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UCIロード世界選手権2022「ウロンゴン」プレビュー

 

今年もまた、「世界最強」を巡る戦いが幕を開ける。

今年の舞台は2010年以来2度目の世界選手権の舞台となるオーストラリア。その東岸サウスウェールズ州に位置する港町「ウロンゴン」で、スプリンターにもパンチャーにももしかしたらクライマーにすら可能性のある激しい戦いが繰り広げられる。

 

今回はその初戦個人タイムトライアルから男女ロードレースまで、とくにJsportsでライブ中継のある4つのレースをピックアップしてプレビューしていこうと思う。

※年齢表記はすべて2022/12/31時点のものとなります。

 

過去の世界選手権について以下を参照

UCIロード世界選手権2017 総括 - りんぐすらいど

バルベルデはなぜ勝てたのか、彼以外はなぜ勝てなかったのか――UCIロード世界選手権2018 男子エリートロードレース - りんぐすらいど

UCIロード世界選手権2019男子エリートロードレース――「生き残り」続けた男が栄冠を手にした瞬間 - りんぐすらいど

UCIロード世界選手権2020男子エリートロードレース アラフィリップの勝利の理由と、ファンアールトの敗北の理由 - りんぐすらいど

5回のアタックが掴み取った勝利――「王者」にして「挑戦者」であり続けた男ジュリアン・アラフィリップの世界選手権とキャリアを振り返る - りんぐすらいど

 

目次

 

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9/18(日) エリート個人タイムトライアルのコースについて

今年の世界選手権初日となる9/18(日)に開催される女子エリート個人タイムトライアルと男子エリート個人タイムトライアル。

こちらは大会史上初、男女ともに同じコースで開催されることとなる。

シドニーから南へ70㎞の位置にあるウロンゴンの中心市街からスタートし、ロードレースで使用することになるマウント・プレザントに行くことはなく市街地の中だけを駆け巡るコースレイアウト。

途中、登坂距離700m・平均勾配6.7%という「マウント・アスリー」という登りを含みはするものの、その頂上の標高はわずか53mであり、山というよりは街中のちょっとした上り坂といったところか。

合計2周する全長34.2㎞の総獲得標高は312m。

基本的には純粋なTTスペシャリスト向けのオールフラットレイアウトと見て良いだろう。

なお、9/19(月)開催のU23男子TTおよび20日(火)開催のジュニア男子TT、そして21日(水)開催のミックスドリレー・チームTTは北東端のループを除いた全長28.8㎞*1

9/20(火)開催のジュニア女子TTは上記の28.8㎞コースを2周ではなく1周する14.3㎞のコースとなっている。

 

 

エリート男女個人タイムトライアル注目選手

レースレポートはこちらから

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それではこのエリート男女個人タイムトライアルにおける注目選手を確認していこう。

 

まずは女子。しかし女子エリートについてははっきりとこの3強なのではないかと思う。

すなわち、2013年と昨年の王者エレン・ファンダイク(オランダ、35歳)、昨年・一昨年と2年連続で2位でさらに言えば東京オリンピックですら2位というシルバーコレクターのマーレーン・ロイッセル(スイス、31歳)、そして2017年・2018年の王者で昨年の東京オリンピック個人TTの覇者であるアネミーク・ファンフルーテン(オランダ、40歳)。昨年も表彰台を独占している3名という面白みのない予想だが、昨年もこの3名が24秒以内に並び、4位のアンバー・ネーベンが1分24秒差と、圧倒的な差をつけている。そしてネーベンと5位のリサ・ブレナウアーはどちらも今年は出場しない、となると・・・今年も結局この3名による優勝争いとなるんじゃないかとは思ってしまう。

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その中でこの3名以外で注目すべきは、昨年の6位で今年の国内選手権2位、今年のヨーロッパ選手権個人タイムトライアルでも6位といった成績を残しているジュリエット・ラブース(フランス、24歳)。ツール・ド・フランス・ファムでも総合4位と今最も飛躍しているフランス人ライダーの一人である彼女が、この世界選手権TTでも爪痕を残せることができるか。

また、昨年の東京オリンピックロードレースで鮮烈なる独走勝利を成し遂げたアンナ・キーセンホーファー(オーストリア、31歳)も本職はTT職人。今年のヨーロッパ選手権でも5位と、しっかりと世界の舞台で結果を出しており、注目だ。他のトップライダーと違ってこのTTにすべてを賭けられるだけに、驚きの結果を再び出すこともありうるだろう。

その他、こちらも今年飛躍しているクライマーのクリステン・フォークナー(アメリカ、30歳)は、今年のツール・ド・スイスの25㎞個人タイムトライアルで優勝。ジロ・デ・イタリア・ドンナのプロローグでも優勝するなど可能性を持っている選手であり、上位入りに期待はできるだろう。

 

 

続いて男子である。今年と昨年の1クラス以上のすべてのTTレースの結果を集計したデータが以下の通りである。TT合計(※)の値のTOP10を紹介する。

※TT合計は、平坦・丘陵・山岳および短距離・中距離・長距離のそれぞれのポイントを合計したうえで、とくに平坦と長距離の値に傾斜をかけて算出したポイント。

 

やはり過去2年の覇者フィリッポ・ガンナ(イタリア、26歳)が圧倒的実績を誇る。直近のレースは1ヵ月前のドイツ・ツアーでそこではプロローグでしっかりと勝利。ただしヨーロッパ選手権TTではビッセガーとクンに敗れての3位。ツール・ド・フランスでも不運もあったが4位と5位と、決して「完璧」ではない。

とは言え、狙ったレースはしっかりと仕留めてくる信頼感もガンナの強さ。今大会最大の優勝候補であることは変わらない。

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そんな中、殻を破りたいのがシュテファン・クン(スイス、29歳)。彼もまた、いつだって世界の頂点を掴み取ってもおかしくないポテンシャルを持つ男だが、その域に達するまでに今一歩、二歩届かずにいる。昨年は5位。一昨年は3位。ヨーロッパ選手権TTでは昨年・一昨年と優勝しているが今年は2位。

今年はパリ~ルーベでついに表彰台を獲得するなど、クラシック方面では殻を一つ破った。本職のTTでは果たして。

 

但し、勢いという意味ではこちらがより上位かもしれない。ブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝を果たしたばかりのレムコ・エヴェネプール(ベルギー、22歳)。元々TTの方が得意とすら言えるタイプで、ネオプロ初年度の2019年には世界選手権TTで驚異の2位。昨年も3位と、いつアルカンシェルを獲ってしまっても何らおかしくはない。ブエルタでの疲れがどれだけ影響を及ぼすかだが、むしろその勢いを維持して勢いで獲ってしまってもおかしくはない。

若手の才能という点ではタデイ・ポガチャル(スロベニア、24歳)にも注目。ツール・ド・フランスでの悔しい敗北後、クラシカ・サンセバスティアンもブルターニュ・クラシックもイマイチな走りを見せていた彼が、直近のグランプリ・シクリスト・ド・モンレアルで見事勝利。調子を取り戻しつつあることは間違いないだろう。

本命はロードレースの方だろうが、そのウォーミングアップとしてどこまで結果を叩き出せるか楽しみだ。

あとは、突如ガンナを倒したりもする驚異のポテンシャルを見せたかと思えば、落車やパンクで勝機を失う粗削りな部分もあるシュテファン・ビッセガー(スイス、24歳)やフランス最強のTTスペシャリスト、レミ・カヴァニャ(フランス、27歳)らの好成績にも期待である。

 

 

9/24(土)・9/25(日) エリート男女ロードレースのコースについて

世界選手権の最終週末、9/24(土)と9/25(日)に開催される男女エリートロードレースのコースについては、戦いの主要舞台となる「シティ・サーキット」の周回数が異なるだけで基本的には同じコースを使用すると考えていい。

スタート地点となる内陸のへレンズバラの街から海沿いに南下。個人タイムトライアルの舞台となったウロンゴン市街地に入り一度フィニッシュラインを越えたあとに、1周34.2㎞の「マウント・キーラ周回」に入る。

今大会最標高地点である標高473mに到達する「マウント・キーラ(登坂距離8.7㎞、平均勾配5.7%)」。スタートから42㎞地点でその頂上を通過することになるが、フィニッシュまでは当然遥かな距離が残っており、男女ともにここはあくまでもただの「ウォーミングアップ」となるだろう。

本当の勝負はその後に控える「ウロンゴン・シティ周回」。1周17.1㎞のこの周回コースを、女子は6周、男子は12周こなすこととなる。

基本的には個人タイムトライアルで使用したコースほぼそのまま踏襲するが、ポイントとなるのが追加された登り「マウント・プレザント」。

登坂距離1.1㎞・平均勾配7.7%・最大勾配14%。10%以上の厳しい勾配区間が複数存在する決して難易度の低くない登り。

もちろん、1個1個は登れるスプリンターであれば十分に乗り越える程度のものではあるが、それが何個も何個も登場した末に、最後の最後、どれほどのライダーがまともな状態で先頭に残っていられるか・・・。

女子はこのシティ・サーキットを6周し、総距離は164.3㎞。総獲得標高は2,433m。

 

男子はこのシティ・サーキットを12周し、総距離は266.9㎞。総獲得標高は3,945mに達し、それこそリエージュ~バストーニュ~リエージュに匹敵するほどの難易度を誇ると言っても過言ではないだろう。

 

 

果たして、スプリンターにチャンスはあるのか? 登れるスプリンターやパンチャー、場合によってはリエージュ~バストーニュ~リエージュやクラシカ・サンセバスティアンで活躍するようなクライマータイプにもチャンスがありそうな今回のウロンゴン世界選手権。

昨年のフランドル世界選手権も、誰にでもチャンスのある絶妙で完璧なコースレイアウトであり、実際に近年でも特に激しい名レースが繰り広げられていた。

今回のウロンゴン世界選手権も、それと同等の、あるいはそれ以上のドラマが繰り広げられるかもしれない。

 

それでは、続いて注目選手を見ていこう。

(以下はまだ未完成ですが、近日中に作成し公開させていただきます!)

 

 

エリート女子ロードレース注目選手

アネミーク・ファンフルーテン(オランダ、39歳)

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すでに数多くの伝説を創り続けてきたが、今年は初開催のツールと合わせ、ジロ、ツール、ブエルタの3大グランツールをすべて制するという、男女ともに見ても前代未聞の大偉業を成し遂げることとなった女王。

だが、そのveryveryveryハードなスケジュールが祟ったのか、個人タイムトライアルでは期待されながらも全く力を出せない状態に陥る。ロードレースまでにそれを戻すことはできるか。

得意の武器は独走。スプリントはそこまででもないし、スプリントになればチームメートのマリアンヌ・フォスの出番だろうから、2つ前もしくは3つ前のマウント・プレザントあたりで飛び出して独走に持ち込んでしまえば誰も手がつけられなくなるだろう。2019年のヨークシャー世界選手権で勝利したときもそのパターンだった。

あとは、昨年の東京オリンピックも世界選手権もイマイチうまくいかないオランダチームがしっかりとチームワークを見せられるかどうか。

 

マリアンヌ・フォス(オランダ、35歳)

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過去3回の世界王者の経験をもつ生ける伝説。今年は初開催のツール・ド・フランス・ファムでもしっかりと勝って衰えない強さを見せつけた。

今大会くらいの難易度のレースこそ彼女の最大の得意分野である。しっかりと最終盤まで生き残りスプリントで勝負することになれば最も勝率の高い選手であることは間違いないだろう。

だが、昨年はそういったパターンでイタリアチームにまんまとしてやられた。どこかちぐはぐさが残っていたオランダチームに対し、最後まで力を貯めながら存在をかき消して、最後はエリーザ・ロンゴボルギーニのリードアウトで放たれたエリーザ・バルサモという見事なコンビネーションの前に。

今年はどうなる? 昨年は名指しで批判されて涙を流したデミ・フォレリンが今年はリードアウターとしてフォスを助けられるか? エースばかりが集まるチームならではの苦悩につけこむチームがまた現れるか?

また、基本的には生き残れる難易度ではあると思うが、それでもやっぱり総獲得標高2,433mは怖い。クライマー同士の激しい打ち合いが始まると遅れがちのフォス、今大会は最後まで残れないというパターンもありうるだろう。

 

エリーザ・バルサモ(イタリア、24歳)

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昨年は見事なコンビネーションだった。実績だけで言えばより上位のエリーザ・ロンゴボルギーニが最後の最後で素晴らしいリードアウトを見せて放ったバルサモが、女王フォスを打ち倒した。

そして、それまでも強かったは強かったが世界トップクラスというほどでもなかった印象のバルサモが、アルカンシェルジャージを手に入れた途端に大ブレイク。それこそ男子のマッス・ピーダスンのように。今年は10勝。トロフェオ・アルブレッド・ビンダ、クラシック・ブルッヘ~デパンヌ、ヘント~ウェヴェルヘムのワールドツアー3連戦全勝は圧巻であった。直近のチャレンジブエルタ最終日マドリード決戦でも、ロッタ・コペッキーとマルタ・バスティアネッリを薙ぎ倒しての勝利で、万全の状態で入り込めている様子だ。

もちろん、フォス同様、最後まで残れるかどうかが鍵。残れなかったときはサバイバルな展開の中でエリーザ・ロンゴボルギーニが抜け出して勝利を狙いたいところだが、その場合はファンフルーテンが最大のライバルとなるだろう。

 

ロッタ・コペッキー(ベルギー、26歳)

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シーズン序盤は手がつけられない強さだった。アネミーク・ファンフルーテンの激坂アタックに食らいついて最後これを差したストラーデビアンケは男女合わせても今年のベストレース候補であり、ロンド・ファン・フラーンデレンでは再びファンフルーテンを下した。ただ、シーズン後半ではその勢いはやや減じ、もちろん上位には余裕で入り込んでいくがなかなか勝ちきれない状態が続いた。

とはいえ、スプリント決着になりうる今大会、やはり優勝候補最右翼の一人であることは間違いない。ストラーデビアンケでの走りを見ても、フォスやバルサモよりも登れ最後まで生き残る可能性はより高いと言えるだろう。

実力はあるのに意外とビッグレースでの勝利は決して多くないコペッキー。世界王者という称号は、彼女にとって決して縁遠い存在ではないはずだ。

 

アレクサンドラ・マンリー(オーストラリア、26歳)

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地元オーストラリアから1名、ロマン枠で選出。もちろん、普通に考えればオーストラリアチームのエースはTTでも絶好調でリエージュ~バストーニュ~リエージュ2位のグレース・ブラウンだろう。そうでなければ同じく丘陵系レースでの実績の多いアマンダ・スプラットあたりか。

しかし、このマンリーは今年一気に飛躍した間違いなく勢いのある選手の1人だ。今年の実績で言えばブラウンには敵わずともスプラットよりは明らかに上。スプリント勝負にさえ持ち込めればブラウンよりも確実に勝負ができる存在だ。

まあ、とはいえかなりピュアスプリンターよりなので今回のコースではさすがに脱落してしまうとは思う。そこで地元パワーで奇跡的に生き残ることができたとき、衝撃の瞬間を私たちは目にすることになるかも、しれない。

 

 

エリート男子ロードレース注目選手

ジュリアン・アラフィリップ(フランス、30歳)

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一昨年・昨年と世界選手権連覇。ペテル・サガンの史上唯一の世界選手権連覇への期待がかかる。今年もまた、彼向きのパンチャータイプコースであることも、その期待に拍車をかける。

とはいえ今年は彼にとって不運の年。リエージュ~バストーニュ~リエージュで落車して肩甲骨と肋骨2本を骨折する大怪我を負い、国内選手権には出場するがツール・ド・フランスは回避。ブエルタ・ア・エスパーニャで本格復帰するも再び落車し、骨折は見つからなかったものの右肩を脱臼してリタイアを喫することとなった。

そんな状態での世界選手権参戦。彼の口からは「100%ではない」「チームメートの1人が勝てば満足する」「唯一のリーダーではない」などの言葉が出てくる状態である。

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一方で、昨年も「負ける覚悟ができていた」とも。今年も昨年同様、プレッシャーは感じていないという。その気楽さが、彼に3度目の虹をもたらす可能性は十分にあるだろう。

チーム体制としてはアラフィリップ以外にクリストフ・ラポルトフロリアン・セネシャルカンタン・パシェ、ロマン・バルデパヴェル・シヴァコフブルーノ・アルミライルブノワ・コスヌフロワヴァロンタン・マデュアス。昨年は最終盤までマデュアスとセネシャルを残し、マデュアスに登りでの最終発射台役を任せ、セネシャルはアタックしたアラフィリップが捕まえられたときのスプリント役という役割であった。

今大会はセネシャルに加えてラポルトがそのフィニッシャーの役割を果たしつつ、アラフィリップを好調コスヌフロワやマデュアスが支える体制になるだろうし、状況によってはコスヌフロワらが代替エースとしての役割をハスことになるだろう。

 

ワウト・ファンアールト(ベルギー、28歳)

レムコ・エヴェネプール(ベルギー、22歳)

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世界最強コンビが爆誕した。昨年のフランドル世界選手権では直前にエディ・メルクスから「チームプレーができない」と批判されたエヴェネプールは、まるで意地を見せたかのように本番で「チームプレー」に徹した。すなわち、残り52㎞からひたすら小集団の先頭を牽引し続けるエヴェネプール。だが、同じくアシストの立場であるアンドレア・バジョーリに先頭交代を要求することなくひたすら牽引し続けた彼は残り26㎞で力尽きて脱落。それは彼の強さを印象付けると共に、その後のベルギーの敗北を招く「自滅」だったとすら言えるかもしれない(一方、この超ハイペース牽引のおかげで危険な残り3~40㎞地点からのアタックを防げたという面もあるだろう)。

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エヴェネプール脱落後、ベルギーチームはファンアールトとジャスパー・ストゥイヴェンによるダブルエース体制で勝利を狙うこととなったが、母国開催ということによる重圧も手伝ったのか、ひどく消極的なレース展開の結果、いいところなしに終わってしまう。

今年はその反省を生かした走りができるか。とにかく、アグレッシブに。そして、ツールで圧倒的な走りを見せたファンアールトとブエルタ・ア・エスパーニャ総合優勝で勢いに乗るエヴェネプールとの最強ダブルエースが今年は実現することを直前の記者会見で宣言された。

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気になるのはエヴェネプールがブエルタの疲れを引きずっているかどうか。とはいえ、直前の世界選手権個人タイムトライアルで3位に入りしかもそれについても悔しさを見せる彼の姿からは、全く問題ないという感想しか出てこない。

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セオリーは最後から2番目か3番目あたりの(あるいはもっと前の)登りからエヴェネプールが得意の独走を(今年は遠慮することなく)ぶちかまし、これを捕まえられたときはファンアールトがスプリントで他を圧倒するというストーリーだ。

その他のメンバーは今年ユンボ・ヴィズマで最強のアシストぶりを発揮したネイサン・ファンフーイドンクイヴ・ランパールトクエンティン・ヘルマンススタン・デウルフジャスパー・ストゥイヴェンピーター・セリー。アシストも豊富でバランスの良い組み合わせ。ファンアールト以外のフィニッシャーとしてレイトアタックの名手ストゥイヴェンに、ファンアールトをスプリントで倒したこともあるヘルマンスなど、切れるカードも多い。

 

タデイ・ポガチャル(スロベニア、24歳)

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ツール・ド・フランスでのまさかの敗北。その後出場したクラシカ・サンセバスティアン、ブルターニュ・クラシックともに不調でポガチャルも人の子か、今年はもうだめかな・・・と思っていたが――

世界選手権前哨戦、グランプリ・シクリスト・ド・モンレアルにて、小集団内でのスプリントでワウト・ファンアールトを真正面から打ち破っての勝利というまたまた驚かせてくれる勝利を繰り出したポガチャル。

しかもこれが「今回のウロンゴンでスプリンターたちを疲れさせて勝つ」というシミュレーションであり、それを成功させたというのだから――ポガチャル、かなりやる気満々である。気合・実力・実績ともに今大会の最大の優勝候補とすら言えるかもしれない。

www.cyclingnews.com

 

なお、難易度がそこまででもない登りでスプリンターたち相手に引き千切って勝つというプランは今年のミラノ~サンレモでも試されていたがこちらは失敗していた。たがこっちは最後の最後にようやく登りが登場するミラノ~サンレモだからこそ失敗したのであり、それを受けてのモンレアルで成功したことは、彼にとっての大きな自信となっているだろう。

プリモシュ・ログリッチもマテイ・モホリッチも出場せず、ヤン・トラトニクとドメン・ノヴァク、ヤン・ポランツ以外はコンチネンタルの選手たち。

ほぼ完全に単独エース。最終盤で生き残れるのはポガチャルだけというのは容易に想像がつくが、そこでその圧倒的な強さを最後の最後に示すことができるだろうか。

 

マチュー・ファンデルプール(オランダ、27歳)

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恐ろしいほどに強く、そして未知数な男。今年はロンド・ファン・フラーンデレンで「大人な」姿を見せて勝利し、アムステルゴールドレースでは同じ理由で敗北した。ジロ・デ・イタリアでは自身とチームと両方の勝利に貢献しながら連日逃げに乗り聴衆を沸かせた。クラシックとツールと両方で大きな成果を残すという、ペテル・サガンでも無理と言わしめた偉業を成し遂げたうえでツールにも出場したがさすがにガス欠だった。このことについて「人間の体は機械ではない」とコメントしているが、いや十分に機械みたいに凄いから・・! 8月末にレース復帰してからは一気に3レース連勝するなど、相変わらず絶好調ぶりを見せつけている。

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「勝つのはとても難しいレースだ」など控えめなコメントが目立つファンデルプールだが、まあ実際過去彼と世界選手権との相性は決して良くはない。2019年の初出場時は大いに期待されたが雨に濡れ最終盤で大失速。2020年は背中のけがで欠場し、2021年大会では東京オリンピックでの落車の影響も残っていたのだろうが8位と(彼への期待に比べると)平凡な結果に終わった。

ゆえに、果てしなく強いものの、コースにも合っているように感じるものの、ひたすら未知数。勝っても負けても納得できる男だ。

そんな彼と共に走るチームメートはバウケ・モレマワウト・プールスヤン・マースタコ・ファンデルホールンパスカル・エーンクホーン、そしてパリ~ルーベ覇者ディラン・ファンバーレ。とくにファンバーレは昨年の世界選手権でも2位。ファンデルプールがかき回すなか、虎視眈々と最後に勝利を狙いうる男だ。

 

マイケル・マシューズ(オーストラリア、31歳)

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とはいえやはり最後はロマン枠。オーストラリアが放つ最終兵器、マイケル・マシューズ。2009年のカデル・エヴァンス以来2人目のオージー世界王者が誕生なるか。そして、開催国の選手が優勝するのは2008年大会のアレッサンドロ・バッラン(イタリア)以来となる。

しかし一方でマシューズは2010年のジーロング世界選手権ではU23部門ロードで優勝してもいる。「母国で勝利する」素質は十分ある男だ。

壁はものすごく大きい。上記の通り、怪物ばかりの今大会。まずは彼らの猛攻撃をすべてかいくぐり間隙をついて抜け出すか、最終盤スプリントでワウト・ファンアールトらを打ち破って先頭でフィニッシュラインを通過することができるか。

だが、今年のツール・ド・フランスでも5年ぶりのツール勝利を飾った勢いのあるこの男には、決して不可能なことではない。ウロンゴンのフィニッシュラインで両手を上げるキラキラ・マシューズの姿は、決して非現実的なものではないように思えるのだ。

チームメートはニック・シュルツルーク・プラップベン・オコーナージャイ・ヒンドレーハインリッヒ・ハウッスラールーク・ダーブリッジサイモン・クラーク。結構クライマーが多い印象で、アシストが十分に機能する布陣とはあまり言えないかもしれない。

とはいえ、同じように非常に厳しいレイアウトが用意される国内選手権ロードレースでも多大なる実績を持つダーブリッジの存在はマシューズにとっても頼もしいはず。

昨年の国内選手権はまさにダーブリッジ劇場だった。

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錚々たる顔ぶれの中では決して優勝候補筆頭とは言えないだろうが、実現したらそれはとてもとても美しい瞬間になるはずだ。

頑張れマシューズ。

 

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*1:正確にはミックスドリレーはスタート・フィニッシュ地点に微妙な違いがあり全長28.2㎞(男女それぞれ14.1㎞)である。

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