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「春のクラシック2022」全主要レース振り返り

 

「ユンボ・ヴィズマ劇場」が繰り広げられた2月末のオンループ・ヘットニュースブラッドから、レムコ・エヴェネプールによる鮮烈なる逃げ切り勝利が演じられた4月末のリエージュ~バストーニュ~リエージュまで。

1年である意味最も熱い2ヵ月間、欧州自転車ロードレースの「春のクラシック」2022シーズンを振り返っていきます。

 

なお、今回取り上げる主要レース(期間中全ワールドツアーレース+関わりの深いプロシリーズ3レース)の勝者一覧は以下の通り。

フランドル系は石畳や未舗装路を特徴とするレースであり、アルデンヌ系は丘陵アップダウンを特徴とするレースとして分類。

 

さらにそれぞれのレースの上位10名に付与されたUCIポイントを合計してチーム毎のランキングを創ると以下の通り(ランキングは合計得点による順位)

 

中々興味深い結果ではあり、分析はまた別のタイミングで行うかもしれないが、とりあえず今回はまず各レースの概要を以下の通り見ていこう。

 

目次

 

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オンループ・ヘットニュースブラッド(2/26)

ベルギー・オースト=フランデレン州、204.2㎞、フランダースクラシック主催

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春のクラシックの「開幕戦」。元々ロンド・ファン・フラーンデレンに対抗して作られたという歴史を持つが、現在はロンド・ファン・フラーンデレンと同じ主催者が開催。また、2018年以降は、かつてのロンド・ファン・フラーンデレンで使われたフィニッシュ前の「カペルミュール〜ボスベルグ」コースを再現している。

 

その「開幕戦」オンループ・ヘットニュースブラッドで、ユンボ・ヴィズマは、ティシュ・ベノートとクリストフ・ラポルトという強力なクラシックライダーを加えた「新生ユンボ・ヴィズマ」として、早速成果を出すこととなった。

今回はラポルトはおらず、まだベノートだけ。だがそのベノートが、残り31㎞で集団から飛び出し、これを追いかけたトム・ピドコックとヨナタン・ナルバエスをワウト・ファンアールトが追ったことで、強力な4名(のちにソンニ・コルブレッリが加わって5名)の強力な抜け出し集団ができあがる。

さらにそこから、ベノートが単独でアタック。その独走はカペルミュールにて引き戻されるが、その後もヴィクトール・カンペナールツの危険なアタックなどをベノートが抑え込む。

そうしてコントロールした集団から、残り14㎞。最後の登りボスベルグの直前についにワウト・ファンアールトがアタックし、後はそのまま、単独でフィニッシュへと突き進んでいった。

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これまで、最終盤で常に一人であらゆる攻撃に対する責任を担わされ続けてきたファンアールト。

だが今回はベノートという強力なダブルエースが存在し、最終盤でも彼が積極的に動いてくれることで、ファンアールトは最も重要な場面で先手を取って動くことができるようになった。

 

これこそが「新生ユンボ・ヴィズマ」。まだラポルトが合流しない中での早速の勝利は、このチームの幸先の良さを感じさせた。

 

 

 

クールネ~ブリュッセル~クールネ(2/27)

ベルギー・オースト=フランデレン州、195.1㎞、フランダースクラシック主催

「開幕戦」オンループ・ヘットニュースブラッドの翌日に開催されるセミクラシックレース。オンループと合わせて「オープニングウィークエンド」と呼ばれる週末の連戦を形成する。

オンループとほぼ同じメンバーで出場するチームも多いが、最後の登りからフィニッシュまでが30㎞近い平坦が続くなど、オンループと比較するとスプリンター向けのレイアウトということで、一部のメンバーをスプリンターなどに変更してくるチームも多い。

ユンボ・ヴィズマも同じパターンで、ワウト・ファンアールトは外した一方で、クリストフ・ラポルトがいよいよユンボ・ヴィズマでのクラシック初参戦を迎える。

 

そして残り61.7㎞。コート・ド・トリユの登りでティシュ・ベノートがアタックし、トム・ピドコックやシュテファン・クン、カスパー・アスグリーンなどの17名の強力な先頭集団が形成された。そこに、ラポルトの姿もあった。

ソンニ・コルブレッリなどが牽引するメイン集団が残り17㎞でこれを引き戻しにかかるが、その直前にさらにこの集団から3名が飛び出す。ヨナタン・ナルバエス、タコ・ファンデルホールン、そして、クリストフ・ラポルトである。

このまま逃げ切りか? そうなれば、最もスプリント力の高いラポルトの勝利か? 残り1㎞でメイン集団とのタイム差は6秒。メイン集団の中のカレブ・ユアンもファビオ・ヤコブセンも、すでに周囲にアシストはおらず、孤立しているように思えた。

 

だが、ラポルトもこの日は足を使いすぎていたのか、残り300m、残り200mとフィニッシュ直前になっても何度も後ろを振り返り、なかなかスプリントを開始できずにいた。

そして、100m手前でようやく腰を上げるラポルト。だが、その頃にはすでに200m後方にまで迫っていたメイン集団の中から、ファビオ・ヤコブセンが猛烈な勢いでスプリントを開始。

結局、ギリギリでラポルトはヤコブセンに追い抜かれ、勝利の好機を失ってしまう。

そして、ヤコブセン勝利。チームも崩壊する混戦の中で、ほぼ独力で驚異的な加速を見せて、ギリギリの逆転勝利を果たしてみせた。

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ストラーデビアンケ(3/5)

イタリア・トスカーナ州、184㎞、RCSスポルト主催

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イタリア中部トスカーナ州の丘陵地帯を巡るアップダウンレース。未舗装路も特徴で、そのビジュアルから「白い道」の名をもつ、「6つ目のモニュメント」とも称される高難易度レースである。

昨年はマチュー・ファンデルプールがカンポ広場へと向かう激坂でジュリアン・アラフィリップを突き放す鮮烈な勝ち方をしてみせたこのレースで、今年はさらに衝撃の展開が待ち受けていた。

残り55㎞から始まる「最初の」勝負所、モンテ・サンテ・マリエ。逃げ集団をすべて取り込んだメイン集団の中から、残り51㎞でタデイ・ポガチャルがペースを上げていった。

すぐさま集団はバラバラに。さらに、残り50.2㎞。テクニカルな下りの部分で、再びポガチャルがアタックを繰り出した。

そして、これに追随できる者は一人もいなかった。

 

メイン集団とのタイム差を着実に開いていくポガチャル。途中、イネオス・グレナディアーズのカルロス・ロドリゲスが単独で追走を仕掛けるが、これも残り23㎞のモンテアペルティの登りでカスパー・アスグリーン率いるメイン集団に引き戻される中、先頭のポガチャルはなおも悠々と独走を続けていた。

モンテアペルティ後に抜け出した5名の精鋭集団(アスグリーン、バルベルデ、ウェレンス、ナルバエス、シモンズ)。最後の勝負所であるピンズート&レ・トルフェでも加速を繰り返すが、しかし結局、先頭のポガチャルの背中すら見ることは叶わなかった。

 

驚異の50㎞独走勝利。これまでの逃げ切り最長記録である19㎞を大幅に塗り替える、歴史に名を残す劇的な勝利であった。

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ミラノ~サンレモ(3/19)

イタリア・リグーリア州、293㎞、RCSスポルト主催

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シーズン最初のモニュメント。300㎞弱の超ロングコースのすべてが、ラスト30㎞に集約される、シンプルにして最高峰のスペクタルを味わえる名レースである。

ユンボ・ヴィズマはラポルト、ログリッチ、ファンフーイドンクなど強力な布陣を揃え、エースのワウト・ファンアールトで2度目のミラノ~サンレモ制覇を目指す。

対するUAEチーム・エミレーツはスプリンターは連れてきていない。しかしエースのタデイ・ポガチャル、調子のよいアレッサンドロ・コーヴィなど、パンチャーを中心にこちらも強烈な布陣を揃えてきていた。

 

ポガチャルの作戦としては、できれば残り30㎞のチプレッサからの独走で決めたかったのだろう。実際、チプレッサに突入直後、UAEチーム・エミレーツのオリヴェイロ・トロイアの牽引で一気にペースが上がり、集団が縦に長く引き伸ばされる。

しかし、そうはさせじと動いたのがユンボ・ヴィズマ。トッシュ・ファンデルサンドやネイサン・ファンフーイドンクの牽引により、集団の支配圏を奪い取る。

そのまま、30名弱の小集団が抜け出して、スプリンターたちが多く含まれるメイン集団とのギャップを開いたままラスト10㎞のポッジョ・ディ・サンレモに突入した。

 

ここでもまずはユンボ・ヴィズマがクリストフ・ラポルトの牽引によって先頭を支配。そこに、UAEの最後のアシストとして残っていたディエゴ・ウリッシが最後の力を振り絞ってポガチャルを牽き上げる。

そして残り8.2㎞。ウリッシ脱落と共にポガチャルがアタック。だが、ファンアールトがすぐさまこれを引き戻す。

残り7.7㎞。ポガチャル2度目のアタック。今度はモビスターのアレックス・アランブルによって引き戻される。

残り7.4㎞。3度目のアタック。しかしもう、キレがない。残り6.6㎞。4度目のアタック。これもまた、ファンアールトらを突き放すことはできなかった。

直後にセーアン・クラーウアナスンがカウンターアタック。ポガチャルは今度はこれに乗り、2人で抜け出すことに成功するが、結局は山頂までにファンアールトたちによって捕まえられてしまった。

 

抜け出せないまま迎えたラスト5.5㎞の下りと平坦。このまま、「いつもの」十数名による小集団スプリントに持ち込まれるのか?

 

だが、この下りで、マテイ・モホリッチが動いた。年始から準備していたという、ドロッパーシートポストの使用により、驚異的なダウンヒルが発動。

みるみるうちに、後続の強烈な追走集団とのタイム差が開いていく。

下り切った時点でタイム差は6~7秒。そして、メイン集団では、「いつもの」ワウト・ファンアールトに対する牽制合戦でペースダウン。

 

逃げ切りは決まった。

 

マテイ・モホリッチ。驚きのダウンヒル作戦を成功させ、初のモニュメント達成。

最強チーム同士の激突の間隙を縫って掴み取った、大きすぎる栄光の瞬間であった。

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クラシック・ブルッヘ~デパンヌ(3/24)

ベルギー・ウェスト=フランデレン州、207.9㎞、KVCデパンヌ・スポルティフ主催

 

かつては「ブルッヘ~デパンヌ3日間レース」として知られていた当レースも、2018年にワンデーレース化して早5年目。4月後半から続く2週間に及ぶ北のクラシックの連戦「ホーリーウィーク」の入り口にあたり、まずは足慣らしのスプリンターズクラシックである。

過去にもエリア・ヴィヴィアーニやディラン・フルーネウェーヘン、サム・ベネットなどが勝利を掴んできているかなりピュアスプリンター寄りのレースであり、今年も落車などもありパスカル・アッカーマンなどが脱落しながらも、最後は純粋なスプリント勝負が繰り広げられることとなった。

 

残り300mまでクイックステップのアシスト2枚(ベルト・ファンレルベルフとミケル・モルコフ)が集団の先頭で強烈なリードアウトを見せるが、肝心のエースのマーク・カヴェンディッシュは完全にポジションを落としており、勝負には絡めず。

3番手にいたオラフ・クーイが残り200mを切ったあとにスプリントを開始するが、少し遠すぎた。

左からフルーネウェーヘン、右からメルリールが同時にスプリントを開始し、クーイを追い抜いて先頭に。

最後はギリギリで競り勝ったメルリールが先着。昨年のジロ・ツール「初日スプリントステージ」制覇者が、今年も強烈な強さを見せつける格好となった。

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E3サクソバンク・クラシック(3/25)

ベルギー・ウェスト=フランデレン州、203.9㎞、ハンド・イン・ハンドVZW主催

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過去9回のロンド・ファン・フラーンデレン優勝者が、同年のE3で9位以上には入っているという、驚異の関連性を見せる「ロンド前哨戦」。

その重要なレースで、ついに合流した「新生ユンボ・ヴィズマ」の最強布陣、すなわちファンアールト、ベノート、ラポルトの3名が、その強さを完璧に発揮してみて、見事な「予行演習」をやってのけた。

 

まずは残り80㎞。「ボーネンベルグ」の異名でも知られる高難易度のターイエンベルグにて、ネイサン・ファンフーイドンクがペースを上げてファンアールト、ラポルト、ベノートの3名が抜け出しにかかる。

食らいつけたのはカスパー・アスグリーン、ジャスパー・ストゥイヴェン、マテイ・モホリッチ、シュテファン・クンという精鋭集団。7名中3名がユンボ・ヴィズマで、残り4名は1チーム1人ずつという、実に理想的な展開だ。

 

さらにこのままでは集団牽引の責任を担わされ続けるだけなので、オンループ・ヘットニュースブラッドのときのように、残り72㎞でまずはベノートにアタックさせる。こ

れはすぐさまアスグリーンによって引き戻されるが、残り70㎞でベノートはさらにもう一度アタックし、今度はシュテファン・クンが追走のために先頭に躍り出る。

常に数の利を生かして集団をコントロールし、ライバルたちの足も使わせるというユンボ・ヴィズマのクレバーな戦略。

1つ誤算だったのはそこでイネオス・グレナディアーズがマグナス・シェフィールドやベン・ターナーら若手ルーラーたちの足を使って一気にメイン集団のペースを上げ、残り62.5㎞のエイケンベルグで、エースのヨナタン・ナルバエスとディラン・ファンバーレを先頭5名にブリッジさせてきたこと。

さらにここにフロリアン・セネシャルやビニヤム・ギルマイなどの強力なライダーたちが連なり、残り50㎞地点で先頭は16名にまで膨れ上がる結果となったこと。

だが、ここにユンボ・ヴィズマはさらにマイク・テウニッセンも入れ、先頭16名中4名がユンボ・ヴィズマという、数的有利を崩すことはなかった。

 

そして残り44.7㎞。

ロンド・ファン・フラーンデレン本戦でも勝負所になる激坂パテルベルグ。

ここで、ティシュ・ベノートが最後の力を振り絞って猛牽引を行い、引き伸ばされた集団の先頭から、ワウト・ファンアールトとクリストフ・ラポルトが「飛び立った」。

 

食らいつくギルマイ。だがこれも突き放し、ファンアールトと、そしてなぜか彼のアタックに食らいつけていたラポルトの2人が最後、ローテーションを回しながらタンデム独走を続け、圧勝を飾った。

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結局、アシストを1枚残して勝ったとも言える圧勝ぶりを見せた「新生ユンボ・ヴィズマ」。

過去9年のうち8年はE3の上位4名だけしかロンドに勝利していないという実績もあり、その4名中2名をユンボ・ヴィズマが支配したという事実は、ロンド本戦に向けての大きなヒントとなった。

このまま、この勢いのまま、ユンボ・ヴィズマはロンド・ファン・フラーンデレンすらも支配してしまうのか?

 

 

ヘント~ウェヴェルヘム(3/27)

ベルギー・東西フランドル州、248.8㎞、フランダースクラシック主催

E3がコースにおけるロンド・ファン・フラーンデレン前哨戦であれば、このヘント~ウェヴェルヘムは距離における前哨戦とも言えるかもしれない。フランドル地方の海沿いから内陸にかけて突き進む250㎞は、スプリントで終わることもあれば、強烈な横風による集団分裂が巻き起こりカオスな展開でフィニッシュすることもありうる、非常に読みづらい混沌のレースである。

昨年は小集団が生き残る展開となったが、そこでネイサン・ファンフーイドンクを残すことのできていたファンアールトが最後はスプリント勝利。残れるアシストさえいれば負けはないということを示した展開であった。

 

今年はさらに進化した「新生ユンボ・ヴィズマ」。これまでのオンループやE3とはまた違ったその強さを示す展開となった。

すなわち、全部で3回ある勝負所「ケンメルベルグ」にて、ワウト・ファンアールトが自ら積極的に攻勢を仕掛けていく。

さすがのライバルチームもこれを許すわけにはいかず、カスパー・アスグリーンやマス・ピーダスンが全力で抑え込む。

だが、本当に強いチームはここからの「2の矢」がある。すなわち、エースのファンアールトを囮にしての、クリストフ・ラポルトのアタック。

ここにビニヤム・ギルマイ、ジャスパー・ストゥイヴェン、ドリース・ファンヘステルが食らいつき、抜け出した4名に対して集団は牽制。

クールネ~ブリュッセル~クールネでは最後してやられたが、今度はきっちりと逃げ切りを決めることに成功。

「新生ユンボ・ヴィズマ」の、これが新しい戦い方である。

 

が、最後の最後。

まさかの、「エリトリアの至宝」ビニヤム・ギルマイの、強烈過ぎるロングスプリントに、ラポルトはわずかに届かなかった。

アフリカ勢として初の本格的クラシック勝利。歴史を創る、偉大なる勝利を彼は掴み取った。

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レースの運び方としては悪くなかった「新生ユンボ・ヴィズマ」。しかし、やはり最後の決め手はファンアールトでなければならないのか?

本番を前にして、1つの課題に直面することとなった。

 

 

ドワースドール・フラーンデレン(3/30)

ベルギー・ウェスト=フランデレン州、183.7㎞、フランダースクラシック主催

ロンド・ファン・フラーンデレンの4日前、最後の前哨戦となる当レースは、距離も短めに設定されており、直前過ぎるということでワウト・ファンアールトを始めとする最有力選手たちは出場しないことも多い。

そのレースに、怪我でシーズン開始が遅れていたマチュー・ファンデルプールが今年の北のクラシック初参戦を果たし、また、今年ロンド・ファン・フラーンデレンに初挑戦する予定のタデイ・ポガチャルもまた、ここで初めて足を踏み入れた。

 

決定的な動きは残り70㎞を切ったところで巻き起こった。

今シーズンのクラシックで常に調子のよい様子を見せているロット・スーダルのヴィクトール・カンペナールツのアタックを皮切りに、イネオスの2人(ターナーとピドコック)やティシュ・ベノート、シュテファン・クン、そしてマチュー・ファンデルプールという非常に強力な6名の小集団がメイン集団から抜け出す。

タデイ・ポガチャルはこの動きに乗り遅れ、残り62㎞でこれ以上は放置できないとばかりに単独で追走を開始するが、しかしさすがに届かなかった。

勝負は逃げ残りのニルス・ポリッツやケランド・オブライエンも加えた先頭8名で決まった。

 

散発的なアタックが繰り返されながらもなかなか抜け出しが決まらない中、残り2㎞でベノートが仕掛け、そこにファンデルプールのみが食らいつき、2人が抜け出した。

最後は残り300mから踏み込んだファンデルプールがベノートを突き放し圧勝。ベノートも脱帽とばかりに拍手でこれを見送った。

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ポガチャルは3名の追走集団の中でフィニッシュし、10位。十分に凄いが、クラシック特有の展開の洗礼をまずは受けた、という結果だった。

そしてファンデルプール、怪我の影響を微塵にも感じさせない勝利。いや、本来の彼であればもっと早い段階でライバルたちを突き放せていたかもしれないからその意味では影響があったうえでこれなのかも・・?

ロンドでは一体どうなってしまうのか、「最強」ユンボ・ヴィズマの一強体制にも関わらず「何が起こるか分からない」感覚を最後まで感じさせ続ける前哨戦群となった。

 

 

そして、衝撃のニュースが飛び込んでくる。

 

 

ロンド・ファン・フラーンデレン(4/3)

ベルギー・東西フランドル州、272.5㎞、フランダースクラシック主催

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まず、衝撃だったのが、ここまで史上最高のコンディションで臨んでこれていた「新生ユンボ・ヴィズマ」の絶対的エース、ワウト・ファンアールトの、まさかのCovid-19陽性。

最後の最後、本番を目の前にして、あまりにも悔しい不出場となってしまった。

 

もちろん、エース不在でも彼らは全力を尽くすつもりであった。

これまで常にエースの発射台であり続けていたネイサン・ファンフーイドンクが、この日は残り101.8㎞のモーレンベルクで自ら仕掛け、のちにチームメートのミック・ファンダイケを含む追走集団と合流し、クイックステップのスティバルやトレックのマッス・ピーダスン、イネオスのベン・ターナーなどを含む強力な16名の逃げ集団が形成された。

 

だが、UAEチーム・エミレーツはこれをヴェガールステイク・ラエンゲンやマッテオ・トレンティンを使って全力追走。残り55㎞。かつてフィリップ・ジルベールが独走を開始した勝負所「2回目オウデクワレモント」にて、ついにエース、タデイ・ポガチャルがアタックした。

 

この一撃は、すべてを破壊した。

あっという間に16名の集団に追い付き、これを一瞬にして追い抜き、逃げ残りも飲み込んで先頭に。

彼のこの一撃だけで、先頭は30名程度の精鋭集団に絞り込まれてしまった。

 

そして、残り45㎞の最難関登坂コッペンベルフ。ここで先に仕掛け、シッティングのまま20%を超える荒れた石畳の激坂を攻略した彼に追随できたのはマチュー・ファンデルプール、ヴァロンタン・マデュアスのみ。

クリストフ・ラポルトも、ティシュ・ベノートも、ゼネク・スティバルも、カスパー・アスグリーンも一切ついていけず。

先頭はこの3名と、直前に先行していたディラン・ファンバーレとフレッド・ライトの5名に絞り込まれた。

 

そして3回目オウデクワレモント。ここでもポガチャルが先導してペースを上げ、先頭は彼とファンデルプールだけに。

最後の登りパテルベルグ。ポガチャルはここでもシッティングのまま、一定ペースを刻んでペースをあげていく。ファンデルプールは上半身を左右に激しく揺らし、余裕のない様子でフラフラになりながらついていく。

それでも、ファンデルプールはなんとか突き放されないまま、ポガチャルと共に最後の登りを攻略した。

戦いは、二人のマッチスプリントに委ねられた。

 

 

この先の戦いは、一昨年ファンアールトを倒したファンデルプールの例、昨年ファンデルプールを倒したアスグリーンの例を見ていたゆえに、ポガチャルに十分に可能性があるのではないかと見ていた。

 

だが、そこにもまだ、ドラマが秘められていた。最後の最後のスプリントは二人による力のぶつかり合い――ではなく、経験の差がにじみ出た、クレバーな戦いによる決着だった。

すなわち、牽制し続けたポガチャルと、それをあえて受け止め続けたファンデルプール。そして、ラスト250mで「全力ではない」スプリントを開始したファンデルプールと、直後にファンバーレ&マデュアスに飲み込まれるポガチャル。

そこからさらに踏み込んだファンデルプールの勝利。

この辺りの詳細は、上記記事も参照していただけると幸いだ。

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2度目の勝利でありながら、非常に思いのこもったガッツポーズを繰り出したファンデルプール。そして珍しく感情的になっていたタデイ・ポガチャル。

ワンデーレースの最高峰、「クラシックの王」ロンド・ファン・フラーンデレンだからこそ描かれた、最高のドラマのフィナーレがそこにはあった。

 

そしてこのとき2位に入ったファンバーレ。ここまでの北のクラシックでも常に重要な動きを繰り出してきていたイネオス・グレナディアーズ。

彼らの「イネオス劇場」が、春のクラシックシーズン後半戦でまた新たな驚きを生み出していくこととなる。

 

 

シュヘルデプライス(4/6)

ベルギー・アントウェルペン州、198.7㎞、フランダースクラシック主催

例年、ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ~ルーベの間の水曜日に開催される、フランドル最古のクラシックレース。

石畳の急坂レースから石畳の平坦レースへの橋渡しをするようなレースであり、石畳の影響はまだそこまで大きくはない結果、例年はスプリンターたちによる争いがメインであった。

だが、今年はそこに悪天候が襲い掛かる。大雨と、強烈な横風。ボーラ・ハンスグローエが先導した分断作戦によってわずか14名の先頭集団が早々に形成され、これが最後まで捕まえられることなくフィニッシュにまで到達することとなる。

 

そしてこの14名も、素直なスプリントでは決着しなかった。

ラスト10㎞を切ったところで登場する、1.4㎞の未舗装路「ブロックストラート」。ここで間隙を縫って勇気ある飛び出しを仕掛けたのがアレクサンドル・クリストフである。

 

元ロンド・ファン・フラーンデレンおよびミラノ~サンレモ覇者。しかしキャリアも終盤に差し掛かり始め、さすがにピュアスプリントではなかなか勝てなくなりつつあった彼が、得意の乱戦を制してのラスト8㎞からの飛び出し。

後続集団も足並みを揃えられず牽制。クラシックレースとしては2019年のヘント~ウェヴェルヘム以来となる勝利を挙げた。

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UAEチーム・エミレーツを離れ、今年はアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオとの単年契約。

今後の行く末が不透明だった中での、大きな勝利となったことだろう。

 

 

アムステルゴールドレース(4/10)

オランダ・リンブルフ州、254.1㎞、アムステルゴールドレース・ファウンデーション主催

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フランス大統領選挙の影響で1週早い開幕となった「アルデンヌ・クラシック3連戦」初戦。

激しいアップダウンと千のカーブと形容される複雑なコースが彩る丘陵レースは、例年どこが勝負所になるかわからないスペクタルなレースとなっている。

 

今年は残り34㎞のクーテンベルグが決め手となった。最大勾配22%の、大会最高難度の超激坂。ここでティシュ・ベノートが先導してペースを上げ、そこに食らいついたカスパー・アスグリーンやマチュー・ファンデルプール、ブノワ・コヌフロワにマイケル・マシューズなどの精鋭集団11名が抜け出した。

そしてそこに、イネオス・グレナディアーズは昨年2位トム・ピドコックと2015年覇者ミハウ・クフィアトコフスキの2名を潜り込ませていた。唯一複数名入れられているチームであった。

 

そして残り20㎞のグールヘンメルベルグ。

11名の中からさらにクフィアトコフスキとコヌフロワだけが抜け出す。

メイン集団ではディラン・トゥーンスやマルク・ヒルシが追走を仕掛けようとするが引き戻され、牽制状態に陥る。

残り1.8㎞。タイム差20秒。我慢しきれずにマチュー・ファンデルプールがアタックするが、すぐさまカスパー・アスグリーンが引き戻す。

残り1.3㎞。タイム差13秒。再びファンデルプールが踏み込むが、2019年の再来とはならなかった。ファンデルプールはここで後ろを振り返り、足を止めてしまう。

勝負は先頭2名に委ねられた。

 

勢いはコヌフロワにあったように思えた。昨年のブルターニュ・クラシックでジュリアン・アラフィリップを破った男。

だが、最後の最後は――2017年ミラノ~サンレモでペテル・サガンを打ち破った時と同じように――巧みなバイク投げによって、ギリギリでクフィアトコフスキの前輪が先着していた。

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ここからイネオスの快進撃が始まる。

 

 

ブラバンツペイル(4/13)

ベルギー・フラームス=ブラバント州、205.1㎞、フランダースクラシック主催

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例年であればパリ~ルーベとアムステルゴールドレースの間の水曜日に開催され、アルデンヌ・クラシックの開幕戦として機能する丘陵系レース。昨年のフランドル選手権でも使われたコースもあり、昨年はトム・ピドコックがワウト・ファンアールトを打ち破った。

中盤から常にトム・ピドコックやレムコ・エヴェネプールが積極的に動き続け、何とかアタックしては引き戻されながらも、最終的に残り53㎞地点でのエヴェネプール乃加速によって、10名の先頭勝ち逃げ集団が形成された。

その中に、イネオスが3名。ピドコック、ターナー、シェフィールド。いずれも若く、ターナーとシェフィールドはネオプロ。しかしここまでの北のクラシック戦線でも常に重要な役回りを担い続けてきた3名だ。

 

後手に回ったのがクイックステップ。先頭にエヴェネプールだけしか乗せられず、彼もイネオスの数的有利に翻弄された。

すなわち、残り10㎞。マグナス・シェフィールドの1回目のアタックに、エヴェネプールが自ら集団を牽引し、引き戻す。

が、残り3.5㎞。再びシェフィールドがアタック。今度もまたエヴェネプールが自ら引き戻しにかかるが、さすがに足に限界が来ており、今度はシェフィールドに追い付くことはできなかった。

カウンターでブノワ・コヌフロワが集団から飛び出すが、ターナーがすぐさまこれをチェック。エヴェネプールは苛立ちを顕にして他のティム・ウェレンスやワレン・バルギルに前を牽くようジェスチャーをするが、集団の足並みは揃わなかった。

 

そのまま逃げ切りを決めた弱冠20歳のネオプロ。今年すでにブエルタ・アンダルシアで1勝しているが、それに続く2勝目を早くも達成してのけた。

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イネオス、クラシック2連勝。そしてその勢いは、まだまだ衰えない。

 

 

パリ~ルーベ(4/17)

フランス・オー=ド=フランス地域圏、257.2㎞、ASO主催

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3年ぶりに春に帰ってきた「北の地獄」パリ~ルーベ。昨年は大雨の中荒れた展開になったが、今回は快晴のため、そういった展開にはならないだろう・・・

と、思っていたら、今年はさらにカオスに。なんと石畳の始まる残り120㎞台からすでに先頭50名ほどの大規模集団が形成されるという事態に。

とくに3名を乗せたイネオスが積極的に集団をコントロールしていき、マチュー・ファンデルプールや復帰初戦のワウト・ファンアールトらは後続集団に取り残される形に。

 

とはいえ、この意外な混乱も、いつものアランベールを超えた頃には少しずつ落ち着きを取り戻し、いつもの形へと戻っていく。50名の集団はほとんどが吸収され、先頭は4名だけに。

そして、残り70㎞台から始まる「魔の20㎞」で、今年も「最終列車」が形成された。

 

残り55㎞。先頭3名を追いかける12名の第2集団が形成される。ファンデルプール、ファンアールト、シュテファン・クン、イヴ・ランパールト、フロリアン・セネシャル、ジャスパー・ストゥイヴェンなどの精鋭軍団。その中にイネオス・グレナディアーズはディラン・ファンバーレとベン・ターナーという、ここまで春のクラシックを通して活躍してきた2人組が残っていた。

残り50㎞でワウト・ファンアールトが加速。残り35㎞ではクンがアタックし、ファンアールトが飛びつく。

病み上がりの復帰初戦だが、それゆえに失うものがないことからの強気なのか、ファンアールトがいつもの消極性から脱し、かなり積極的な動きを見せている。

一方、ファンデルプールはどこか彼らしくないコンサバな走り。ロンドでは功を奏し、アムステルでは敗北の理由ともなった「大人な」スタイルが、彼を縛り付ける。もちろん、腰や背中の痛みのせいというのも十分ありうるが。

 

そして残り30㎞。まずはイヴ・ランパールトがアタックし、そこにモホリッチが反応し、2名が抜け出す。

これを追いかける追走集団の先頭はベン・ターナー。そして縦に長く伸びた集団の最後尾から、一気にペースを上げて不意打ち気味のアタックを繰り出したのがファンバーレだった。

 

そして最後までに逃げ残っていたトム・デヴリーントにランパールト、モホリッチと共に追いついたファンバーレ。先頭4名を追いかけるメイン集団からはストゥイヴェンのアタックにクンとファンアールトが追随し、そしてファンデルプールはここでも飛び乗れず、残ったメンバーを振り返ることしかできないファンデルプール。

実に彼らしくない終わり方だった。

 

 

残り19㎞。カンファナン=ペヴェル。直後の5つ星パヴェ、カルフール・ド・ラルブルとセットで重要な最後の勝負所となるこのポイントで、ファンバーレが先頭でアタック。

そのままランパールトやモホリッチたちを突き放し、独走を続けるオランダ人。

そして、昨年のドワースドール・フラーンデレンに続く、北のクラシックワールドツアーレース2勝目。さらに、イネオスとしても、先週のアムステルゴールドレースから続く、クラシック3連勝を見事に飾って見せた。

グランツールでの最強はもはや失ったイネオス。だが、クラシックにおける新たな最強の称号を今、確実なものにし始めた。

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ラ・フレーシュ・ワロンヌ(4/20)

ベルギー・リエージュ州、202.1㎞、ASO主催

最大勾配19%の激坂「ユイの壁」を合計3回登らせ、最後はその頂上にフィニッシュを置く、唯一無二のクラシックレース。

基本的には最後のユイ勝負で決まるのだが、その直前の残り7㎞、コート・ド・シュラーヴなどでも例年、可能性を感じさせる動きが巻き起こる。今年もコフィディスがトレインを作ってレミ・ロシャスをアタックさせたり、そこに追い付いてきたクイックステップのマウリ・ファンセヴェナント、DSMのセーアンクラーウ・アナスンの2人がラスト1㎞、ユイの壁麓までタンデムエスケープ。

ただ、今年もまた、ここで希望は潰えた。いつも通りの、ユイ勝負となった。

 

「壁」で先行したのはモビスター・チームのエンリク・マス。背後にフレーシュ・ワロンヌ5勝のアレハンドロ・バルベルデを引き連れて、先頭を強力に牽引していく。

そのまま残り300mまで先頭で牽引し続けたマス。過去優勝者のジュリアン・アラフィリップや優勝候補タデイ・ポガチャルもポジションを落とす中、このマス&バルベルデに食らいついていくのはアレクサンドル・ウラソフとディラン・トゥーンス。

そして残り250m。マスが仕事を終えて脱落したのち、左手からウラソフ、右手からバルベルデが加速。だがその間を割って勢いよく先頭に飛び出したのはディラン・トゥーンスだった。

トゥーンスの勢いはすさまじかったが、これはバルベルデの必勝パターン。これまでも彼は誰よりも仕掛け所を知っていて、それゆえにこれまでも常に上位に入り込み続けてきた。

今回も、残り100mを切って段々と勾配が緩くなるポイントでトゥーンスに並びかけるバルベルデ。一瞬、トゥーンスより前輪を前に出すタイミングもあり、キャリア最終年に6勝目を重ねるのか――と思った次の瞬間。

まさかの、このタイミングからのトゥーンスの更なる加速。

そしてバルベルデはもう、これについていくことはできなかった。

 

2017年フレーシュ・ワロンヌ3位。直後から、飛躍し始めたベルギーの激坂ハンター。

その後も2019年、2021年と活躍し、隔年ごとに成績を出すタイプかと思ったが――今年はしっかりとこの2022年にもビッグレースを勝利した。それも、紛れのない、はっきりとした強い勝ち方で。

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リエージュ~バストーニュ~リエージュ(4/24)

ベルギー・リエージュ州、257.2㎞、ASO主催

note.com

 

19世紀末から続く、世界最古のクラシック。シーズン4番目のモニュメントであり、春のクラシック最終戦となるこのレースを前に、「最強軍団」クイックステップ・アルファヴィニルは、まさかの春のクラシックワールドツアーレース「未勝利」という状況を迎えていた。

さらに、このリエージュ~バストーニュ~リエージュも、残り59.5㎞で巻き起こった大落車にエースのジュリアン・アラフィリップが巻き込まれ、即時リタイア。

数の有利を活かすこともできず、このままクイックステップは未勝利のまま、春のクラシックシーズンを終えてしまうのか――。

 

そうはさせない、と動いたのが、この男だった。

レムコ・エヴェネプール。天才かつ直情的で、毀誉褒貶の激しい男。先日のブラバンツペイルでも、イネオス・グレナディアーズ3名に果敢に挑んだものの、自ら動きすぎた結果いとも簡単に数の有利に丸め込まれてしまった。

 

そんな彼が、このリエージュ~バストーニュ~リエージュでは魅せた。

残り30㎞。PHIL, PHIL, PHILのペイントで有名なコート・ド・ラ・ルドゥット。自身の目指すべきヒーローであり続けたフィルの名前に勇気づけられたのか、彼は献身的なアシストによる猛牽引で縦に長く引き伸ばされた集団の先頭から、ものすごい勢いで(それこそ見たことのないような猛烈な加速で)突然、集団から飛び出した。

 

これまで、2018年に新コースになって以来、常に残り15㎞のコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンで勝負が決まり続けていたこのリエージュ~バストーニュ~リエージュ。

残り30㎞のこのラ・ルドゥットで、彼は勝負を決める独走を開始した。

 

逃げ遅れに追い付くたびに、わき目も振らずそれを追い抜いていくエヴェネプール。単独で先頭を走っていたブルーノ・アルミライルに追い付いてからも、一度も彼を振り向くことなく、淡々と自分の足で踏み続けていた。

それは、彼のデビュー年にクラシカ・サンセバスティアンで勝ったときの走りを彷彿とさせた。あのときも、例年の勝負所であるムルギル・トントーラを前にして早めのアタックを繰り出し、先行していたトムス・スクインシュをいとも簡単に力で切り捨てて独走を開始していた。

www.ringsride.work

 

あのとき、ムルギル・トントーラを経てもなお、後続に追い付かせることのなかったエヴェネプール。

今回も、最後の勝負所ラ・ロッシュ・オ・フォー・コンで一瞬にしてアルミライルを突き放したあと、牽制状態に陥るメイン集団とのタイム差を縮めることなく、彼はひたすらフィニッシュへと突き進んでいった。

 

そして掴み取った、今年の春のクラシックワールドツアーレースにおける、チーム初勝利。

そしてそれは、あのイル・ロンバルディアでの落車以来、どこか歯車の噛み合わないことが続いていた彼がようやく掴んだ、本来の彼らしい走りの賜物であった。

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それは、決して最強の走りではないかもしれない。

だが、それは見る人の心を打ち、そして奮い立たせる、冒険のような走り。

 

これからも、雑音に惑わされることなく、彼らしい走りを追求していってほしい。

これからも常に我々を驚かせ続けてくれる、そんな走りを。

 

 

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