Class:ヨーロッパツアー 1クラス
Country:スペイン
Region:バレンシア州
First edition:1929年
Editions:70回
Date:2/6(水)~2/10(日)
スペイン・バレンシア州を舞台にして開催される5日間のステージレース。
その名は「バレンシア1周」を意味し、「ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ」はバレンシア語による表記。スペイン語では「ブエルタ・ア・ラ・コムニダード・バレンシアナ」となる。地域ごとの特色の強いスペインならではの事情だ。
南半球を中心にスタートしてきた2019年のサイクルロードレースシーズンも、いよいよヨーロッパでも本格的なスタートが開始される。
プロチームの多くが冬季合宿地として選ぶスペイン・マヨルカ島に近いこともあり、その地で開かれた「チャレンジ・マヨルカ」に出場した有力選手たちも多くこのバレンシアでの戦いに参戦している。
注目選手は昨年の総合優勝者アレハンドロ・バルベルデ。アルカンシェルジャージを着ての参戦となり、今年も年初から強さを見せつけてくれるか。
ほかにも初参戦となるツール・ド・フランス覇者ゲラント・トーマス、ダニエル・マーティン、エステバン・チャベスとアダム・イェーツのコンビ、アスタナに移籍したイサギレ兄弟など、注目すべき選手は沢山。
今年もDAZNにて日本語実況解説付で全ステージLIVE中継。
各コースと注目選手についてしっかりと予習していこう。
コース詳細
第1ステージ オリウエラ~オリウエラ 10.2km(個人TT)
オールフラット、と見せかけて最後の600mは勾配9%の急坂。
たかが600m、されど600m。全体的な短さも相まって、純粋なTTスペシャリスト(トニー・マルティンのような)よりもスプリント力もあって登りもこなせるオールラウンダーの方が有利と思われる。
となるとやはりアレハンドロ・バルベルデに向いているコースとも言えるが、ステージ優勝とまでいうと、難しいかもしれない。
たとえば今年初参戦のゲラント・トーマスは、同じように短いツール・ド・フランスの初日ITTで優勝している経験もある。
この時期の彼の仕上がり次第ではあるが、初日から優勝してリーダージャージを着る可能性は十分にあるだろう。
第2ステージ アリカンテ~アリカンテ 166km(丘陵)
スタート直後から登り始め、合計で3つの登りをこなすレイアウト。
しかし標高1000mの最後の山頂から、海抜0mの海岸線のゴールまでは、長い下りを含んで40kmもある。
結局は、集団スプリントになる可能性が高いステージとは言えるだろう。
今大会に出場している有力スプリンターはいずれもこれくらいの登りであれば足を削られることもなくこなしていける選手たちばかりなので、クリストフ、ブアニ、コルトニールセンなどの優勝候補たちが横一線のスプリントを見せてくれることだろう。
第3ステージ クアルト・デ・ポブレット~チェラ 194.3km(丘陵)
標高1000mを含む合計5つの山岳ポイントを擁する丘陵ステージ。
最後の山岳ポイントを越えた先にさらに少しだけ登ってのゴールとなる。
さすがにスプリンターの出番はなく、アルデンヌ系クラシックをクリアできるパンチャーやクライマーたちが主役となるだろう。
となれば、優勝候補はやはりあの人。クライマーたちしか残らなかった集団の中では圧倒的に最強なスプリント力をもつ、アレハンドロ・バルベルデである。
第4ステージ ビジャレアル~アルコセブレ 188km(山岳)
3つの山岳ポイントに加え、最後は登坂距離3.4km、平均勾配9.7%の激坂フィニッシュ。しかもこの登りの前半は平均14.7%という超・激坂。正真正銘のクイーンステージである。
ピュアクライマーというよりは激坂に強いパンチャータイプの脚質を併せ持った選手が先頭でゴールを抜けることになるだろう。やはり昨年同様にバルベルデが絶対的な優勝候補。ただし、フレッシュ・ワロンヌにおける彼のライバルの1人であるダニエル・マーティンや、短いステージレースでの激坂フィニッシュには定評のあるアダム・イェーツなども、ここに喰らいついていく可能性は十分にあるだろう。
この日で総合優勝者がほぼ確定することになる。
第5ステージ パテルナ~バレンシア 88.5km(平坦)
毎年恒例の州都バレンシアにゴールするスプリントステージ。ただし今年は88.5kmとかなり短くなっている。まあ、重要なのはラストだけなので、そこまで距離は関係ないだろうが・・・。
数少ないスプリントステージ。しかも、途中に登りのほとんどないピュア平坦ステージは唯一となり、第2ステージで残り切れなかったピュアスプリンターにはチャンスとなる。ジャコモ・ニッツォーロとか、ディラン・フルーネヴェーヘンとかね。
注目選手
アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、39歳)
モビスター・チーム(MOV)
今大会の総合優勝の鍵を握るのは、第1ステージの「登りを含んだ個人TT」と、第4ステージの「激坂フィニッシュ」である。
となれば、その2つを得意とする選手はこの人しかいない。しかも、この時期でもベストコンディションを維持できる数少ない選手でもある。昨年総合優勝のほか、過去出場している3回すべてで総合優勝している。さらにいえばこの大会に出場しなかった年は同じ2月に開催されているブエルタ・アンダルシアの方に出場していることが多く、そちらでも過去4回総合優勝している。
まさに、2月のスペインのステージレースの覇者である。今年も最大の優勝候補であることは間違いないだろう。年齢?この男にそんなものは何の足枷にもならない。
ゲラント・トーマス(イギリス、33歳)
チーム・スカイ(SKY)
昨年のツール・ド・フランス覇者が今年はバレンシアに初参戦。例年はダウンアンダーでのシーズン入りが多かったが、今年は少し遅らせた形だ。
登坂力はもちろんTT能力も高く、特に今回のような短めのTTに関しては、2017年ツール・ド・フランス初日TTでの実績もある。
とはいえ、この時期のトーマスはまだ仕上がり切っていないのか、結果を出すことはほぼない。チームメートにスペイン人のダビ・デラクルスもおり、トーマスはアシストに徹する可能性も十分にあるだろう。
エステバン・チャベス(コロンビア、29歳)
アダム・イェーツ(イギリス、27歳)
ミッチェルトン・スコット(MTS)
2017年・2018年と振るわないシーズンを過ごしたエステバン・チャベス。ただ昨年も、同じ時期のヘラルドサン・ツアーではチームの地元であるオーストラリアで、区間1勝と総合優勝を成し遂げている。
今年はより本場に近いヨーロッパの地で、幸先の良いスタートを切りたい。今年は違う、ってところを見せつけてほしい。
アダムもまた、リベンジの年である。今年もサイモンがジロに出るため、ツール・ド・フランスを任されている。
昨年のツールは悔しい結果に終わってしまった・・・それでもブエルタでは、兄弟の勝利のための最高の働きをしてみせてくれた。アダムもまた、同じように高みに登る素質があることを示してくれた。
実際、TTはともかく、短いステージレースにおける激坂については、アダムもかなり得意とするレイアウトである。昨年のクイーンステージでも、最終的にはバルベルデに敗れてしまったものの、その他の選手を圧倒する走りを見せてくれていた。
ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、26歳)
チーム・ユンボ・ヴィスマ(TJV)
実質的な昨年の最強スプリンターと言っても過言ではないかもしれない。ツール・ド・フランス第1週の後半で見せた、ガビリアを圧倒するあのスプリント力は凄まじいものがあった。あのままアルプスで脱落しなければ、あのツールを完全に支配していたのはこの男だったかもしれない。
そんな彼が今年はバレンシアナでシーズン入り。出場は3年ぶり。昨年・一昨年はよりピュアスプリンターたちが集うドバイ・ツアーに出場していたが、今年はそれがUAEツアーとなり2月の後半に移動したため、こちらに出場することとなった。3年前の出場時も1勝しており、相性は悪くないはずだ。
昨年の勢いをそのまま維持することができるか。
アレクサンデル・クリストフ(ノルウェー、32歳)
UAEチーム・エミレーツ(UAD)
この時期は相性の良い中東で過ごすことの多いクリストフ。ドバイもカタールもなくなってしまったので、今年はチャレンジ・マヨルカから続けてこちらに参戦。初出場である。
アルゼンチンではチームの新エース、フェルナンド・ガビリアが、UAE生え抜きのスプリンターたちとの完璧なコンビネーションを披露。クリストフにしてみれば「何で俺のときそんな風じゃなかったの?」みたいな感想だろう。まあ、クリストフ割と1人で勝っちゃうので・・・。
今回もルイ・コスタとダニエル・マーティンがいるため、クリストフのためのトレインをどれだけ用意できるか・・・。
ただ登りも多いバレンシア。ピュアスプリンターよりは、登りも十分にこなせ(昨年もツールのアルプスで脱落しなかった)クリストフに有利なレースと言えなくもない。その点はトレンティンやボアッソンハーゲン、コルトニールセンも同様だけど。
ほかにも総合優勝候補としては激坂に強いダニエル・マーティン(UAEチーム・エミレーツ)やディラン・トゥーンス(バーレーン・メリダ)、アスタナに移籍したヨン/ゴルカ・イサギーレ兄弟(アスタナ・プロチーム)。
そしてスプリンターでは昨年ツール出場を逃すもブエルタで勝利したナセル・ブアニ(コフィディス・ソリュシオンクレディ)などが注目の選手。
今後のビッグレースに向けて彼らの状態を見るうえで重要なレースになるのは間違いなく、しっかりとチェックしていこう。