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ブエルタ・ア・エスパーニャ2019  コースプレビュー  第1週

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トレビエハをスタートしてバレンシア州の海沿いを北上した2015年ブエルタの第9ステージ。象徴的な「黒い牛」が、今回のブエルタにも登場するか?

 

シーズン最後のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャが開幕する。

今回の第1週は8年ぶりのバレンシア州スタート。そこから地中海沿いに北上しつつアンドラ公国へ。

第1週とはいえ単純なスプリントステージというのは少なく、第1週からいきなり強烈な山頂フィニッシュが3ステージも登場。いずれも特徴は違えど総合争いにおける大きな衝撃を与えうるステージとなっている。

 

ブエルタにおいては「2週目の後半から3週目にかけてコンディションをピークにもっていく」なんてことは許されない。最初からエース同士のノーガードの殴り合いを楽しめる、それがブエルタの魅力である。

 

今回もそんな「ブエルタらしさ」をたっぷりと味わうことができそうだ。それでも、やっぱり数少ないスプリンターたちのチャンスもあるのがこの第1週。彼らの熱戦もまた、楽しみの1つだろう。

 

↓第2週のコースプレビューはこちら↓

www.ringsride.work


↓全チームのスタートリストと簡単なプレビューはこちら↓

www.ringsride.work

 

 

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第1ステージ ラス・サリナス・デ・トレビエハ 〜 トレビエハ 13.4㎞(チームTT)

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バレンシアナ州トレビエハにある「ピンクの湖」ラス・サリナス。

ここを出発点とした短距離チームTTで今年のブエルタは開幕する。

コースはオールフラット。そして直線も多くそこまでテクニカルではないため、総合争いにおける大きな動きは起きないだろうと予想されている。

 

2017年の開幕チームTTでは、BMCレーシング、クイックステップ・フロアーズ、チーム・サンウェブの順で並んだ。2016年にはモビスター・チームがチーム・スカイをコンマ差で下している。

いずれも世界選手権チームTTでも上位にくるようなトップチームであった。しかし、今年はこのチームTT界隈に新生が現れている。それがチーム・ユンボ・ヴィズマだ。

今年すでにUAEツアーとツール・ド・フランスのチームTTで勝利しているこのチームが、今回もログリッチェやマルティンを筆頭に強力なメンバーで乗り込んでくる。わずか13kmで、ライバルチームに3~40秒近いタイム差をつける可能性すらあるかもしれない。

ほかにはウラン、クラドック、ヴァンガーデレンを引き連れるEFエデュケーション・ファーストや、キリエンカ、プールスを連れたチーム・イネオス、あるいはオリヴェイラ、ソレル、バルベルデを揃えるモビスターも、それなりの成績を出してきそうだ。

 

 

第2ステージ ベニドルム 〜 カルペ 199.6㎞(丘陵)

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バレンシアナ州の美しい海岸線コスタ・ブランカを発着する。

が、海岸線の平坦コースーーなんて甘っちょろいステージを用意するほどブエルタは優しくはない。海岸線からはすぐに離れ、内陸の丘陵地帯へと容赦なく突っ込んでいく。

内陸部から再び海沿いのカルペへ。ゴールラインを1度越えたあと、ゴール前残り25㎞で登坂距離3㎞、平均勾配9.5%の2級山岳が待ち受ける。

ややピュアスプリンターには厳しいレイアウト。しかしブエルタに出場するならこれくらいの登りは乗り越えられるスプリンターでなければいけない。結局は集団スプリントになるか? それとも??

 

 

第3ステージ イビ 〜 アリカンテ 188㎞(平坦)

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相変わらず内陸部の丘陵地帯を活用するレイアウトだが、昨日よりはマイルド。ゆえに公式のカテゴリも「平坦」で、実際に集団スプリントが期待できるだろう。

ブエルタ・ア・エスパーニャはジロやツールと比べて単純なオールフラットスプリントステージがほぼなく、ポイント賞もスプリンターが取れる可能性は少ないため、シーズン終盤であるということも合わせそこまで強力なスプリンターは出場しないことが多い。

とはいえ今年は強力なトップツーの存在が眩しい。ボーラ・ハンスグローエのサム・ベネットと、UAEチームエミレーツのフェルナンド・ガビリアである。いずれもブエルタ初出場。

ここに挑むのがAG2Rのヴァントゥリーニ、ロット・スーダルのファンデルサンド、バーレーン・メリダのバウハウス、ドゥクーニンク・クイックステップのヤコブセン、グルパマFDJのサロー、ディメンションデータのボアッソンハーゲン、サンウェブのヴァルシャイド、トレック・セガフレードのデゲンコルブといった選手たちである。

意外な勝利を成し遂げてくれる若き選手が現れるのもブエルタの特徴。果たしてどんなニューヒーローが誕生するか? 

 

 

第4ステージ クリェラ 〜 エル・プイグ 175.5㎞(平坦)

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海抜0メートル、バレンシアナ州の海岸線から内陸を迂回し、州都バレンシアを遠巻きにしつつ反時計回りで北上、再び海岸線へ。途中3級山岳が1つあるが、集団を破壊するようなものでは決してない。正真正銘の平坦ステージ。今大会最も平らなステージの1つだ。

ピュアスプリンターたちが数少ないチャンスをものにすべくしのぎを削るだろう。サム・ベネットとガビリアの頂上決戦が最も可能性がありそうな戦いだが、そこにヤコブセンやワルシャイドが絡んでいくことに期待したい。

 

 

第5ステージ レリアナ 〜 ハバランブレ 170.7㎞(丘陵)

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ブエルタはツールとは感覚が1つズレている。ツールなら丘陵のステージも平坦であり、ならばツールでは普通の山岳ステージはブエルタならば丘陵である。

海抜0メートルからスタートして標高2,000弱の山頂フィニッシュとなるこのステージもブエルタならば丘陵ステージ。

まあ少なくとも、強烈な登りは1個だけ。総合は動きはするだろうが、そこまで大きな差はまだつかないだろう。最後の登りは登坂距離12㎞。平均勾配7.3%。そこまででもない。

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嘘だ。それは12km全体の平均であり、最初の4㎞は5%以下の勾配だというからとんだ詐欺である。

残りの8㎞は常に10%近く。べらぼうに突き抜けた最大勾配は存在しないものの、平均して10%以上の勾配が続くのは地獄でしかない。

 

総合は動く。間違いなく。

 

 

第6ステージ モラ・デ・ルビエロス 〜 アレス・デル・マエストラート  198.9㎞(丘陵)

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この日も山頂フィニッシュ。ただし3級山岳で、登坂距離も5㎞。平均勾配は5〜6%。総合に影響を与えるタイプの登り、という感じでもなさそうだ。

むしろ、スタート直後に2級山岳を駆け上がるレイアウトは、何よりもエスケープスペシャリストたちを誘惑する。前日が「大きく遅れるにはちょうど良い」ステージだけに、虎視眈々と「タイムを稼いだ」逃げ王者たちが、アクチュアルスタートの瞬間を今か今かと待ち望むことだろう。

その中にはきっとこの男もいるはずだ。今年、全グランツール出場を有言実行し、そしてジロをユアンのためのアシストに費やし、ツールでしっかりと勝利を掴みとった男、トーマス・デヘント。

このブエルタでは、何勝を狙う?

 

 

第7ステージ オンダ 〜 マス・デ・ラ・コスタ 183.2㎞(山岳)

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2日続いた内陸丘陵ステージを終えバレンシアナ州の海岸線へ戻ってくる。

では平坦ステージなのかと言えばそんなことはない。むしろこの日は、今年のブエルタ最初の山岳ステージ。海岸線をなめるように通過したあと、小さな登りをいくつか越えて、やがて終盤の2級+1級へ。本格的な削りあいはここから始まるだろう。

2級サルト・デル・カバッロは登坂距離10.3㎞、平均勾配4.7%。ただしこれは2箇所の下り区間を含んだうえでの数値であり、実際には11%勾配区間を複数有する

そしてこの2級山頂からゴールまでは21㎞。しかも最後の登り1級マス・デ・ラ・コスタの麓までの17㎞の間にも、いくつかのカテゴリのついていない登りが連続し、休む余裕などない。

そして1級山岳山頂フィニッシュ。登坂距離は4㎞と短いが、平均勾配は驚異の12.8%。そして最大勾配は21%。

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実にブエルタらしい、厳しい登り。ここから本当のブエルタ・ア・エスパーニャが始まる。

 

 

第8ステージ バルス 〜 イグアラダ 166.9㎞(丘陵)

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ブエルタ基準で言えば平坦ステージにカテゴライズされてもおかしくないレイアウトで、判断に困るステージ。実際、公式サイトでも「スプリンターズチームは勝利のために全力でコントロールするかそれともエスケーパーたちが行ってしまうのを見送るか決断しなきゃいけないね」とコメントされている。

ポイントとなるのはもちろん、ゴール前27.5㎞地点に置かれた2級山岳。登坂距離7.7㎞、平均勾配6.7%。比較的一定ペースで登る、イージーではないが、スプリンターたちがまったく乗り越えられないかといえばそうでもない登り。そしてそのあとは平坦と下りだけ。

うーん、判断が難しい。

 

 

第9ステージ アンドラ・ラ・ベリャ 〜 コントラルス・デンカンプ 94.4㎞(山岳)

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最近のブエルタの定番アンドラへ。スタート地点はアンドラ公国の首都。そしてゴール地点は2015年のブエルタ第11ステージのフィニッシュ地点にもなった場所で、そのときはファビオ・アルのアシストだったミケル・ランダが勝利している。

全体的なレイアウトは昨年の第20ステージに酷似している。100㎞に満たない超短距離の中に、2,000m級の山岳が3つ。今大会初の超級山岳(下画像)も登場する。

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最後の登りは3つの登りが僅かな下りや平坦を挟みつつも連続しており、とくに残り10㎞から残り6㎞までの平坦区間には未舗装路が設定されている

それを越えた先にある1級山岳は登坂距離5.7㎞、平均勾配8.3%

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とくに登り始めの2㎞は12%や10%の勾配が続く厳しい登り。未舗装路でアタックしてここで一気に突き放す、というパターンもありうるかもしれない。

主催者側も総合が大きく動くと期待するこのステージ。さて、果たして。

 

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