りんぐすらいど

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UCIロード世界選手権2017 総括

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北の大地ベルゲンで行われた、2017年のUCIロード世界選手権。

いくつかあるレースのうち、自分がリアルタイムで見た各レースに関して簡単に振り返る。

 

 

 

男子チームタイムトライアル

男女ともにチーム・サンウェブが勝利

サンウェブというチームは、確かに個人TTで速い選手を揃えてはいるが、圧倒的とまではいかないし、チームTTとなると正直パッとしない印象だった。

実際に昨年は7位。その前は5位だけど、グランツールのTTTでも決して上位に来るようなチームではなかった。

 

だが、今年は6月のハンマーシリーズでの優勝、そしてブエルタでのTTTでもBMC、クイックステップに次ぐ3位と、俄かに強さを増してきていた。極めつけの、今大会の優勝。例年、クイックステップかBMCかオリカか、といった感じでワンパターン化していたチームTTでの覇権争いに一石を投じた。

勝因は、既に各メディアでも語られているように、勝負どころのビルケルンズバッケンを6名全員で越えることができたこと。すごく単純に言えば、文字通りチーム力があった、と言えるのであり、それは今年のブエルタ、ハンマーシリーズ、ツールすべての躍進に共通するキーワードであった。

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来年もこのチーム力を維持できるか?

 

 

U23男子個人タイムトライアル

自分が注目していたキャスパー・アズグリーンは完全に不調に沈み、もう1人注目していたネイルソン・パウェルスはいい感じだったのに最後、メカトラで沈んだ。

結果、残ったのはアズグリーンと同じデンマーク人のミケル・ビョーグ。今年19歳。ようやくU23カテゴリに入ったばかりの超新星である

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ちなみに国内選手権でもヨーロッパ選手権でもアズグリーンにわずかに敗れており、今回リベンジを果たした形だ。

 

アジアチャンピオンのオノデライダーは43位。

前半飛ばし過ぎたのか、最後はヘトヘトだったっぽく、実力もそうだが経験の差も出てしまったか。

世界の壁は厚い。

 

 

エリート男子個人タイムトライアル

前評判通り非常に面白い展開となった。

最後の登りはバイク交換前提かと思いきや、序盤は交換しなかった選手の方がむしろ成績が良いという事態に。

九十九折りが激しく、テンポで登れるタイプが有利かと思えば、意外とペース走行を得意とする選手の方が良い成績を出すなど、予想を覆す事態が頻発した。

 

そんな中、勝利した3名は、これがグランツールの表彰台だと言われても違和感のない面子。というか、こんな表彰台になるようなグランツールって、ぜったい見てみたい! デュムランがフルームに勝ち、しかもログリッチェが表彰台とか! ごはん3杯はいけますよ!

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ちなみに最後の登りを最も速く走ったのはログリッチェらしい。ノーマルバイクに交換した、というのもあるが、やはりこれからのさらなる成長が楽しみになる選手だ。次に速かったのがTTバイクのデュムランだというから、彼の底知れなさも相変わらずである。

 

なお、勝てなかった選手たちの中でも注目したいのがアレクシー・グジャール。終盤までいいペースで走っており、まさかのメカトラで失速した。今まではエスケープスペシャリストといった感じだったが、独走力はもとよりある選手。TTでの活躍に、今後は期待したい。

ケルデルマンも、ブエルタの調子の良さを引き継ぐ好走。そしてデニスも、落車さえなければ表彰台も狙えていた走り。やはりこの男も、今後のグランツールの台風の目となりそうだ。

来年の個人タイムトライアルも、今年ほどではないにせよ山がち。再びオールラウンダー同士の火花が散る様が見られる見ごたえのあるものとなりそうだ。

 

バイク交換ゾーンを爆走していくトニマルは笑った。

 

 

U23男子ロードレース

昨年から? 今年から? ワールドツアーチームに所属する選手もU23カテゴリに参加できるようになったことで、雰囲気も変わったのだろうか。今回ワンツーを獲った2人はいずれもワールドツアーチーム所属ですでに活躍を見せている選手だ。

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それがゆえに・・・と言ってはあれだが、個人的には少々残念だったな、という印象。ラヴニールで活躍したパヴェル・シヴァコフの走りは良かったが、期待していたハルヴォーシュン、ローレス、ペダーセンらはイマイチ目立たず。

 

 

エリート女子ロードレース

オランダチームが、教科書通りのチームプレイを見せつけ、他を圧倒した。まさに、手も足も出ないとはこのことか。男子エリートのベルギーチームなどは見習ってほしい、と思いつつも、まあ実力差がはっきりと出やすい女子レースならでは、の展開とも言えるだろう。

ちなみに女子タイムトライアルの優勝者はアンネミーク・ファンフリューデン。まあこれは、あまりにも順当。彼女はロードでも存在感を示し、それがゆえに他チームが手を出せず、シャンタルの勝利が決まったのだ。まさに王者。

 

その意味で、「最強チーム」は勝ったけど、「最強選手」が勝ったわけではなかったのがこの女子レース。実にロードレースらしい結果だ。

優勝者シャンタルは涙を流しながらゴール。

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その姿を見れただけでも、勝てなかったファンフリューデンは十分満足だろう、と勝手に妄想してみる。

 

 

エリート男子ロードレース

さて、ジュニアやU23、女子のレースを見続けていると、このエリート男子というカテゴリが、いかに完成された選手たちの集まりなのか、ということが良くわかる。序盤から無駄にアタック合戦が繰り返されることなく、落ち着いてレースは展開。そして最後も、逃げ切りを許すことなく、ギリギリだけれどもしっかりと捕まえての集団スプリント。まさに芸術的なレース展開。これが、本当のプロフェッショナルの走りなのか。

 

非常に面白い展開だった。コースが見事だった、とも言えるだろう。勝負所ははっきりしている。サーモンヒル。ただしそれもゴール10kmも手前だ。5km手前から2kmを過ぎるあたりまで、超鋭角カーブが連続するのもアタックを誘発していて良い。最後の瞬間まで誰が勝つのか分からない、誰が勝ってもおかしくない、そんな展開だった。

 

そして、本当にあなたが勝つのか、という終わり方だった。

今大会、本当に一瞬も姿を途中現さなかったペテル・サガンが、最後の最後でするっと前に飛び出てきて、そのまま勝利を掻っ攫った。チームとしての動きもほとんどなかったが、最後の最後に貫禄を見せつけた。

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意外ではなかった。またか、という思いともまた違った。1回目の勝利は非常にサガンらしい勝ち方だった。2回目の勝利は、ボーネンとその年絶好調だったカヴェンディッシュという、世界選手権優勝経験者を力でねじ伏せた圧巻の勝利だった。3回目となる今年は、それらの勝利ともまた違う勝利だった。新しいサガン。ガッツポーズのない勝利という点でも、新しかった。

 

実にクレバーな勝ち方だったとも思う。彼はずっと、集団の後方に控えていた。その存在を示すことがほとんどなかった。そして先頭でアタックが頻発する中、(一応アタックするそぶりは見せたようだが)基本的には彼から勝負は仕掛けなかった。

ひたすら待ちの姿勢。彼にしては珍しい。だが、3年連続優勝のかかった彼が、いつも通り徹底的にマークされて勝利を逃してしまうのを避けるためには、この戦術が確かに必要なことだったのだ。

 

結果として、最後の最後に後方から飛び出てきてのスプリント勝利。ギリギリだったが、彼は賭けに勝った。これは、本当に実力のある選手にしかできない芸当だ。まるで今年のツールのキッテルのようだった。

3回目にして、またも新しいサガンを見せてくれた。だからこそ彼も、3回目だけど激しい、まるで初めてであるかのようなはしゃぎっぷりを見せたのだろう。

サガンはまだまだ成長している。これからも更なる進化を見せる彼を、ずっとずっと追っていきたい。

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マイケル・マシューズは本当に悔しそうだった。

来年リベンジだ!*1

 

 

 

 

 

 

*1:え? クライマー向け? まあ、マシューズならいけるでしょ笑