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クールネ~ブリュッセル~クールネ2019 プレビュー

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Class:ヨーロッパツアー HCクラス

Country:ベルギー

Region:オースト=フランデレン州

First edition:1946年

Editions:71回

Date:3/3(日)

 

オンループ・ヘットニュースブラッドの翌日に、同じ東フランドル州で開催されるセミクラシック。

本格的な石畳クラシックのオンループに対し、こちらはスプリンターズクラシックと呼ばれるほどのピュアスプリンター向けのレイアウト。過去にはマーク・カヴェンディッシュが勝ったこともあり、昨年もディラン・フルーネウェーヘンが制している。

今年もオンループには出場しなかったトップスプリンターたちも名を連ねており、彼らの直接対決が見られる可能性はあるものの、過去のレースを振り返ってみれば、決して純粋なスプリンター向けのレースとは言えない側面もある。

 

今回は近年の「KBK」の展開を振り返りつつ、そこから導き出される今年の優勝候補たちをプレビューしていきたい。

 

 

 

過去のレースを振り返る

前日開催のオンループ・ヘットニュースブラッドと並んで、「北のクラシック」シーズンの開幕を告げる「フレーミッシュ・オープニング・ウィークエンド」の1つとなるクールネ~ブリュッセル~クールネ(通称KBK)。

「オウデクワレモント」や「クルイスベルク」など、フランドル・クラシックの代表的な石畳激坂も用意されているものの、最後の登り「ノケレベルク」の頂上からゴールまでは50kmにわたっての平坦となっている。

それがゆえにこの大会は「スプリンターズクラシック」とも呼ばれている。昨年のフルーネウェーヘンのように、ピュアスプリンターたちが勝機を得られる北のクラシックなのだ。

 

とはいえ、そこはやはりあくまでも「北のクラシック」。

常に大集団スプリントでの決着かというとそうでもなく、クラシックならではの逃げ切りや小集団スプリントなどもよく発生している。

 

以下では、直近の3年間のレースの展開を振り返りつつ、この「KBK」の勝負所および予想される展開について予想していこうと思う。

 

 

2016年 ~ストゥイヴェンによる逃げ切り勝利~

残り80kmのオウデクワレモントで、ペテル・サガンとジャスパー・ストゥイヴェンがアタック。これが飲み込まれたあとも、残り50kmの最後の登りノケレベルクで再びアタックが巻き起こるなど、積極的な動きが繰り返された。しかしいずれも、最終的にはすべて吸収された。

しかし残り32km。クールネの街の周回コース(2周)に入ったところで横風により集団が分断。先頭はストゥイヴェン、トム・ボーネン、グレッグ・ファンアーフェルマート、ボーイ・ファンポッペルなどの精鋭が含まれる16名の集団に。

そして残り17.2km地点で、ファンポッペルの渾身の牽引に導かれたストゥイヴェンが抜け出して独走を開始。追走集団も牽制合戦の果てにメイン集団に飲み込まれ、たった1人残ったストゥイヴェンが劇的な独走逃げ切り勝利を果たした。

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2017年 ~小集団スプリントを制したサガンの勝利~ 

オウデクワレモントでゼネク・スティバルやティシュ・ベノート、ファンアフェルマート、サガンといった実にクラシックらしい16名の逃げ集団が形成される。

これは残り30km付近で吸収されそうになるが、そこからさらにストゥイヴェンがアタック。今回は逃がさないとばかりにサガン、マッテオ・トレンティン、ルーク・ロウ、ベノートが喰らいつき、ここに乗り込めなかったファンア―フェルマートは3名のチームメートと共に全力で5名を追走する。

しかし、この5名とファンアーフェルマートら追走集団とのタイム差は結局、埋まることはなかった。逃げ切った5名の小集団スプリントを制したのはサガン。前年覇者ストゥイヴェンは惜しくも2位で終わった。

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2018年 ~逃げ切りは許されず集団スプリントで決着~

この年も途中まではクラシックらしい展開だった。やはりオウデクワレモントで勝負が始まり、セップ・ファンマルクやストゥイヴェン、ファンアーフェルマートなどを含む21名の逃げ集団が形成される。

この大規模逃げ集団の大半は吸収されるが、残り50kmのノケレベルクでストゥイヴェンとダニエル・オスがアタック。途中オスがパンクで脱落し、残り34km、クールネの周回コースで、2年前同様のストゥイヴェン独走が開始される。

しかし今回は残り19kmでストゥイヴェンはあえなく捕まる。

だがそのまますんなりと集団スプリントというわけではなく、最終周回でもアタックが頻発。最終的には元クイックステップのジュリアン・ヴェルモトがラスト100mまで逃げ抜いたものの、最後には集団に飲み込まれ、その先頭を取ったのがフルーネウェーヘンであった。

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過去3年間を振り返っただけでも、一筋縄ではいかないレースであることがよくわかる。

クラシックスペシャリストたちが集団を置き去りにして逃げ切りを果たすか、はたまたピュアスプリンターがチームメートの力を借りて追い付き、混沌としたスプリントを制するか。

誰が勝つか分からないという点では、ある意味オンループよりも刺激的なレース、それがクールネ~ブリュッセル~クールネである。

 

それでは、そんな大会の今年の注目すべき選手たちを見ていこう。

 

 

注目選手

ディラン・フルーネウェーヘン(オランダ、26歳)

チーム・ユンボ・ヴィスマ(TJV)

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昨年の覇者フルーネウェーヘンは今年も絶好調だ。ここまで参戦した集団スプリントは4回だけだが、そのうちの半分で勝利している。しかも、1つは落車、1つは直前の登りで遅れてしまったことによる敗北であり、真っ向勝負で挑んだ2回のピュア集団スプリントではいずれも圧倒的な力を見せつけて勝利しているのだ。

www.ringsride.work

絶対的優勝候補の秘訣は勝利した昨年からほとんどチームメンバーを変更していないこと。唯一変わったのはトム・レーゼルとブラム・タンキンクの2名だけだが、代わって加わったのはタコ・ファンデルホールンとダニー・ファンポッペルという、昨年から実力を伸ばしつつある若手たち。昨年以上に完璧な布陣で挑む今大会、もちろん勝利のうえでの絶対条件は、決して逃げ切りを許さないこと。

なお、3年連続の出場となるアムントグレンダール・ヤンセン(ノルウェー、25歳)は、昨年パリ~ルーベ16位の、クラシックスペシャリストの卵。今年もしかしたら、彼自身による意外な強い走りを見ることができる、かもしれない。

 

 

パスカル・アッカーマン(ドイツ、25歳)

ボーラ・ハンスグローエ(BOH)

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フルーネウェーヘンと並んで、現在急激にその存在感を示しつつある新世代のジャーマンスプリンター。いや、ジャーマンスプリンターはひたすら新世代が毎年のように台頭し続けているのだが、その中でもこの男は急先鋒である。昨年はサガン、ベネットを抑えてのチーム最多勝利数を記録している。

アルガルヴェ1周レースでも、勝利こそ得られなかったものの、2つあるスプリントステージで上位を獲得し、最終的にはポイント賞ジャージを手に入れた。クラシカ・デ・アルメリアではマルセル・キッテルを力で捻じ伏せて優勝。これで今年もサガン、ベネット、アッカーマンがそれぞれ1勝ずつ稼ぎ出すところからシーズンがスタートした。今年は一体誰が一番勝つ?

チームメートも必勝態勢だ。もはやアッカーマンの専属発射台と化したリュディガー・ゼーリッヒ&ジャンピエール・ドリュケールコンビ。とくにドリュケールはクラシック適性も高く、逃げるクラシックスペシャリストたちを追いかけるうえでも重要な役割を果たすであろう(昨年はチーム最高位の6位)。その意味ではルーカス・ペストルベルガーの存在も大きい。サガン(兄)も、クラシックでは安定した集団牽引力を見せている。

ガチの集団スプリントとなればこのフルーネウェーヘンとアッカーマンが2大巨頭なのは間違いがないだろう。あとは、そういう展開に果たしてなるか、である。

 

 

マテイ・モホリッチ(スロベニア、25歳)

バーレーン・メリダ・プロサイクリングチーム(TBM)

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基本的にはピュアスプリンターたちによる集団スプリント決戦になる可能性も高いこのクールネ~ブリュッセル~クールネ。しかし、過去のレースを振り返ればわかるように、途中の北のクラシックならではの急坂を利用したアタックが頻発し、疲弊した集団の中からさらに終盤に飛び出す選手たちも数多く現れる。

3年前のジャスパー・ストゥイヴェンによる逃げ切り勝利はまさに、そういった集団内の一瞬の隙をついた鮮やかな勝利だった。

ならば今年も、同じようにタイミングを見抜き/一瞬で集団を置き去りにして/そして最後まで全力でペダルを回し続けるタフネスさ、の全てを兼ね揃えた逃げスペシャリストを優勝候補に挙げるのは決して間違っていないだろう。

ということでこの男である。昨年のビンクバンクツアーでクラシック適性とタフネスさを見せつけたこの男が、今大会も台風の目となる可能性はある。今年はここまでバレンシアナとアンダルシアに出場しているが、とくにアンダルシアでは個人TTで9位に入る独走力の高さと、登りスプリントとはいえ最終日のスプリントステージで6位に入る足を見せてもいる。

最終的に集団スプリントになったとしても、混沌として疲労が溜まっている集団内であれば、それなりに良い位置につける可能性もある男だ。

 

 

ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、27歳)

ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)

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「集団から抜け出しての逃げ切り」という意味ではこの男も当然、優勝候補にするべきだろう。今年はすでに、ツアー・コロンビア2.1でジュリアン・アラフィリップのためのリードアウト・・・をしようとしたところで集団から抜け出してのまさかの逃げ切り勝利、というのをやってのけている。今回もエースはあくまでもファビオ・ヤコブセンだろうが、展開次第では彼がどこかで抜け出してそのまま勝利というのは可能性がある。それこそ昨年のリエージュ~バストーニュ~リエージュのように。

ユンゲルスの勝利を予想させる要素の1つが、やはりこのドゥクーニンク・クイックステップがもつ、「最強の存在の多さ」である。スプリントではヤコブセンがいるのはもちろん、クラシックスペシャリストとしてはイヴ・ランパールトやゼネク・スティバルなどが優勝候補の1人として数えられる存在として座している。

だから、ユンゲルスがもしも抜け出したとしても、ライバルチームたちはこれを追うために全力を出すわけにはいかない事情が出てくる。まさしく、クイックステップのクラシックにおける必勝パターンである。そこに、ユンゲルスが今年、北のクラシックへの強い意欲をもって参戦してきたことにより、テルプストラが抜けて弱体化したはずのこのチームの強さをしっかりと維持することに成功した。

残り20kmを切ってからは、彼の動向に気を付けるべきだ。一度飛び出したら、そして集団がこれを100mも逃してしまったら、もう、彼に追い付ける可能性なんてこれっぽっちも残っていないだろうから。

 

 

ジャスパー・ストゥイヴェン(ベルギー、27歳)

トレック・セガフレード(TFS)

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やはり忘れてはいけないこの男。3年前の勝利だけでなく、常に勝利に絡んでくるこの男は、今年もまた、必ず勝負所でアタックし、最後には上位に喰い込んでくることだろう。

とはいえ、不安要素がないわけではない。つい先日まで参加していたヴォルタ・アン・アルガルヴェでは落車して完走できず。全身に包帯を巻いた痛々しい姿が映し出されていた。この怪我の影響がまったくないというわけにはいかないだろう。

ただ、チームメートにもやはり恵まれている。前日のオンループとまったく同じメンバーで挑むトレックは、この日をスプリンターズクラシックとしてではなく、北のクラシックの1つとして戦っていこうという気が満々である。すなわち、彼らによってレースは混沌とした展開に持ち込まれる可能性が十分にある。

もちろん最後に集団スプリントとなれば、エドワード・トゥーンスがきっちりと仕事をしてくれるはずだ。今年の北のクラシックはトレックが支配する!

 

 

 

他にも優勝候補としてはロット・スーダルのティシュ・ベノート、ミッチェルトン・スコットのマッテオ・トレンティン、ディメンションデータのミケル・ヴァルグレン、グルパマFDJのアルノー・デマール、AG2Rのオリバー・ナーゼン、チーム・スカイのディラン・ファンバーレなど多数。

果たして今年はどんな展開が待ち受けて、どんな勝者が生まれるのか。

オンループに負けない魅力たっぷりのこのKBKもしっかりと予習しておこう。 

 

 

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