「痛みの山」ロス・マチュコスを始めとし、カンタブリア州やアストゥリアス州の厳しい山頂フィニッシュを潜り抜ける今年のブエルタ・ア・エスパーニャ第2週。そこにバスクの激坂丘陵地帯が加わるため、今大会最も難易度の高い週とも呼ばれている。例年と比べて1日多いし。
よって、この週で大きな総合争いのカタチは決まってしまいそう。第1週から波乱の展開が続いており、例年以上に予想のつかない混沌とした事態が続いている今大会、果たしてどんな結末に向かっていくのか。
今回はそんなブエルタ・ア・エスパーニャ第2週のコースを概観していく。
↓第1週のコースプレビューはこちら↓
↓全チームのスタートリストと簡単なプレビューはこちら↓
- 第10ステージ ジュランソン〜ポー 36.2㎞(個人TT)
- 第11ステージ サン=パレ〜ウルダクス 180㎞(丘陵)
- 第12ステージ ナバラ・サーキット~ビルバオ 171.4 km(丘陵)
- 第13ステージ ビルバオ~ロス・マチュコス 166.4km(山岳)
- 第14ステージ サン・ビセンテ・デ・ラ・バルケラ~オビエド 188km(平坦)
- 第15ステージ ティネオ~サントゥアリオ・デル・アセボ 154.4km(山岳)
- 第16ステージ プラビア~アルト・デラ・クビーリャ 144.4km(山岳)
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第10ステージ ジュランソン〜ポー 36.2㎞(個人TT)
最初の休息日明けに訪れるはフランスのポー。今年のツール・ド・フランスの個人タイムトライアルの舞台となったのと同じ街で、今年のブエルタの個人タイムトライアルが開催される。
アップダウンの激しい丘陵タイムトライアルとなったツールのときと比べると、ブエルタのタイムトライアルはより長い代わりに登りはそこまで急ではなくなった。よって、ツールのとき以上に純粋なタイムトライアルスペシャリストに有利なレイアウトとなった、と言えるだろう。
ただし、ツールのときよりもコースは曲がりくねっており、ところどころテクニックが必要となる場面も。
2箇所ある下りにも鋭角カーブがいくつか含まれる。
現在の総合上位勢の中では、世界王者級のTT能力を見せるプリモシュ・ログリッチェが圧倒的優位。ミゲルアンヘル・ロペスからマイヨ・ロホを奪う可能性も十分にあるだろう。
ロペス、キンタナがどこまでタイムを落とさずにいられるか。ポガチャル、ケルデルマンにとってもチャンスとなりそうだ。
ステージについては実績で言えばヴァシル・キリエンカ(チーム・イネオス)、ネルソン・オリヴェイラ(モビスター・チーム)、トニー・マルティン(ユンボ・ヴィズマ)あたりが強力だが、いずれもチーム戦略の中で、本気の走りを許されない可能性がある。
逆に自由が許されているチームの中ではパトリック・ベヴィン(CCCチーム)、ローソン・クラドック(EFエデュケーション・ファースト)、トビアス・ルドヴィクソン(グルパマFDJ)あたりに注目したい。
第11ステージ サン=パレ〜ウルダクス 180㎞(丘陵)
フランス南西部、いわゆるフレンチバスクと呼ばれる地域にあるサン=パレを出発し、そのままピレネー山中、ナバラ州のウルダクスに向かう。アップダウンは激しいが移動ステージに位置付けられ、難易度は低い。
3年前の第13ステージも同じ地域をフィニッシュ地点に選んだ。このときは12名の逃げ集団の中から、残り20㎞で抜け出したヴァレリオ・コンティ(当時ランプレ・メリダ。現UAEチーム・エミレーツ)が逃げ切り勝利を果たした。
今回も逃げきり勝利の可能性が最も高いか。最後の3級からフィニッシュまでの距離もあるため、スプリント決着も充分に考えられる。
第12ステージ ナバラ・サーキット~ビルバオ 171.4 km(丘陵)
2年前の個人TTの舞台となったナバラ・サーキットを出発点とし、ゴール地点はバスク州の事実上の州都ビルバオへ。
頂上フィニッシュのようなわかりやすい凶悪さはないものの、そこはバスク。尋常ではない激坂が後半では待ち受けている。
まずは1つ目の3級ウルズティメンディは登坂距離2.5km、平均勾配9.2%、最大勾配20%。2つ目の3級ビベロは登坂距離4.3km、平均勾配7.7%、最大勾配16%。そして最後の3級アライズは登坂距離2.2km、平均勾配12.2%m、最大勾配も20%超でしかも4か所に散らばって存在する。
逃げ切りが決まりそうなレイアウトになるが、ここで勝つのは十分な登坂力をもった選手たちとなる。その点で、地元バスク人たちはやはりこういった激坂に慣らされているため、この日の優勝候補となりそうだ。
たとえばアスタナ・プロチームに所属するゴルカ・イサギレ。あるいは昨年もブエルタの激坂フィニッシュで優勝しているエウスカディ・バスクカントリーのオスカル・ロドリゲス。あるいはカハルラル・セグロスRGAに所属し、ビルバオの激坂レース「シルキュイ・ドゥ・ゲチョ」で今年ワンツーを獲っているジョン・アベラストゥリやアレックス・アランブルらに注目しておきたい。
また、下りフィニッシュとはいえ、総合勢においても動きが起こりかねないステージでもある。何が起こるかわからないのがブエルタなのだから。
第13ステージ ビルバオ~ロス・マチュコス 166.4km(山岳)
いよいよブエルタ・ア・エスパーニャ2019の第2週も本格的な総合争いを開始する。今年のブエルタは第3週の難易度がそこまででもないため、この第2週がある意味で、総合争いにおけるクライマックスとなるだろう。
その第一手となるのは、2年前のブエルタで初登場し、フルームをして「壁」と言わしめた「地獄」「痛みの山」ロス・マチュコス。地元の人々はこの登りを「非人道的な登り(rampas inhumanas)」と呼ぶという。
2年前はアクアブルー・スポートに所属していたオーストリア人ステファン・デニフルが先頭でゴールラインに到達した。しかし彼はのちにドーピング違反が発覚し記録剥奪。彼を鬼気迫る勢いで追走したアルベルト・コンタドールがこの日の覇者として記録されている。
途中の登りも決してイージーではないが、この日についてはもう、最後の登りについてのみ言及するので十分であろう。その「非人道的な登り」のプロフィールは以下の通りである。
想像するだけで吐き気のする登りだ。
同じように(もう少し短いとはいえ)激坂が連続した第7ステージのマス・デラ・コスタでは、アレハンドロ・バルベルデ、プリモシュ・ログリッチェ、ミゲルアンヘル・ロペス、ナイロ・キンタナという今大会の「4強」が抜け出る形となった。
この日も、彼らが最強であることを示せるか。
なお、ロス・マチュコスの山頂にはMonumento Vaca Pasiega、すなわちパシエガ牛の像が立っており、観光地となっている。
Monumento a la vaca pasiega en El Alto de Los Machucos #Cantabria pic.twitter.com/fOSd45NP6s
— Cantabria ® 💢 (@latierruca) October 22, 2014
第14ステージ サン・ビセンテ・デ・ラ・バルケラ~オビエド 188km(平坦)
カンタブリア州からアストゥリアス州へ。翌日から始まる山頂フィニッシュ2連戦を前にして、今大会3度目の、そして第2週唯一の平坦ステージを迎える。
第1週で数少ないチャンスを掴み取ったのはボーラ・ハンスグローエのサム・ベネットとドゥクーニンク・クイックステップのファビオ・ヤコブセン。ただし、最強は間違いなくベネットであった。
本来、彼のライバルとなるはずだったフェルナンド・ガビリアは、初日のチームTTでの落車の影響もあるのか、精彩を欠く。次点で上位に入るのは、今年絶好調のルカ・メスゲッツ。チャベス、ニエベのダブルエースがなかなか結果を出せない中、なんとか結果を持ち帰りたいところ(それはゲームでも同様・・・)。
ただ、明らかなスプリントステージであっても、伏兵には十分に注意すべし。昨年も第18ステージのような前例があってだね・・・。
第15ステージ ティネオ~サントゥアリオ・デル・アセボ 154.4km(山岳)
例年より1日長い第2週のトリを飾るのは山頂フィニッシュ2連戦。その1つ目は、ブエルタ初登場の山、アセボ峠。スタート直後にも登るが、最終決戦に使われるのは最初の登りとはまた別のルートであり、より強烈な登りとなっている。
最後の登り、「アセボの聖域」のプロフィールは以下の通り。
前々日のロス・マチュコスと比べるとわずかに劣るプロフィールではあるものの、そこに至るまでのプロフィールがより厳しいため、コース全体の難易度は第2週で最も高い。展開もサバイバルとなりそうで、最後の登りだけでなく、最後から2番目の1級山岳のあたりから、激しい動きが巻き起こりそうだ。
コース自体は逃げ切り向きではあるが、展開次第ではそれも全て食い潰されてしまうかもしれない。最も展開の予想がつかないステージ。この日を終えたあと、総合順位は果たしてどうなっているのだろうか。
第16ステージ プラビア~アルト・デラ・クビーリャ 144.4km(山岳)
アストゥリアス山脈の山頂フィニッシュ2連戦の2日目。これもまた大会初登場の山、クビーリャ峠は、超級山岳とは言いつつも、全体的な勾配はブエルタらしいそれではない。
ゆえに、前日以上にこの登りの前の展開が重要になりそう。とくに1級コベルトリアからの下りは短く急(平均勾配8.5%)であり、180度カーブなどテクニカルな下りとなっている。
総合上位勢の中で下りのスペシャリストと言えばプリモシュ・ログリッチェ。この日までの展開でもし彼がビハインドを抱えているようであれば、この日は何かしらの動きがあってもおかしくはない。
もちろん、それが悲劇につながらないことが大前提。
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