りんぐすらいど

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2021シーズンを振り返る⑤ UCI世界ランキング「女子」個人20位〜11位全レビュー

 

2021シーズンを振り返るシリーズ。続いては「女子」ワールドランキングを振り返っていく。

まだまだどうしても男子と比べると見ているレースも少なく、知識量も不十分なだけに、あまり詳しくなく、ときに的外れなコメントをしている恐れもある。

が、そこは勉強中と思って目を瞑っていただければ。

一緒に女子レースについて学び、女子レースを盛り上げていければと思う。

 

まずは20位~11位。

 

※年齢表記はすべて2021/12/31時点のものとなります。

 

 

 

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第20位 ロレーナ・ウィーベス(チームDSM)

昨年12位、オランダ、22歳、スプリンター

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女子界最強のピュアスプリンター。2年前にはこのワールドランキングで1位にも輝いている、若き才能の1人ではある。

が、基本的にはやはりピュアスプリンター。昨年もいつものスプリンターズクラシックではなくかなりサバイバルな展開となったヘント〜ウェヴェルヘムでは11位に沈んだし、今年の5月のフェスティバル・エルシー・ジェイコブスでも、初日プロローグで勝利してそのまま総合も狙えるか・・・と思っていたところ、翌日からのスプリントステージが結構起伏の多いレイアウトとなっており、あえなく撃沈。代わって、今年急成長中の「登れるスプリンター」エマセシル・ノースガードに2連勝と総合優勝を奪われてしまった。

10月のウィメンズ・ツアーでも、第4・第5のピュアスプリントステージではきっちりと勝ち切ったものの、第1・第2ステージは起伏が用意されたことで、マルタ・バスティアネッリやエイミー・ピータースが勝利。

男子ではもはや珍しいくらいのピュアピュアぶり。その克服はもちろん課題の1つだろうし、そうすることでまたランキング上位への返り咲きも期待できそうだが、ある意味その個性を生かし、勝つステージではきっちりと勝つ特性を残し続けてくれるのも面白い。

なお来年はオーストラリアでの世界選手権。まだコース詳細は不明だが、スプリンター向きになる可能性もあると思っている。その場合は期待してもいいかも。とにかくピュアスプリントでは世界最強なのは変わりがないので。

 

 

第19位 エリーズ・シャベイ(キャニオンスラム・レーシング)

昨年55位、スイス、28歳、パンチャー

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今年急激に台頭してきた選手。ニエウィアドマやクロエ・ダイガード、バーンズ姉妹などのいるキャニオン・スラムでは決してエースというわけではなく、積極的に逃げに乗る姿勢が目立った。

その中でも5月のブエルタ・ア・ブルゴスでは逃げに乗った結果一時的に総合リーダージャージを。シーズン最終戦となったロンド・ファン・ドレンテでは、残り14㎞の最後の勝負所で抜け出して、勝ち逃げ集団となった7名の中に入り込むことができた。

今年、その実力を遺憾なく発揮する場面に恵まれたシャベイ。

否応なく高まっていくであろう彼女への期待に、しっかりと応え続けていくことはできるか。

 

第18位 マルタ・カヴァッリ(FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープ)

昨年25位、イタリア、23歳、オールラウンダー

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3年前、20歳のときにエリートのイタリア王者に輝くなど、若くして実績を積み上げてきている天才。その脚質は多岐に渡り、各種クラシックでも成績を残しながら、本格的な山岳レースでも活躍。TT能力も高く、ヨーロッパ選手権ではミックスドリレー・チームタイムトライアルのメンバーに選ばれ、イタリアチームに優勝をもたらしている。

だが、そのチーム勝利を除けば、実はこの2年、勝利に恵まれていない。これだけの成績を出しながら、勝利そのものは残念ながら遠ざかっている。

着実に成長し、各レースの上位には必ず名前が載ってくるような存在にはなってきているので、あとは久方ぶりの勝利を、2022年は得ることができるか。

 

 

第17位 マビ・ガルシア(アレBTCリュブリャナ)

昨年14位、スペイン、37歳、クライマー

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昨年のストラーデビアンケで独走し、最後は規格外のアネミエク・ファンフルーテンに追いつかれて敗北するも、追いつかれてからもなんとかしがみついて離れようとしなかった粘り強さを見せていたガルシア。すでにいい年だが、活躍し始めたのはここ数年から。

今年も引き続き強さを発揮。国内選手権では初の2冠を達成し、ジロ・デッレミリアでは初のプロシリーズ級の勝利を遂げた。まだワールドツアーでの勝利には届かないが、まだまだ成長する可能性を感じさせる。

来年こそビッグレースでの勝利を。

 

 

第16位 アシュリー・ムールマン(SDワークス)

昨年24位、南アフリカ、36歳、オールラウンダー

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以前は女王マリアンヌ・フォスの右腕という印象だったが、そこから移籍して、今年はまた別の女王、アンナ・ファンデルブレッヘンの懐刀、という印象だった。SDワークスが総合表彰台を独占したジロ・デ・イタリア・ドンナでは、1級山頂フィニッシュとなった第2ステージで、彼女のアタックをきっかけにファンデルブレッヘンも集団から抜け出し、最後はファンデルブレッヘンを勝たせた上でムールマンも2位に入り込んだ。

来年はファンデルブレッヘンが引退。次なる「エース」候補に、もちろん彼女も入る資格はある。そのためにも、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、トロフェオ・アルフレッド・ビンダなど、適性のあるビッグレースでの勝利がぜひ欲しいところ。

 

 

第15位 エイミー・ピータース(SDワークス)

昨年17位、オランダ、30歳、パンチャー

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ピュアスプリンター寄りのウィーベスに対し、よりクラシカルなレースに強いオランダ最速選手候補の1人。昨年はやや活躍に失速が見られたシーズンだったが、今年はまた、復調してきた印象を感じさせはした。

が、まだやはり勝ちきれない。ロット・テューリンゲン・ツアーでも、シマック・レディース・ツアーでも、3位や4位には入るものの、急成長のエマセシル・ノースガードや、まだまだ安定感の高いマリアンヌ・フォスなどの後塵を拝すことに。

最盛期はワールドランキング6位に輝いた2018年、あるいはヨーロッパロード王者に輝いた2019年。その頃の勢いを取り戻せるか。まだ「過去の人」になるのは早い。

 

 

第14位 グレース・ブラウン(チーム・バイクエクスチェンジ)

昨年19位、オーストラリア、29歳、ルーラー

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オージー女子随一の「逃げ」名手。昨年もリエージュ~バストーニュ~リエージュの最後の勝負所ラ・ロッシュ・オ・フォー・コンで抜け出して、先頭で独走するダイグナンまであとわずかというところにまで迫っての2位。

今年も、オキシクリーン・ブルッヘ~デパンヌで、ラスト10㎞からの独走勝利。ロンドやノケレ・コールスなど、各種クラシックレースから、ブエルタ・ア・ブルゴスのような山岳系スペインレースでも幅広く活躍する万能ルーラータイプだ。

そしてその独走力に裏打ちされたTTでも好成績。昨年は世界選手権個人タイムトライアルで5位。そして今年は東京オリンピック個人タイムトライアルで4位。

そんなオーストラリアの至宝とも言える存在だが、来年は現在のオージーチームを離れ、FDJヌーヴェルアキテーヌ・フチュロスコープへ。男子だけじゃなく女子でも戦力の流出が起きてしまうのか・・・。

今後も積極的な逃げとクラシック能力の高さで、ビッグレースでの勝利を期待する。今、急成長中の存在の1人だ。

 

 

第13位 エレン・ファンダイク(トレック・セガフレード)

昨年10位、オランダ、34歳、TTスペシャリスト

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プロ16年目。トラックとロードの両輪で輝かしい成績を重ね続けているオランダの名選手。トラックでは2008年にスクラッチで世界王者に輝き、ロードでも2013年に個人タイムトライアル世界王者に。その後は浮き沈みもあったが、今年、8年ぶりのTT世界王者に輝くことに。

その勢いでもって今年初開催の女子版パリ~ルーベでも優勝候補となったが、ここでもラスト20㎞。重要な勝負所で残った16名の中にきっちりと入り込んでいた。

そして彼女やエリーザ・ロンゴボルギーニの存在が、先行して独走を仕掛けていたエリザベス・ダイグナンにとっては力となったのだろう。昨年もヘント~ウェヴェルヘムの残り30㎞の勝負所ケンメルベルクで、ロンゴボルギーニとダイグナンのためのアシストに徹し、ロレーナ・ウィーベスなど、強力なスプリンターを突き放す役割を担った。

 

強豪そろいのチームの中にいるだけに、常に主役というわけではない。むしろその牽引力でもってアシストとして輝くことの多い実力者。

だが、今年はそんな彼女が久々に頂点に立つことのできた年だった。そして、ヨーロッパ選手権ロードでは、ロードレースにおいてもチャンスを掴むことができた。

来年もこの強豪トレックの「3強」の1人として、最強チームSDワークスに食らいつく、そんな走りを期待している。

 

 

第12位 エリザ・バルサモ(ヴァルカー・トラベル&サービス)

昨年35位、イタリア、23歳、パンチャー

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サバイバルな展開の中で生き残ってスプリントで勝負する、ピータースやコペッキーのようなタイプ。勝利に今一歩届かない場面も多く、勝利数は決して多くないタイプではあったが、今年はその特性が存分に発揮され、世界で最も輝かしい勝利の1つを手に入れることに。

すなわち、世界選手権ロードレース。質と数で圧倒的に勝るオランダチームを相手に、最後までひっそりと身を隠し続けていたイタリアチームが、最後の最後でエリザ・ロンゴボルギーニによる決死のリードアウトで、この「スプリンター」バルサモを発射させた。

オランダもマリアンヌ・フォスが発射。しかし、あらゆる攻撃を抑え込み続けていたオランダにとって、この最後の1ピースが届かなかった。エリザ・バルサモ。まだ20代前半の若き「これから」の選手が、見事に栄光を掴み取った。

 

来年からはトレック・セガフレード。ロンゴボルギーニともチームメートに。

これまで以上の強豪チームへの移籍が、この若き世界王者をさらに進化させてくれることは間違いないだろう。

 

 

第11位 エマセシル・ノースガード(モビスター・チーム)

昨年38位、デンマーク、22歳、スプリンター

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今年大成長を遂げた選手の1人。モビスターチームに所属するマティアス・ノルスガードの妹にして、デンマークのトップTTスペシャリストの一人、ミッケル・ビョーグの婚約者。そして今年、アップダウンのあるステージではマリアンヌ・フォスやロッテ・コペッキーすら打ち倒し、次々と勝利を奪い取っていった今年最強の「登れるスプリンター」である。

まだ22歳。これからも着実に伸びていくことは間違いない。各種クラシックレースでも上位に入り込んでいるだけに、そういった面での結果も期待していきたい。

兄貴も負けるなよ・・・!

 

 

10位~1位に続く。

 

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