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ブエルタ・ア・エスパーニャ2020 コースプレビュー 第1週

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Class:ワールドツアー

Country:スペイン

First edition:1935年

Editions:75回

Date:10/20(火)~11/8(日)

 

ジロ・デ・イタリアも佳境に入りつつある中、第3のグランツール「ブエルタ・ア・エスパーニャ」が開幕する。今シーズン最後のワールドツアーレースとして。

色々と異例づくめである。元々予定していたオランダでの開幕3ステージはキャンセルされ、その分を別コースで穴埋めしたジロと違い、ブエルタはそのまま残りの18ステージでやることとした。

ただ、元々予定していたポルトガルでのステージはこれもまた新型コロナウイルスの影響で開催不可能になり、その部分は代替コースが選定されている。

新型コロナウイルスの陽性反応がついに選手たちからも続出し、チームごとレース途中に徹底する事例も現れ、そのコロナ対策への批判も噴出しているジロ・デ・イタリアを横目に、果たしてブエルタはどうなってしまうのか。

そもそも11月に差し掛かる時期にグランツールを行うということが一体どんな影響が出るものなのかも全くの未知数。

 

それでも、その開催は純粋に嬉しい。

選手たちの健康と安全に最大限の配慮を望みつつ、また興奮に満ち溢れた3週間のレースを期待する。

 

今回はそんなブエルタの第1週の6ステージを簡単に解説していく。

 

 

↓全ステージレビューはこちらから↓

www.ringsride.work

↓第2週のコースプレビューはこちらから↓

www.ringsride.work

↓第3週のコースプレビューはこちらから↓

www.ringsride.work


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第1ステージ イルン~アラテ(エイバル) 173km(丘陵)

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新型コロナウイルスの影響によりオランダ開幕のステージ3つがキャンセルされた結果、どうなったか。

全部で18あるステージの1つ目に、いきなりの(ほぼ)山頂フィニッシュが登場するという事態に。

しかも、イツリア・バスクカントリーの伝統的なクイーンステージ、1級山岳アラテフィニッシュである。

登坂距離は5.3㎞、平均勾配は7.7%。それだけ見ればまあまあといったところだが、実際には中盤から後半にかけて3㎞にわたり10%弱の急勾配が続く。

実にブエルタらしい登りだ。

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山頂からフィニッシュまでは2.5㎞ほどの平坦が設定されているため厳密な意味では山頂フィニッシュではないが、実際にはセレクションのかかったバラバラな小集団が残るだけになるだろう。

 

昨年のイツリア・バスクカントリー第5ステージのこのアラテフィニッシュで勝ったのはエマヌエル・ブッフマン。

その前はエンリク・マス、アレハンドロ・バルベルデ、ディエゴ・ローザ、ホアキン・ロドリゲスなど、錚々たる顔ぶれが並ぶ。

今年のブエルタの開幕を告げることとなってしまったこの日、いきなりの勝利とマイヨ・ロホとマイヨ・プントス(ポイント賞)、マイヨ・モンターニャ(山岳賞)ーーもしかしたら昨年新創設のマイヨ・ブランコ(新人賞)すらもーー一度に手に入れてしまうのは、果たして誰だ?

 

 

第2ステージ パンプローナ~レクンベリ 151.6km(丘陵)

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牛追い祭りで有名なナバーラ州のパンプローナをスタートし、標高1,215mの修道院に向かう1級山岳サンミゲル・デ・アララルを越えた先の下りフィニッシュ。

この日も総合勢による削り合いが起きそうなこの1級山岳は、登坂距離9.4㎞、平均勾配7.9%。

それだけでも十分にきついが、所々コンクリート舗装がされており、グリップが効かないことがレースの展開をさらに複雑にする。

そして山頂まで2㎞ほどのところで最大勾配15%の区間が設けられ、ここで何かしらの動きが巻き起こるのは間違いなさそうだ。

ツールと違ってエース同士の殴り合いが起こりがちなのが、ブエルタの面白いところだ。

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2014年のブエルタ・ア・エスパーニャ第11ステージに登場した際には、この残り2㎞地点でアルベルト・コンタドールがアタック。

セレクションのかかった集団の中から、残り1㎞でファビオ・アルがアタックを仕掛けてそのまま独走勝利。翌年にこのブエルタを制することになる当時24歳のイタリア人による初のブエルタ勝利となった。

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そのときと違って山頂からフィニッシュまで17㎞の下り。

登りで抜け出した選手がそのまま逃げ切れるか、それとも追いつかれての小集団スプリントになるか。

下りが得意なプリモシュ・ログリッチやクリス・フルームに注目。

 

 

第3ステージ ロドサ~ラ・ラグーナ・ネグラ・デ・ビヌエサ 166.1km(丘陵)

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オランダ開幕3ステージが省略されたからとはいえ、開幕から3ステージ目にして2つ目の1級山岳山頂フィニッシュ。

「黒い湖」を意味するラグーナ・ネグラは海抜1,700m超に位置する巨大な湖。それは底無し沼であるとか(実際に10m近い深さを持っているらしい)、ネッシーのような巨大生物が水に落ちて沈んできたものを(それこそ人間すらも!)食べてしまうだとか、様々な伝説が語られているとのことである。

1級山岳としてのプロフィールは以下の通り。

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フィニッシュに近づくにつれて勾配が増していき、最後は10%の激坂フィニッシュに。

パンチャータイプの脚質の選手が先頭でラインを切ることになりそうだ。

 

 

第4ステージ ガライ/ヌマンシア~エヘア・デ・ロス・カバジェロス 191.7㎞(平坦)

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第4ステージにしてようやく訪れた平坦ステージで、今大会最初の集団スプリントが巻き起こることだろう。

一応横風には注意すべきではあるものの、スプリンターズチームにとっても、数少ないチャンスだけに、確実にモノにしておきたいところだ。

今大会はついにパスカル・アッカーマンとサム・ベネットの直接対決が見られる。ツールでマイヨ・ヴェールを獲得し、ミケル・モルコフと盟友シェーン・アーチボルドを引き連れてきているサム・ベネットの方が優勢に見えなくもないが、果たして。アッカーマンが今年、2位が多いことにも不安を覚える。

ほかにも、ジャスパー・フィリプセンやマッテオ・モスケッティなどの若手にも注目だ。

 

 

第5ステージ ウエスカ~サビニャニゴ 184.4㎞(丘陵)

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第1週も早くも最後から2番目のステージ。第2週・第3週とステージ数は変わらないものの、いつもと比べるとものすごく違和感を覚える短さである。

前半は小刻みなアップダウンがありつつも全体的にフラットなレイアウトなのに対して、ラスト70㎞からは合計3つの登りを登らせる。

フィニッシュまでの2㎞も緩やかな登りとなっており、総合争いが起きるほどではないもののスプリンター向きでは決してないレイアウトから、逃げ切り勝利になりやすいステージだと言えそうだ。

このピレネーの麓の町サビニャニゴがフィニッシュ地点に置かれた一番新しいブエルタ・ア・エスパーニャは2008年の第9ステージだが、そのときには当時23歳のグレッグ・ファンアーヴェルマートがダヴィデ・レベリンとフアンアントニオ・フレチャをスプリントで下して勝利している。

彼にとって初となる、グランツールでの勝利であった。

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【変更後】第6ステージ ビエスカス~サジェント・デ・ガジェゴ(アラモン・フォルミガル) 146.4㎞(山岳)

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新型コロナウイルスの影響により(同時期のジロ・デ・イタリア第20ステージと同様に)フランスへの入国を禁じられたブエルタ・ア・エスパーニャは、本来オービスク峠やツールマレー峠を通過するはずだったルートを破棄し、まったく新しいコースをこの第6ステージに用意してきた。

ピレネーの麓の町ビエスカスを出発したプロトンはまずは第5ステージのフィニッシュ地点となったサビニャニゴ周辺のサーキットを周回。続いて第5ステージの最後の山岳となったペトラルバ峠を反対側から登らせる(第5ステージでは2級山岳だったが、反対側から登らせる第6ステージでは3級山岳扱い)。

その後は第5ステージのときとは異なったルートへと向かう。2級山岳コテファブロ(登坂距離13.5㎞、平均勾配4.1%)で足慣らしをしたあと、一度スタート地点のビエスカスへと戻る。

本来の第6ステージでのスタート直後にあたる「フランスへの道」エスカリリャ峠を途中まで登り、その途上で進路を変更。

スキーリゾート地アラモン・フォルミガルの山頂フィニッシュへと至る。

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下に残してある本来の第6ステージと比べればもちろん難易度は劣るだろう。

だが、決して油断はできない1日となる。特にイネオスにとっては、実に苦い経験をしたコースなのだから・・・・そう、2016年ブエルタ・ア・エスパーニャ第15ステージのあの「悪夢の日」。

 

ジロ・デ・イタリアと比べればまだここまでは「ある程度は」落ち着いた展開を見せているブエルタ・ア・エスパーニャだが、この第1週の最終日にどんなカオスが吹き荒れるか・・・。

 

【変更前】第6ステージ ビエスカス~コル・デュ・ツールマレー(フランス) 136.6㎞(山岳)

たった1つの平坦ステージと、この日を含めて山頂フィニッシュが3つ。短くも厳しいブエルタ・ア・エスパーニャ2020第1週を締めくくるのは、フレンチピレネーの2つの名峰、すなわち超級オービスクと超級ツールマレー。

しかも昨年のツールに続くツールマレー山頂フィニッシュである。

もしかしたら総合優勝候補を決定づけるかもしれないツールマレーのレイアウトは以下の通りである。

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昨年のツール・ド・フランス第14ステージのフィニッシュとして登場した際、勝ったのはそのとき絶好調であったティボー・ピノだった。マイヨ・ジョーヌを着るジュリアン・アラフィリップを突き放し、単独でフィニッシュゲートを潜り抜けた。

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そんな彼はその年のツールの第19ステージで落車のときの痛みを理由として途中リタイア。

今年リベンジを狙って乗り込んだ彼は、初日の落車の影響を引きずって前半戦で大きく総合争いから脱落してしまった。

 

不運続きのティボー・ピノ。しかし、リタイア後しばらく自転車に乗ることすら拒否して早すぎるシーズン終了を宣言していた昨年と違い、今年のティボーはそれでもシャンゼリゼまでは走りきったうえで、今回、ブエルタに乗り込むことを決めている。

ブエルタは彼にとって決して相性は悪くない。2018年はステージ2勝と総合6位。その後のイル・ロンバルディア制覇にも繋げている。

 

ピノの復活を見てみたい。それはこの彼にとってのメモリアルな「ツールマレー山頂フィニッシュ」で果たされることになるかもしれない。

 

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