りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

スポンサーリンク

【PCM2019】クラシカ・サンセバスティアン

今週末にスペイン・バスク地方で開催されるクライマー向けのワンデーレース「クラシカ・サンセバスティアン」。

すでにスタートリストが(今後変更の可能性を含みつつも)公開されているようなので、自転車ロードレースシミュレーションゲーム「ProCyclingManager2019」を使用し、実際のスタートリストを再現したうえでのコースの予習および「シミュレーション」をやってみたいと思う。

 

前回までやっていたツール・ド・フランスのプレイレポートでは実際のスタートリストとは全く違うものでやっていたため、スタートリストを合わせてのプレイは今回が初。

どんな感じになるか分からないが、実際のレースに向けての参考になれば幸いだ。

 

スポンサーリンク

 

 

f:id:SuzuTamaki:20190728220741j:plain

今回プレイするのは今週末にスペイン・バスク地方で開催される「クラシカ・サンセバスティアン」。

総獲得標高4,000m近い激しいアップダウンが特徴で、パンチャーレベルでも生き残ることは難しく、グランツールで総合争いをするようなクライマーたちが勝敗を分け合うクライマーズクラシックだ。

 

f:id:SuzuTamaki:20190728221132j:plain

今回は現時点で公開されている(おそらく大半はそのままでいくであろう)スタートリストを再現してプレイする。いわば、実際のレースで誰が勝つかを予想する「シミュレーション」を行うというわけだ。

(上記画像のゼッケンNoは実際のレースとは異なります。またスペースの問題でブルゴスBHは上記画像から省略されています)

 

 

そのうえで重要なのは、「勝てるチーム」を自チームとして選択しない、ということだ。正確なシミュレーションでなくなってしまう。

よって、今回、選択するのはカハルラル・セグロスRGA。プロコンチネンタルチームの彼らがこのクラシカ・サンセバスティアンを制する可能性はほぼないと思われる。

f:id:SuzuTamaki:20190728221436j:plain

が、だからといって勝ちを狙わないわけではない。

このチームにも注目すべき選手がいる。バスク出身のアレックス・アランブル(スペイン、24歳)。今年も各種レースの逃げに活躍したりと、割と存在感を示している若き実力者である。

彼をエースに据え、あくまでも勝利を狙ってプレイしつつ、実際のレースのシミュレーションを行う。それが今回の目的だ。

 

カハルラル・セグロスRGAのメンバー及び各能力値は以下の通り。

f:id:SuzuTamaki:20190728221545j:plain

ただ一人、ジョエル・ニコラウ(スペイン、22歳)はトレーニーのためゲームには登録されておらず、スタートリストには名前がありながらも再現できていない。

代わりにドミンゴス・ゴンサルベス(ポルトガル、30歳)を加えている。TT能力に秀でつつ丘陵能力もそれなりにあり、道中のプロテクト役として役に立ちそうという判断だ。

 

 

ゲームが判断する優勝候補は以下の通り。

f:id:SuzuTamaki:20190728222226j:plain

昨年優勝者のアラフィリップ、今年彼のライバルとして鎬を削り合う存在のフルサング、そして世界王者のバルベルデなど、順当な面子。

果たして、波乱は起こるか。

 

 

実際のレースでのメンバーのコンディションは以下の通り。

f:id:SuzuTamaki:20190731213330j:plain

パラメータ的には今回のメンバー随一であり、アランブルと共にダブルエースとする予定だったセルゲイ・チェルネトスキー(昨年までアスタナに所属しており、昨年のアークティックレース・オブ・ノルウェー総合優勝者)がまさかの-3コンディション。

エースのアランブルも-1と、決して良い状態ではない。まあ、今回は勝つのが目的ではないので・・・。

 

f:id:SuzuTamaki:20190731213815j:plain

スタート直後にルイス・フェルファーク(チーム・サンウェブ)とローレンス・テンダム(CCCチーム)が逃げに乗る。

そして驚くべきことに、今回の逃げはこの2人だけ。

確かに、逃げ切りはまず難しいレースではあるものの、いくらなんでもクラシックで子の展開というのは、現実のレースではちょっとないだろう。

集団もたった2人の逃げということで早々にペースダウン。しばらくは落ち着いた展開が続いた。

 

f:id:SuzuTamaki:20190731214324j:plain

スクリーンショットでは見づらいかもしれないが、スタートして間もなく雨が降り始める。途中何度か晴れるものの、レース中の大半は降っていた形だ。

プロトンの先頭は主にモビスターが中心となって支配。その中でもルイス・マスが先頭を牽引する姿が目立った。昨年までカハルラルのメンバーだった男で、ブエルタでも常連の逃げスペシャリスト。モビスターでは今年のジロにも出場しており、アシストとして見事な働きを続けている。

 

モビスター以外ではドゥクーニンク・クイックステップの「トラクター」ことティム・デクレルクやミッチェルトン・スコットのジャック・バウアーなどの平坦牽引スペシャリストたちがしっかりと仕事をこなしていた。

 

 

降りしきる雨は集団内で落車を誘発する。

序盤からタオ・ゲオゲガンハート(チーム・イネオス)やタデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)、サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)ら有力選手たちが次々と犠牲になっていく。

f:id:SuzuTamaki:20190731215036j:plain

 

これらの落車はまだ前半での落車だったために、集団への復帰は問題なかった。

しかし勝負所に差し掛かる残り60km地点、1級山岳エライツ(Erlaitz)の下りにて、ポガチャルが2度目の落車。

さすがにこれは致命的となり、集団復帰は不可能に。勝負権を失うこととなった。

 

 

そんなエライツは最後から3番目の登りであり、レース中2つある1級山岳の2つ目にして最後の登り。登坂距離7~8kmほどで平均勾配は6~7%。しかしとくに登り始めの勾配がキツく、ゲーム中では最大で13%ほど。それ以外にも10%に達する区間が複数回登場する。

f:id:SuzuTamaki:20190731215704p:plain

f:id:SuzuTamaki:20190731220530j:plain

f:id:SuzuTamaki:20190731220734j:plain

エライツの頂上付近では集団も一気に絞り込まれ、アランブルもたった一人に。集団の先頭はトレック・セガフレードの有望な若手イクラス・イーグが強力に牽引。

アランブルはバルベルデやファビオ・フェリーネ、ゴルカ・イサギーレといった選手たちと共になんとか集団前方でこなしていくが、彼以外のプロコンチネンタルチームの姿は見る影もない。

 

f:id:SuzuTamaki:20190731220939j:plain

エライツの登りでカハルラルのメンバーは燦燦たる有様に。パワー90以上出していてもまったくついていくのが精いっぱいで、アランブル含め全員無酸素運動ゲージ(赤ゲージ)が空っぽに。

そんな状態でもしっかりと喰らいつきポジションを落とさない走りができるあたり、アランブルは本当に強い選手だと思う。このゲームって地元ボーナスでもついているの?(だとしたらある意味リアルだ)

 

あと、この登りで逃げに乗っていたテンダムがフェルファークを突き放して独走を開始。

しかし彼も次の登りに入った瞬間(残り40km)に吸収されてしまう。

 

 

エライツの下りで集団はある程度もとに戻るものの、カハルラルからもジョン・イリサーリクリスティアン・ロドリゲスが完全に後れを喫してしまい脱落。残り5名に。

 

 

そしてラスト2つ目の2級山岳メンディゾロッツ(Mendizorrotz)に。

f:id:SuzuTamaki:20190731221825j:plain

登坂距離4~5km、平均勾配6.5%~7.5%。

ただし本当に重要なのは前半の2.5km。ここは、このレースの最後の勝負所「ムルギル・トントーラ」と重なる部分である。

最大勾配は19%弱。まさに勝負を決める登りである。

 

この「ムルギル・トントーラ」区間にて集団が一度分断。アランブルも後方に取り残される。

f:id:SuzuTamaki:20190731222225j:plain

幸いにも直後に一旦の下り区間が訪れたため復帰を果たすが、実際のレースでもここである程度の動きが巻き起こってくることだろう。

 

 

とはいえ、このクラシカ・サンセバスティアンの勝負所はあくまでもラスト10km。もう一度「ムルギル・トントーラ」を登るところである。

そこまでは言わば前菜。たしかに、エライツとメンディゾロッツ(≒1回目ムルギル・トントーラ)の強烈な登りによって多くの選手の足は削られることだろうが、それでも有力勢の多くは落車以外では欠けることなく、集団の規模もそこまで絞り切られることのないままスタート/ゴールの町三セバスティアン(ドノスティア)に戻ってくることだろう。

 

そして始まる、最後の登りムルギル・トントーラ。

f:id:SuzuTamaki:20190731223121j:plain

登坂距離2~2.5km、平均勾配9~10%。短くも強烈な登り。

特にラスト1.8kmの登りは平均勾配11.4%・最大勾配18.2%の超激坂区間として、毎年必ず勝負を決めるアタックが繰り出される区間である。

 

 

ここでまず攻撃を仕掛けてきたのはアスタナ・プロチーム。

f:id:SuzuTamaki:20190731224226j:plain

f:id:SuzuTamaki:20190731224105j:plain

ペリョ・ビルバオゴルカ・イサギレに牽かれてアレクセイ・ルツェンコがアタック。

エースのヤコブ・フルサングを後ろに残したままサブエースの攻撃という、なかなか興味深い戦術。実際、今回のツールでルツェンコは調子良かったし実際のレースでもこれはアリだろう(そもそもフルサングがツールの落車からどれくらい回復しているかも未知数だし)。

 

アランブルもヨナタン・ラストラに守られながらこれを追いかけていく。そしてその隣にはディフェンディング・チャンピオンにして今年も最大の優勝候補であるジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)の姿が。

左側からはワウト・プールスに導かれたチーム・イネオスのエガン・ベルナルの姿もあり、この辺りが今大会の有力候補となりそうだ。

 

だが、結局はムルギル・トントーラ頂上付近にてルツェンコたちも捕らえられ、オマール・フライレに牽かれたフルサングによる第2撃も繰り出されたもののアラフィリップを先頭にした有力勢はこれを逃さない。

f:id:SuzuTamaki:20190731225004j:plain

プールス、ベルナルのほか、グルパマFDJのダヴィ・ゴデュ、トレック・セガフレードの2016年覇者バウケ・モレマ、そしてEFエデュケーション・ファーストのマイケル・ウッズなどの優勝候補たちが一塊になってムルギル・トントーラをクリアしていく。

 

このまま集団でゴールまで到達してしまうのか、と思った矢先・・・

 

 

f:id:SuzuTamaki:20190731225257j:plain

集団の後方から、鋭い勢いでミケル・ランダ(モビスター・チーム)がアタック!

地元バスク出身選手でこの大会の有力な優勝候補でありながら、昨年はベルナルと共に無念の落車リタイアを喫した男。

まるでそのリベンジであるかのように、頂上で集団が一瞬ゆるんだ隙をついて一気に勝負に出た。

f:id:SuzuTamaki:20190731230243j:plain

美しいビスケー湾を臨む高台を単独で突き抜けながら、ラスト5kmのゲートを潜るランダ。アランブルは集団の先頭に立ってこれを追い、アラフィリップがその背中に貼り付いてくる。

f:id:SuzuTamaki:20190731230522j:plain

 

ここで悲劇が発生。

最後の下りへと突入する直前の急カーブ。ここのイン側で、ティム・ウェレンス(ロット・スーダル)が押し出される形で落車してしまう。

f:id:SuzuTamaki:20190731230619j:plain

先ほどまでアランブルをアシストしていたラストラもこれに巻き込まれるが、中心にいたウェレンスはこれによって即時リタイア。

実際のレースでも、同じような悲劇が起きなければいいのだが・・・しかし起こりやすいのもこのレースではある。昨年のランダ、ベルナルのように。

 

 

強烈な勢いで独走し逃げ続けるランダだったが、ラスト1km目前でルイ・コスタを先頭に追いかける集団によってついに飲み込まれる。26名の大集団のままゴールへ。

f:id:SuzuTamaki:20190731230928j:plain

f:id:SuzuTamaki:20190731231333j:plain

そしてここで、アラフィリップ動く。
ラスト1kmを過ぎてからのスプリント開始。そしてアランブルもここに、きっちりと喰らいついていく。

ポジションとしては最高の位置。

あとは、最適なタイミングでアラフィリップの脇から飛び出して――。

 

f:id:SuzuTamaki:20190731231532j:plain

ってまあ、そんなうまくいくわけないんですけどね。

 

結局、スプリントを開始しても前になんか出られるわけもなく、それどころか後方から追い付いてきた集団に飲み込まれてしまった。

 

f:id:SuzuTamaki:20190731231809j:plain

それでも10位に食い込んだので、よく頑張った方だとは思う。

2位につけたのはビルバオ。実際、フルサングがツールの落車の影響から調子を取り戻せていない場合、スプリント力の高い彼が上位に入り込む可能性はそれなりにありそうだ。

 

もちろん、今回のゲームのような大集団スプリントになることはあまり考えづらい。あくまでもムルギル・トントーラで抜け出した数名の小集団スプリントで決着するパターンが最も可能性が高いだろう。

 

ゲームはあくまでもゲーム。参考にしつつも、実際のレースで巻き起こる現実ならではのドラマを楽しみにしたい。

 

 

スポンサーリンク

 

 

スポンサーリンク