ジロのとき同様に、 今回のツール・ド・フランスでの「獲得UCIポイント」で各チームをランキングしてみた。
今回のツールで「成功したチーム」「失敗したチーム」がある程度客観的な指標でもって可視化されることを期待する。
加えて各チーム、各ステージで「逃げ」に乗っていたメンバーも記載していく。たとえUCIポイントをあまり獲得できなくとも、積極的に逃げに乗せることでチームの名を売ることもまた、彼らにとっては重要なことだ。その意味で「頑張った」チームはどこか、というのも見ていくことができるだろう。
そのうえで各チームに対する簡単なレビューを掲載。
今回は下位11チーム(22位~12位)
上位11チーム(11位~1位)はこちら。
- 第22位 チーム・カチューシャ・アルペシン 25pt.
- 第21位 トタル・ディレクトエネルジー 30pt.
- 第20位 コフィディス・ソルシオンクレディ 60pt.
- 第19位 CCCチーム 70pt.
- 第18位 チーム・ディメンションデータ 90pt.
- 第17位 チーム・サンウェブ 155pt.
- 第16位 アスタナ・プロチーム 165pt.
- 第15位 チーム・アルケア・サムシック 175pt.
- 第14位 ワンティ・グループゴベール 190pt.
- 第13位 UAEチーム・エミレーツ 235pt.
- 第12位 AG2Rラモンディアル 335pt.
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第22位 チーム・カチューシャ・アルペシン 25pt.
逃げ一覧
- マルコ・ハラー(第14ステージ)
- マッズウルス・シュミット(第1・5・10ステージ)
- イルヌール・ザカリン(第14・15・20ステージ)
- ニルス・ポリッツ(第6・15・17・18・20・21ステージ)
数あるプロコンチネンタルチームを差し置いてのこの順位。さすが存続が危ぶまれているチームだけある。過去の例を振り返ってみても、存続の危機に立たされたチームは急に成績を出し始めることが多かった気がするが、そういった様子さえ見て取れなかった。
そんな中、目立っていたのがニルス・ポリッツの山岳逃げ。ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ、ピレネー、アルプスでは3回、そしてシャンゼリゼ。結果には結びつかなかったが、その長身と印象的な白い歯はカメラでも存在感を放ち、就職活動をより有利にしてくれたことだろう。
実際、今年のクラシックでの活躍や、ドーフィネでのスプリントに食い込む姿など、このチームで最も将来有望な存在。本当にカチューシャが今年で消えてしまうとしたら、彼の行く先というのは非常に気になるところだ。
第21位 トタル・ディレクトエネルジー 30pt.
逃げ一覧
- ファビアン・グルリエ(第6ステージ)
- ニキ・テルプストラ(第8ステージ)
- レイン・タラマエ(第14ステージ)
- ニッコロ・ボニファツィオ(第20ステージ)
- アントニー・テュルジス(第10・20ステージ)
- ポール・ウルスラン(第3・16・18ステージ)
- ロマン・シカール(第9・14・15ステージ)
- リリアン・カルメジャーヌ(第11・12・14・20ステージ)
ツール・ド・フランス出場常連プロコンチネンタルチームとしては残念な結果と言わざるを得ない。
一番目立ったのはボニファツィオ。元バーレーンのエーススプリンターとして期待されながら、そのお株を完全にコルブレッリに奪われ、なくなくプロコンチネンタルチームにやってきた男。しかし年初のラ・トロピカーレ・アミッサ・ボンゴ3勝&総合優勝から始まり、今回のツールでもトップスプリンターたちに混じって存在感を示し続けてきた彼。まだ今年26歳と、これからの伸びに期待できる存在だ。
一方、もう1人若手の期待の星だったカルメジャーヌ。2016年ブエルタ1勝、2017年ツール1勝の逃げ職人は、今年も積極的に逃げを打ったものの、結果に結びつけることができなかった。ここ最近目立っていない彼の、今後の復活はあるか?
第20位 コフィディス・ソルシオンクレディ 60pt.
逃げ一覧
- ジュリアン・シモン(第12ステージ)
- アントニー・ペレス(第11・15・17ステージ)
- ナトナエル・ベルハネ(第1・6・10・17ステージ)
- ヘスス・エラダ(第9・15・17・19ステージ)
- ピエールリュック・ペリション(第12・17・18・20ステージ)
- ステファヌ・ロセット(第3・7・11・16・18ステージ)
結局ラポルテもブアニと変わらないのか? 結果を出すことなく第8ステージにて早々と退場。もう1人の注目選手だったらヘスス・エラダも、直前なモンヴァントゥー・チャレンジ勝利など今年絶好調だった割には、まったく目立つことなく3週間を終えてしまった。
そんな中、後半のアルプスステージで存在感を示したのが今年32歳のペリション。昨年までは現アルケア・サムシックに長く在籍しており、ワールドツアーチーム経験はない。今まではひたすら逃げに乗るだけの役割といった印象だったが、今大会は厳しいアルプスで、ときにステージ優勝すら狙えるような走りを見せていた。
今回は届かなかったが、いつかHCクラスやワールドツアーのステージレースなんかで、逃げ切り勝利する姿を見てみたい。
第19位 CCCチーム 70pt.
逃げ一覧
- アレッサンドロ・デマルキ(第8ステージ)
- ルカシュ・ヴィシニオウスキー(第16ステージ)
- ジョセフ・ロスコフ(第20ステージ)
- サイモン・ゲシュケ(第15・18ステージ)
- ミヒャエル・シェアー(第4・10・17ステージ)
- セルジュ・パウェルス(第6・12・18ステージ)
- グレッグ・ファンアーフェルマート(第1・12・17・18ステージ)
ファンアーフェルマートは大活躍だった。初日からしっかりと逃げに乗って、象徴的なカペルミュールを先頭通過。山岳賞をゲットした。そのあとも早々にプロトンに戻り、一か八かのスプリントにも備えていた。
その後も丘陵スプリントステージでは上位に食い込み、山岳では逃げ、最終日のシャンゼリゼでも、ラスト1周で勇気あるアタックを繰り出してその名を売った。
チームのリーダーとして、責任ある走りを見せ続けた。
が、それ以外の選手たちはなかなか目立てなかった。昨年もブエルタで1勝しているデマルキや、今年のUAEツアーでも積極的な山岳逃げを見せていたロスコフ、実力派パンチャーのパウェルスなど、それなりに才能は揃っている。が、そんな彼らも逃げには乗るが終盤までもたないことが多く、チームを売るという役割を果たせていたかは疑問だ。
もちろん、勝利なしであるということも痛い。今年、チームの最低限の目標として20勝を掲げていたCCCチーム。シーズン序盤にベヴィンとファンアーフェルマートの活躍で4勝を稼ぎ出してこれはいけるかと思ったが、その後は本命の北のクラシックを含めなかなかうまくいかず。現時点での勝利数は5と、目標達成が危ぶまれる現状となっている。
果たして来年はしっかり補強ができるのか。
第18位 チーム・ディメンションデータ 90pt.
逃げ一覧
- ミカエル・ヴァルグレン(第12ステージ)
- ラルスイティング・バク(第16ステージ)
- スティーヴン・カミングス(第20ステージ)
- ロマン・クロイツィゲル(第15・19ステージ)
- ベンジャミン・キング(第17・20ステージ)
- エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(第9・12・17ステージ)
ジロでは最下位を喫していたこのチームも、今回はクロイツィゲルの活躍によりなんとかこの位置に。それにしたって危機的なのは間違いない。クロイツィゲルも含め、では目立っていたかというと微妙だ。カミングスとかキングとか、過去のグランツールで逃げ切り勝利を果たしている選手や、昨年オンループとアムステルを制しインスブルック世界選手権でも好走していたヴァルグレンがいながら。
一抹の光明があるとすれば、元トレックのニッツォーロが悪くない走りを見せていること。こう言ってはなんだが、カヴェンディッシュがエースだったとしたら、この4位すら手に入らなかっただろう。
ヤンセファンレンズバーグも他レース含め強いスプリントを見せているし、彼らを中心とした新スプリンター体制で、来年からの新チーム「チームNTT」の活躍に期待したい。
第17位 チーム・サンウェブ 155pt.
逃げ一覧
- ケース・ボル(第12ステージ)
- ニキアス・アルント(第6・12・18ステージ)
- マイケル・マシューズ(第12・15・19ステージ)
- レナード・ケムナ(第14・15・18ステージ)
- ニコラス・ロッシュ(第9・12・15・17・20ステージ)
元々出場を予定していたトム・デュムランが、ジロでの落車の怪我からの復調が十分でなく欠場。代わってエースを担う素質を持つウィルコ・ケルデルマンも、カタルーニャで負った怪我の後遺症に苦しみ、力を発揮しきれないまま途中リタイアとなった。
そしてもう1人の主役ともいうべき2017年マイヨ・ヴェールのマイケル・マシューズも、第3ステージの登りスプリントで集団先頭を取るなど期待を抱かせる瞬間はあったが、その後はめっきり・・・後半は山岳ステージでの逃げに挑んだが、マッテオ・トレンティンのような歓喜の瞬間には巡り会えなかった。
控えめに言って散々なツールを過ごしたサンウェブだったが、希望の光というべき成果がケムナの存在である。今年23歳のドイツ人。ツール・ド・スイス以降、山岳ステージで常に存在感を示す彼の走りは、まだ結果には結びついていないものの、数年後にはどこかのチームのエースになっていてもおかしくないと感じさせる。エマヌエル・ブッフマンに次ぐドイツの才能だ。
もちろん、「どこかのチーム」でないように、サンウェブは彼をしっかりケアし、育てていかなければならない。ケルデルマンもデュムランもいつまでもこのチームにいてくれるとは思えなさそうな雰囲気を醸し出しているし、今、このチームの運営力が試される岐路に立っているような気がする。
ポリッツ獲得して育てるってのもアリじゃないかな。
第16位 アスタナ・プロチーム 165pt.
逃げ一覧
- ルイスレオン・サンチェス(第14ステージ)
- マグナス・コルトニールセン(第19・20ステージ)
- ペリョ・ビルバオ(第12・15・19ステージ)
- アレクセイ・ルツェンコ(第15・18・19ステージ)
- オマール・フライレ(第15・17・20・21ステージ)
- ゴルカ・イサギレ(第17・18・19・20ステージ)
総合優勝候補にすら挙げられたヤコブ・フルサング。しかしツール本戦では、序盤の落車の影響もあったのかもしれないが期待していたほどの走りを見せられないまま、ピノやブッフマンにお株を奪われつつ、第16ステージで落車リタイアとなってしまった。
チームとしても、彼の総合を最大の目標として動いていただけに、彼のリタイアの後は一気に方針転換。アルプスでは毎ステージ複数名のクライマーたちが逃げに乗り、存在感を示し続けていった。ただやはりそこからの挽回は難しく、フルサングが最後まで残っていればもっと上位にいたであろうUCIポイント合計獲得数も、結局は低迷する結果に終わってしまった。ワントップチームはここが難しい。
ただ、ルツェンコの走りは驚きであった。第18ステージでバルデに必死で食らいついていった姿もそうだが、それらの結果としての総合19位は、アラフィリップの躍進に近しいものすら感じる。何しろここまでのグランツールの総合成績は、2016年ツールの総合62位が最高だったのだから。
かつてはエスケープスペシャリストといった印象だった彼が、近年は着実に登坂力・総合力を増しており、ツアー・オブ・オマーンでは2連覇。しかも今年は昨年ほど強力なクライマーがアシストしない状態で、である。
今後もグランツールではさすがに厳しくとも、ステージレースでは総合エースとして活躍してくれることだろう。ダウンヒルに関しては課題が残るが、期待したい存在である。
第15位 チーム・アルケア・サムシック 175pt.
逃げ一覧
- アンドレ・グライペル(第6ステージ)
- ケヴィン・ルダノワ(第12ステージ)
- ワレン・バルギル(第19ステージ)
- マキシム・ブエ(第20ステージ)
- アントニー・ドゥラプラス(第3・9ステージ)
- エリー・ジェスベール(第14・19ステージ)
- アマエル・モワナール(第15・18ステージ)
まずもって今年のバルギルがこれほどの結果を出すとは思わなかった。2年前、絶好調でステージ2勝&山岳賞を獲得したときと同じ成績である。今年はアラフィリップ、ピノと活躍しバルデも山岳賞を獲得したフランス人イヤーであったが、その中に彼の名も刻まれることであろう。
今後もそこまでプレッシャーを背負うことなく伸び伸び走ってもらいたいと思う。来年はもしかしたらキンタナファミリーがやってくるかも、ということだが、ツール以外に集中するのもアリだろう。色々とマイナスな話も多いキャラではあるが、あの笑顔は嫌いじゃない。
グライペルも今年はまったく満足できない走りを見せてはいるが、最後のシャンゼリゼで先頭の方で姿を見れたのは少し安心した。今年一度プレッシャーをリセットし、彼もまた2020年は楽々と走ってほしいところ。
あとは、若手期待の星ジェスベール。今年のオマーンやモンヴァントゥ・チャレンジで実力は見せてはいるが、今回のツールでは結果を出せなかったのは残念。来年こそは、エースと呼ばれるような活躍を期待している。
第14位 ワンティ・グループゴベール 190pt.
逃げ一覧
- オドクリスティアン・エイキング(第10ステージ)
- アイメ・デヘント(第11ステージ)
- ケヴィン・ファンメルゼン(第20ステージ)
- フレデリック・バカールト(第4・20ステージ)
- クサンドロ・ムーリッセ(第1・6・17ステージ)
- ヨアン・オフルド(第3・4・7ステージ)
- アンドレア・パスクアロン(第6・12・17ステージ)
- ギヨーム・マルタン(第14・15・19ステージ)
まずは前半戦、驚きの走りを見せ続けていたムーリッセ。第1ステージでファンアーフェルマートに勝てなかったことに本気で悔しがっていたかと思えば、ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユではトゥーンスとチッコーネの2人に最終盤まで食らいついていた。この前半部分だけでいえば間違いなくマルタン以上にチームのエースであり続けていた。
さすがに後半、ピレネーやアルプスの本格山岳が始まってくると失速するが、それでも総合21位は偉大。今後も小さなステージレースなどでの活躍に期待できるだろうか。
そしてマルタンも、とくにアルプス以降、日々着実に総合成績を上げていき、最終的には総合12位と大健闘した。2年前彼がツールに初挑戦したときから、まずは総合20位以内に入ることが最初の目標だろうと踏んできた。だが、2年連続でそれは果たされず、今年も期待しつつも本心ではまた厳しいのではないかと考えていた。
が、今回はそれを、安定した走りによって達成。どころかTOP10まであとわずかなところまで迫ってきた。色々と総合上位勢の欠場やリタイアもあってのことではあるが、まだまだ彼に総合エースクライマーとして期待するのを止めるのは早いかもしれないね。
ただ個人的にはパンチャー的な適性をより強く持つ彼のステージ優勝にも期待したいところはあって、とにかく逃げ切りでなんとか勝ってほしいところ。
第13位 UAEチーム・エミレーツ 235pt.
逃げ一覧
- アレクサンドル・クリストフ(第12ステージ)
- スヴェンエリック・ビストラム(第17ステージ)
- ファビオ・アル(第19ステージ)
- ダニエル・マーティン(第15・19ステージ)
- ヴェガールステイク・ラエンゲン(第17・20ステージ)
- ルイ・コスタ(第12・17・20ステージ)
- セルジオルイス・エナオ(第14・17・18ステージ)
これまで、総合表彰台のイメージはないものの、総合TOP10には安定的に入ってくる実力者であったマーティンが、今回のツールでは大爆死してしまった。トゥールマレーでもガリビエでも、あんなにずるずると落ちていく彼の姿は衝撃的すぎた。
蓋を開けてみればさりげなくアルの方が総合が上という。ちなみにアルやエナオはアシストとしてはどれくらい機能していたのだろう・・・並行して行っていたゲームではエナオのアシストが活かされながらマーティンも絶好調だっただけに、今回の結果には混乱してしまう。
クリストフも、スイスからこっち十分に実力を発揮できているとは言い難い。これでガビリアがしっかりと出られていれば違ったのだろうか。
逆に若手のジャスパー・フィリプセンは調子が良い。クリストフが2位に入った第4ステージは強力なリードアウトを見せていたし、第7ステージでは彼自身がエースとして上位に食い込んだ。彼はこの後も間違いなくさらなる進化を遂げるであろう。このチームは彼やポガチャルといった若手の才能の育成に本腰を入れていってほしい。
第12位 AG2Rラモンディアル 335pt.
逃げ一覧
- ブノワ・コズネフロワ(第6ステージ)
- アレクシ・ヴィエルモーズ(第14ステージ)
- オリバー・ナーセン(第9・12ステージ)
- ロマン・バルデ(第15・18ステージ)
- アレクシ・グジャール(第16・17ステージ)
- マティアス・フランク(第12・15・18ステージ)
- トニー・ガロパン(第10・12・15・19・20ステージ)
ずっと不調の続いていたバルデ、いよいよこれほどまでに、といった感がある。第14ステージでトゥールマレーではなくその手前の1級山岳から遅れてしまったのは衝撃的すぎた。
そこから山岳賞に切り替えて成功したわけだが、ほぼ第18ステージだけで稼いだ感はある。ステージ優勝までは取れなかったし、第20ステージでジャージを失わずに済んだのは運によるところもあっただろうしで、素直に喜べない部分はある・・・。
ただバルデの今回の不調は彼だけに責任を帰せられるものではなく、チーム自体も昨年までのバルデ一強体制(今年のアスタナのような)ではなくステージ優勝も視野に入れた編成をしてきており、案の定山岳の終盤でバルデの近くには誰もいないという状態が目立ったことも理由であった。ヴィエルモーズも万全なコンディションではない中で、同じく不調だったラトゥールに代わる形で急遽の参戦だったからね・・・。
バルデが良い状態でない以上、このチーム編成は妥当ではあるものの、やはりそれならばもっとバルデ以外による結果を期待したかったところ。ナンス・ピータースによる勝利を成し遂げたジロと比べ、このツールにおけるこのチームの成績はかなり満足とは程遠いところであろう。
コズネフロワとかグジャールとか、好きな選手が多いだけにねぇ・・
11位~1位はこちらから。
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