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ディラン・フルーネウェーヘンは今年も最強なのか?

年末のサイバナさんとの合同ラジオで、2018年のMVPは?という質問に対して、私は「フルーネウェーヘン」と答えた。

2017年にシャンゼリゼを制したこの男は、2018年には年間14勝、ツール・ド・フランスについては序盤は直前のオランダ選手権の疲れが残っていたとのことで調子が出なかったものの、第1週の後半でフェルナンド・ガビリアを相手取り圧巻のスプリントを見せて2連勝を果たした。

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2018年はフルーネウェーヘンにとって飛躍の年であった。

そして、2019年は彼が真に最強であることを証明すべき年だと思っている。

 

2019年、ここまで出場した集団スプリントステージは 4つ。

そのうちの2つで鮮やかな勝利をすでに遂げているフルーネウェーヘン。残り2つは登りで力を失ってしまったことと落車が原因であり、真っ向勝負を挑むことのできた2つのスプリントステージでは、きっちりと勝利を掴んでいるのである。

 

やはり今年も彼は最強なのか?

今年の彼のここまでの走りを振り返りつつ、今年の彼の走りを占っていこう。

 

  

 

第1の勝利 バレンシアナ第5ステージ

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彼にとって今シーズン最初の集団スプリントステージとなるはずだった第2ステージでは、ゴール前40kmに位置する標高1000mの山岳でミッチェルトン・スコット、アスタナ・プロチームの猛プッシュによって、大きく遅れてしまうこととなった。

トニー・マルティンらの懸命なアシストによって、ゴールまで残り15kmの時点で集団に戻ることのできたフルーネウェーヘンであったが、最後のスプリントに参加する足は残っておらず、あえなく14位で終わるという悔しい結果となった。

 

その鬱憤を晴らすかのように挑んだ第5ステージ。

最後の右カーブを曲がった段階で先頭を支配していたのは、第1ステージでも勝利したルカ・メズゲッツ&マッテオ・トレンティンコンビであった。この時点で先頭から7番手に位置していたフルーネウェーヘンは、やがて高速展開するトレインの中で少しずつ番手を上げていく。 

そして、ラスト100mほどでトレンティンが発車したとき、フルーネウェーヘンはまだ前から5番目ほどの位置だった。

ここからの伸びが凄まじかった。ブアニを追い抜き、トップスピードに乗ってトレンティンを追い抜こうとしていたクリストフをさらに追い抜き、先頭で彼はゴールに飛び込んできた。

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圧倒的な力の差を見せつけての勝利。

それは昨年のツール・ド・フランスで見せたような勝ち方であった。

 

 

だが、彼の強さは彼自身の強さだけではない。

 

彼を支えるユンボ・ヴィスマ・トレインもまた、このシーズン序盤で最強であることを示した。

 

 

 

第2の勝利 アルガルヴェ第4ステージ

ポルトガル南部で繰り広げられる5日間のステージレース「ヴォルタ・アン・アルガルヴェ」は、昨年も2勝している、フルーネウェーヘンにとっても相性の良いレースであった。 

その第1ステージの集団スプリントが見込まれたステージで、彼は大落車に巻き込まれて142番手でゴール。怪我がないだけ良かったが、勝負すらできない結果に、バレンシアナ第2ステージ以上に悔しい思いを覚えたに違いない。

 

だが、やはりフルーネウェーヘンは強かった。

今大会、2回目の集団スプリントチャンスを迎えた第4ステージで、ユンボ・ヴィスマはチームとしてもかなり良い状態でフィニッシュを迎えた。

すなわち、残り2km地点ですでに集団先頭付近に位置していたユンボ・トレインは、ラスト1kmに達した段階でまだフルーネウェーヘンを入れて3名の選手を残していた。

そして最後の右カーブを曲がって、先頭を取ったのはグルパマFDJのヤコボ・グアルニエーリ。これを追いかけたのが、フルーネウェーヘンを背中に引き連れたマイク・テウニッセンであった。

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ここからが圧巻だった。

 

他チームのエーススプリンター顔負けのスパートをかけるテウニッセンがフルーネウェーヘンを引っ張り上げて、グアルニエーリを追い抜いていく。

UAEチーム・エミレーツのジャスパー・フィリプセンはなんとかこの2人に喰らいついていくものの、ボーラ・ハンスグローエのアシストであるリュディガー・ゼーリッヒはここで引き千切られてしまう。

彼は後続のジャンピエール・ドリュケール、そしてエースのパスカル・アッカーマンを先頭まで運び上げる役割を担っていたものの、テウニッセンが作り上げたハイ・ペースを前にして、あえなく沈んでいくほかなかった。

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残り100m。

他を寄せ付けない圧倒的なリードアウトを見せたテウニッセンの背後から、悠々とフルーネウェーヘンが発車。

ここでようやく後方からアルノー・デマールが伸びを見せるが(下記画像の一番下)、どれだけ良いスプリントを見せたとしても、残り100mのこの位置関係からでは、(それこそフルーネウェーヘンでもない限り)逆転することは不可能であった。

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ましてや、フルーネウェーヘンはこの「残り100m」からスプリントを開始できているのだ。

フィリプセンも良い位置につけていたが、真っ向勝負では敵うべくもなかった。 

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デマールもアッカーマンも、かなり不利な位置からスタートした割には、素晴らしい伸びであった。

フィリプセンも、テウニッセンのハイ・ペースに喰らいついたことは見事であった。 

 

しかしそれでも、この日のフルーネウェーヘン、そしてマイク・テウニッセンとのコンビネーションを前にして、勝てる選手は1人もいなかった。

 

今年もまた、彼と彼らが最強なのか。

そんな風に期待させるには十分すぎる勝ち方であった。

 

 

 

フルーネウェーヘンの弱点

とはいえ、フルーネウェーヘンも無敵ではない。

そのことを証明して見せたのが、バレンシアナ第2ステージである。既に述べたように、ゴール40km手前の山岳で、このフルーネウェーヘンを引き千切るべく、ミッチェルトン・スコットとアスタナ・プロチームが全力で集団を牽引し続けたのである。

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これが功を奏し、やがてフルーネウェーヘンは脱落。最後は「登れるスプリンター」マッテオ・トレンティンが、ナセル・ブアニを打ち破ってのシーズン第1勝を記録した。

これもまた、チームが生んだコンビネーションと戦略の勝利である。

 

フルーネウェーヘンは昨年、ツール・ド・フランスのアルプス山岳ステージでタイムアウトとなっている。このときは他にもマルセル・キッテルやアンドレ・グライペル、フェルナンド・ガビリアといったその他の有力スプリンターたちも次々と脱落してしまったほどに厳しいステージだったわけだが、それでも山岳を乗り越えるだけの力がまだ十分ではないがゆえに、ツール最強を証明する機会を失ってしまった。

 

今後、彼が真に最強スプリンターであることを示すには、この山岳への適性もしっかりとつけていかなければならない。

とくにもう1人の「最強」候補であるエリア・ヴィヴィアーニは、昨年、ジロ・デ・イタリアの厳しい山々を乗り越えただけでなく、終盤に激坂が用意されたイタリア選手権でもパンチャーたちを相手取って優勝し、チャンピオンジャージを身に纏っているのだ。

ガビリアも昨年は調子が上がり切っていなかったようだが、本来であれば山岳も軽々と乗り越えていけるサガンタイプではある。

 

フルーネウェーヘンはこの山登りという弱点を克服し、たとえばミラノ~サンレモのような、あるいはツール・ド・フランスでのポイント賞ジャージのような、そういった「ただのピュアスプリンター」では手が届かないような成果を掴み取っていけるのだろうか。 

 

 

ディラン・フルーネウェーヘン、そして彼を支えるユンボ・ヴィスマ。

彼らの今シーズンここからの走りからも目を離せない。

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