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獲得UCIポイントで見る ジロ・デ・イタリア2019 全チームランキング(前編)

今回のジロ、最も「成功」したチーム、あるいは「失敗」したチームはどこだろう・・・と考えたときに、なんとなくはイメージできるかもしれないが、明確な基準をもって比較するのは難しいのではないだろうか。

 

そこで、今回はそのあたりをデータできっちりと出すことにした。基準は先日の北のクラシックレビューでも用いた「獲得UCIポイント」。今回は、ジロに出場した全176名の獲得UCIポイントをすべて算出した。

UCIポイントの配点が妥当かどうかは論の分かれるところだとは思うが、1つの基準として、参考にしてもらえると幸い。

 

また、「逃げ」というのも、そのチームが目立ったかどうかを測るうえで重要な指標。ポイントには関わらないことの多いこの「逃げ」についても、各チームまとめてみた。

 

完璧でないのは承知のうえだ。ステージや総合上位には入らず、逃げにも乗っていないけれども、エースを支えるために見えない形で貢献するルーラーたちの存在をこの指標では取りこぼしてしまう。

そのあたりの貢献度をデータの形で映し出す方法もいつか考えてはいきたいが、まず今回はこの形で各チームの走りを振り返っていこう。

 

前編では第22位から12位までの下位11チームを見ていく。

 

 

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第22位 イスラエルサイクリングアカデミー 20pt.

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逃げ一覧

  • ルーベン・プラサ(第6・7・13ステージ)
  • クリスツ・ニーランズ(第13・17ステージ)
  • コナー・デューン(第12ステージ)

 

昨年に続き2年連続の出場。しかし、結果を出すことはできなかった。

2015年にツールとブエルタとでいずれも山岳ステージ逃げ切り勝利を果たしたプラサももう、年か。なんとか残せるものを、と執念で逃げに積極的に乗ったものの、昨年と同じく、あと一歩届かなかった。

チモライも実力はあるが、トップスプリンターたちには敵わず。彼らが軒並み退場した第18ステージはチャンスだったが、7位に沈む。

そして上記元ワールドツアー選手たちくらいしか頑張れず、あとは逃げも含めて全く目立たず。

ガイ・ニーヴとか、ボワヴァンとか、昨年はもうちょっと頑張ってた気がするのだが・・・

 

 

第21位 バルディアーニCSF 32pt.

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逃げ一覧

  • ミルコ・マエストリ(第2・4・11・17・18ステージ)
  • ジョヴァンニ・カルボーニ(第6・19ステージ)
  • マヌエル・センニ(第12・19ステージ)
  • ルーカ・コヴィーリ(第10・12ステージ)
  • ウンベルト・オルジーニ(第5ステージ)
  • エンリーコ・バルビン(第5ステージ)

 

ライバルとも言うべきアンドローニと比べると結果としては出せなかったが、それでもカルボーニが数日間マリア・ビアンカを着たり、マエストリが連日積極的に逃げたりと、存在感は示した。2年前、衝撃の開幕直前ドーピング違反者2名輩出のイメージがまだまだつきまとうが、それでも良い意味でプロコンチネンタルチームらしい走りをこれからも見せてほしい。

第6ステージの躍進だけでなく、終盤の第19ステージでも4位に入るタフさを見せたカルボーニは、今年24歳のまだまだ若い逸材。現状、2021年までバルディアーニと契約を結んでいるが、その間にさらなる覚醒もありそう。これからも注目すべき選手だ。

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第20位 チーム・ディメンションデータ 48pt.

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逃げ一覧

  • エンリーコ・ガスパロット(第12ステージ)
  • ダニーロ・ヴィス(第12ステージ)
  • アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(第20ステージ)

 

ワールドツアー最下位常連チームは、このジロでも振るわず。昨年、終盤でリタイアするまでは総合12位に位置しており、総合系の有望株として注目を集めたオコーナーも、その期待に応えることができなかった。せっかくエースナンバーをもらったのに。逃げにもほとんど選手を乗せなかったので、本当に空気なチームとなってしまった。

そんな中、光明を感じたのが最終山岳ステージで逃げたゲブレイグザブハイアーの存在。かつてツールでも脚光を浴びたテクレハイマノが今やプロコンチネンタルチームにすら所属できない現状のなか、エリトリアの新たな希望の星である。

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第19位 CCCチーム 64pt.

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逃げ一覧

  • アマ―ロ・アントゥネス(第6・17・19ステージ)
  • ルーカス・オウシアン(第2・16ステージ)
  • ビクトル・デラパルテ(第13・17ステージ)
  • ヨセフ・チェルニー(第12ステージ)
  • フランシスコホセ・ベントソ(第16ステージ)

 

ほぼプロコンチネンタルチームのような陣容で、果たすべき役割を果たしたといった印象。すなわち、山岳ステージでは連日のように逃げを乗せ、アントゥネスは第19ステージでは執念で追走集団から先頭に飛び乗るなど、しっかりと名前を売った。チェルニーも最終日の個人TTで一時はホットシートに座るなど、強さを見せつけた(最終6位)。

チームとしてはあくまでもプロコンチネンタルチームの延長みたいな印象で、来期の補強は絶対の課題となるが、それでも今いるメンバーが決して弱いわけではないことを示せた3週間となった。 

 

 

第18位 NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ 120pt.

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逃げ一覧

  • ダミアーノ・チーマ(第2・4・8・11・18ステージ)
  • 初山翔(第3・10ステージ)
  • イヴァン・サンタロミータ(第5・19ステージ)
  • ヨセフ・チェルニー(第12ステージ)
  • ニコラ・バジオーリ(第6ステージ)
  • マルコ・カノラ(第19ステージ)

 

ひたすら逃げて、逃げて、逃げ続け、その最終章を勝利で飾るという最高にカッコいい姿を見せてくれたチーマに乾杯!

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ツアー・オブ・ジャパンに出場した弟のイメリオは残念ながらリタイアで終わったが、兄の方は今回あまりにも大きな成果を残してくれた。

何しろ、チームとして初めてのジロ勝利なのだ。

そして総合フーガ賞も獲得。徹底して平坦ステージのみで逃げるという、明確にそれを狙った走り方も素晴らしい。

それで勝っちゃうんだもんなぁ・・・第18ステージの最後の伸びは、あれは偶然でも奇跡でもない。普通なら捕まえられてしまうところを、彼の足が誰もが予想していた以上に残っていたからこそ勝てたのだ。

 

そしてもちろん、初山翔。

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マリア・ネッラも着用し、今大会の主役の1人だったといってもおそらく過言ではない。何しろずっと廃止されてきた特別ジャージを特例で復活してくれたのだ。

勝者を独特なイラストで表現してくれる有名なpro cycling trumpsのジロまとめにも登場する注目のされようは本物だ。

もちろんそれは、初日で西村が衝撃的なリタイアをしたことも影響があったり、日本という国に対する元来の評価の低さもあるのは間違いないが、これをきっかけに低迷する男子ロードレース界が盛り上がってくれれば嬉しい。

一方、今大会ダブルエースとして注目されていたはずのカノラとフアンホセ・ロバトは全く目立てず。カノラは終盤にチーマに続く勝利を狙って良いところまでいったが、届かなかった。

今後の飛躍に期待だ。

 

3年ぶりのジロ出場を果たした上で、バルディアーニ以上の成績を出し実質プロコン2位の注目度を集めた今大会は、NIPPOにとって間違いなく成功と言えるだろう。

しかし現実は厳しく、ジロ終了直後、2014年以来チームを支えてくれたワインメーカーのヴィーニファンティーニ社が来年度のスポンサー離脱を発表。

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今年からプラスチック加工会社のファイザネ社がスポンサーについているのと、デローザも引き続き契約はしているだろうが、ヴィーニファンティーニ社の存在感は大きかったことが推測されるだけに、今後どうなるか・・・。

日本でも今年、ヴィーニファンティーニ社のワインの消費量少しは増えたと思うんだけどなぁ笑

 

 

第17位  チーム・サンウェブ 160pt.

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逃げ一覧

  • ヤン・バークランツ(第12・17ステージ)
  • ルイス・フェルファーク(第5ステージ)
  • サム・オーメン(第6ステージ)
  • ジェイ・ヒンドレー(第16ステージ)

 

サンウェブにとって、このジロは実に苦しい戦いとなった。エースのデュムランの早期離脱はもちろん、そのあともセカンドエースになりうるサム・オーメンやロバート・パワー、果敢な逃げを見せてくれた若手フェルファークも次々とリタイアし、最後はたったの4名でヴェローナに到着することとなった。

そんな中、最後に魅せてくれたハガ。普段はチームの縁の下の力持ちとして目に見えないところで活躍するだけだった彼が、最後の最後でチームにとってあまりにも大きすぎる勝利をもたらしてくれた。あのカンペナールツを打ち破っての勝利は間違いなく大金星。それも、ラストの数日はひたすらこの日のために足をためていたという戦略の妙と、そしてタイムを伸ばした後半の、テクニカルな下りに対して臆せず果敢に攻めたことが勝因だった。

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チームの実力から言えば決して満足のいく結果ではなかったであろうが、次はツール。なんとかリベンジしていってもらいたい。

 

 

第16位 AG2Rラモンディアル 216pt.

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逃げ一覧

  • フランソワ・ビダール(第2・16・19ステージ)
  • トニー・ガロパン(第7・13・14ステージ)
  • ナンス・ピーターズ(第6・17ステージ)
  • ユベール・デュポン(第14ステージ)
  • ニコ・デンツ(第18ステージ)

 

初めからスプリントと総合は眼中にない面子を揃え、ひたすら逃げとステージ優勝にフォーカスして挑んだ今年のジロ。本来その実力が最も高いはずのガロパンとヴィエルモーズが成し得なかった勝利を、プロ未勝利の若手が掴み取った。

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たしかに今年の彼はひたすら調子が良かった。いつか大きな勝利を獲得するのは間違いなく、それはレース開催前の全チームスタートリストの記事でも言及していた。第17ステージで逃げたとき、それがもしかしたらこの日かもしれない、とも思った。

だがまさか、残り16㎞のあの飛び出し一発で決めるとは思わなかった・・・!  確かに、クライマーたちに混じって登りで勝負するよりもその前の平坦で抜け出した方が有利かもしれないが、しかしあそこから捕まえられることなく最後まで逃げ切る足は本物。しかも追撃してたのは、2日後には逃げ切り勝利を果たす元グランツール総合優勝候補のエステバン・チャベスなのだから・・・!

彼やチーマの勝利を見れただけでも、今年のジロは面白かったと言える要素になっている。

次はビダールの番。彼も今回のジロの走り、決して悪くはなかった。ステージレースの総合上位も狙えるポテンシャルを持つ男だ。

 

 

第15位 ドゥクーニンク・クイックステップ 228pt.

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逃げ一覧

  • ピーター・セリー(第6・19ステージ)
  • エロス・カペッキ(第12・20ステージ)
  • ミケルフレーリク・ホノレ(第16ステージ)
  • ボブ・ユンゲルス(第17ステージ)

 

2016年はジロ4勝、ツール1勝、ブエルタ4勝。

2017年はジロ5勝、ツール5勝、ブエルタ6勝。

2018年はジロ5勝、ツール4勝、ブエルタ4勝。

そして今回は0勝。

この常勝軍団が勝てないグランツールは、2015年のブエルタ以来である。もちろん上の勝利数はスプリンターによるものが大半だが、それ以外の勝利もコンスタントにとってきたはずのクイックステップが、まさかの失墜である。

 

とはいえ、勝てはしなかったし、その数字は大きくないが、「少なくともUCIポイントは獲得した」選手の多さが、さすがクイックステップである。誰もが活躍するチーム。

たとえば、ヴィヴィアーニは失意のうちにツールに備えるため早退したが、残されたチームの中でも発射台のセネシャルが第18ステージで上位につけるなど、若手も着実に成長している。このセネシャルが来年、突如としてスプリント勝利を量産し始めても、何らおかしくはない。

2年ぶりに総合を狙ったユンゲルスは山岳ステージ序盤からずるずる遅れる姿が目立ち、今年は総合では厳しかった年だった。そこからステージ優勝に切り替えてもっと積極的に動いてはほしかったが、今回は完全に足がなかったのかな。

 

 

第14位 チーム・カチューシャ・アルペシン 240pt.

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逃げ一覧

  • イエンセ・ビエルマンス(第12ステージ)
  • マルコ・ハラー(第12ステージ)
  • イルヌール・ザカリン(第13ステージ)

 

最近のステージレースのカチューシャはなんかバタバタ落車するところばかりが目立つ印象で、今年も序盤はそんな感じだった。

が、なんとかザカリンのステージ優勝!

2017年国内選手権ITT以来、それ以外では2016年のツール以来の勝利である。彼もまた、キッテルと共に辛く苦しい時期を過ごしてきた男だっただけに、最後ニエベらを切り離して独走を開始したときは感動だった。

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さすがにそのあとは総合争いでずるずると落ちていったが、まあそれは仕方ない。これからも焦らずにしっかりと成績を残していってほしい(ただしチーム移籍の可能性もあり)。

それ以外のメンバーが逃げも含め振るわなかったのは残念。逃げで最も期待できそうなナバーロが早期リタイアだったのも痛手だったか・・・

 

 

第13位 チーム・イネオス 280pt.

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逃げ一覧

  • エディ・ダンバー(第12・13・20ステージ)
  • セバスティアン・エナオ(第7ステージ)
  • クリスティアン・クネース(第12ステージ)
  • イバン・ソーサ(第14ステージ)

 

開幕直前のベルナル欠場はあれど、それでもまさかこんなにも存在感を示すことなく終わるとは思っていなかった。

決して弱いメンバーを連れてきているわけではない。直前のアルプスで総合優勝しているシヴァコフ、同総合2位のゲオゲガンハート、そして何より、ベルナル以上の逸材とも囁かれていたソーサが出場していたのに・・・。

もちろんシヴァコフのこの若さでの総合9位は凄いと思うし、ソーサもまだまだワールドツアー1年目だ。ベルナルと比較しすぎるのも酷かもしれない。

しかし彼らならば、という期待はやはりあるはずで、ここは厳しくも言わざるを得ない。残念な結果だったと。

そもそも今大会の総合TOP10は、カラパス以外は全員、残念だったと言わざるを得ない結果であるが。

 

その中で印象的な走りを見せてくれたのがダンバー。

まだ22歳の、彼もまた超若手。アイルランドの至宝である。昨年まではアクアブルー・スポートに在籍しており、シーズン途中の突如のチーム解散の憂き目に遭ったところに、異例のシーズン中獲得をしたスカイ(当時)。その見る目は間違いなかったというわけだ。このチームの人材発掘力は本当すごいな。

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第12ステージでこのダンバーのために、平坦区間でガンガン牽いてくれたのがクネース。彼もまたいぶし銀ルーラー。才能ある若手の中で光る、こういったベテランの存在がこのチームの強さの秘訣。今回はうまくいかなかったジロだけど、これからも最強であり続けること、間違いなし。

 

 

第12位 EFエデュケーション・ファースト 288pt.

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逃げ一覧

  • ショーン・ベネット(第2・12ステージ)
  • ジョセフロイド・ドンブロウスキー(第13・16ステージ)
  • タネル・カンゲルト(第17・20ステージ)
  • ヒュー・カーシ-(第14ステージ)
  • ネイサン・ブラウン(第16ステージ)

 

勝利もなく、総合TOP10にも入れなかった。にも関わらず、彼らが妙に目立っていたように感じたのは、そして実際にUCIポイントランキングでもこの位置にいられるのは、後半の山岳連戦に入ってから輝き出した若手カーシーと元・若手ドンブロウスキーと新加入の実力者カンゲルトの粘りの走りの連発だった。

とくにカーシーは直前のロマンディから見せていた走りの積極性を継続し、終盤は総合上位のシヴァコフやザカリンよりも明らかに目立つ走りをしてみせていた。

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彼はこのあとさらに成長していく勢いを感じる。

今年はこのあとツールに出るのかブエルタに出るのかは分からないが、個人的にはブエルタに出場てくれれば、確実に総合TOP10入りもしくはステージ優勝を取れると確信している。


 

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