山、山、山。
新型コロナウイルスの影響とはいえ、第1ステージから3日連続で巻き起こる総合争い。
そして第1週では唯一の平坦ステージと逃げ切り向きの丘陵ステージを挟み、フランス入国禁止の結果本来の厳しさこそ失ったものの、代わりに冷たい雨と深い霧の中で混沌としたレース展開を生んだ第6ステージ。
今年最後のワールドツアーは、大方の予想通り荒れに荒れた展開を巻き起こしている。
来るべき第2週に向けて、最も予想のつかないグランツールの最初の6日間を振り返っていこう。
- 第1ステージ イルン~アラテ(エイバル) 173km(丘陵)
- 第2ステージ パンプローナ~レクンベリ 151.6km(丘陵)
- 第3ステージ ロドサ~ラ・ラグーナ・ネグラ・デ・ビヌエサ 166.1km(丘陵)
- 第4ステージ ガライ/ヌマンシア~エヘア・デ・ロス・カバジェロス 191.7㎞(平坦)
- 第5ステージ ウエスカ~サビニャニゴ 184.4㎞(丘陵)
- 第6ステージ ビエスカス~サジェント・デ・ガジェゴ(アラモン・フォルミガル) 146.4㎞(山岳)
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第1ステージ イルン~アラテ(エイバル) 173km(丘陵)
新型コロナウイルスの影響により本来は平坦ステージ中心だったはずのオランダ開幕3ステージがキャンセルされたことにより、「第1ステージ」からまさかの「1級山岳山頂*1フィニッシュ」が設定され、総合争いが巻き起こる事態に。
そして、落車や不調により初日からいきなりの「総合脱落」を喫する選手たちも。
たとえばマイケル・ウッズとダニエル・マルティネスのEFプロサイクリング総合上位候補2名がいきなりの落車。
ジロ第2ステージで胃腸トラブルによってリタイアしたアレクサンドル・ウラソフも、今回のブエルタではエース待遇での参戦となり注目を集めていたが、この第1ステージで早くも脱落。
脱落者としてはこちらもまたツールで無念の成績を残したティボー・ピノ、そして、2010年代最強のグランツールライダー、クリス・フルームの姿もあった。
そうした脱落者たちを尻目に迎えた最終山岳1級アラテ(登坂距離5.3km、平均勾配7.7%)。
20名程度に絞り込まれたメイン集団の中に、チーム・イネオスがエースのカラパスのほかにアシストを1名(イバン・ソーサ)しか残していなかったのに対し、ユンボ・ヴィズマはジョージ・ベネット、トム・デュムラン、セップ・クスの3枚もアシストを残すなど、相変わらず盤石の構え。
そして残り4.7kmでクスがアタック。
ツール・ド・フランスでも見せた「クスの先駆け」に、リチャル・カラパスとエンリク・マス、ヒュー・カーシー、ダニエル・マーティン、そしてプリモシュ・ログリッチだけが食らいついていく。
残り4.2㎞で若きカーシー、残り4㎞でベテランのダニエル・マーティンがそれぞれカウンターアタック。
いずれもすぐ抑え込まれた結果、一旦落ち着いた先頭6名に後続からエステバン・チャベス、ジョージ・ベネット、フェリックス・グロスチャートナーの3名が追いついてきた。
クスがペースメイクし、ベネットが脱落した先頭8名。
残り1.4㎞のカーシーのアタックによって最終決戦の火蓋が落とされ、クスが脱落。
それを受けて残り1㎞でスパートを仕掛けたのが、ディフェンディングチャンピオンのログリッチ自身だった。
このラスト1㎞のアタック1回で勝負を決めたログリッチ。
ツール・ド・フランスでは最後の最後で手痛い逆転敗北を喫した彼だったが、その後もリエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝などコンディションを維持し続けている今年最強の男。
今年最後のワールドツアーレースであるこのブエルタ・ア・エスパーニャで、見事初日勝利&マイヨ・ロホを獲得した。
第2ステージ パンプローナ~レクンベリ 151.6km(丘陵)
モビスター・チームの本拠地パンプローナ。
その「地元」での重要なこの第2ステージで、彼らはしっかりと存在感を示す走りを成し遂げてくれた。
まずはこの日の勝負所1級山岳サンミゲル・デ・アララル(登坂距離9.4㎞、平均勾配7.9%)。
カルロス・ベローナ、そしてパリ~ニース覇者マルク・ソレルの牽引によって集団からはトム・デュムランやアレクサンドル・ウラソフなどの実力者たちが次々と遅れていく。
集団先頭に残ったのは総合1位プリモシュ・ログリッチ、総合2位リチャル・カラパス、総合3位ダニエル・マーティン、総合4位エステバン・チャベス、総合6位エンリク・マス、総合7位ヒュー・カーシー、総合8位セップ・クス、総合11位アレハンドロ・バルベルデ、総合20位マルク・ソレルの9名のみ(総合9位ジョージ・ベネットはのちに追い付く)。
なお、1級山岳山頂は最終盤にアタックしたリチャル・カラパスが先頭通過。
この走りでこの日の最終的な山岳賞ジャージはカラパスが獲得している。
そして、モビスターの猛攻は止まらない。
残り17kmで山頂を迎えた1級山岳の下りで、先ほどまで集団牽引に力を使っていたはずのソレルが突如としてアタック。
すでに第1ステージでタイムを失っている彼を必死で追いかける理由は追走集団にはなく、得意の独走力を存分に発揮してグランツール初勝利を成し遂げた。
昨年、チームのエースであるナイロ・キンタナのために失ったブエルタでの勝利を、今回はアシストもこなしながら見事に達成したわけである。
後続のメイン集団の先頭はログリッチが獲得し、ボーナスタイム4秒を獲得。
総合2位カラパスとのタイム差を9秒に広げている。
一方でカラパスもこの日手に入れたタイムで前日のビハインドを取り返し、総合10位に浮上。
ユンボvsイネオスの頂上決戦に、モビスターのトリプルエースもまた、不気味に睨みを利かせる格好となっている。
第3ステージ ロドサ~ラ・ラグーナ・ネグラ・デ・ビヌエサ 166.1km(丘陵)
グルパマFDJのエースナンバー、ティボー・ピノが早くも不出走を決めたこの第3ステージは、丘陵カテゴリがついていながらも今大会最初の1級山岳山頂フィニッシュ。
そして第1ステージから始まる総合争い3連戦の3日目である。
よって、この日も逃げ集団にチャンスはもたらされず。
最初に形成された5名は残り58㎞地点で捕まえられ、その後にUCIプロチームの4名が新たな逃げを形成するも、これもまた残り9.5㎞地点で吸収された。
そして始まる、1級ラ・ラグナ・ネグラ=ビヌエサ。
登坂距離8.6km、平均勾配5.8%のこの登りに入ると、先頭を支配したのがイネオス・グレナディアース。
そして、その先頭を牽引したのが、ここまでの2ステージで常に早々に遅れる姿を見せていたクリス・フルームであった。
そんなイネオスによるハイ・ペースが刻まれる中、残り5㎞地点でメカトラブルの憂き目に遭ったのが総合4位のエステバン・チャベス。
チームメートのスカブ・グルマイのバイクに即座に交換してリスタートしたチャベスだったが、最終的にメイン集団への復帰は叶わず、この日だけで1分6秒のタイムを失い、総合総合8位に転落している。
そして残り1.5㎞でイネオスの最後のアシストであるイバン・ソーサが離れると、14名ほどの小集団が最後の勝負に突入していく。
最後の最後が最も厳しいこの日のフィニッシュ地点。残り1.1㎞でまずアタックしたのがAG2Rラモンディアルのエースナンバーをつけるクレモン・シャンプッサン。
20分32秒遅れの総合46位シャンプッサンのアタックには誰も反応しない様子を見せて逃げ切りの可能性も一瞬見えたものの、グロスチャートナ―を先頭にペースアップした集団が残り600mで吸収。
そしてその直後、クスがカウンターアタック。
シャンプッサンを突き放して9名になった先頭集団が残り300mを切っていよいよ最後の10%激坂区間に突入する。
この激坂で強かったのが、過去2度のフレーシュ・ワロンヌ2位を経験しているダニエル・マーティン。
追いすがるカラパス、ログリッチを並ばせることなく、プロ14年目の大ベテランが2年3か月ぶりの勝利をモノにした。
第4ステージ ガライ/ヌマンシア~エヘア・デ・ロス・カバジェロス 191.7㎞(平坦)
第4ステージにしてようやく訪れた平坦ステージ。
山岳ポイントは一つもなく、全体的に下り基調となるこの日は、まず間違いなく集団スプリントでの決着が期待されたステージであった。
事実、結論としてはそのようになるのだが、一方でこの日吹き荒れた強風は総合勢にとっても緊張感を与える要因となった。
追い風も影響して平均時速49.26kmという驚異的なスピードで展開したこの日。
モビスター・チームが前日の積極性を引きずるかのように横風分断を仕掛ける場面もあったため、なかなか総合勢にとっても気を休められない1日ではあったが、最終的にはなんとかセオリー通りの集団スプリントに。
今大会「最強」候補の筆頭は、ツール・ド・フランスでもマイヨ・ヴェールを獲得したサム・ベネット率いるドゥクーニンク・クイックステップである。その立役者であったミケル・モルコフも健在である。
一方で、そのベネットの「古巣」ボーラ・ハンスグローエで、昨年のジロ・デ・イタリアポイント賞獲得者パスカル・アッカーマンも当然、油断のならない男である。とはいえアッカーマンは今年、正直調子があまりよくはない。2位や3位は多いものの、勝ちきれない状態でここまで過ごしてきている。
その他の優勝候補としてはUAEチーム・エミレーツのジャスパー・フィリプセンやトレック・セガフレードのマッテオ・モスケッティなど若手中心。
やはりドゥクーニンクが最も可能性の高いチームであるというのは、衆目の一致するところであった。
その期待通り、残り2.5㎞地点から先頭を支配し始めたのがドゥクーニンク・クイックステップ。
なんとこの時点でサム・ベネットの前には6枚のアシスト。時速80㎞を超える猛スピードで、ドゥクーニンク・トレインがフィニッシュに向かって突き進む。
だが、残り300m、事前情報にはなかった左カーブで、必死の形相のリードアウトを仕掛けたルイ・オリヴェイラによって引き上げられたジャスパー・フィリプセンが、カーブからの最終立ち上がりで一気に先頭に躍り出た。
一方、サム・ベネットは、トラックレース巧者のオリヴェイラの巧みなコース取りによって右端に追いやられ、失速していた。
フィリプセンにとっては千載一遇のチャンスであった。もはや何も考えず、ハンドルを左右に振りながら200m先のフィニッシュラインに突入するだけ。
だが、それは百戦錬磨の男、サム・ベネットが許すはずがなかった。
後ろに食らいついてきたアッカーマンもヤコブ・マレツコも振り払い、「ツール最強の男」が自らの力で若き才能を叩き潰した。
まるで3週目のような激熱な総合争いの中でようやく訪れた平坦ステージだけに、あらゆるスプリンターがその熱を貯めていたことがよくわかるような熱いスプリントバトルであった。
この先も決して数は多くないスプリントステージ。
ただ、そのいずれもが注目に値する楽しみなステージになることは間違いがなさそうだ。
第5ステージ ウエスカ~サビニャニゴ 184.4㎞(丘陵)
ステージ後半にかけて3つの山岳ポイント。
とはいえいずれも決して難易度は高くなく、総合争いが勃発するようなステージではなさそう。
ということで、今大会最初の逃げ切り勝利に向けて、激しいアタック合戦が繰り広げられることに。
最初に形成されたのは14名もの大規模な逃げ集団。
しかしここに乗り損ねたチームが全力で追走を仕掛け、スタートから70㎞地点で一度これを捕まえた。
その後、残り90㎞から再び新たに12名の逃げ集団が形成され、最終的にはここから逃げ切り勝利者が生まれる結果に。
最初の1時間の平均時速はなんと52㎞。
結局はこの日も、総合勢がゆっくりと落ち着く、というわけにはいかない日となってしまった。
最終的な逃げに乗った12名
- ロバート・パワー(チーム・サンウェブ)
- ティメン・アレンスマン(チーム・サンウェブ)
- マーク・ドノヴァン(チーム・サンウェブ)
- セップ・クス(ユンボ・ヴィスマ)
- アンドレア・バジョーリ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
- イヴォ・オリヴェイラ(UAEチームエミレーツ)
- カラム・スコットソン(ミッチェルトン・スコット)
- アルフレッド・ライト(バーレーン・マクラーレン)
- ティム・ウェレンス(ロット・スーダル)
- ギヨーム・マルタン(コフィディス・ソルシオンクレディ)
- マッテオ・バディラッティ(イスラエル・スタートアップネイション)
- ジェフェルソン・セペダ(カハルラル・セグロスRGA)
総合6位のクス、そして総合13位のバジョーリが入っていたことでメイン集団も簡単にはこれを許さない。
タイム差がなかなか広がらない中で、最初の2級山岳ビオ峠でティム・ウェレンス、ギヨーム・マルタン、そしてネオプロのテイメン・アレンスマン(元SEGレーシングアカデミー、7/1からサンウェブ入り)の3名が抜け出し、残りのメンバーは集団に吸収。
こうして、3名の逃げ集団が生まれたことでようやく、集団は落ち着きを取り戻すことができた。
この日ここまでのハイスピードな展開。
そして翌日に控えるクイーンステージ。
様々な事情を考慮して、メイン集団もこれ以上の追走を放棄。
3分にまで広がったタイム差はそれ以上縮まることなく、先頭3名による逃げ切りが――今大会初の逃げ切りが――決まった。
ツール総合11位の一流クライマーであると共にパンチャータイプでもあるマルタン。
アルデンヌ・クラシックの名手で当然パンチ力も十分にあるウェレンス。
この2名に対して、新鋭アレンスマンの脚質は全くの未知数であった。
2018年にはU23版パリ~ルーベで3位になったかと思えば、ツール・ド・ラブニールではタデイ・ポガチャルに次ぐ総合2位。
体重も68㎏と、クライマータイプとルーラータイプの狭間にいるようなプロフィールであった。
ただ、さすがに歴戦の強者であるマルタン、ウェレンスに真っ向勝負を仕掛けるわけにはいかなかった。
残り1㎞、フラム・ルージュを潜ったところで最初に仕掛けたのがアレンスマンだった。
勢いは良かった。
だが、落ち着いたこれを追いかけるのがウェレンス。
マルタンも一度は遅れたが牽制でペースを落とした前2人になんとか追いつく。
そして、残り500mを切ってから突如として現れる勾配12%の激坂。
そのあとも延々と続く10%勾配にウェレンスとマルタンがハイ・ペースを刻み、アレンスマンが遅れる。
勝負はマルタンとウェレンスの一騎打ちに。
これを制したのが、1年ぶりの勝利、そして2年ぶりのグランツールでのステージ勝利となった、ティム・ウェレンスであった。
メイン集団でもこのラストの激坂を舞台に登りスプリントバトルが開幕。
その先陣を切って4位フィニッシュ。後続のライバルたちにタイム差をつけてラインに飛び込んできたのがログリッチだった。
しかし、登りの途中で発生した落車に総合2位ダニエル・マーティンが巻き込まれる事態が発生。
これを理由として4位以下集団のタイム差なしという判定が下され、ログリッチの1秒はなかったことに。
結果として総合勢の中で動きが起こらないまま、第1週の最終日を迎えることとなった。
第6ステージ ビエスカス~サジェント・デ・ガジェゴ(アラモン・フォルミガル) 146.4㎞(山岳)
当初はクイーンステージとも言われていたこの第6ステージ。
本来のオービスク&ツールマレーの超高難易度コースに比べるとその難易度はずっと低くなったように思えるが、一方で降りしきる冷たい雨と、標高を上げるごとに氷点下へと近づいていく気温とが選手たちを苦しめ、総合勢においても大きな大きな混乱を巻き起こすこととなった。
それでもレース前半はひたすら平穏な時間が続いた。
「クレルモンフェランのTGV」レミ・カヴァニャが中心になって何度かアタックが起きては吸収される事態が巻き起こったものの、最終的には23名の大規模逃げ集団が形成。
メイン集団とのタイム差は3分程度と、逃げ切れるかどうか微妙なタイム差を維持しながら、逃げ集団は中盤の2つの山岳ポイントを超えていった。
逃げに乗った23名
- ロバート・パワー(チーム・サンウェブ)
- マイケル・ストーラー(チーム・サンウェブ)
- ヤシャ・ズッタリン(チーム・サンウェブ)
- ギヨーム・マルタン(コフィディス・ソルシオンクレディ)
- ヴィクトル・ラフェ(コフィディス・ソルシオンクレディ)
- ピエールリュック・ペリション(コフィディス・ソルシオンクレディ)
- マティア・カッタネオ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
- レミ・カヴァニャ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
- ルイ・コスタ(UAEチームエミレーツ)
- セルジオ・エナオ(UAEチームエミレーツ)
- ヨン・イサギレ(アスタナ・プロチーム)
- ゴルカ・イサギレ(アスタナ・プロチーム)
- マグナス・コルトニールセン(EFプロサイクリング)
- マイケル・ウッズ(EFプロサイクリング)
- ホルヘ・アルカス(モビスター・チーム)
- カルロス・ヴェローナ(モビスター・チーム)
- ディラン・ファンバーレ(イネオス・グレナディアーズ)
- カンタン・ジョレギ(AG2Rラモンディアル)
- ゲオルク・ツィンマーマン(CCCチーム)
- ミケル・ヴァルグレン(NTTプロサイクリング)
- ジョナタン・イヴェール(トタル・ディレクトエネルジー)
- フレン・アメスケタ(カハルラル・セグロスRGA)
- オスカル・カベド(ブルゴスBH)
残り40㎞地点の2級コテファブロ峠からの下りでゴルカ・イサギレがアタック。
TT能力も高いゴルカの独走に、追走集団も数を減らしながら追いすがる。
結局残り6.6㎞でゴルカは吸収されたものの、その間ずっと足を貯めることのできていた弟のヨン・イサギレが、ラスト3㎞でアタックを仕掛けた。
兄弟のコンビネーションを活かして見事勝利を掴んだヨン・イサギレ。
これで彼は、史上100人目の3大グランツールでのステージ優勝者となった。
同じ頃、後方のメイン集団では混乱が巻き起こっていた。
マイヨ・ロホを着るプリモシュ・ログリッチが、2級コファテブロの下りを前にしてレインジャケットを着ようとしたところ、何かしらうまくいかない出来事が起こり、集団の後方にポジションを落としていた。
その中で集団が活性化し、ログリッチはこれに出遅れる形に。
アシスト総動員で彼を引き上げ、メイン集団への復帰を成功させたものの、その代償として総合6位セップ・クスを失い、最後の局面においてログリッチの傍にいるアシストはジョージ・ベネットただ1人に。
その状況下で、最後のアラモン・フォルミガル(登坂距離14.4㎞、平均勾配4.7%7)決戦に挑んだ。
集団からはダヴィ・ゴデュやマルク・ソレルなど、タイムを失っていた選手たちが次々とアタックをする中、ジョージ・ベネットが前を牽くメイン集団から、残り3.4kmでエステバン・チャベスがアタック。
この動きをきっかけとして、さらに集団からは総合3位リチャル・カラパスや総合5位ヒュー・カーシーなど危険な選手がアタックを仕掛けていく。
そして、アシストをすべて失ったログリッチは、この動きについていくことができなかった。
雨と深い霧の中、選手の識別もままならない混沌とした最終登坂。
それは昨年の同じ第1週最終日となった第9ステージの終盤を彷彿とさせるものだった。あのときもまた、雨の中カメラの映像もまともに届かず、落車も巻き起こった荒れた展開の中、ナイロ・キンタナがマイヨ・ロホを獲得するカオスなステージとなっていた。
今回もまた、混乱の中で遅れるログリッチ。ただし、その度合いは昨年以上。
あっという間にカラパスたちから20秒を失っていく中、ラスト1㎞。
共に遅れていたはずのダニエル・マーティンらにも置いていかれたログリッチは、結果としてカラパスから43秒遅れでのフィニッシュとなってしまった。
ログリッチはダニエル・マーティンからも15秒、最後にスプリントを仕掛けてカラパスたちをも突き放してフィニッシュしたヒュー・カーシーからは48秒も失う結果となり、総合順位でも4位に転落してしまった。
そして新たにマイヨ・ロホを手に入れたのがリチャル・カラパス。
昨年ジロ覇者。そして、今年ジロ・デ・イタリアを大逆転総合優勝したテイオ・ゲイガンハートのチームメートである。
やはり一筋縄ではいかない今年のブエルタ・ア・エスパーニャ。
1週間後、この総合成績がどうなっているかは、誰にも予想がつかないことだろう。
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*1:厳密に言うと違うが、実質的には。