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サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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Deceuninck - Quick Step 2021年シーズンチームガイド

 

読み:ドゥクーニンク・クイックステップ

国籍:ベルギー

略号:DQT

創設年:2003年

GM:パトリック・ルフェーヴル(ベルギー)

使用機材:スペシャライズド(アメリカ)

2020年UCIチームランキング:2位

(以下記事における年齢はすべて2021年12月31日時点のものとなります) 

 

【参考:過去のシーズンチームガイド】 

Quick-Step Floors 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Deceuninck - Quick Step 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Deceuninck - Quick Step 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

目次

 

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2021年ロースター

※2020年獲得UCIポイント順

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メンバーの入れ替えはほぼなし。実際、する必要もない。2020年シーズンは8年連続の最多勝利を記録し、UCIチームランキングもギリギリでユンボ・ヴィズマに抜かれたものの、昨年の1位に次ぐ2位と、圧倒的な強さを誇った。

とくに昨年は、ジロ・デ・イタリアの総合TOP15に3人も乗せるというこれまでにないほどのグランツール総合争いへの適性も見せた。今年はエヴェネプールの復活次第ではあるが、ついにその頂点も手に入れられるかもしれない。

一方で、悲劇も多かったシーズンだった。そのエヴェネプールがイル・ロンバルディアで崖下に落下。その前にはツール・ド・ポローニュでファビオ・ヤコブセンがコース外に吹き飛ばされ、生死の境を彷徨った。

ヤコブセンに関しては今年万全の復活ができるかも定かではない。しかしそれでも走ろうとするその思いに最大の敬意を払いつつ、今年は決して「期待」はせず、回復に専念してもらうように願っていよう。

 

そして、マーク・カヴェンディッシュの復帰。

生ける伝説、一時代を築いた史上最高峰のスプリンターの1人。その、選手生活のおそらく最終盤を、このチームがどのように支えることができるのか。

決してただ強いだけではない。人と人との繋がり、ドラマを生み出すチーム。それがこの「ウルフパック」である。

 

 

注目選手

ジュリアン・アラフィリップ(フランス、29歳)

脚質:オールラウンダー

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2020年の主な戦績  

  • 世界選手権ロードレース優勝
  • ミラノ~サンレモ2位
  • ブラバンツペイル優勝
  • リエージュ~バストーニュ~リエージュ5位
  • UCI世界ランキング6位

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かつては激坂や小集団スプリントの得意な「パンチャー」という印象だった。それが2018年にはツール・ド・フランスの山岳賞まで手に入れて、観衆を驚かせた。

翌年にはツール・ド・フランスで14日間にわたりマイヨ・ジョーヌを着続け、フランス全土を熱狂の渦に包み、2020年にはついに、世界王者の座を手に入れた。

さらには、最後は落車で悔しい思いで終わってしまったものの、ロンド・ファン・フラーンデレンでは優勝を狙える位置にまで登り詰めていた。

年々進化を続ける、止まることを知らない男。

2021年は果たして、どんな夢を見せてくれるのか。

 

そして、ルフェーブルGMは、彼がすぐにツール・ド・フランスの総合優勝を狙うことはないと断言していた。その理由は、まだ十分に整いきっていなかった山岳アシスト体制にもあるだろう。過去、ボブ・ユンゲルスやダニエル・マーティンらも、常に独りで戦い続ける宿命を背負っていた。2018年のアラフィリップ自身もそうだ。

しかし2020年は、ジロ・デ・イタリアでファウスト・マスナダやジェームス・ノックスが見事な山岳アシストを披露していた。もちろんそのとき総合4位となったホアン・アルメイダやレムコ・エヴェネプールもまた、山岳アシストとしてアラフィリップを支えるというパターンはありうるだろう(2019年のブエルタ・ア・サンフアンでは、プロデビュー直後のエヴェネプールがアラフィリップのための完璧な山岳アシストをこなしていた)。

よって、やろうと思えばもう2021年から、ツールを狙うことは不可能ではないはず。

もちろんまだ焦る必要はないだろうが・・・あらゆる「不可能」を可能にする男なれば、何が起きてもおかしくはない。

あるいは、昨年「置き忘れてしまった」ロンド・ファン・フラーンデレンを今度こそ取りにいく、というパターンもありうるだろう。

フランドルで開催されるという今年の世界選手権で連覇を果たし、ペテル・サガンに挑む姿勢を見せるというのも、あり得る話だ。

 

新時代のスーパースターがどんなドラマを魅せてくれるのか。

実に楽しみな今シーズンだ。

 

 

レムコ・エヴェネプール(ベルギー、21歳)

脚質:オールラウンダー

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2020年の主な戦績  

  • ツール・ド・ポローニュ総合優勝
  • ヴォルタ・アン・アルガルヴェ総合優勝
  • ブエルタ・ア・サンフアン総合優勝
  • ブエルタ・ア・ブルゴス総合優勝
  • 年間9勝
  • UCI世界ランキング20位

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こちらもまた、不可能を可能にし続ける男。ありえない速度で進化を続ける男だ。

年始の最初のレースであるブエルタ・ア・サンフアンで総合優勝。2つ目のレースであるヴォルタ・アン・アルガルヴェで総合優勝。

新型コロナウイルスの影響で長期中断期間を挟んだ後の最初のレースであるブエルタ・ア・ブルゴスで総合優勝。そして今年4つ目のレースでたるツール・ド・ポローニュで総合優勝。

出るレース全てで勝ち続けてきた男。そして、それが何も驚くべきことではない、当たり前だと思わせる迫力がこの男にはあった。

きっとこのままジロ・デ・イタリアにも出場し、当たり前のように総合優勝してしまうのだろうーープロデビュー2年目のわずか20歳の青年に対して、そんなふうに思ってしまえる人は決して少なくなかったであろう。

 

そしてそんなジロを前にした、今年の「5レース目」にあたるイル・ロンバルディア。

ここでもまた、彼は優勝候補であった。ドリス・デヴェナインスらアシストの力を借りて勝負所ムーロ・ディ・ソルマーノを越えて、セレクションされた先頭集団に彼は残っていた。

すでにアシスト不在の1人だけという点は不安材料ではあったが、十分に「勝てる」レースであると、多くの人が思っていたはずだった。

 

しかし、下り巧者ヴィンツェンツォ・ニバリがソルマーノの下りで前に出ると、少しずつエヴェネプールが遅れ始める姿が目立つようになった。

エヴェネプールもそれゆえに焦ってしまったのかーー橋の入り口の狭くなる箇所で少し膨らんでしまい、前輪を引っ掛けて彼は崖の下に転落してしまった。

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そのままシーズン最後まで走り続けていれば、ジロ・デ・イタリアはもちろん、その他にも多くの驚くべき成果を残し、UCIランキングでもさらなる高みに登っていたかもしれない。

だが、今はまず、彼が笑顔で自転車に乗れることがただただ、喜ばしい。

今年どれだけ本来の力を取り戻せるかはわからないが、ゆっくりと焦らずその成長を見守っていこう。

 

 

ホアン・アルメイダ(ポルトガル、23歳)

脚質:オールラウンダー

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2020年の主な戦績  

  • ジロ・デ・イタリア総合4位
  • ブエルタ・ア・ブルゴス総合3位
  • ジロ・デッレミリア2位
  • セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリ総合3位
  • ヴォルタ・アン・アルガルヴェ総合9位
  • UCI世界ランキング13位

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正直、その存在をほとんど知らず、ヴォルタ・アン・アルガルヴェではエヴェネプールのアシストとして活躍する姿を見て、年代の近いエヴェネプールにとっては今後も右腕のような存在としてあり続けるだろう、くらいにしか思っていなかった。

しかし、ブエルタ・ア・ブルゴスでは、そのエヴェネプールに匹敵する走りを披露。ここから彼は単なるアシストではなく、もう1人のエースであるという認識が強くなった。

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イル・ロンバルディアでエヴェネプールが戦線離脱したあとは、そのリベンジであるかのようなジロ・デッレミリアでの2位。才能を遺憾なく発揮した。

しかし、さすがに、ジロ・デ・イタリア総合優勝も十分狙えると思われていたエヴェネプールの「代役」を、アルメイダが果たしてくれるとはほとんどの人が思っていなかったであろう。しかし彼が15日間にもわたってマリア・ローザを着用してみせたとき、人によってはもしかしたら、彼にエヴェネプール以上の可能性を見出したかもしれない。

 

エヴェネプールに匹敵する才能。よく似た2人だが、いくつかの点で違いがある。

たとえばアルメイダも類稀なるTT能力を持ってはいるが、TT世界王者すら狙い得るエヴェネプールの域に達しているとは言い難いだろう。

一方、アルメイダの強力な武器は、ディエゴ・ウリッシにも食らいつきうるそのスプリント力である。パンチャーと言っても差し支えないその加速力は、たとえばプリモシュ・ログリッチが昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで積極的にボーナスタイムを取りに行き、その結果接戦を制したことを考えれば、グランツール総合を狙う男にも決して不要なものではない。

 

ゆえに、彼はエヴェネプールの「代役」ではない。またどちらが上ということもなく、互いに互いの武器を活かし、別の目標を狙い合ったり、共に協力しあうことはありだろう。

エヴェネプール、アラフィリップという2人の天才によって彩られたドゥクーニンクの総合争いの戦列に、このアルメイダもまた加わることで、この「青の軍団」はより最強になることだろう。

2020年代のグランツールは、ドゥクーニンクが席巻してしまっても、何も不思議はなさそうだ。

 

 

サム・ベネット(アイルランド、31歳)

脚質:スプリンター

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2020年の主な戦績   

  • ツール・ド・フランス区間2勝&ポイント賞
  • ブエルタ・ア・エスパーニャ区間1勝
  • 年間7勝
  • UCI世界ランキング37位

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元々ボーラ・ハンスグローエで世界トップクラスの実力を発揮していたこの男が「最強スプリンターズチーム」ドゥクーニンクに行くことで、すでにして成功は約束されていた。むしろ昨年のこの成績は、期待よりは低い結果とさえ言えてしまうくらいだ。

だが、そんな「ドゥクーニンクのエーススプリンター」であることは、本人に想像し得ないほどの重圧を与えるものだということは、3年前のエリア・ヴィヴィアーニの姿を思い返すまでもなく、昨年のツール・ド・フランス第10ステージでの彼の勝利の後の涙を見るだけで、強く強く思い知らされる。

元より、ボーラのプロコンチネンタルチーム時代からの生え抜きであった。のちにサガンというスーパースターが入ってくるが、彼に負けることなく成長し、同じくらいの勝利数を稼いだ。さらにパスカル・アッカーマンという才能が現れてきてからも、彼に張り合うようにして強さを発揮し続けてきた。

だが、それでもサガンやドイツ人のアッカーマンと同じチームで走り続けることは、決して彼にとって完璧な条件ではなかったのだろう。とくにツールを獲るためには、サガンのいるこのボーラを抜けなくてはならない。

その思いに応えたのがドゥクーニンクだった。ベネットの野望に最も相応しいチームだった。ボーラとの間にややトラブルがあったものの、なんとか昨年、希望通りの移籍を実現した。

だからこそ、その1勝の重みは果てしなく重かった。ツールの第1週目で勝利を掴めなかった彼が過ごした最初の休息日での心情は、想像するだけで恐ろしくなる。

その重圧を跳ね除けた瞬間の彼の感情は純粋な喜びだけとは言えなかっただろう。涙を流し、そして自らを卑下するような言葉を吐き出し、彼は混乱していた。

だからこそ、最強スプリンターの証である緑のジャージで、最強スプリンターの証であるシャンゼリゼを制したあと、彼がいつまでも会場に残って大型ディスプレイに映るフィニッシュシーンのハイライトを眺める姿は、実に感動的なワンシーンであった。

おめでとう、ベネット。

君はそのジャージに相応しい男だ。

 

一方で、課題もある。

ツールでの勝利を含め、やはりその勝利はミケル・モルコフというドゥクーニンクの「怪物」の助けによるところも大きいように感じられる。

本人が望む望まないに関わらず、高騰する年俸ゆえに今年いっぱいで彼がこのチームを去る可能性は十分にありうる。

もし本当にそうなったとき、「次」のチームでもやはり成功し続けられるかどうか、というのが、これまでのキッテルやヴィヴィアーニを見ていると気になってくる。

元々ベネットはあまりトレインを必要としないというか、独りでも勝てるタイプのスプリンターであった。自らトレインを捨てる場面も時折見せるほどだった。

しかしこのドゥクーニンクでは割と、お行儀良くトレインの中に身を潜めている姿を目にしがちな気もしている。それが重圧によるものだったのか、ブエルタではやや開放された姿が見えなくもなかったが、今度は斜行判定を受けてから別の意味で縮こまってしまっていた。

早くも「次」に向けて、この1年は走り方を意識していくべきシーズンかもしれない。 

 

 

その他注目の選手

イヴ・ランパールト(ベルギー、30歳)

脚質:ルーラー

2020年は彼に大きな勝利がなかったシーズンのような印象は受けるが、当サイトで行った北のクラシック最強選手ランキングでは何と1位を獲得。それだけ、北のクラシックレース全体に対して安定した成績を収めていたことを意味する。

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そんな彼が目指すのは、やはり2019年に3位を経験したパリ〜ルーベ 。そのときは勝者フィリップ・ジルベールをアシストしたランパールトだったが、のちに「自分でも勝てた」という趣旨のことを述べていたとか。そしてそれは、真実だったようにも思う。

今やチームのクラシックエースの座は揺るぎないランパールト。とくにルーベにおいては、最大の優先権が与えられることだろう。

となれば、あとはそのチャンスを掴み取るだけ。

2021年のルーベは、彼にとって決して逃してはいけない戦いとなるだろう。

 

ファウスト・マスナダ(イタリア、28歳)

脚質:クライマー

元アンドローニ・ジョカトリ。エガン・ベルナルやイバン・ソーサなどを輩出しているアンドローニ・ジョカトリは、2019年にも複数名のタレントを抱えており、2019年のジロ・デ・イタリアはそんな彼らが実力を発揮した舞台であった。

その中でも筆頭とも言うべき成績を残していたのがこのマスナダであった。ゆえに2020年のワールドツアー入りは確実と思われていたが、その才能を掴み取ったのがCCCチームであった。総合系ライダーが絶対的に不足していたCCCチームは、彼がエースとして活躍し得る良きチームであった、はずだった。

しかし新型コロナウイルスの影響でチームのスポンサーであるCCC社の業績が急落。それまで長年堅実にチーム運営をしていた彼らも、突如としてそれを手放さざるを得なくなったのである。

先行き不明の中、チームは早期に選手たちの自由交渉権を認める。その中でマスナダに手を伸ばしたのがドゥクーニンク。しかも、2021年からではなく、2020年の途中からチーム入りすることに。

そのときの条件が、ジロ・デ・イタリアへの出場だったのかもしれない。前年まではプロコンチネンタルチーム所属だったこの男を移籍早々にジロメンバー入りさせたことは、強豪揃いのドゥクーニンクにおいては驚きの戦略だったようにも思う。

そしてその選択が最高の結果を生み出す。すなわち、ホアン・アルメイダのアシストをこなしつつ、自らも総合9位に入り込むという偉業。

しかも、アルメイダがついにマリア・ローザを脱ぐこととなった第18ステージで、彼はアルメイダのために、自らの総合順位を犠牲にしてでもアシストに徹した。最終的にアルメイダを先に行かせてフィニッシュした彼は、ライバルたちがさらに崩れた結果順位自体は上げることになるのだが、もしアルメイダのアシストを放棄していれば、その順位はさらに上に上がっていたかもしれない。

能力と、この忠実さ。ドゥクーニンクの未来を創るうえで必要不可欠な要素を兼ねそろえた彼は、平坦のデクレルク、丘のデヴェナインスと合わせ、山のマスナダとしてチームの替え難き財産となるかもしれない。

ただもちろん、彼自身の勝利もまた、見てみたい。できればもちろん、ジロで。ドゥクーニンクのジャージを着てのジロ勝利はきっと、2019年のプロコンチネンタルチーム時代の勝利とはまた違った感慨を得られるはずだ。

 

アンドレア・バジョーリ(イタリア、22歳)

脚質:パンチャー

エヴェネプール、アルメイダと並ぶ世代の見逃してはならない存在がこのバジョーリだ。

元NIPPOヴィーニ・ファンティーニで現B&Bホテルス所属のピュアパンチャー、ニコラ・バジョーリの弟。

しかしその秘められたポテンシャルは正直、兄以上のものがあると感じられる。ワールドツアー経験のない兄を差し置いてドゥクーニンクから声をかけられたのは、その才能を見出されたからなのは間違い無いだろう。

事実、誰にも文句を言わせない成果をいきなり叩き出した。すなわち、昨年のツール・ド・ラン第1ステージでの勝利である。しかも、山頂フィニッシュで、トム・デュムランの豪華なリードアウトから放たれた、プリモシュ・ログリッチ渾身のスプリントを退けての勝利であった。信じられない!といったふうに自らの頭を抱えてフィニッシュしたアンドレアは実に初々しい様子を見せていたが、偉大なるブエルタ覇者を背景に勝利するそのシーンはあまりにも衝撃的だった。

その後もジロ・デッレミリアでアルメイダと共に好走を見せ、ロンバルディア覇者ヤコブ・フルサンやヴィンツェンツォ・ニバリらを後続に突き放しての5位フィニッシュ。

セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリでは早くもプロ2勝目を記録し、総合でも2位となった。

才能を発揮し続ける男は、続いてブエルタ・ア・エスパーニャに参戦。その第1ステージ山頂フィニッシュで10位に入り、クライマーとしての才能も存分に見せつけ、将来的にはエヴェネプールやアルメイダをアシストする存在としても期待できる人物であることを示した。

彼自身の勝利を狙うとしたら、アムステルゴールドレースやリエージュ〜バストーニュ〜リエージュがチャンスとなるだろう。ブラバンツペイル7位という結果が、その可能性を感じさせている。

今年いきなりワールドツアーでの勝利があってもおかしくないだろう。 

 

ヨセフ・チェルニー(チェコ、28歳)

脚質:TTスペシャリスト

昨年のジロで逃げ切り区間1勝。チェコTT王者でもあり、ジロの個人TTでも6位→5位→6位と安定して好成績を出していた。

そんな彼が、ドゥクーニンク入り。2人しかいない今年の新獲得選手の1人が彼であるということ、それも実質的にボブ・ユンゲルスの穴を埋める存在が彼だということに驚きはあるが、ドゥクーニンクが選んだのであれば非常に信頼が持てる。きっとこのチェルニーも、大きな飛躍を得られる機会になるのではないか、と。

実際、高いTT能力は平坦巡航、スプリンターのためのトレイン要員と幅広く役に立つ。ブエルタ・ア・ムルシア総合2位の成績などを見ても、多少の起伏は問題なくこなせそうなので、山岳丘陵エスケープやアルデンヌ系も含めたステージレース/クラシックでの丘陵アシストもこなせそう。

そして、ここまであまり実績はないながら、188cm、77kgの逞しい身体付きは、北のクラシックでの適性もそれこそユンゲルスばりに発揮してくれる可能性も。

2021年のチェルニーはこれまでの彼とは大きく変わる可能性がある。楽しみな選手の1人だ。

 

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、36歳)

脚質:スプリンター

プロ通算146勝。ツール・ド・フランスの勝利数はエディ・メルクスに次ぐ30勝。2009年から2012年にかけて、4年連続でシャンゼリゼを獲り続けた。

まさに、一時代を築いた史上最高のスプリンターの1人。そんな彼もまた、その長い選手生活の晩年を迎えようとしていた。

なおも走り続けたい、その思いは昨年末の契約先が見つからない中のレースにおける「涙」を生み出した。かつてのような走りをできないことは誰よりも自分でわかっていただろうが、それでも彼は走り続けることを望んだ。

その思いに、ルフェーブルGMが応えた。この「最強スプリンターチーム」で、果たしてどんな役割を担うようになるのか。

もちろん、可能であれば、かつてのジルベールのような「復活」を期待したくはある。ただ、そうでなくとも、どんな形でも、彼が最後は笑顔でその選手人生を終えられるような、そんな走りができることを期待したい。

 

 

総評

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唯一の弱点と思われていたグランツール総合も昨年、かなりの成績を出したことで、本当に隙のないチームになってしまった。北のクラシックはもちろん圧倒的に強いし、アルデンヌ・クラシックもアラフィリップを筆頭にアンドレア・バジョーリやミケル・フローリヒホノレなど若手が次々と台頭してきそうだ。

そしてエスケープではレミ・カヴァニャという恐ろしき男が現れ、2年前のトレーニー時代にいきなりの逃げ切り勝利を見せてくれたヤニク・ステイムルが今年もオコロ・スロベンキア総合優勝など着実に成長してきているため、これからもさらに楽しみだ。

 

チームメンバーの変化がほぼなかった今年のドゥクーニンク・クイックステップだが、その未来への期待は計り知れないものがある。

今年もきっと、暴れまわり続けることだろう。

 

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