いよいよ今年もロードレースシーズンが開幕。
ツアー・ダウンアンダー、ブエルタ・ア・サンフアンなど、開幕直後から各種重要なレースが目白押し。
今年も「主要レース振り返り」、やっていきます。
(記事中の年齢は全て、2020/12/31時点のものとなります)
↓過去の「主要レース振り返り」はこちらから↓
主要レース振り返り(2018年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど
主要レース振り返り(2019年) カテゴリーの記事一覧 - りんぐすらいど
- オーストラリア選手権 男子エリート個人タイムトライアル
- オーストラリア国内選手権男子エリートロードレース
- ウィメンズ・ツアー・ダウンアンダー(2.Pro)
- ラ・トロピカーレ・アミッサ・ボンゴ(2.1)
- ツアー・ダウンアンダー(2.WT)
- ブエルタ・ア・サンフアン(2.Pro)
- レース・トーキー(1.1)
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オーストラリア選手権 男子エリート個人タイムトライアル
国内選手権 開催国:オーストラリア 開催日:1/8(水)
まさかの2年連続でのデニスの敗北・・・昨年は、メリダバイクとの相性の悪さを感じさせるツイートを残していたが今回は・・・?
ただ、ローハン・デニス自身は割とからっとした感じでダーブリッジを祝福するツイートを残しており、チーム・イネオスも、ダーブリッジを称えつつ、デニスが昨年の同時期よりも良い成績を残していること、そしてもちろん、これが彼のピークではなくこの後も風洞実験を行うためにメルボルンに向かうと説明している。
よって、ここで語るべきはデニスの敗北ではなく、2年連続でオーストラリア最強のクロノマンとなったダーブリッジへの祝福だろう。
昨年は「北のクラシックが主目標であり、そのために冬季トレーニングをしていた中で、まさかTTチャンピオンになるとは思っていなかった」というようなコメントを残していた彼だが、今回はより本気で挑んだということなのだろうか。
昨年はそういった思いの中挑んだクラシックシーズンを、序盤の落車で台無しにしてしまった。今年はトレンティンを失ったチームにとって、北のクラシックにおける唯一の希望がこのダーブリッジだ。2020年シーズンを、彼の成功のシーズンとしたいところ。
Australian Road Championships: Durbridge again beats Dennis to defend elite men's time trial title | https://t.co/3HpMNOOL4u pic.twitter.com/3ElgQwvAQ7
— Cyclingnews.com (@Cyclingnewsfeed) January 8, 2020
そして、3位に入ったクリス・ハーパーの成長にも驚き。昨年は7位。しかも、ダーブリッジとは4分弱のタイム差だった彼が、今年はそれを2分も縮めた。
これは彼自身の成長なのか、それともユンボ・ヴィズマのキャンプでの成長なのか。
今年1年、この「遅れてきた新人」にも注目し続けていきたい。
オーストラリア国内選手権男子エリートロードレース
国内選手権 開催国:オーストラリア 開催日:1/12(日)
昨年、クリス・ハーパーと二人で抜け出しながらも、牽制合戦の末に後ろから追いついてきたマイケル・フライバーグに出し抜かれてしまうという悔しい思いを味わったキャメロン・マイヤー。
今年は逃げにニック・シュルツを乗せ、カラム・スコットソン、ルーク・ダーブリッジが積極的に牽き、最後はマイヤーの単独アタック後にルーカス・ハミルトンが重し役を引き受けるという、チーム一丸となった戦い方で見事に勝利を掴んだ。
信じられないといった表情を見せながら、初出場から12年目の初優勝を噛み締めたキャメロン・マイヤー。
早くも今年のガッツポーズ選手権ノミネートすべき瞬間を見ることができた。
レース後にはチームメートと熱く抱き合う姿も。
ミッチェルトン・スコットはタイムトライアルのダーブリッジに続き、新年2戦を幸先よくゲット。地元オーストラリアが舞台とはいえ、「弱体化」したチームに勢いをもたらす勝利となったのは間違いないだろう。
ウィメンズ・ツアー・ダウンアンダー(2.Pro)
女子UCIプロシリーズ 開催国:オーストラリア 開催日:1/16(木)~1/19(日)
↓詳細はこちら↓
男子のツアー・ダウンアンダーに先駆けて4日間の日程で開催された女子版ツアー・ダウンアンダー。
男子レースが1999年初開催で今年22回目を迎えるのに対し、女子レースは2016年初開催で今年でまだ5回目。そして、ここ3年を連続して制しているのが、地元ミッチェルトン・スコットのアマンダ・スプラットである。
今年も、スプラットはさっそく国内選手権ロードレースを制するなど絶好調な状態であり、4連覇に向けてチームも本人も万全な体制であるように思えた。
事実、第2ステージでは、ミッチェルトン・スコットがチーム一丸となって総攻撃を仕掛けた結果、最後はたった3名の小集団でのフィニッシュとなり、これをスプラットが見事に制した。
しかしここで粘り、スプラットとのタイム差なしでゴールしたのがアメリカロード王者のルス・ウィンダーと、22歳のドイツ人パンチャー、リアン・リペット。
そして、この粘りがのちの逆転を生む。
第3ステージは男子レースでもお馴染みの「スターリング」登りフィニッシュ。昨年はミッチェルトン・スコットのチーム力が見事に発揮されたこのステージで、今年は前日に力を使いすぎたのか、ミッチェルトン・スコットは完全に崩壊してしまう。
結果、最後のスプリントでスプラットは10位に沈み、勝ったのは前日2位のウィンダー。そして2位には前日3位のリペットが入り、総合成績でも2人がスプラットを逆転した。
1位から3位までタイム差7秒の僅差で迎えた第4ステージは、もはや集団スプリントでの勝利だけが目的の平坦クリテリウムステージではない。3つある中間スプリントを巡り、序盤から有力チームが集団をコントロールし続ける。
最初の中間スプリントポイントはリペットが先頭通過でウィンダーとのタイム差を4秒にまで縮めたものの、2回目の中間スプリントポイントでは今度はリペットが沈み、ウィンダーが1秒を奪い返した。
そして、あまりにも序盤から力を使いすぎた各チームにもはや集団をコントロールする力は残っておらず、12名の大規模な逃げ集団が逃げ切る展開となった。
第1ステージを制したオージー最強スプリンターのクロエ・ホスキングも、この日の優勝候補であり実際に集団の先頭は取れたものの、ステージ優勝は逃げ集団に入り込んでいたシモーナ・フラッポルティが掴み取った。
最後はウィンダーとリペットとのタイム差が6秒、そしてリペットとスプラットとのタイム差がわずか1秒という超僅差での決着となった今年の女子ツアー・ダウンアンダー。
女子レースの面白さが男子に決して劣らないレベルにまで達していることを証明するかのような名レースだった。
ラ・トロピカーレ・アミッサ・ボンゴ(2.1)
アフリカツアー1クラス 開催国:ガボン共和国 開催日:1/20(月)~1/26(日)
中央アフリカの西海岸、ガボン共和国で開催されるこれもまた(とくにフランス系のチームにとっては)シーズン開幕戦の1つ。
全体的にはスプリンター向けのコースが多く、昨年もステージ3勝を遂げたニッコロ・ボニファツィオがボーナスタイムを積み重ねて総合優勝。しかし今年第2ステージで18名もの逃げが生まれてそのまま逃げ切り。先頭を取ったナトナエル・テスファション(所属チームはNTTプロサイクリングの育成チーム)が最終日まで総合リーダージャージを着続けた。
しかし、このとき18名の中に含まれていたヨルダン・ルヴァッスールが連日少しずつボーナスタイムを積み重ねており、最終日の段階でテスファションに1秒差。そしてこの最終日でも中間スプリントポイントでボーナスタイムを得たことで、テスファションを1秒逆転して総合逆転優勝を果たした。
Jordan LEVASSEUR @jordanlevasseur remporte La Tropicale Amissa Bongo 2020. Bravo les Rose et Noir ! @N4E_Officiel @roubaix @MEL_Lille @Argon18bike @ShimanoROAD @specialitesta @DOLTCINI1 @departement59 @hautsdefrance @dalkia pic.twitter.com/Rgz1s44RkV
— Team Cycliste Natura4Ever Roubaix Lille Métropole (@n4eroubaixlm) January 26, 2020
かつて、フランス陸軍チームに所属していたが、チーム解散後はアマチュアで過ごすことに。今年、ルーベリールメトロポールにて久々のコンチネンタル復帰を果たした。
今回がプロ初勝利。まだ今年25歳と若く、可能性を残した選手だ。
日本人としても注目したいチーム、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンスもこのレースでシーズン開幕戦を迎えた。
日本人としては別府史之と岡篤志が出場。岡は初の海外チームでの挑戦となるが、序盤は体調不良に苦しめられる。それでも終盤にかけて調子を上げてきて、得意の独走力で最終日2日はしっかりと逃げに乗る活躍を見せた。
チームとしては期待の若手ビニヤム・ギルマイが活躍。昨年のアミッサ・ボンゴでもステージ1勝、そしてツール・ド・ラヴニールでも最終日山岳ステージで5位に入るなどの才能を見せている彼は、今大会唯一の登りフィニッシュとなった第3ステージで他を圧倒させた。
🏆🇬🇦 #TAB2020 @BiniamGrmaye
— Team NIPPO DELKO One Provence (@NIPPO_Delko_OP_) January 22, 2020
🇫🇷 "Je suis très content de cette victoire et je remercie toute l’équipe, pas seulement les coureurs mais aussi le staff."
🇬🇧"I’m very happy with this victory and I thank the team, not only the riders but also the staff"
📸Tropicale Amissa Bongo pic.twitter.com/7fcJn0gKfz
スプリンター向けの第5ステージでも、ラムナス・ナヴァルダスカスと別府史之というチームの2大ルーラーのアシストを受けながら、チーム随一のスプリンターであるジュスタン・ジュルのリードアウトから放たれるという豪華トレインの結果、見事に2勝目。ポイント賞も手繰り寄せ、チームの成功を担った。
🌴TROPICALE AMISSA BONGO
— Team NIPPO DELKO One Provence (@NIPPO_Delko_OP_) January 25, 2020
🇬🇦 Étape 6 - Stage 6
🇫🇷 Biniam Girmay Hailu gagne une deuxième étape sur la Tropicale Amissa Bongo
🇬🇧 Biniam Girmay Hailu wins a second stage on the Tropicale Amissa Bongo
#TAB2020#nippodelkooneprovence#stage6#secondvictory#teamspirit pic.twitter.com/ZZtByEFguR
もう1人注目すべきは、昨年もコフィディスのトレーニーとして走り8月のスハール・セルス(ヨハン・ムセウ・クラシック)で勝利しているアッティリオ・ヴィヴィアーニ。今年コフィディスに正式加入し、同じく移籍してきた兄と同じチームで走ることになった彼が、兄に先んじてチームに1勝目をもたらす。第1ステージ以外でも上位入賞を繰り返しており、今大会目立ったスプリンターの1人であったことは間違いない。
エリアよりも若く整った顔立ちのように見えながら、鼻はやっぱり兄弟といった感じのあるアッティリオ。今後、より位の高いレースでの活躍が楽しみだ。
VICTOIRE - VICTORY 🏆@AttilioViviani règle au sprint la première étape de la #TAB2020 😍
— Team Cofidis (@TeamCOFIDIS) January 20, 2020
Attilio Viviani wins the 1st stage of @tropicale2020 😍#cofidismyteam pic.twitter.com/eHtiuKwNdr
ツアー・ダウンアンダー(2.WT)
ワールドツアークラス 開催国:オーストラリア 開催日:1/21(火)~1/26(日)
例年秒差を巡る争いが繰り広げられるクオリティの高いレースだが、今年はとりわけ白熱したようにも思える。その展開については下記の記事にまとめてあるのでぜひ。
全ステージレビューについてはこちら。
結果だけ見れば比較的「予想通り」の結末だったように思える。が、本当に最後の最後までどうなるかわからない展開だった。
そんな中、注目すべき走りを見せたのが世界王者のマッズ・ピーダスン。決して彼向きのレースではないにも関わらず、中間スプリント争いや集団牽引、逃げなど、エースのリッチー・ポートのための最高のアシストをやってのけた世界王者であった。
また、開幕直前に不整脈により欠場となったベヴィンの代わりに、なんとか結果を出そうと奮起したCCCチームのジョセフ・ロスコフが山岳賞、シモン・ゲシュケが総合3位と大健闘。
その他、勝てはしなかったが常にステージ上位に入り込んだジャスパー・フィリプセンがポイント賞を獲得。
その他、全ステージの振り返りについては、以下のポッドキャストであきさねゆうさんと行っているのでぜひご確認を。
Appleポッドキャスト、Googleポッドキャストなどでも配信中なので、それぞれ「りんぐすらいどれでぃお」で検索してみてください。
ブエルタ・ア・サンフアン(2.Pro)
UCIプロシリーズ 開催国:アルゼンチン 開催日:1/26(日)~2/2(日)
ツアー・ダウンアンダーと並ぶシーズン開幕戦。ピュアスプリントステージと個人タイムトライアル、本格的な山岳ステージとがバランス良く配置され、毎年豪華なメンバーが出場している。
今年もジュリアン・アラフィリップやレムコ・エヴェネプール、今年はダウンアンダーには出場しなかったペテル・サガンやフェルナンド・ガビリアなど。
全ステージのレビューはこちらから。
総合争いでは第5ステージのアルト・コロラドフィニッシュで白熱の展開が。
ただ、最終的には総合上位勢が団子でゴールしたため、最終結果はほぼ個人タイムトライアルの結果で決まることとなった。
その中で、今後注目すべき走りをして見せたのが、アルト・コロラドでも失速しなかったTTスペシャリストのフィリッポ・ガンナ。最終的にも総合2位。
今回はイタリアナショナルチームでの参加だったが、イネオス2年目となる今年、昨年のディラン・ファンバーレのように、彼もイネオスの魔法によって登れる男になるのかもしれない。
また、今年満を持してのワールドツアーデビューとなったブランドン・マクナルティも、期待通りのTT能力と登坂力を見せての総合4位。
またそのTT能力は、ガビリアのためのスプリントトレイン維持にも役立つものがあり、ボブ・ユンゲルスのような活躍を今後期待できるかもしれない。
レース・トーキー(1.1)
オセアニアツアー1クラス 開催国:オーストラリア 開催日:1/30(木)
オーストラリア、ヴィクトリア州で開催された今年新設のワンデーレース。週末に同じヴィクトリア州で開催されるカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースの前哨戦としての開催だったが、展開は結構違うものとなった。
全体的なペースが速く、ダウンアンダーで2勝したカレブ・ユアンは7周目に早くも脱落。ラスト1周でダリル・インピーとドリース・デヴェナインスがアタックして抜け出す(カデルレースと似た展開だ!)も、ピュアスプリンターたちを抱えるチームたちがこれを捕まえる(カデルレースと違った展開に!)。
ダウンアンダー新人賞のパヴェル・シヴァコフもラスト5㎞でアタックし危険なギャップを生むが、カデルレースと違ってこれもまた、残り1㎞で捕まえられる。
そして最後は(ユアンやヴィヴィアーニなどを欠くものの)集団スプリントへ。勝ったのは、ミケル・モルコフの強力なリードアウトを完璧に活かしたサム・ベネット。
しかしダウンアンダーでも1勝したジャコモ・ニッツォーロも2位に、同じくネオプロでありながらダウンアンダーで常にTOP10に入り続けていたアルベルト・ダイネーゼが3位と、シーズンのこの後の展開が楽しみになるレース結果となった。
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