプリント力を発揮しており、常に上位に喰い込んでくるアグレッシブさを見せつけている。

その勢いのまま、先日のブエルタ・ア・ムルシアでは、アレハンドロ・バルベルデに登りで喰らいつきつつ引き離された後に下りで追い付き、さらにはスプリントでこれを打ち破るという絶好調ぶりを発揮。

それこそバルベルデさながらの活躍を見せている。

そして、個人的にはペリョ・ビルバオ(スペイン、29歳)の覚醒にも期待。

バレンシアナではヨンをアシストしただけでなく、彼自身も個人TTで7位、最終的には総合3位。ブエルタ・ア・ムルシアでも第1ステージで勝利を飾った。

昨年はジロ・デ・イタリアで総合6位の後、休む間もなく出場したクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも区間1勝と驚きのスタミナを見せていたビルバオ。 

 

とにかく、ヨン、サンチェス、ビルバオと誰が勝ってもおかしくない布陣で、それがゆえに積極的なアタックもそれぞれ繰り出しやすいだろうから、3人のうちの誰かが勝つ、という展開にはもっていきやすいはず。当然、ヤコブ・フルサングも総合エースを担いうる存在なので忘れてはいけない。

最近はツアー・オブ・オマーンでのルツェンコの勝利やツール・ド・ラ・プロヴァンスでのゴルカ・イサギーレの総合優勝など、ひたすら絶好調なアスタナ・プロチーム。

今年は再びグランツール最強チームの一角にのし上がるべく、この勢いを継続させていきたいところ。

 

 

ミッチェルトン・スコット(MTS)

やはり今大会最も注目すべき選手は、昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝者であり、今年のジロ・デ・イタリアでリベンジを狙うというサイモン・イェーツ(イギリス、27歳)。今大会がシーズン初戦となる。

初戦ゆえにどこまで本気を出すかは分からないが、安定したクライム能力と、クライマー同士のスプリントでの強さ、そして着実に成長しつつあるTT能力を鑑みると、その実力においては今大会最強と言っても過言ではない。

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ただ、一足先にシーズンインしたアダム・イェーツ(イギリス、27歳) の状態も悪くない。とくにバレンシアナ1周レースでは、昨年はバルベルデに敗れた激坂で、今度は彼がバルベルデを突き放す強さを見せつけた。

彼もまた今年はツールでのリベンジを狙う存在。兄弟のアシストだけで終わるつもりはないはずだ。不安要素は個人TT。

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あとはもちろん、エステバン・チャベス(コロンビア、29歳)の復活にも期待したいし、 アシストとして最強格の存在であるミケル・ニエベ(スペイン、35歳)やジャック・ヘイグ(オーストラリア、26歳)も揃っていて、グランツールでも見られないような豪華な面子である。

数少ないスプリントではマッテオ・トレンティン(イタリア、30歳)が優勝候補。ただし山岳にシフトし過ぎた面子ゆえ、メズゲッツもおらず、勝ちを得るのは今回は難しいかもしれない。山岳でのアシストとしても機能する万能選手なので、そちらに体力を使ってしまうかも。

エドアルド・アッフィニ(イタリア、23歳)はネオプロで修業枠と思いきや、昨年のU23国内選手権のロードレースとタイムトライアルを共に制し、U23ヨーロッパTTチャンピオンにも輝いている逸材である。今大会も平坦牽引と合わせ、第3ステージの個人TTの上位入賞候補でもある。まあ、丘がちのTTなので、さすがに厳しいかもしれないが・・・。

 

 

ティム・ウェレンス(ベルギー、28歳)

ロット・スーダル(LTS)

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昨年の総合優勝者。今大会の第1ステージに設定されたアルカラ・デ・ロス・ガスレスの石畳激坂でミケル・ランダを突き放して勝利。そのまま総合優勝まで持っていった。

今大会もクイーンステージの第4ステージが山頂フィニッシュではなく、なんとか持ちこたえることができれば最後の集団スプリントでボーナスタイムを得ることすら可能そうなので、第1ステージで昨年同様の強さを見せられれば総合連覇は狙える存在である。TTも苦手じゃないしね。

とはいえ、さすがに、本来はクライマーとは言えない存在なので、全幅の信頼を与えられるほどではない。 

 

 

ステフェン・クライスヴァイク(オランダ、32歳)

チーム・ユンボ・ヴィスマ(TJV)

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昨年はツール・ド・フランスでプリモシュ・ログリッチェをアシストしながら自らも総合5位、そして単独エースとして出場したブエルタ・ア・エスパーニャでも総合4位と、ポディウムには立てなかったものの目覚ましい活躍を見せた。

登坂力の高さはもちろん、昨年のブエルタでは個人TTでも高い成績を残していたことから、TTが丘がちであることも含め、ヨンと並ぶ今大会によく合った選手であることは間違いない。クライマー同士のスプリントでも決して悪くない足を持っているため、第4ステージでもボーナスタイムを得られる可能性はある。

なかなかステージレースでの総合優勝、というイメージを持てない選手ではあるが、TTでの成功次第で十分狙えるのがアルガルヴェだ。今年はログリッチェがジロに出ることでツールを任せられる立場でもあるだろうし、このレースも成功でなんとか終わらせておきたい。 

 

 

ディラン・トゥーンス(ベルギー、27歳)

バーレーン・メリダ・プロサイクリングチーム(TBM)

2年前のフレッシュ・ワロンヌで3位の激坂対応力でもって、第1ステージの石畳激坂の最大の優勝候補としたい。さらに昨年からステージレーサーとしての成長を見せており、今年もボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナでは総合5位。

というのも、初日の個人TTで4位という好成績を残したからでもある。元々個人TTは得意とは思えない選手だったが、このバレンシアナの初日TTはスプリンタータイプの選手にも有利な短距離であることと最後の激坂の存在で、全体的にパンチャー有利であった。それでも4位は凄い。TT能力の改善があったと見ることはできるだろう。

では、今大会ももしかしたら・・・? 

 

 

イバン・ガルシア(スペイン、24歳)

バーレーン・メリダ・プロサイクリングチーム(TBM)

今回の期待枠。山岳もこなせるルーラー。かと思えば昨年はスプリンターとしての才能を発揮し、ブエルタ・ア・エスパーニャでは登りスプリントでバルベルデやサガンに喰らいつく走りを見せた。 

今大会も、コースレイアウトゆえに有力スプリンターも少なく、その中で彼が存在感を発揮する可能性は十分にある。 

 

 

セルヒオ・イギータ(コロンビア、22歳)

フンダシオン・エウスカディ(EUK)

コンチネンタルチームの方のエウスカディ。オレンジ色でかつてのエウスカルテルの正統なる後継者の方で、ミケル・ランダがオーナーをしている方。DAZNでは「エキップ・エウスカディ」と呼ばれていた。フンダシオンは実際、チーム(仏語でエキップ)の意味があるはず。

元々はマンサナ・ポストボンの選手。で、今年は7月からEFエデュケーション・ファーストに移籍予定らしい。今は一時的にこのスペイン籍コンチネンタルチームに。だが、すでにチャレンジ・マヨルカとバレンシア1周レースで1桁フィニッシュが4回。いずれも、結構厳しい山岳が含まれたレイアウトで、最終的にはスプリント力を活かして上位に入り込んでいる。スプリンターと呼ぶにはあまりにもピーキーすぎるその脚質は、たとえるならばマグヌス・コルトニールセンやエフゲニー・ギディッチに近いタイプか。

ただ、スプリントステージも一筋縄ではいかない今大会には実にマッチした脚質とも言える。勝てるとまで言わずとも、上位に入る可能性は十分に高いだろう。

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ベテランから若手まで活躍が見込めるワクワクする面子が揃っている。

その中で予想を超える存在の登場もまた、楽しみである。

 

 

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