略号:INS
国籍:イギリス
GM:デイヴ・ブレイルスフォード
創設年:2009年
使用機材:ピナレロ
まさかの、クリス・フルーム欠場。しかし、それでもなお、このチームは最強であり続ける。
昨年の覇者ゲラント・トーマス。そして、もはや今大会最大の優勝候補と言ってもよさそうな男ベルナル。そしてそれを支える盤石のアシスト陣。
今年もまたピレネーもアルプスも、この男たちが支配し続けるのか。
- 1.ゲラント・トーマス(イギリス、33歳)
- 2.エガン・ベルナル(コロンビア、22歳)
- 3.ヨナタン・カストロビエホ(イギリス、32歳)
- 4.ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、29歳)
- 5.ジャンニ・モスコン(イタリア、25歳)
- 6.ワウト・プールス(オランダ、32歳)
- 7.ルーク・ロウ(イギリス、29歳)
- 8.ディラン・ファンバーレ(オランダ、27歳)
- 総評
※身長、体重はProCyclingStatsを参照しております。
※年齢はすべて2019/12/31時点のものとなります。
※出場日数とは、ツール初日までに今期出場したレースの日数のことを表しています。
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1.ゲラント・トーマス(イギリス、33歳)
オールラウンダー 183cm、71kg 出場日数:26日
昨年総合優勝者。今年もクリス・フルームとのダブルエース・・・と思いきや、フルーム、まさかの落車重体。トーマスの単独エースで臨むこととなった。
しかしそのトーマスも不安がないわけではない。今年はフルームと同様のスロースタート調整。序盤のステージレースは明らかに力を抜いており、5月頭のツール・ド・ロマンディでようやく総合3位。今回のツール・ド・スイスでいよいよ最終仕上げとなるか、と思いきや落車リタイアにより仕上がり具合の確認ができず。
現在は落車からの復帰中。しっかりとコンディションを整えた状態で本番に臨めるかは未知数だ。
反して好調さを見せるエガン・ベルナルの存在。今年は結局、彼とのダブルエース体制となるかも。
2.エガン・ベルナル(コロンビア、22歳)
オールラウンダー、174cm、60kg、出場日数:32日
2017年ツール・ド・ラヴニール総合優勝者にして、2018年ツアー・オブ・カリフォルニア覇者、そして今年のパリ〜ニースおよびツール・ド・スイス総合優勝者である。昨年のツールにも出場し、フルームとトーマスがダブルエースとして走る中、彼らを(とくにジロ疲れの残るフルームを)アシストし、ダブル表彰台を実現させた立役者である。
今年はジロでエースを担う予定が、直前の怪我により欠場。予定を変えてツールに出ることとなったが、フルームの欠場により、一躍総合優勝候補の1人に躍り出た。スイスリタイアのトーマスの仕上がりが未知数なことで、ベルナルとトーマスどちらがエースになるかは状況次第というのが大方の見方のようだ。
標高の高いステージが多く登場する今大会は、アンデスで育った彼に有利という見方も説得力がある。イネオスの最強トレインとの相性や横風耐性についてもパリ〜ニースで証明済。年齢に似合わず大人びた走りと若者らしい爆発的なアタック力が両立したこの男の存在が、今大会最大の台風の目となることは間違いないだろう。
3.ヨナタン・カストロビエホ(イギリス、32歳)
TTスペシャリスト 171cm、62kg 出場日数:26日
現スペインITT王者
元モビスターの重列車。昨年からスカイ入り。キリエンカもいるのに贅沢な・・・といったところで、キリエンカが今年、心臓疾患で参戦不可に。そしてカストロビエホもしっかりと山岳に対応できるように身体を整え、その成果はツール・ド・スイスでも発揮されている。最終ステージの終盤で少しベルナルを1人にしてしまう場面があったのは不安だが、今回はより多くの山岳アシストがいるので問題ないだろう。
もちろん、第2ステージのチームTTにおいてエースの総合リードを稼ぐための最重要な存在になることも間違いない。直近の国内選手権でも3年連続5回目のナショナルチャンピオンに。準備は万端だ。
4.ミカル・クウィアトコウスキー(ポーランド、29歳)
オールラウンダー 176cm、68kg 出場日数:32日
今やこのチームには欠かせない存在となった最強アシスト。本来であればエースを任されてもおかしくはない実力を持ちながら、躊躇なくエースのためにオールアウトする姿勢は先日のドーフィネでも発揮された。まさにアシストの中のアシスト。
昨年は彼とベルナルがエース2人を支えた。今年はトーマスとベルナルを彼が支える役目を担うことだろう。下りでは猛スピードで牽引&ライバルを抜け出させないorライバルが抜け出したものを追走し、登りでは最終発射台の1つ手前まできっちりと仕事をする。イマイチ目立たない役回りを率先して行う彼が、今年もこの最強チームの基礎を形作っている。
昨年は働きすぎて終盤ちょっとスタミナ切れ気味だったが、今年はここまで余裕のあるスケジュール。今回もよろしく頼むぞ。
5.ジャンニ・モスコン(イタリア、25歳)
オールラウンダー 182cm、70kg 出場日数:33日
彼もまた間違いなく才能のある男だ。パンチャー向けのステージレースも、石畳のクラシックも、純粋な長距離タイムトライアルも、そしてスカイのエースを守る山岳アシストとしても、類稀なる成績を出し続けてきた。
しかしそんな彼も、現時点ではやや不安の残るコンディション。今期ここまで目立った成績はなく、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでもなんとか逃げに乗ったりするも、結局は最後まで残れず落ちていき、集団をアシストすることもできない様子で全く目立てなかった。2017・2018と連勝した国内選手権個人タイムトライアルも、今年は5位と本来の実力からすれば満足の出来ない結果に。今年はモスコンの出場はなく、スイスで好調だったエリッソンドが参戦するかとも思われていたが、結局は彼が参加することに。
となれば、しっかりと働いてもらわねばならない。前半はまだ調子を上げきれないとしても、後半、より厳しくなるピレネー、アルプスにかけてコンディションを上げていき、やっぱり彼は強かった、と思われるようにしなくてはならない。
6.ワウト・プールス(オランダ、32歳)
オールラウンダー 183cm、66kg 出場日数:30日
こちらもチームの欠かせない最強山岳アシスト。登坂力においては十分に準エース級であり、実際にクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでもフルームがリタイアした後のエースを見事務め、ステージ1勝と総合4位を手に入れた。今回もベルナルがエースとしての役割を務めた場合、山岳トレインの最終発射台を担うことになるだろう。
その活躍の歴史は古い。2015年のツールも、2017年のブエルタも、2018年のジロも、フルームが勝利を手にする傍らに常に彼の存在があった。かつての盟友ポートがスカイを去ってからは、なおさらその存在意義は大きくなっていった。
今回もあくまでもフルームのサポートのためにこの1年間準備してきたことだろう。それが突如として失われたわけだが、それでも彼が為すべきことは変わらない。
トーマス、あるいは新たな王の候補あるベルナルのため、今回も最強の登坂アシスト力を見せつける。
7.ルーク・ロウ(イギリス、29歳)
ルーラー 185cm、72kg 出場日数:46日
スタナードと並ぶ、イネオスの平坦番長。一時期、川下りの最中の事故により大怪我を負って戦線離脱していたが、それも昨年から復帰。怪我の度合いから考えると奇跡的なほどに完全復活を遂げている模様。こうして2015年から続くツールの連続出場も途切れずに済んでいる。
そんなロウの今年の戦績は何と言ってもパリ〜ニースの横風分断大作戦。クウィアトコウスキーと一緒になって、まるで若きベルナルにレクチャーするかのように飄々とライバルたちを引き千切っていった無慈悲な男。そこに普通についていくベルナルもベルナルなのだが。
今回のツールも、悪天候や強い横風に晒された時、その真価が発揮されることだろう。
8.ディラン・ファンバーレ(オランダ、27歳)
ルーラー 187cm、78kg 出場日数:43日
ある意味、今回のロースターの中で今年最も進化した男と言えるかもしれない。
2017年のキャノンデール時代にロンド・ファン・フラーンデレン4位。元々は北のクラシック強化の一環として昨年スカイに迎え入れられた選手であり、今年もロンドで積極的な動きを見せていた。
が、今年の彼の進化は、何と言っても山岳への適性の向上である。年初のオーストラリアなどからも見られたその特性は、5月のツール・ド・ロマンディにて確実なものとなった。厳しい山岳を越えた先にある平坦でトーマスを助けるファンバーレ、そして山岳トレインにおいて最終発射台を務めるファンバーレの姿を見て、彼が今年、現チーム移籍後初となるツール出場が確実なものであると確信した。
今年はキリエンカが病気の後遺症もあってかツール不出場となった。しかし、ファンバーレは間違いなく、その代役を務めることのできる男だ。
不安があるとすれば、今年少し頑張りすぎていて出場日数がかさんでいること。3週間きっちり、戦い続けることができるか。
総評
総合優勝を狙えるレベルの選手が2人もいて、しかも山岳も平坦も充実したアシストが揃っている、まさに総合系最強チームと言ってよい。その分スプリントや山岳エスケープの選択肢が失われているが、そこは気にするところではないだろう。
その山岳エスケープも、エースが健在なうちは狙わないというだけで、狙おうと思えば十分に狙えるポテンシャルを持っている男たちである。ドーフィネのプールスやファンバーレのように。
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