読み:コフィディス・ソルシオンクレディ
国籍:フランス
略号:COF
創設年:1997年
GM:セドリック・ヴァスール(フランス)
使用機材:デローザ(イタリア)
2020年UCIチームランキング:19位
(以下記事における年齢はすべて2021年12月31日時点のものとなります)
【参考:過去のシーズンチームガイド】
Cofidis, Solutions Crédits 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Cofidis, Solutions Crédits 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Cofidis,Solutions Crédits 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
目次
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2021年ロースター
※2020年獲得UCIポイント順。
UCIチームランキングではワールドツアーの中で下から3番目だが、勝利数は最下位タイの2勝。前年11勝のエリア・ヴィヴィアーニを招き入れてのこの結果は、惨憺たるものであった。
前年このチームで調子の良かったヘスス・エラダも2020年は鳴かず飛ばずで、唯一ギヨーム・マルタンだけが、ツール・ド・フランスでもブエルタ・ア・エスパーニャでも存在感を示してくれた。
もちろん、改善はしていかなければならない。しかしそのための今年の新規獲得者が、すでにタレント自体は揃っているはずのスプリンターだったり逃げスペシャリストだったりと、実に「コフィディスらしい」選手たちではあるものの、昨年の課題を埋めるものではないのでは、という印象だ。
とくに昨年強かったけれど(とくに総合争いにおいて)一人になる場面の多かったギヨーム・マルタンを助けてくれる存在はどれくらいいるのか。元ラヴニール覇者のルーベン・フェルナンデスはそれなりに期待できるだろうが、まだまだエースを守る盤石な山岳トレインはイメージができない。
ゲシュケもドリュケールも実力は高い。それぞれアルデンヌ・クラシックや北のクラシックでのエースも期待できるだろう。しかし、やはり彼らを守れる存在がどれだけいるかというと疑問で、結局2021年も、スプリントと逃げでまずは勝利数を稼ぐという方法しかないのだろうか。
逃げという意味ではそのゲシュケやエデ、ワライスなど、才能は揃っている。
まだしばらくは「UCIプロチームらしさ」は脱せないかもしれないが、確かにまずは勝利数、稼いでいかざるを得ない。
注目選手
ギヨーム・マルタン(フランス、28歳)
脚質:クライマー
2020年の主な戦績
- ツール・ド・フランス総合11位
- ブエルタ・ア・エスパーニャ総合14位&山岳賞
- クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合3位
- 世界選手権ロードレース13位
- UCI世界ランキング18位
U23版リエージュ〜バストーニュ〜リエージュで優勝、ツール・ド・ラヴニールでは区間1勝と総合10位。
輝かしき才能をもったフランス人ながら、プロ生活の最初に選んだチームはベルギーのプロコンチネンタルチーム。
ゆえに絶妙にプレッシャーから逃れ、ゆっくりと着実に成績を伸ばしてきた。
2017年から毎年出場し続けたツール・ド・フランスでは総合23位→総合21位→総合12位と確実に伸びてきている。
昨年はついにフランスのワールドツアーチームへと移籍し、その最初のツールで、中盤まで総合3位を守るなど、印象に残る走りを見せてくれた。
前年活躍したティボー・ピノが初日の落車によって早々に脱落を見せていたのに対し、このマルタンが新たなフランスの希望の星として大きな期待を寄せられることとなった。
残念ながらいくつかの不幸も重なり、第13ステージ以降は失速してしまう。
それでも総合11位と、自身最高位でツールを終えることには成功し、さらに続くブエルタ・ア・エスパーニャでは、ピエールリュック・ペリションらチームの万全のアシストを受けながら見事、山岳賞を獲得。
近年流行の急激な台頭ではなくゆっくりと一歩一歩踏みしめながらではあるが、確実に成長しつつある男がこのマルタンである。
今後の課題はチーム力。ブエルタではチーム一丸となって彼の山岳賞を守る動きを見せてはくれていたが、総合争いにおいて最終盤で彼を守る役目を果たせる選手がほぼいない。昨年はヘスス・エラダがイマイチだったのもあるが。
では今年の移籍市場で彼のための山岳アシストを積極的に獲得したのかというと、そういうわけでもなさそう。ルーベン・フェルナンデスにやや期待ができるくらいか。
決して望ましい状況ではないが、まずは一歩一歩、進んでいきたい。
今年の目標はツール・ド・フランス総合TOP10入り。焦ることなく、じっくりと結果を出していこう。
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、32歳)
脚質:スプリンター
2020年の主な戦績
- クラシカ・ドゥ・アルメリア3位
- カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース9位
- ツール・ド・フランス第10ステージ4位
- ツール・ド・フランス第21ステージ5位
- ツール・ド・フランス第1ステージ6位
- UCI世界ランキング161位
ドゥクーニンク・クイックステップに所属していた2020年には年間11勝を記録。その前年にはジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャの両方で最多勝を記録する「ダブルツール」を達成。まさに世界トップスプリンターの1人であった。
しかし、過去数多くの「クイックステップのスプリンター」がそうであったように、昨年、そのクイックステップを飛び出してこのコフィディスに移籍した途端、まさかの年間0勝。
要因は色々あるとは思う。クイックステップのアシスト陣が強すぎたことや、機材の問題、あるいは新チームメートたちとの連携の問題、もちろん新型コロナウイルスの影響などーーただ、それでも0勝というのはあまりにも衝撃的な結果であった。
2021年は、とにかくここからの立て直しの1年となるだろう。そのためには、チームの支えが非常に重要になる。ヴィヴィアーニというのは、2018年当時、チームの期待に沿う結果をもたらせなかったとき、体育座りで涙を流してしまうほどに、繊細な男なのだから。
ヴィヴィアーニの復活は、彼だけの問題でなく、コフィディスというチーム自体の底力が求められる重要事項だ。
そしてそれを、私も強く願っている。デローザのバイクで歓喜のガッツポーズを見せるエリアの姿を。
ルーベン・フェルナンデス(スペイン、30歳)
脚質:クライマー
2020年の主な戦績
- ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ総合8位
- ブエルタ・ア・アンダルシア総合9位
- トロフェオ・ポレンサ~アンドラッチ7位
- トロフェオ・セッラ・デ・トラムンターナ8位
- スペイン国内選手権ロードレース5位
- UCI世界ランキング185位
2013年のツール・ド・ラヴニール総合優勝者。そのときの総合2位はアダム・イェーツ。
すでに2010年のラヴニール覇者ナイロ・キンタナが成功を収めていた時期であり、モビスター・チームも大きな期待をもって2015年に彼を迎え入れた。
2016年のブエルタ・ア・エスパーニャでは第3ステージで区間2位に入り、1日だけとはいえマイヨ・ロホも着用した。
きっとこの男は大成する。そんな期待が、当時の彼には確かに向けられていたような気がする。
しかし蓋を開けてみれば、2021年現在、プロ勝利は1度もなし。ステージレースの総合でも、ツアー・ダウンアンダーにおける総合5位がハイライト。ツール・ド・ラヴニールの「谷間の世代」のような見られ方をするようになり、昨年はUCIプロチームへの「降格」となってしまった。
しかし今年、コフィディスとはいえ再びワールドツアーに舞い戻ることに。しかも、クライマーの層が薄いこのチームへの移籍は、彼にとっては残された少ない時間の中での最後かもしれないチャンスである。
当たり前だが、実力は間違いなくあるはずだ。昨年はヘスス・エラダも不調で、それが続くのであればより大きなチャンスがフェルナンデスには待っている。
まずはギヨーム・マルタンのための最高の山岳アシストを提供すること。そしてあわよくば、彼自身もまた、初の勝利を掴み取りたい。
「成功できなかった男」の、反撃の機会である。
その他注目選手
レミ・ロシャス(フランス、25歳)
脚質:クライマー
元AG2Rの下部育成チーム「シャンベリーCF」 に所属しており、2016年にはAG2Rのトレーニーとして走ってもいる。
しかしそこで正式契約に至ることなく育成チームに留まり、2018年にはデルコ・マルセイユのトレーニーを経て、2019年に同チームでのプロデビューを果たす。同年にはジャパンカップにも参戦。
プロ勝利は未だなし。ただ、昨年のシビウ・サイクリングツアーの山頂フィニッシュで区間4位。短めのTTでも同様に区間4位で総合でも4位。いずれも上にいる3名は、ボーラ・ハンスグローエのグレゴール・ミュールベルガーとパトリック・コンラッド、そしてイスラエル・スタートアップネーションのマッテオ・バディラッティというワールドツアーの実力者たち。
そんな彼らと渡り合った若きロシャスは、可能性をもつ男として期待して良いだろう。
とくにマルタンのための山岳アシストが不足しているこのチームにとって、フランス人の期待できるクライマーという彼の存在は重要なものとなるはずだ。
シュモン・サイノク(ポーランド、24歳)
脚質:スプリンター
元々コフィディスにはヴィヴィアーニ以外にも期待したいスプリンターたちがたくさんいるのだが、彼もまたそんな一人である。
CCCチームがプロコンチネンタルチームとして運営されていたときからの生え抜きで、2019年にはブエルタ・ア・エスパーニャ最終日のマドリードで区間3位。
CCCで最も将来が期待できる若手スプリンターとして注目していただけに、その行き先が気になっていた。
ヴィヴィアーニの新たな発射台候補? しかし今のところ、そんなイメージは彼にはない。むしろ、1クラスとかの小さなレースで良いので、エースとして出場させて、勝利の味を味わわせてほしい。
とはいえ、その候補となる選手も沢山いるのがこのチームなのでそんなに自由に走らせてもらえるかは不明だが、特別に手をかけて育てるだけの価値がこの男にはあると思っている。
ちなみに、CCCチームは周知の如く消滅したわけだが、その育成チームであったCCCディヴェロップメントチームはなんとか残される予定であった。それが、やはりCCC自体の業績悪化を受けて、急遽運営ストップ。今年は活動を停止することが決まった。
この情勢下仕方のないこととはいえ、これでポーランドの若き才能の輩出に影響が出ると思うとやるせない。
なお、このチームで昨年、2クラスと国内選手権で計8勝を稼ぎ出していたのだが、そのうち7勝を稼ぎ出したStanisław Aniołkowskiという選手は今年ビンゴール・ワロニーブリュッセルに昇格している。コフィディスとは全く関係ないが、注目してみて
ピエールリュック・ペリション(フランス、34歳)
脚質:パンチャー
ラ・ポム・マルセイユ(現デルコ)からブルターニュ・セシェ(現アルケア・サムシック)、そしてこのコフィディスへ。
フランスのコンチネンタル〜プロコンチネンタルを渡り歩いてきた生粋の「逃げ屋」。
そんな彼が、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでは、エースのギヨーム・マルタンに山岳賞ジャージをもたらす重要な役割を果たした。
とくに、マルタンがティム・ウェレンスとの山岳賞争いに実質的な決着をつけることとなった第11ステージ。
この日は、ウェレンスを含んだ逃げができたときに、コフィディスがチーム一丸となって集団を牽引し、マルタンをその逃げに向けて発射させた。
このとき唯一ウェレンスら逃げ集団内に入り込んでいたのがペリションだった。
コフィディスオールチーム体制で牽引するメイン集団がウェレンスたちとのタイム差を縮めていく中、先頭からウェレンスが単独でアタック。
そのときにペリションはしっかりと食らいつき、さらにローテーションを徹底的に拒否。逃げ切ろうとするウェレンスに対する重し役となり、結局メイン集団はこの2人を飲み込むこととなる。
このあとはマルタンが次々と山岳賞ポイントを先頭通過し、早めに動きすぎたウェレンスは早々に脱落。
この日、マルタンは山岳賞獲得に王手をかけることとなった。
ペリションは確かに、チームが大きな成果をこのブエルタで持ち帰るうえでの、重要な役割を果たしたのである。
もちろん、彼はこれまで同様、逃げ屋であり山岳アシストで居続けることだろう。
彼が「エース」として走ることはおそらくないだろうし、残りの選手人生で得られる勝利はもしかしたら1回か2回か、その程度かもしれない。
それでも、私はシモン・ゲシュケでもなく、ジャンピエール・ドリュケールでもなく、また未知の可能性をもつ若手たちではなく、この男をこのチーム最後の注目選手として選出する。
良きチームとは、この男のような存在が欠かせない。彼自身は勝利することがなくとも、チームに確かに貢献する、縁の下の力持ち。彼のような存在が、自転車ロードレースを面白くしてくれるのだ。
だからこそ、今年は彼にチャンスがもたらされてほしい。昨年はブエルタ・ア・エスパーニャで区間7位が一回だけあった。一昨年はツール・ド・フランスで区間8勝が1回だけ。
いずれも、勝利まではまだまだ遥か遠い。それでも、彼が運命の宝くじを引き当てて、栄光とともにフィニッシュラインにやってくる姿をぜひ、見てみたい。
それこそゲシュケが2015年のツール・ド・フランスでそんな勝利を掴み取り、インタビューで涙を流したときのような、自転車ロードレースで最も美しい光景の1つを見ることができるような気がするから。
総評
基本的には苦しい戦いを今年1年も過ごすことになると思われる。スプリントもポテンシャルでの評価であり、昨年と同じ不調にヴィヴィアーニが苦しむのであれば、上記グラフほどの評価には到達しない。
爆発する可能性があるとすれば山岳エスケープ。新たに加わったゲシュケやワライスなども駆使して、大きな勝利をどれだけ獲得できるか。
あとはマルタンの総合での飛躍。そのためには昨年不調だったヘスス・エラダや新加入のフェルナンデス、ロシャスなど、チームの協力が欠かせない。
現状は不安が大きい。ゆえに驚くべき爆発を期待したい。そんなチームだ。
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