読み:ユーエーイー・チーム・エミレーツ
国籍:アラブ首長国連邦
略号:UAD
創設年:1991年(ただし、1997-1998は一時消滅)
GM:ジュゼッペ・サロンニ(イタリア)
使用機材:Colnago(イタリア)
2018年UCIチームランキング:12位
(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります)
2019年ロースター
2018年シーズンは中東マネーの本領発揮といった感じでクリストフ!マーティン!アル!と大胆な補強をしてみせた。
が、(大方の予想通り)そこまでインパクトの残せないシーズンとなったのは否めない。
2019年シーズンは今度はガビリアを入れてみたりと相変わらず凄い補強はするが、それでもじゃあ勝てるの?と言われるとうーん、となったりする。
ただ、2019年シーズンの補強の特徴はもう1つあって、ハーゲンスベルマン・アクセオンからフィリップセンやオリヴェイラ兄弟を招いたり、ラヴニール覇者のポガチャルを入れてみたりと、ひたすら若手の獲得に力を入れている印象。
1月のダウンアンダーでは早速彼ら若手を大量投入してくるようなので、単純な結果だけでなく、その過程にもぜひ注目していきたい。
注目選手
フェルナンド・ガビリア(コロンビア、25歳)
脚質:スプリンター
2018年の主な戦績
- ツール・ド・フランス 区間2勝
- ツアー・オブ・カリフォルニア 区間3勝、ポイント賞
- コロンビア・オロ・イ・パ 区間3勝、ポイント賞
衝撃的な移籍となった、現役最強スプリンターの1人。
とはいえ、2018年シーズンは、ジロ・デ・イタリアで4勝を成し遂げた2017年シーズンと比べると、イマイチな結果に終わった感は否めない。ツールではリケーゼに頼りきっていた感はあるし、そもそもジロの山々を乗り越えたあのときの足があれば、アルプスの山岳地帯であっても生き残ることはできたのではないか。
2019年は実力を取り戻してくれることを願う。アシストの面では不安は残るが、最盛期であれば単独でも強い走りをしていたはずだ。
あと気になるのは、妙に多い落車癖。
2016年のミラノ~サンレモでの落車は覚えている人も多いだろうし、2018年のティレーノ~アドリアティコも同じく落車して春のクラシックを全てふいにしてしまった。
さらにはエッシュボルン・フランクフルトでの、ゴール直前のコースミスというアクシデントも・・・2019年は大丈夫?
アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、32歳)
脚質:スプリンター
2018年の主な戦績
純粋なスプリント力で言えばガビリアには敵わないだろう、というのが大勢を占める見方であるようだ。彼自身もそれは認めているらしく、自らガビリアのリードアウトをすることも公言しているとか?
ナチュラルブラックスプリンター「アレクサンドル・クリストフ」とは? - サイバナ
しかし、そもそもクリストフとガビリアではタイプが全然違う。
少なくとも2018年は手厚いアシストを必要としたガビリアに比べ、クリストフは割と単独で戦うことが多い。
ガビリアは落車が多く、ワンデーレースや石畳、登りスプリントには弱い。
対してクリストフは北のクラシックへの適性は非常に高く、またワンデーレースでの勝利鵜の高さが大きな特長となっている。
先の記事でも書かれていたように、ガビリアのリードアウトを口実にツールには出つつチャンスを窺い(まるでカヴェンディッシュと共に走るボアッソンハーゲンのように)、かつワンデーレースではしっかりと自らの勝利を狙っていく、そんな走りは可能だろう。
何だかんだ、UAEチームで最もUCIポイントを稼ぎ出している男だ(2018年のガビリア以上)。2019年も変わらず、その強さを見せつけてくれるだろう。
世界選手権でもガビリア以上の優勝候補となりそうだ(あ、またボアッソンハーゲンとの喧嘩になりかねないけれど・・・)。
ダン・マーティン(アイルランド、33歳)
脚質:クライマー
2018年の主な戦績
- ツール・ド・フランス 区間1勝、総合8位
- クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ 区間1勝、総合4位
- イル・ロンバルディア 9位
- ツール・ド・ロマンディ 総合10位
この男も長く実力者であり続けている。もう終わった、なんて思わせることもなく、2018年もブルターニュの壁ステージで優勝。
2015年に登場したときは先頭を走るヴュイエルモを追走しながら結局は追い付けずに終わった彼がしっかりとリベンジを果たした。
チームが変わってもなかなかアシストに恵まれない状況は変わらないが、それでもなんとか、その勝利への熱い熱い姿勢でもってチームを引っ張っていってほしい。
・・・アルよりは間違いなく頼れる存在ではあるだろう。
その他注目選手
ファビオ・アル(イタリア、29歳)
脚質:クライマー
不遇の人。
2018年ジロは練習し過ぎて力が出せなかったとか言っていたらしいけれど、ブエルタでもダメダメだった。
あとバイクのメカトラブルに対して言ってはいけない言葉を吐いてしまったようで、あとで直接謝罪をすることになったとか。散々なシーズンだ。
とはいえ、2017年はツールでステージ優勝とマイヨ・ジョーヌ着用を果たすなど、決して悪くはなかった。苦しいシーズンというのは誰にでもあるもので、アルが特別ダメというわけでは決してないと思う。
とりあえずは気持ちを切り替え、2019年最初に目指すこととなるジロではなんとか表彰台を狙っていこう。ここから!ここから!
フアンセバスティアン・モラーノ(コロンビア、25歳)
脚質:スプリンター
マンサナ・ポストボンに所属していた2018年シーズンに、パンアメリカ選手権ロードレースで優勝(リケーゼを打ち倒す)。
さらにタイフーレイクや2クラスのレースを含む、中国のレースで計6回のステージ優勝を果たす。
そしてコロンビア・オロ・イ・パではガビリアと競り合い、勝てはしなかったが2位や3位を死守した。
そんな彼が、2019年は、ガビリアの頼れるアシストとして活躍することに。ガビリアにとっても、リケーゼに代わる頼もしい存在と映ることだろう。
もちろんまだまだ経験は浅い。この1年でどれだけ成長してくれるか。
ジャスパー・フィリップセン(ベルギー、21歳)
脚質:スプリンター
若手有望株の苗床となっているハーゲンスバーマン・アクセオンより、21歳とは思えない実績を叩き出してきている若手最有力スプリンターがやってきた。
U23版ジロ・デ・イタリアやツアー・オブ・ユタで勝利するだけでなく、デパンヌ3日間レースやユーロメトロポールなど、トップライダーたちが鎬を削るレースで安定して位に入ってくるその実力の高さは本物で、とくにツアー・オブ・カリフォルニアで、ガビリア相手に全く怯むことなく位置取り争いを仕掛けていったその闘争力も大したものである。
2019年はそんなガビリアとチームメートに。大人しくアシストに収まるタマにも思えないので、ガビリアが活躍する姿を横目に、彼自身の成績を積み重ねていってほしいところ。
総評
全体的にスプリンターを多く抱えるチームとなりそうで、ワールドツアーに限らず1クラスも含めた小さなレースでの勝利を細かく稼いでおきたい布陣だ。
もちろん、マーティンやアルを中心としたグランツール総合争いにも期待したいところだが、表彰台まで望むのはさすがに厳しいかな。
北のクラシックはクリストフ、アルデンヌ・クラシックはマーティンの肩にかかっている。いずれも、チームの万全なアシストを受けられるとはあまり思えないが。
個人的にはいつか、ウリッシがツールの山岳ステージで逃げ切り勝利してくれることを楽しみにしている。
コンティやポランツェもそういうの得意だし、古き良きランプレスピリッツの炸裂、期待しているぞ!