りんぐすらいど

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2021シーズンを振り返る⑥ UCI世界ランキング「女子」個人10位〜1位全レビュー

 

なかなか情報が少なく、また有力選手のバリエーションも男子よりも少ないがゆえに単調になることもままある女子レース。とはいえ、こちらもやはり1人1人の選手の個性を知っていけば、白熱したレース展開に男子レース同様盛り上がっていくことも十分可能。

そのためにも、私自身も勉強のために振り返っていくこのランキング。少しでも、女子ロード界に興味を持ちたい層の人たちにとってもプラスになれば幸い。

 

TOP5にはお馴染みの顔ぶれが並ぶが、その中でも今年のリエージュ~バストーニュ~リエージュ覇者などは、期待の存在として今年も活躍してくれていた。彼女の記事が個人的には一番盛り上がりながら書いたところもあるのでぜひ確認してほしい。

 

それではいってみよう。

※年齢表記はすべて2021/12/31時点のものとなります。

 

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20位~11位はこちらから

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第10位 リサ・ブレナウアー(セラティツィット・WNTプロサイクリング)

昨年4位、ドイツ、33歳、ルーラー

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世界に名だたる女子TTスペシャリストの頂点の1人。今年の世界選手権ミックスドリレー・チームタイムトライアルでもドイツ代表の1人に選ばれ、トニー・マルティンらと共に金メダルを獲得した。

ロードレースではTTやスプリントのほか、未舗装路レースでも強さを発揮する。今年はロンド・ファン・フラーンデレンでついに表彰台を獲得。初開催のパリ~ルーベでも4位と、頂点まではあと一歩だ。

とはいえ、2018年のウィグル・ハイファイブ時代からコンビを組んでいたキルステン・ワイルドが今年いっぱいで引退。ブレナウアー自体も、現時点ではまだ来季の契約は未定。

まだ引退には早いと思うが・・・「あと一歩」は果たして見られるのか。

 

 

第9位 セシリーウトラップ・ルドヴィグ(FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)

昨年9位、デンマーク、26歳、パンチャー

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男子ロードレース界でも新たな「一家に一台」となりつつあるデンマーク人。ワールドランキング11位にも今年ブレイクしたデンマーク人としてエマセシル・ノースガードがランクインしていたが、この人物も昨年あたりから台頭しつつある新世代の有望デニッシュライダーである。

魅力的なキャラクターで丘陵系レースを中心に成績を出し続けている。今年もトロフェオ・アルフレッド・ビンダやリエージュ~バストーニュ~リエージュの勝負所の登りで必ずいるFDJのエース。だが、その削り合いの中で存在感を示しながらも、最後の集団に残ることはそう多くなく・・・同じジャージの存在が彼女くらいになってしまうことが、トレック・セガフレードやSDワークスと比べた時に、ネックになる部分だ。

チームが変わればさらに化ける気もするが、来年も引き続きFDJ。丘陵系レースでのエースは確約されているだろうから、何とか結果をもぎ取ってほしい。

 

 

第8位 ロッタ・コペッキー(リブレーシング)

昨年8位 ベルギー、26歳、パンチャー

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2年連続ベルギー国内王者に輝いているベルギー最強女子。得意の武器は(実にベルギー人らしく)登り勾配を含んだサバイバルな展開の中のスプリント。

今年もセラティツィット・チャレンジ by ラ・ブエルタの最終ステージで、フィニッシュ前1㎞を通過したところから始まる教会への登りでエリーザ・ロンゴボルギーニと共に抜け出し、20秒差程度をつけて独走していた先頭のリア・トーマスを抜き去り、最後はロンゴボルギーニの背後から強烈にスプリントをかまして勝利を掴み取った。

だからこそ、地元開催でスプリンターも生き残りうるもののサバイバルではあると言われていた世界選手権ロードレースは大きな期待を寄せられており、実際に最終集団にも残ることができていたのだが・・・数を揃えたオランダによる激しい削り合いの中でさしもの彼女も先頭付近で勝負することはできなかった。

最後はブエルタで敗北せしめたロンゴボルギーニがバルサモをリードアウトして勝たせるという結果に。この悔しさを、来年のオーストラリアで晴らせるか。毎年成長し続けている、今後も期待が持てる中堅ライダーである。

 

 

第7位 カタジナ・ニエウィアドマ(キャニオンスラム・レーシング)

昨年11位 ポーランド、27歳、パンチャー

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ここ5年ほど毎年ワールドランキングのTOP20に入り続けている安定感の高いクライマー/パンチャータイプの選手。その脚質、得意とするレースのタイプから、同じポーランド人のミハウ・クフィアトコフスキとイメージが割と重なる。

過去、トロフェオ・アルフレッド・ビンダとアムステルゴールドレースは制しているが、その他のビッグレースは何度も上位には食い込むもののなかなか勝ちには届かない。今年も世界選手権ロードレースでは、最後のスプリントに持ち込むと勝ちきれないことは分かっていたので、残り6㎞の勝負所ワインペルスでアタック。しかしそういった動きを得意とするタイプには今年の世界選手権のコースは緩すぎて、結局はオランダチームによって完全に抑え込まれてしまった。あのコースで独走に持ち込むには、アラフィリップのように繰り返しアタックするか、もっと前の段階で隙を突いて抜け出すしかなかった。

そんなこんなで勝ちきれず。今年は2位を4回獲りつつも勝利は一度もなく。そんなところもちょっとクフィアトコフスキっぽいかも?

 

 

第6位 マーレン・ローセル(アレBTCリュブリャナ)

昨年21位 スイス、30歳、TTスペシャリスト

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昨年の世界選手権で長くホットシートに座り続け、最後の最後でアンナ・ファンデルブレッヘンに15秒差で敗れるものの、一気にその名を轟かせたTTスペシャリスト。

今年はさらに躍進し、ついにヨーロッパ選手権ではTT王者に輝く。世界選手権でも2年連続の2位だ。

各種ステージレースでもその独走力を生かして好成績を重ねる。セラティツィット・チャレンジ by ラ・ブエルタでは第1ステージで2位以下に1分半以上のタイム差をつけて圧勝。シマック・レディース・ツアーでも、初日プロローグと第2ステージの個人TTで総合リーダージャージを手に入れた。

が、チャレンジ・ブエルタでは第3ステージで怪物アネミエク・ファンフルーテンによる60㎞独走によって逆転され、シマック・レディース・ツアーでも第3ステージでのロレーナ・ウィーベスの落車によって足止めを食らい、第4ステージでも総合2位シャンタル・ブラークを含む強力な抜け出しに置いていかれるなどついていないことも多く、総合優勝までには届かなかった。

とくにシマック・レディース・ツアー第4ステージでは、チームメート一丸となって抜け出した集団追走を試みるが、チーム力においてどうしても差が出てしまい、最終的にはローセル自身がこれを追走する必要に迫られる。

ローセル自身が集団の先頭を牽いているときはさすがにタイム差が縮まるが、最後にはやはり力尽きてしまった。

 

そんなマーレン・ローセル。来年はその敗れた相手であるシャンタル・ブラークの所属するSDワークスへと移籍。チームにとってもこれほどの独走力のある万能型選手の獲得はより戦略の幅を広げるチャンスだし、ローセル自身にとっても勝利のチャンスを広げる理想的な移籍と言える。

しかし本当に次々と才能を集めていくSDワークス。さすが女子界最強のチームである。

 

 

第5位 アンナ・ファンデルブレッヘン(SDワークス)

昨年1位 オランダ、31歳、オールラウンダー

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今年いっぱいで引退を決めた女子ロード界三大女王の1人。引退を決めたにも関わらず、今シーズン前半のファンデルブレッヘンはとにかく強すぎた。

4月のラ・フレーシュ・ワロンヌでは最後のユイの壁でシッティングのまま淡々と加速していく彼女にライバルたちが次々と脱落していくばかり。ニエウィアドマだけが最後の150mでアタックして一時はファンデルブレッヘンを追い抜くも、残り100mでついに腰を上げた彼女がいとも簡単にニエウィアドマを突き放して7年連続となる勝利を掴み取った。アレハンドロ・バルベルデすら凌駕するこの成績を超える選手は現れるのか。

5月のブエルタ・ア・ブルゴスでは総合優勝だけでなくポイント賞も山岳賞も総なめ。

そしてこれも4度目の総合優勝となる女子版ジロ・デ・イタリアでは、第2ステージの山頂フィニッシュで2位以下に1分以上のタイム差をつけて圧勝し、第4ステージの山岳TTでさらにそのリードを広げる。最終的にはSDワークスが総合表彰台を独占したのだが、チームメート以外での最高位となる総合4位エリザベス・ダイグナンに6分39秒もの総合タイム差をつけるという圧勝中の圧勝。いくら、アネミエク・ファンフルーテンやカタジナ・ニエウィアドマなどの実力者が東京オリンピックに集中するために欠場し、最大のライバルであるはずのエリーザ・ロンゴボルギーニが不調気味だったとはいえ、引退イヤーでのこの圧倒的な強さは衝撃的であった。

 

が、その後、東京オリンピックを終えたあたりから、その勢いが急激に鈍化。本人自身も燃え尽きてしまったとはっきりと認め、最後のレースとなった世界選手権でも中盤で早々に集団から脱落してしまった。

その後は早速次のキャリアであるチーム監督に向けての準備としてチームカーに乗る場面も。最後は失速したとはいえ、最終年とは思えない強さを発揮し続けてきた偉大なる女王は、今度は指導者として、女子ロード界に良い影響を与え続けてくれることだろう。

 

そしてその愛弟子とも言える存在が、今年は「師匠」ファンデルブレッヘンを超える順位につける大活躍を果たして見せた。

 

 

第4位 デミ・フォレリング(SDワークス)

昨年15位 オランダ、25歳、オールラウンダー

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オランダの、そしてロードレース界の「女王」の次代を担いうる才能。同じSDワークスということもあり、アンナ・ファンデルブレッヘンの右腕兼直系の「弟子」としてタッグを組んできた。

今年のラ・フレーシュ・ワロンヌでも終盤各チームのエースだけが残る中、唯一アシストとしてその中に入っていたのが彼女であり、エースのファンデルブレッヘンのためにその小集団を全力で牽引。後続の追走集団に追い付かせることなくユイの壁の麓まで牽き倒し「師匠」を発射。その後は万全のファンデルブレッヘンが悠々とライバルたちを突き放し、前代未聞の7連覇と有終の美を達成した。

かと思えば直後のリエージュ~バストーニュ~リエージュ。勝負所ラ・ロッシュ・オ・フォー・コンとその後の名もなき激坂を越え、最終盤に残ったは5名。その中にはファンデルブレッヘンとアネミエク・ファンフルーテン、エリーザ・ロンゴボルギーニ、カタジナ・ニエウィアドマと世界トップクラスのクライマーたちが残る中、またしても唯一のアシストとしてフォレリングの姿が。

が、ここから驚きの展開であった。なんと、エースだと思われていた――実際に直前のフレーシュ・ワロンヌでは引退シーズンとは思えないほどの圧倒的な強さを見せていた――世界王者のファンデルブレッヘンが、ここからまさかの全力牽き。

実際、直前のフレーシュ・ワロンヌこそ良かったもののシーズン前半は病気の影響もありリザルトは低調であり、フォレリングの方が結果はついてきてはいた。リエージュ~バストーニュ~リエージュ自体の成績で言っても、3年前と4年前こそファンデルブレッヘンが勝っているとはいえ、現在のコースレイアウトとなった2年前と昨年はフォレリングの方が結果を出してはいる。

とはいえ、それでも、この局面でまさか世界王者であり大先輩であるファンデルブレッヘンの方が牽引するとは。最後のスプリント勝負になったときにこのメンバーの中で最もスプリント力のあるフォレリングを信頼してのことではあろうが、これほど明確に鮮やかに「世代交代」を象徴するシーンもなかなかなく、今シーズン女子レースの中で最も印象深いレースであった。

もちろん、不利なスプリント勝負に持ち込みたくないファンフルーテンやロンゴボルギーニはなんとか終盤にアタックを仕掛けて抜け出したい。が、それを許さないのがファンデルブレッヘンの牽引だ。向かい風基調であったことも、アタックを仕掛けづらい要因の1つとなっていた。

そのままファンデルブレッヘンの先頭固定牽きのままラスト500mのバナーを横切っていく。

ファンデルブレッヘンの後ろにはニエウィアドマ、ファンフルーテン、そしてフォレリングの順番。

残り200m。ここで3番手にいたヨーロッパ王者のファンフルーテンが右手からロングスプリント気味に飛び出す。フォレリングはすぐさまその背中に貼りつく。

これを見てロンゴボルギーニが左からスプリントを開始。

だが、ファンデルブレッヘンの信頼に、フォレリングはしっかりと応えた。

そして最後はきっちりとファンフルーテンを追い抜き、ロンゴボルギーニに追い付かせることなく、先頭のままフィニッシュへと突き進んだ。

彼女にとって、SDワークスでの最初の勝利でもあった。

 

世界選手権では「師匠」ファンデルブレッヘンが早々に脱落してしまったこともあり、自らの立ち位置もやや見失い、最終的にはチームメートたちからもやや非難気味に話されるような報道もあったが、新世代のオランダを引っ張っていく存在であることは間違いない。

来年もさらなる飛躍を遂げ、新たなる「女王」として君臨してほしい。

 

 

第3位 マリアンヌ・フォス(チーム・ユンボ・ヴィズマ)

昨年6位 オランダ、34歳、パンチャー

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そしてこの人物はまだまだ健在。15年のキャリアを持ち、女子ロード界どころか女子自転車界そのものを先頭で牽引し続けてきた生ける伝説。現在の女子ロード/シクロ界のオランダの圧倒的な強さは彼女の存在あってのものと言っても良い。

そんな彼女も、昨年は3勝しかできず、ワールドランキングでも6位。やや失速してしまったか? 世代交代となるか? という印象を抱いたかと思えば、今年もやっぱり滅茶苦茶強い。(大人の事情で今年はプロシリーズだが実質的にはもちろんワールドツアー級のジロ・デ・イタリア含め)ワールドツアークラスのレースばかりを今年も7勝。さらに2位が3回、3位が4回と、圧倒的な強さを見せ続けてきた。

だが、今年は新創設となった女子ユンボ・ヴィスマの一員としての参戦。昨年までの右腕アシュリー・ムールマンもおらず、ややチーム力においては不安の残る体制で、彼女の本来の強さを十分に発揮できたとは言い難い。シーズン最終戦となったパリ~ルーベにおいても、チーム力で勝るトレック・セガフレードに完全にしてやられた格好。集団内にエリーザ・ロンゴボルギーニやエレン・ファンダイクなどの強力な仲間を残していたエリザベス・ダイグナンに対し、フォスは自らがエースである以上、同じように早い段階から仕掛けることはできない。

だから彼女が仕掛けることができたのは、最後の勝負所、残り19.9㎞地点のカンファナン=ペヴェルでしかなかった。だが、このたった一撃で、あっという間にライバルたちを全て突き放し、エリーザ・ロンゴボルギーニただ一人これに追いすがろうと加速したものの、それも届くことはないほどの勢いであった。

間違いなく強かった。もしかしたら、単独の力としてはこの第1回パリ~ルーベで最も強かったのは彼女だったかもしれない。

だが、そのときすでに先頭のダイグナンに対して2分以上のタイム差をつけられてしまっていたフォスは、そのタイム差を1分にまで縮めることはできたものの、それ以上はさすがに難しかった。

 

もちろん、チームメートにもアンナ・ヘンダーソンやリエンヌ・マーカスなどの実力者たちは揃っているし、その成長にも期待はできる。

何よりも、これほどの存在があえてこのオランダを背負う新興チームに所属することこそが、彼女が魅せる生き様なのだろう。今後も単純な成績以上の活躍を期待していきたい。

 

 

第2位 エリーザ・ロンゴボルギーニ(トレック・セガフレード)

昨年2位 イタリア、30歳、オールラウンダー

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女子ロード界のオランダ支配に待ったをかけうる最大の存在であり、ファンデルブレッヘン、ファンフルーテン、フォスの3大女王の存在に食い込める四番目の刺客の最有力候補であり、そして最強SDワークスに対抗しうるトレック・セガフレードのトップエースたる存在、それがこのエリーザ・ロンゴボルギーニである。

今年の世界選手権においても、最後の最後まで息をひそめ続けてきた彼女とイタリアチームが、それまでレースを完全に支配し尽くしていたオランダチームを最後の最後で出し抜き、ロンゴボルギーニのリードアウトから放たれたエリザ・バルサモが世界の頂点をオランダから奪い取った。

 

なかなか大事な場面で勝ちきれないのは変わらず。このワールドランキングでも、昨年に続きの2位。彼女自身が世界の頂点に達するにはあと一歩、足りない。

それでも2022年も、最強の一角、ファンデルブレッヘンが不在。世界選手権でタッグを組んだバルサモも新たにチームメートになるなど、より彼女が頂点に近い存在になりうるチャンスは十分にある。

 

とはいえ、やはりこの人物がまだまだ彼女の栄光を妨げている。

そう、今年、圧倒的過ぎる成績で1位の座に君臨したこの人物に・・・

 

 

 

 

 

第1位 アネミエク・ファンフルーテン(モビスター・チーム)

昨年3位 オランダ、39歳、オールラウンダー

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2位ロンゴボルギーニに対し実に1,600ポイント以上の圧倒的大差をつけて今年の世界ランキング1位に輝いたのが、世界3大女王の一角にして最年長、にも関わらず強すぎて信じられないような存在のこのファンフルーテンである。

その輝かしい今年の成績は上位の表通り。あらゆるトップレースにて結果を出し続けている、文句のない今年最強のライダーであった。ジロ・デ・イタリアも、東京オリンピックに集中するために出場を回避しなければ、今年のあのSDワークスの表彰台独占のような事態にはならなかったと思われる。

 

その彼女の最大の武器は圧倒的な独走力。東京オリンピックでも個人タイムトライアルで2位の欧州王者マーレン・ローセルに1分近いタイム差を付けての圧勝であり、2回目の勝利となったロンド・ファン・フラーンデレンでは最後の勝負所パテルベルクから独走を開始してラスト10㎞の「王の道」を独走。8月のクラシカ・サンセバスティアンも同様に、残り8㎞のムルギル・トントーラからの容赦ない独走で格の違いを見せつけた。

そんなだから東京オリンピックロードレースでも道志みち山頂間際から彼女が独走を開始したときにはもしかしたら・・・という思いもあったが、さすがに残り60㎞で5分以上のタイム差を彼女1人で埋めるのはあまりにも現実的ではなかったようだ。最後は情報が十分にいきわたらなかった結果、素晴らしい集団からの抜け出しを見せたものの、歓喜に満ちたガッツポーズは虚しく空を切ることとなった。

また、デミ・フォレリングの項でも述べたが、独走力は圧倒的ではあるものの、スプリントに持ち込まれると必ずしも最強ではなく、リエージュ~バストーニュ~リエージュではフォレリングの前に敗れ去ってしまった(エリーザ・ロンゴボルギーニくらいだったら勝てそうなことは昨年の世界選手権で証明していたが・・・)。

そして、今年初開催となったパリ~ルーベ。

独走力という観点で期待されていた彼女だったが、あまりにも厳しいコンディションの中、落車による鎖骨骨折で、第1回パリ~ルーベでのリザルトをリタイアという結果で終わらせてしまった。

ここはやはり、シクロクロスなどでの経験が豊富なマリアンヌ・フォスらとの差が出てしまった形か。

 

そんな、完璧では決してないものの、得意分野での強さは圧倒的過ぎてこれだけの成績を残すこととなった今年のファンフルーテン。

今のところ、私の知る限りでは引退などの話は出てきていないが、果たしていつまでこの強さを保ちながら君臨し続けるのか。「あの」アレハンドロ・バルベルデと同じモビスターに加入したことは何か象徴的なものを感じる・・・。ロードレースでは前回のリオに続き悔しい思いを味わっているオリンピックへの雪辱を晴らすべく、3年後のパリ五輪まで引退しない可能性も?

 

エリーザ・ロンゴボルギーニやデミ・フォレリングといった下からの突き上げも激しいが、まだまだその活躍を楽しみにしていよう。

 

 

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