りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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ツアー・ダウンアンダー2020 注目選手プレビュー

 

前回のコースプレビューに続き、ツアー・ダウンアンダーの注目選手をプレビューしていく。

ただし、現時点で参加可能性の高い選手のプレビューであり、レース開始前に出場がなくなる可能性はもちろんある。

あくまでも現時点での、ということなので、注意すること。

また、記事中の年齢表記はすべて2020/12/31時点での年齢となります。

 

↓コースプレビューはこちらから↓

www.ringsride.work

 

 

 

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総合系

ダリル・インピー(ミッチェルトン・スコット

南アフリカ、36歳、パンチャー

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昨年、総合連覇をした際は、正直驚いた。

ただ、よくよく考えてみれば、少しも不思議なことではない。というのも、彼は、このレースと非常に相性の良かった男、サイモン・ゲランスととてもよく似た脚質を持っているのだから。

 

ゲランスはインピーの4つ年上のオーストラリア人で、ツアー・ダウンアンダーを4度制している。それはダウンアンダーにおける最多優勝記録であり、彼が最後に総合優勝を果たした2016年は、彼が今のインピーと同じ、36歳になる年だった。

そしてインピーは、このゲランスの発射台役を務めていた。彼が総合優勝において重要な意味をもつ中間スプリントポイントのボーナスタイムを得るうえでも、インピーは決定的な役割を果たしていた。ゆえに、この男が2度どころか、3度目、4度目の総合優勝を成し遂げたとして、何ら不思議ではないのだ。

 

ただ、不安要素があるとすれば、今年はパラコームの登りフィニッシュが用意されているということ。登坂距離1.2㎞、平均勾配10%弱のこの激坂登りフィニッシュは、過去2回の登場でいずれも総合優勝者を輩出している。

とくに2017年、それまで(それ以降も)常にウィランガ・ヒルを制しながらも総合優勝には届かなかったリッチー・ポートが、2017年はこのパラコームを制したことによって、2位のエステバン・チャベスに48秒差という大差をつけて総合優勝を果たしたのだ。

このパラコームが存在することは、決してクライマーではないインピーにとって不利な点となるのは間違いない。

 

もちろん、インピーも短い登りは苦手ではない。昨年も、彼は最後のウィランガ・ヒルでポートとタイム差なしの区間3位に入れている。

そのために重要になるのは、アシストの存在だ。昨年はその年一気に飛躍することとなるルーカス・ハミルトンが、このウィランガ・ヒルで強力なアシストを見せてくれた。

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今年はハミルトンが出るかは分からない。代わりに、サイモン・イェーツが出場する。もちろんサイモンもまた、このチームの総合エース候補であるだろうが、最終日までの展開によっては、誰よりも信頼できるインピーのアシストとなるはずだ。

ダリル・インピーのツアー・ダウンアンダー3連覇。その道のりには険しい課題もあれば、希望もある。果たして、どうなるか。

 

 

サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット

イギリス、28歳、クライマー

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今年はジロ・デ・イタリアへの「2度目の再挑戦」に挑む予定のサイモン・イェーツ。昨年の失敗の要因は「ジロの前に走ったレースで勝ちに行かなかったこと*1」。それによって、2018年のような「燃え尽き」を抑えることを意図したのかもしれないが、逆にそれが「闘争本能を失う結果となった」という。

その言葉を踏まえ、これまでにない「ツアー・ダウンアンダーでシーズンを開始する」というスケジュールを彼がとった意図とは、何だろうか。普通に考えれば、南半球人でもない彼が、このダウンアンダーにコンディションを合わせてきて本気で勝ちに来るとは考えづらい。トレーニングの一環と見るのが適切なようにも思える。

しかし、先の言葉を考えると、そうではないのかもしれない。実際、今年のツアー・ダウンアンダーは、ウィランガ・ヒルに加えてパラコームが用意されていることで、パンチャーのインピーよりもクライマーのリッチー・ポートの方が有利となる。

そこで、チームのもう一つの「オプション*2」として、サイモン・イェーツの存在が期待されているのであれば、彼はしっかりと総合を狙った走りをすることになるだろう。

そうでなくとも、たとえ総合は狙ってなかったとしても、昨年のルーカス・ハミルトンのように、パラコームやウィランガ・ヒルでインピーを強力にアシストし、その3連覇を支える、という役回りも期待される。

いずれにせよ、サイモン・イェーツの今までにないシーズンの入り方を見られる貴重なチャンス。今年、彼は新たな伝説を作れるのか?

 

 

リッチー・ポート(トレック・セガフレード

オーストラリア、35歳、オールラウンダー

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「ウィランガの王」は今年もまた、君臨するのか? 

不安要素は沢山ある。昨年はこのダウンアンダーまでは良かったが、そのあとは怪我や体調不良でずっとレースにすら出られず、復帰したツアー・オブ・カリフォルニアでもイマイチ。そのあとはまったく存在感を示すことなくひっそりとシーズンを終えた。

また、昨年のウィランガ・ヒルの走りにも、これまでのような圧倒さからやや、陰りが見えているようにも感じられた。今年、大記録がストップしてしまう危険性は十分にある。

 

一方で、彼にとってはチャンスの年でもある。これまで、ウィランガ・ヒル6連覇を達成しておきながら、総合優勝を果たせたのはたったの1回だけ。ウィランガ・ヒルは何十秒とタイム差をつけるには短すぎて、スプリント力のない彼が得られないボーナスタイムを稼ぎ出したパンチャー系の選手たちを前にすると、どうしてもわずかに届かないことが多かったのだ。

だが、唯一彼が総合優勝したときの「パラコーム」が、今年は用意されている。ウィランガ・ヒルだけでなくこのパラコームでも、2017年のように勝つことができれば、彼にとって2回目となるツアー・ダウンアンダー総合優勝を手に入れることもできるだろう。それはドン底に終わった2019年へのリベンジの始まりでもある。

あとは、本当に、パラコーム、そしてウィランガで最強であることを示せるのかどうか。

 

チームメートでは昨年の総合3位ワウト・プールスをウィランガ・ヒルで強力に牽引したケニー・エリッソンドが参戦予定。リッチーにとってはこの上なく頼りになる存在だ。

また、世界王者マッズ・ペダースンも参加。スプリントにおいてはもしかしたらエースを務める可能性はある。あるいは逃げで、存在感を示せるだろう。

 

 

ロマン・バルデ(AG2Rラモンディアル

フランス、30歳、クライマー

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強くなり続けるためには自分自身を少しずつ変えていかなければならない」と語ったバルデ。その言葉の通り、今年はあえてツールを回避し、ジロ、そしてブエルタに挑む予定。

そしてまた、このツアー・ダウンアンダーにも、初挑戦。パンチャー向きのこのステージレースは決してバルデ向きではないようにも思える一方で、ワンデーレース適性もあり、ストラーデ・ビアンケやリエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも好成績を残している彼であれば、実は全く不向き、というわけでもないのかもしれない。

とはいえ、フランス人がこの時期に結果を出せるともあまり思えない。期待しすぎないくらいで見守っておきたい。 

チームメートは昨年は怪我によりほぼ丸一年棒に振ったアクセル・ドモンが復活。ほか、ブエルタ山岳賞のジェフリー・ブシャールや、脚質的にはよりダウンアンダーに向いているであろうアンドレア・ヴェンドラーメも参戦。

 

 

ローハン・デニス(チーム・イネオス

オーストラリア、30歳、オールラウンダー

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2015年の総合優勝者。そのときも実は、「パラコーム」登りフィニッシュが用意されており、デニスがこのステージを勝っていたことで、ウィランガ・ヒルでポートに敗れたうえでも2秒を残して総合首位を守りきることができていた。

その後、彼はTTスペシャリストでありながら総合系ライダーとしての道も探りつつあった。2016年のツアー・オブ・カリフォルニアや2017年のティレーノ~アドリアティコでは総合2位、総合を狙ってグランツールに出場したこともあった。

だが、彼自身はしばらく総合を狙うことを封印する宣言を2018年に出し、それを証明するかの如く、2018年はひたすら個人タイムトライアルに集中。結果、2018年・2019年と世界選手権個人タイムトライアルを連破するという偉業を達成する。

今年も、最大の目標は東京オリンピックのタイムトライアルかもしれない。しかし、一方で、彼がイネオスを選んだ理由の1つは、この場所で、総合系ライダーとしての可能性を伸ばすことなのかもしれない。

何しろ、このチームは、ヴァシル・キリエンカやヨナタン・カストロビエホ、あるいはディラン・ファンバールレなど、平坦専門と思われていたルーラー・TTスペシャリストたちを、次々と「登れる」選手に仕立て上げているチームなのだから。

昨年のファンバールレも、このダウンアンダーでの活躍から一気にその登坂力を増していった。デニスの「今後」のための幸先の良いスタートダッシュを、このダウンアンダーで果たすことができるだろうか。 

 

なお、チームメートのミハウ・クファトコフスキもツアー・ダウンアンダー初出場。

基本的にはこの時期からコンディションを合わせてくるとも思わないので、例年のゲラント・トーマスのようにあくまでもトレーニングとして利用することにはなりそう。ただ、脚質的にはダウンアンダー向きであることは間違いない。

また、パヴェル・シヴァコフも初出場。昨年は同じ時期のオーストラリアの1クラスレース「ヘラルドサン・ツアー」で調子のよさを見せていた彼もまた、どちらかというとパンチャー気味のクライマーのため、相性は悪くない。

 

 

パトリック・ベヴィン(CCCチーム) 

ニュージーランド、29歳、TTスペシャリスト

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昨年のダウンアンダーでまさかの総合優勝争いを演じた男。最終的には第5ステージの落車によってその機会は失われるが、それでも区間1勝とポイント賞を持ち帰った。

元々、スプリント力も高く、パンチャー的な脚質も持っているため、たしかにダウンアンダーとの相性は良かった。国内選手権もスケジュール的に近く、地元のオーストラリア人同様、この時期は他の地域の選手と比べると高いコンディションを保持しているニュージーランド人というのも、その結果を生み出す理由となった。それにしても驚きの成績だったわけだが。

今年も狙っていないことはないだろう。ただパラコームも存在し昨年以上にクライマー向けになっているのでさすがに厳しいとの見方もある。

 

なお、ツアー・ダウンアンダーは総合2位、そしてティレーノ〜アドリアティコでは総合優勝するという絶好調ぶりを見せている平行世界については、以下のリンクから。

www.ringsride.work

 

 

その他注目の選手たち

ベンジャミン・ダイボール(NTTプロサイクリング

オーストラリア、31歳、オールラウンダー

オーストラリアやマレーシアのコンチネンタルチームに所属し、アジアツアーを中心に実績を上げてきた選手。昨年はツール・ド・チンハイレイク総合3位や、ツール・ド・ランカウイ総合優勝など。日本とも縁の深い選手ではあり、2018年のツール・ド・熊野総合2位、2019年のツール・ド・栃木総合3位など。

そんな選手なので、ワールドツアーの舞台で活躍してくれるのは嬉しく思うことだろう。地元オーストラリアだし、自由度の高いチームだし、まずは逃げを中心に、積極的な動きを期待する。山岳賞あたりは十分に狙っていけそうだ。

チームメートのベン・オコーナーも、本来はチームの総合エースを期待されている存在。不調に終わった2019年シーズンへのリベンジをこのダウンアンダーから果たせるか? スプリントでは南アフリカ人のギボンスに期待だ。

 

クリス・ハーパー(チーム・ユンボ・ヴィズマ

オーストラリア、26歳、クライマー

オーストラリアのコンチネンタルチームに所属し、ツアー・オブ・ジャパンでは2018年総合4位&新人賞、そして2019年には総合優勝を果たした。ダイボール以上に日本人的には応援したくなる選手であり、しかもその所属チームが今や世界最強チームの一角、ユンボ・ヴィズマなのだから期待も高まるというものである。

なお、昨年のツアー・ダウンアンダーにも、UniSA(ナショナルチーム)の一員として出場している。今回が2回目のダウンアンダー。

チームメートのジョージ・ベネットはニュージーランド人で、同じくこの時期のコンディションは悪くないはず。昨年もコークスクリューで積極的な動きを見せ、最終成績も総合4位。ハーパーはあくまでも彼のアシストに回り、ベネットがエースという可能性も十分にある。

 

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スプリンター

エリア・ヴィヴィアーニ(コフィディス・ソルシオンクレディ

イタリア、31歳、スプリンター

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今や世界最強スプリンター。2年連続でステージ優勝を獲得しており、昨年はカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースをも制した。

問題は、今年の彼は最強スプリンターチームのクイックステップを抜けてしまっているということ。

もちろん、盟友ファビオ・サバティーニは連れてきており、今回もロースター入り。また、トラック競技では相棒役を務めるシモーネ・コンソンニもロードレースでは初のタッグを組んで参戦。勝ちの目は十分にある。

あとは、チームのフィッティング。今年一年の行く末を占う闘いだ。

 

 

カレブ・ユアン(ロット・スーダル

オーストラリア、26歳、スプリンター

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2016年2勝、2017年は実に4ステージ(クリテリウム含めると5ステージ)優勝という驚異の成績を叩き出していた男。しかし年々その調子は落ち込み、昨年はついに、降格によって1勝もできずに終わることに(クリテリウムでは勝利)。

だが、そんな絶望と共にスタートした2019年シーズンは、そののちにジロ2勝、ツール3勝(シャンゼリゼ含む)という成績を残したことで歓喜に塗り替えられる。そんな絶好調なコンディションを維持したまま、彼はロット・スーダルでの2シーズン目を迎える。

昨年の彼の好調の立役者の間違いなく1人だったトーマス・デヘントも今回のスタートリストに名前を連ねる。アダム・ハンセンもまた、スプリント前の位置どり巧者であり、ユアンにとっては頼りになる存在だ。

 

 

アンドレ・グライペル(イスラエル・スタートアップネーション

ドイツ、38歳、スプリンター

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ツアー・ダウンアンダーでは総合優勝が2回、ステージ優勝は11回と、まさにキング・オブ・ダウンアンダーの1人。4年ぶりの出場となった2018年にも、見事に2勝を挙げてみせた。

しかし、プロコンチネンタルチームのアルケア・サムシックに移籍した昨年は出場できず。しかもその年のグライペルは全く勝てる走りができなくなり、契約途中にも関わらずアルケアからの離脱を宣言。イスラエルに合流した。

そのイスラエルがワールドツアーに昇格したことで、再びダウンアンダーの地に足を踏み入れることに。

ここで鮮烈な走りを見せることで、昨年の彼の不調は決して衰えのゆえではなかった、ということを証明できるか。イスラエルのチーム力も試される。

 

 

マイケル・マシューズ(チーム・サンウェブ

オーストラリア、30歳、スプリンター

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かねてより、なぜこの男がダウンアンダーに出場しないのか、不可解ではあった。オーストラリア人だし、脚質的にはサイモン・ゲランスやダリル・インピーに近いパンチャータイプだし。総合優勝すら狙いうる特性である。ゲランスがチームメートだった頃はまだしも、今彼がこのダウンアンダー(およびカデルレース)に出ない理由は正直わからなかった。

しかし、今年は満を辞して参戦。一応6年前にも出場してはいたが、当然そのときはまだ、台頭する前であり、結果は残していない。今回、エースとして出場する中で、彼が本当にこのレースに向いているのだということを、証明してほしい。

とくに今年は、デュムランも去り、ケルデルマンもやや調子が上がりきらない中で、チームの顔として活躍する責任が、その双肩にかかっている気がするので・・・。

 

 

サム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ

アイルランド、30歳、スプリンター

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彼はまだ、出場は確定していない。今年新設の1クラスレース「レース・トーキー」と、そのあとのカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースへの出場はほぼ決めているが、ダウンアンダーに関しては、年末年始にかけてなおも続く山火事騒動にもとづく安全性への不安から、チームディレクターがベネットの参戦に対してはGoサインを出していないという。

www.cyclingnews.com

 

ただ、出場したとしたら、これほど楽しみな存在はいない。昨年も世界トップスプリンターの名にふさわしい強力無比な走りを披露。そこに、ドゥクーニンク・クイックステップという、最強スプリンターズチームの力が加われば、チームを変えたヴィヴィアーニに対しても、優位に立つことは十分に可能だろう。

また、予定しているアシストも非常に豪華。昨年のカデルレースでのヴィヴィアーニ勝利の最大の立役者であったミケル・モルコフや、ボーラ・ハンスグローエから連れてきた右腕シェイン・アーチボルドも名を連ねている。

また、もしもベネットがダウンアンダーに参戦しないとしたら、エースはおそらく、アスタナから移籍してきたダヴィデ・バッレリーニが担うことになるだろう。彼もまた、昨年、意外なほどに活躍していた選手だ。とくに注目すべきレースは、9月のブリュッセル・サイクリング・クラシック。伝説的な「横一線スプリント」において、アレクサンドル・クリストフやアルノー・デマールをもさし切って、4位に入り込んだ。

 

バッレリーニもまた、このドゥクーニンクで飛躍する可能性のある男だ。もちろん、チームを去ったサバティーニやリケーゼに代わる、新たなチームの最強発射台候補としての飛躍も、十分にありうる。 

 

 

ヤスペル・フィリップセン(UAEチーム・エミレーツ

ベルギー、22歳、スプリンター

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昨年はカレブ・ユアンの降格によって勝利を手にする。ただ、あのヘッドバットをものともせず、冷静にその背後を取って2位につけたことが、その「勝利」を引き寄せる要因となった。その胆力、そして実力の高さは年齢に見合わないものがある。なお、フィニッシュ直前のアグレッシブな走りについては彼自身も2018年に先輩フェルナンド・ガビリアに対しても行っていてそれで彼に怒られていたりもする。そんなこともあって、ユアンの降格に対してもコメントは控えめだった。

2019年はこの「勝利」以外は勝利なし。よって、まだUAEに移籍してから一度も、先頭でフィニッシュラインを越えたことはない。この縁起の良いダウンアンダーで、「1勝目」を掴み取れるか?

 

 

その他注目の選手たち

シモン・サイノック(CCCチーム

ポーランド、23歳、スプリンター

CCCスプランディ・ポルコウィチェからCCCチームに「昇格」し、そしてその実力を証明して見せた、ポーランドの若き才能。どこで証明したかというと、ブエルタ・ア・エスパーニャ。最終日マドリードのスプリントで、3位に入り込んだ。

昨年のツアー・ダウンアンダーではエーススプリンターはヤコブ・マレツコだった。しかしマレツコは正直言って、2019年は期待外れの結果に終わった。とくに、登りに対するあまりにも適性のなさが露呈してしまった形だ。

今回、マレツコでなくサイノックがダウンアンダーに連れてこられたのは、チームとしての意図が間違いなくあることだろう。とはいえ、昨年のベヴィンの可能性をすでに見出しているチームとしては、あくまでもエースはベヴィンであり、スプリントステージも彼のボーナスタイムのために、サイノックは発射台の役回りを任せられてしまうかもしれない。

ただ、2020年注目の選手であることは間違いない。

 

ライアン・ギボンス(NTTプロサイクリング

南アフリカ、26歳、スプリンター

南アフリカで最も期待されている若手スプリンター。ジロ・デ・イタリアでは何度となく上位には入り込みつつも、いまだ勝利はない。

当然、北半球人と比べてコンディション的には有利になるはずのダウンアンダーでも期待の選手ではある。昨年は第1ステージで区間5位。

その特性はド平坦よりも起伏のあるステージで有利に働く。昨年もユアンやヴィヴィアーニが引き離されたウライドラやキャンベルタウンで先頭集団には入り込めている。今年もたとえば第5ステージのヴィクター・ハーバーなんかは、ピュアスプリンターが残れるかどうか微妙なステージ。チャンスは十分にあるだろう。

また、同じくゴール前に登りのあるレイアウトとなるカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースでは4位。こっちも注目したいところ。

 

ファビアン・リーンハルト(グルパマFDJ

スイス、27歳、パンチャー

元BMCのトレーニーで、2016年のジャパンカップにも出場経験のある男。昨年はツール・ド・スイスにナショナルチームの一員として参戦し、3つのステージでTOP10に入るなど、コンチネンタル所属とは思えない実力の高さを見せつけた。

もちろん、チームのエースは、昨年のクープ・ドゥ・フランス覇者マルク・サローであり、リーンハルトの役割はその発射台に過ぎないだろう。ただ、登りへの適性はリーンハルトの方が上。ギボンス同様ヴィクター・ハーバーなど、チャンスがないわけではなさそうだ。

こちらも2020年注目の選手。ちょっとでも活躍してくれることに期待。

 

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