以前、北のクラシックについて、獲得UCIポイントによるランキングを掲載した。
北のクラシックがあれば、当然、それと対を為すような「アルデンヌ・クラシック」についても、同様にランキングを作成していきたいと考えている。
ただし、一般的にアルデンヌ・クラシックと呼ばれているワールドツアーレースは3つしかない。
そこで今回は、広く「パンチャー・クライマー向け」のワンデーレースというところまで幅を広げアルデンヌ「系」クラシックとして6つのレースを選出した。
対象6レース
- ストラーデ・ビアンケ(3/9)
- アムステルゴールドレース(4/21)
- ラ・フレーシュ・ワロンヌ(4/24)
- リエージュ~バストーニュ~リエージュ(4/28)
- クラシカ・サンセバスティアン(8/3)
- イル・ロンバルディア(10/12)
選出については悩んだところもあるが、できる限り北のクラシックの有力選手と重ならないことを意識したということでご了承願いたい。
この6レースを踏まえ、ワンデーレースに強いクライマーは誰か、ということを客観的なデータで探っていきたい。
今回は20位~11位の選手たちを紹介。
(年齢は全て2019/12/31時点ものとします)
↓10位~1位はこちらから↓
- 第20位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、25歳)
- 第19位 ダヴィ・ゴデュ(フランス、23歳)
- 第18位 マルク・ヒルシ(スイス、21歳)
- 第17位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、32歳)
- 第16位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、30歳)
- 第15位 アダム・イェーツ(イギリス、27歳)
- 第14位 エガン・ベルナル(コロンビア、22歳)
- 第13位 パトリック・コンラッド(オーストリア、28歳)
- 第12位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、19歳)
- 第11位 ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、22歳)
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第20位 ワウト・ファンアールト(ベルギー、25歳)
チーム・ユンボ・ヴィズマ所属 獲得UCIポイント:218
マチュー・ファンデルポール同様、シクロクロスの一流選手は、北のクラシックだけでなくパンチャー向け丘陵レースも強い。ストラーデ・ビアンケなんかはその特性に合致していて、2年連続の3位。
しかも、荒れた天候の中の昨年はさすがシクロクロッサーと納得できたが、ドライな今年もまた3位、それもあのアラフィリップとフルサングに次いでの、ということでその実力が本物であることがよくわかる。
その後、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネやツール・ド・フランスでも活躍し、シーズン後半もしくはシクロクロスでの活躍が楽しみだったが、ツールの落車で残念ながらシーズン終了。
来年、早めに万全の体制で復帰できることを楽しみにしている。
第19位 ダヴィ・ゴデュ(フランス、23歳)
グルパマFDJ所属 獲得UCIポイント:253
今や揺るぎないFDJのセカンドエース。今年はUAEツアーでのパワフルな走りに加え、ツール・ド・フランスでのピノへの強力アシスト、そしてピノの代わりにエースとして臨んだミラノ〜トリノでの、執念の走り。まだまだ一線級の選手たちには届かない感じはあるものの、その気迫は十分だ。
来年のピノのスケジュールにもよるが、うまく棲み分けてゴデュ自身の成績もどんどん狙ってほしい。まずはリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ!
第18位 マルク・ヒルシ(スイス、21歳)
チーム・サンウェブ所属 獲得UCIポイント:270
昨年のインスブルック世界選手権のU23王者。その実力は本物で、とくにクラシカ・サンセバスティアンではエヴェネプールの独走が決まったために、プロトン内ではファンアーフェルマートに次ぐ2位という大金星。イツリア・バスクカントリーではパンチャー的な才能も見せつけていた。
また、E3ビンクバンククラシックでは石畳適性も見せつけている彼は、ステージレーサーというよりはクラシックスペシャリストとしての活躍がより期待できるかも。
来年チームに入ってくるティシュ・ベノートとの棲み分けが気になるところ・・・。
第17位 ゴルカ・イサギレ(スペイン、32歳)
アスタナ・プロチーム所属 獲得UCIポイント:276
イサギレ兄弟は今年、アスタナに入ってよりその力を伸ばしつつあるように思う。そして2人の役割も明確になってきたようにも。
ヨンはイツリア・バスクカントリーを始めステージレースでエースorセカンドエースとして活躍し、かつグランツールではフルサング、カタルドらと並んで最終盤まで残れる山岳アシストとして才能を発揮している。
そしてゴルカの方は、ステージレースにて弟のアシストを務めることもありつつ、最大の役目はアルデンヌ系クラシックにおけるアシストだ。今年のアルデンヌにおけるフルサングの躍進は、このゴルカの支えによる部分は非常に大きい。
そして彼自身もまた、アルデンヌエースとしてしっかりと活躍したのが、地元バスクのクラシカ・サンセバスティアン。いつかきっと、このレースを制するときが来るはず。イツリア・バスクカントリーをヨンが、クラシカ・サンセバスティアンをゴルカが制するなんて、サイコーに喜ばしいことじゃないか。
第16位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、30歳)
UAEチームエミレーツ所属 獲得UCIポイント:293
ピュアパンチャーという形容が最も相応しい選手の1人だと思っている。スプリントではスプリンターたちには敵わなく、グランツールで総合を狙えるような登坂力があるわけでもない。山岳エスケープも厳しい。
ただ、激坂に近い登りスプリントや丘陵ステージでは無類の強さを誇る。今年はとくに調子が良く、「パンチャー向け」レースでは常に安定感のあるリザルトを残してきていた。
自分は何か、そういう選手が好きなんだと思う。サイモン・ゲランスなんかがそれに近い選手だったが、昨年引退してしまいとても残念だった。
ウリッシにもまだまだ活躍してもらいたいところ。クラシカ・サンセバスティアンなんかも、本来は得意としているレースのような気がするんだけど、どうなんだろう。
第15位 アダム・イェーツ(イギリス、27歳)
ミッチェルトン・スコット所属 獲得UCIポイント:310
昨年はサイモンの年で、今年はアダムの年だ!と期待していた。事実、シーズン序盤はティレーノ〜アドリアティコでの快走など、悪くはなかった。が、結局ツール・ド・フランスでは活躍しきれず。
ただ、よりグランツールレーサータイプのサイモンに対し、元々パンチャー的な素質が強いように感じられていたアダムの特質がよりはっきりとしてきた1年と言えるかもしれない。表中にあるリエージュ〜バストーニュ〜リエージュのリザルト、そしてミラノ〜トリノ3位などのリザルトが、その思いを強くさせる。世界選手権イギリス代表に選ばれたのも、サイモンではなくアダムだった。
来年は、その特性をより活かしていく方向を期待している。例えばオリンピック。フルームやトーマスにも可能性のあるレースだと思うが、アダムもまた、十分に金メダリストになれるチャンスだと思っている。
第14位 エガン・ベルナル(コロンビア、22歳)
チーム・イネオス所属 獲得UCIポイント:325
彼は基本的にフルーム同様に、グランツールレーサーとしてこれからも大成していくものと思っている。
ただ、レーサーとして成長してきた基盤であるイタリアは、彼にとっては第2の故郷とも言える場所。そのイタリアの、最高峰のレースの一つであるロンバルディアとその前哨戦レース群は、彼にとっても魂を込めるだけの価値があるものだろう。ひとまず今年は、グラン・ピエモンテ優勝とイル・ロンバルディア3位と、大きな成果を残すことには成功した。
今後も、基本的にはグランツールにのみ焦点を絞っていくだろうが、もしかしたらこの秋のイタリアクラシックだけは、彼自身の強い望みで今後も出場し続けてくれるかもしれない。そうしたら、ぜひロンバルディア制覇は、成し遂げてほしい。
第13位 パトリック・コンラッド(オーストリア、28歳)
ボーラ・ハンスグローエ所属 獲得UCIポイント:330
ボーラの影の実力者。本当にこのチームは魅力的なクライマーが数多い。グランツールで結果を出すのは難しいが、今後も1週間のステージレースでは安定した成績を残し続けてくれるだろう。
来年はツアー・オブ・オーストリアもプロシリーズに組み入れられ、現行のHCクラスと同等の価値を持つようになる。コンラッド、あるいはチームメートのグロスチャートナーには活躍を期待している。
第12位 レムコ・エヴェネプール(ベルギー、19歳)
ドゥクーニンク・クイックステップ所属 獲得UCIポイント:400
今年最大級に驚かせてくれた男の1人。クラシカ・サンセバスティアンを優勝し、堂々たるランクイン。
今年はそれ以外のレースは出場すらしていないものの、そのアグレッシブなエスケープという勝ち方の特徴は、ストラーデ・ビアンケ、アムステルゴールドレース、あるいはリエージュ〜バストーニュ〜リエージュあたりならば向いてそう。
ただ、この勝ち方は彼があくまでも「19歳」「ネオプロ」だったから、というのは言えるかもしれない。来年、同じように勝とうとしても、マークが厳しくてなかなか難しいかもしれない。
また、来年も今年同様にどちらかというとグランツールライダーを目指していくかのようなスケジュールが立てられるのであれば、同じようにこれらのクラシックレースへの出場はないかもしれない。
いずれにせよ、あらゆる可能性を内包した、まだまだ未知数な男。来年もまた驚かせ続けてくれることを期待している。
第11位 ビョルグ・ランブレヒト(ベルギー、22歳)
ロット・スーダル所属 獲得UCIポイント:415
元U23リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ覇者は、プロ2年目にして高すぎる期待に十分に応える走りを見せてくれていた。あのままイル・ロンバルディアにも出ていたならば、もしかしたら10本の指に入るとアルデンヌ系ライダーに選ばれてもおかしくはなかった。
これだけの才能を持つ男の、あまりにも早すぎる死。
才能の寡多で死の悲しみが変わるわけではないが、世界中の多くの人びとが衝撃を受ける結果にはなった。
自転車ロードレース選手たちがいかにして、死の危険と隣り合わせにその戦いを繰り広げているかということを、我々は常に理解していなければならないのだと思う。
R.I.P. ビョルグ。
次回は10位~1位。
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