りんぐすらいど

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獲得UCIポイントで見る 2020年シーズン開幕前ワールドツアーチームランキング

 

2019年の年末から年始にかけて、2020年シーズンのワールドツアーチーム全19チームをプレビューしてきた。

www.ringsride.work

 

その中で集計したデータをいじりながら、ふと思いついたことがある。

 

2019年にそれぞれの選手が獲得したUCIポイントをもとに、2020年ロースターでの各チームの「合計UCIポイント」を算出すれば、適正な2020年シーズン版UCIワールドツアーチームランキングができるのでは?

 

もちろん、UCIポイントという指標はあくまでも指標の1つ。問題点がないわけではないポイント算出方法ではあるが、数少ない客観的なデータであることは間違いない。

2019年UCIワールドツアーチームランキングはあくまでも「2019年シーズンにおけるランキング」にすぎない。

今年は大型移籍も多くあったため、改めて、移籍を踏まえたうえでの「チームランキング」を、ぜひ確認していただきたい。

 

調子に乗って、合計値だけでなく、北のクラシック・アルデンヌ系クラシック・そして3代グランツールでもデータを集計し、算出。

結構苦労したので、少しでも皆さんの参考になれば、幸い。

 

 

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合計編

まずは単純に、各チームの全選手の獲得UCIポイントの合計でランキングしてみた。

これは上記のチームガイドを作成した段階で集計しているので、そこまで大変ではない。

次のような表にまとめてみた。 

f:id:SuzuTamaki:20200105012027p:plain

 

左から2番目の順位は、「2019年UCIワールドツアーチームランキング」からの変動である。

これはすなわち、移籍前のランキングなので、移籍を経てその順位が果たしてどうなったのか、というのを明らかにしてみた。

こうしてみると、CCCチームはトレンティンやザッカリンの獲得により「大成功」を果たし、一気にワースト2位から半分以上の位置にまで上昇。

一方、モビスターは「大敗北」を喫しており、カラパス、ランダ、キンタナを失った代わりに2019年シーズンにマスやソレルがいまいちな結果となってしまったことで、一気に12ランクダウン。全19チーム中最下位となってしまった。

(つい最近までNTTプロサイクリングが最下位だったが、直前のドメニコ・ポッツォヴィーヴォの獲得により一気にランクアップすることとなった)

 

 

なお、各チームの合計UCIポイントを、各チームの人数で割ったものと、各チームの「平均年齢」で割ったものとも算出してみた。

それぞれの基準でランキングした図が以下の通りである。左から2番目の順位は、上記の「合計」での順位とそこからの変動である。 

f:id:SuzuTamaki:20200105015424p:plain

 

そこまで大きくは変わらないが、最も印象的な動きを見せたのがサンウェブである。

このチームは他チームと比べると異様に平均年齢が低い。

メンバー数も多いので人数で割ったランキング(左)では最下位に落ちるが、平均年齢で割ると一気に6ランクアップする。

2020年のサンウェブは確かに「弱い」チームかもしれない。

しかし未来への希望を多く持ったチームであることがよくわかる。実際、彼らはそこから、マルセル・キッテルやジョン・デゲンコルブ、そしてトム・デュムランといった英雄たちを輩出している。

サム・オーメンやウィルコ・ケルデルマンはもちろん、マルク・ヒルシやケース・ボルなど、これからも楽しみな選手たちがそのまま順調に成長していくことに期待をもっている。

 

では続いて、各種レースカテゴリに分けてのチームランキングも算出してみる。

 

 

北のクラシック編

まずは北のクラシックから。

こちらのデータ元は、 以下の記事を作成したときのデータを使用している。

www.ringsride.work

 

注意点として、データを取ったレースを任意で選び取っている。

以下の6レースである。

対象6レース

  1. オンループ・ヘットニュースブラッド(3/2)
  2. E3・ビンクバンククラシック(3/29)
  3. ヘント~ウェヴェルヘム(3/31)
  4. ドワーズ・ドール・フラーンデレン(4/3)
  5. ロンド・ファン・フラーンデレン(4/7)
  6. パリ~ルーベ(4/14)

※18あるワールドツアーチーム全てが出場している「北のクラシック(石畳クラシック)」レースを抜粋した。

 

集計した結果が、以下の通りである。

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ドゥクーニンクはさすがのポイントである。2位のEFに2倍近い差をつけている。

そして、ミッチェルトン・スコットがかなりやばい。マッテオ・トレンティンの離脱は、予想以上に苦しい戦いを彼らに強いることとなりそうだ。

他の項目では軒並み低い数値を出したイスラエル・スタートアップネーションも、実は北のクラシックにおいては意外と高い順位にあることに注目すべきだ。ただし、810ポイント中の797ポイントはニルス・ポリッツなので、注意。彼一人が頑張らなきゃいけない状況は、カチューシャ時代から変化はなさそうだ。

(ただ、カチューシャから同様に移籍してきたマッスウルツ・シュミットやUAEのロリー・サザーランド、元々イスラエルに所属していたクリスツ・ネイランズやミッヘル・ライムなどもフランドルクラシック適性は高いので、決して悪いチームではない。アンドレ・グライペルも、北のクラシック好きだしね)

 

2020年もドゥクーニンク・クイックステップが北のクラシックを支配するのか? それともEFや、ジルベール&デゲンコルブを迎え入れたロット・スーダルが牙を剥くか。はたまたニューヒーローが現れるか・・・?

 

 

アルデンヌ「系」クラシック編

続いてアルデンヌ系クラシックも見ていく。

同様にすでにまとめてある以下のランキングのためのデータを基に作成した。

www.ringsride.work

 

なんでアルデンヌ「系」かというと、純粋なアルデンヌ・クラシックは4月に開催される3レースだけかと思われるので、そこにクライマー向けと呼ばれるワンデーレース3つを加えてみた形だ。

選んだレースは以下の6つ。

対象6レース

  1. ストラーデ・ビアンケ(3/9)
  2. アムステルゴールドレース(4/21)
  3. ラ・フレーシュ・ワロンヌ(4/24)
  4. リエージュ~バストーニュ~リエージュ(4/28)
  5. クラシカ・サンセバスティアン(8/3)
  6. イル・ロンバルディア(10/12)

 

では、ランキングをどうぞ。

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北のクラシックと比べると上位は接戦。フールサン擁するアスタナと、アラフィリップ擁するドゥクーニンク、そこに強力なパンチャーたちが集まるボーラやモレマのいるトレックがどれだけ差し込んでいけるか、といった構図だ。

ウェレンスがいるロット・スーダルが意外と順位が低いのが意外と言えば意外。ただ、これは2019年が、とも言えるだろう。新加入のジルベールがアルデンヌにまた力を入れる可能性もなきにしもあらずだし、なんとか復権してほしい。

NTTプロサイクリングも、本来は期待されるべき存在だったヴァルグレン、ガスパロット、クロイツィゲルが本来の実力を発揮してくれればこの位置にはいないはず。

イスラエルも新加入のマーティンが結果を出せれば一気に順位は上がりうるだろう。

 

あくまでも参考、参考。

 

 

グランツール編

最後に、3大グランツールでの獲得UCIポイントをすべて合計してランキングしてみた。

データ元は、同じく獲得UCIポイントで見るシリーズの3大グランツール編から。

www.ringsride.work

www.ringsride.work

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各グランツールの3週間の中で獲得したUCIポイントすべてを集計しているため、総合順位だけでなくステージ優勝や各種特別賞ジャージによるポイント、あるいは「何日間総合リーダージャージを着用したか」も含まれている。

ただしチームTTで獲得したポイントは無視している。

 

それではランキングをどうぞ。

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そりゃそうだといった結果ではあるが、ジロ総合3位・ブエルタ総合優勝のプリモシュ・ログリッチとツール総合3位のクライスヴァイクが健在のユンボ・ヴィズマが1位。

ここにトム・デュムランも加わるので、潜在力はさらに高くなっていく。

また、上記はあくまでも「グランツールで獲得したポイントすべて」なので、同じくツール・ド・フランスで活躍したマイク・テウニッセンやワウト・ファンアールトなどのポイントも加味されている。

今年は同様にファンアールトがツールに出場するほか、ディラン・フルーネウェーヘンもジロとブエルタで最多勝を獲ってもおかしくなさそうなので、やはり2020年「もっともグランツールで活躍するチーム」はユンボ・ヴィズマなのかもしれない。

 

ただし、ツール総合2位のゲラント・トーマスとツール総合優勝のエガン・ベルナルに加え、ジロ総合優勝のリチャル・カラパスも獲得したチーム・イネオスも、負けじとこれに迫ってきている。クリス・フルームが昨年、ほぼポイントを獲得できていないことを考えると、潜在力はさらに高いと言わざるをえない。

彼らの問題は、ツール以外でどれだけポイントを稼げるかということ。さらに言えば、総合成績でのポイント頼みで、その他のポイントをどこまで稼げるか――。

 

3位のボーラ・ハンスグローエは、ツール総合4位のエマヌエル・ブッフマンと、7回目のマイヨ・ヴェールを手に入れたペテル・サガン、そしてジロポイント賞のパスカル・アッカーマンにブエルタ2勝かつ2位4回のサム・ベネットなど・・・バランスよくポイントを収集していった。

もちろんベネットは移籍してしまったためこのポイントには入っていない。それでもこの順位を保てるこのチームは、2020年もサガンがジロ・ツールに両方出場するなど、ポイントはさらに稼いでいけそうだ。

 

 

ここまでは繰り返しているように、グランツールで獲得できるすべてのポイントを考慮したランキングである。

純粋に、総合順位でのポイントだけで集計してみると、以下の通りとなる。

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これならばイネオスが1位に躍り出る。

また、ヴィンツェンツォ・ニバリを獲得したトレック・セガフレードが上位に入ってきた。 

 

 

さて、最後に。

冒頭に紹介した2020年シーズンチームガイドでは、各チームの「グランツール、北のクラシック、アルデンヌクラシック、ステージ優勝、チームTT」の5項目について、5段階で評価した「総評」というコーナーを最後に設けている。

だがこれは正直、感覚で評価しており、信頼性は低い。

そこで、今回はこのせっかく集計したデータで、改めて各チームの「グランツール総合」「北のクラシック」「アルデンヌ系クラシック」を全チーム5段階で評価してみた。

5段階の基準は、上記のランキングに基づき、

  • 上位3チームを5
  • 次の4チームを4
  • 次の5チームを3
  • 次の4チームを2
  • 最後の3チームを1

というルールで決定した。相対評価である。

 

集計したものが以下の通り。

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こうやって見ると、意外にUAEがバランスが良い。アレクサンドル・クリストフが北のクラシックを、新加入のダヴィデ・フォルモロがアルデンヌ・クラシックを担当しつつ、グランツールでもタデイ・ポガチャルを中心に・・・といったところだろうか。

あとはこれを2020年も踏襲できるか。

この集計データを基にして、各チームガイドの「総評」グラフもすべて更新していきたいところだが、その気力があれば・・・といったところである。

 

 

さて、いかがだっただろうか。

ほぼ自分の趣味みたいなものでデータ集計しまとめてみたが、何かしら、皆さんの興味にも触れるところがあれば幸いである。

 

この「獲得UCIポイントで見る」シリーズは、極端にデータの少ない自転車ロードレースシーンを多少なりとも客観的なデータで眺めて新しい発見や洞察を得られるという点で、大変だけれどもやっていて自分でも面白さを感じている。

2020年も続けていくつもりなので、良かったら応援してください。

 

 

・・・2020年は、スプリンター部門においても、やってみようかなぁ。

 

 

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