りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

スポンサーリンク

2019年シーズンのグランツールで活躍した7名のトップスプリンターたちについて 2019年シーズンの振り返りと2020年シーズンの展望

 

英国自転車ニュースサイトCyclingNewsの11/22付の記事「Ranking the top 10 sprinters of 2019」が実に面白かった。

www.cyclingnews.com

 

どうやら同趣旨の記事は毎年出されてはいるようで、CyclingNews独自の基準で算出したポイントで年間の「最強」スプリンターを導き出す、というものだ。

 

その結果を表にまとめると以下の通り。

(元記事にはないが、参考までに各選手の2019年UCI世界ランキングも付記した)

f:id:SuzuTamaki:20191124003726p:plain

 

結果的には、非常に妥当なランキングとなったと思っている。

このランキングのポイント計算式は、ツール・ド・フランスでの勝利を最も重視しており、続いてジロ・デ・イタリア、ブエルタ・ア・エスパーニャ、その他のワールドツアーレース、HCクラスレース、1クラスレースと傾斜的にポイントを配分している。

(細かな計算式は元記事を参照のこと)

 

「最強」スプリンターを決めるうえでツール・ド・フランスが最も重視されるというのは確かにその通りで、世界最高峰のレースには世界中から最強のスプリンターたちが集まってくる唯一無二のレースである。

ジロがブエルタよりも価値を持つというのも納得できる。ジロはより平坦重視なステージを多く持ち、彼らは「途中リタイア」という選択肢も持つ。ブエルタはトップスプリンターたちが出場を回避しやすく、そこでの勝利はいわば「空き巣」に近くなる。

 

サイクラシックス・ハンブルクやライドロンドン〜サリークラシックがブエルタのステージ勝利よりも価値を落とすという判断はやや議論の余地がありそうだが、いずれにせよある程度以上の信頼感のあるランキングと言えそうだ。

 

 

実際、今年の「最強」スプリンターはカレブ・ユアンであり、そこに匹敵したのはエリア・ヴィヴィアーニであった、と私も思う。

そして昨年の「最強」候補だった(というよりは個人的には真に「最強」だと思っていた)フルーネウェーヘンが今年は大きく勢力を後退させたという評価も、実に正しいと感じている。

 

 

以下では、ここでピックアップされた10名のうち、注目すべき7名について、今年の走りを振り返っていきたいと思う。

合わせて、それぞれの選手の2020年シーズンに向けた展望も。

  

 

スポンサーリンク

 

  

カレブ・ユアン(ロット・スーダル)

 

カレブ・ユアンは今年、大きな飛躍を遂げた。

 

元々、オーストラリアの育成プログラムで力を伸ばしてきた彼は、2015年にツール・ド・コリア区間3勝&総合優勝という大きな成績を提げて初のグランツールたるブエルタ・ア・エスパーニャに参戦。

そこでその身軽な体つきを活かして登りスプリントにてマイケル・マシューズとペテル・サガンを打ち破って勝利するという離れ業をやってのけた。

Embed from Getty Images

 

その後、地元オーストラリア最大のレース、ツアー・ダウンアンダーにて、2016年は区間2勝、2017年に至っては区間4勝と実に圧倒的な実力の高さを見せつけた。

次代の最強スプリンターは間違いなくこの男。当時、多くの自転車ファンがそう思っていたに違いない。

 

しかし、同世代には別の化物が存在していた。彼の名はフェルナンド・ガビリア。2015年のツアー・オブ・ブリテンでグライペルやボアッソンハーゲンを打ち破って勝利したことで一躍有名になった彼は、2016年のティレーノ〜アドリアティコでユアンとの一騎打ちを制し、そのライバルとしての存在感を一気に高めた。

リオ・オリンピックに集中していた2016年はグランツールへは出場せずに終わるが、翌2017年に初出場となったジロ・デ・イタリアでいきなりのステージ4勝&マリア・チクラミーノ。

同じジロに、2回目の出場をしていたユアンも1勝はしたものの、ガビリアとの間に大きく水を開けられたのは間違いなかった。

Embed from Getty Images

 

躍進するガビリアに反比例するように、勢いを失っていくユアン。

その状況に合わせたかのように、チームはエステバン・チャベスやイェーツ兄弟の躍進により、少しずつグランツールチームへと変貌を遂げていく。

その結果、2018年のツール・ド・フランスにユアンの出場が許されないという事態が生まれる。それどころか、この年のグランツールには、ただの1つも彼は出場できなかったのだ。

同年、ガビリアがツールデビューを果たし、開幕ステージを鮮やかに勝利してマイヨ・ジョーヌを身に纏ったのとは実に対照的であった。

Embed from Getty Images

 

これが原因か、それともこれが結果だったのか、その因果関係は分からないが、いずれにせよカレブ・ユアンは、5年間在籍したオーストラリアのチームを離れることを決断した。

 

 

当然、不安もあった。いくら、かつての最強の1人だったアンドレ・グライペルを支え続けてきたチームとはいえ、新しいチームへの移籍がときに選手に栄光以外のものをもたらすことはよくあったのである。

たしかに「盟友」ロジャー・クルーゲを引き連れての移籍でもあった。しかしすでにグライペル親衛隊もその多くが移籍したあとのロット・スーダル。果たして、ユアンは本当に成功するのだろうか。

 

実際、シーズン前半はやや不安に満ちたスタートではあった。シーズン開幕戦となるツアー・ダウンアンダー前哨戦「ダウンアンダー・クラシック」では、ペテル・サガンを下して幸先の良い勝利を手に入れるが、ダウンアンダー本戦では位置取りに苦しむ場面が多々見られた。

第5ステージでは先頭でゴールラインを切ったものの位置取りの際のヘッドバットを理由とした降格処分を受け無効に。ようやく初勝利を遂げられたのが2月のUAEツアー第4ステージ、「ハッタ・ダム」登りスプリントであった。

 

決して悪くない走りは見せるが、それでもピュアスプリントではヴィヴィアーニやフルーネウェーヘンのような安定感はなく、結局は、例年通りのリザルトが並んで終わるのか・・・そんな風に思っていた中で、迎えたジロ・デ・イタリア。

ここで、彼は覚醒を遂げた。

 

第8ステージ。トルトレート・リドからペーザロに至る、239㎞の今大会最長ステージ。終盤の丘陵地帯で抜け出したチッコーネやビダールの逃げも残り6.5㎞で捕まえられ、大会4回目の集団スプリントに突入した。

先行したのは、ここまでですでに2勝し、マリア・チクラミーノも身に纏っているアッカーマン。リュディガー・ゼーリッヒの強力なリードアウトを受けて、残り200mというベストなタイミングでスプリントを開始した。

しかし、この巨大なるドイツ人の背後に隠れていた「ポケット・ロケット」は、アッカーマンとほぼ同時に発射。そしてアッカーマン以上の加速でもって、これを追い抜いていった。

ユアンの背後にはヴィヴィアーニがついていた。しかし、ユアンの得意とする「超低空飛行」でハンドルを左右にガンガン振りながら加速するその背後では、スリップストリームもほぼ役に立たない。結局、ヴィヴィアーニは何一つ手も足も出せないまま、ユアンの背後で2位ゴールを果たすのが精一杯であった。

かくして、ユアン、2年ぶりとなるジロ勝利。初めての勝利ですらないのに、その表情は歓喜に満ち溢れていた。この新チームにおけるジロでの勝利が持つ意味の大きさを、彼は十分に理解していたのである。

Embed from Getty Images

 

では、そんなユアンの勝利を導く重要な役割を果たしたアシストは一体誰か。

もちろん、クルーゲも共にジロに来ていた。しかし、このジロで明らかになったのは、もう1人の強力なリードアウターの存在。それが、2015年からこのチームに在籍し続ける25歳のベルギー人、ジャスパー・デブイストである。

クラシックな地形や登りスプリントなどにも強い総合力の高いスプリンターである彼は、今年、ツアー・オブ・デンマークなどで彼自身の勝利も稼いでおり、彼もまた、今年躍進したロット・スーダル選手の1人である。

 

そしてもう1人、ユアンの歓喜のジロ勝利を支え続けた男が、トーマス・デヘントである。

昨年末、2019年は3大グランツール全てに出場すると宣言していた彼は、その場でジロについてはユアンのためのアシストに尽くすとも宣言していた。

www.ringsride.work

 

宣言通り、大好きな逃げも打たずに、集団コントロールに勤め続けたデヘント。彼の活躍があったからこそ、ユアンはこのジロで2勝を稼ぎ出すことができ、そしてそれによって大きな自信を手に入れた彼は、ツール・ド・フランスでもシャンゼリゼを含む3勝をその手に掴んだのである。

Embed from Getty Images

 

結果として、ユアンの移籍は大成功であった。ただしそれは、単純に優れたリードアウターがいるからといったものだけではない。

ユアンという新参者を受け入れ、年初のヘッドバット事件などがあってもその信頼を失わず、彼のために自らの勝利も犠牲にするアシストたちに恵まれ、チーム一丸となってエースを信じ続けて勝利に邁進することができたチーム。それがロット・スーダルである。

 

来年はここに、ジョン・デゲンコルプやフィリップ・ジルベールが加わる。とくにジルベールは数年ぶりの古巣復帰となるが、クイックステップでも若手との見事なコンビネーションでチームも本人も勝利を稼いできた彼の存在は、チームがさらにレベルアップするチャンスとなるだろう。

 

 

ちょっと気になるのは、チーム内部事情。今年あらたにビジネスマネージャーに就いたジョン・ルランゲ政権のもと、12名ものスタッフが解雇された。

m.nieuwsblad.be

 

もともとブエルタ・ア・エスパーニャ開幕直前に、パフォーマンス・マネージャーだったケヴィン・デウェールトが職を解かれ即時帰国を命じられたり、その余波で監督のバルト・レイセンが来期コレンドン・サーカス入りを決めたりと、何かとゴタゴタしていた(デウェールトはその後復帰)。

そもそもルランゲの前任のGMも1年で交代していたりと、詳しくは知らないが面倒な状況が経営陣側には存在しているよう。

こういったことが、選手たちのパフォーマンスに影響しないことを願う・・・。

 

 

エリア・ヴィヴィアーニ(ドゥクーニンク・クイックステップ)

昨年、「ダブルツール」を達成した男。彼にとって、ツール・ド・フランスでの勝利は、唯一取りこぼした目標であったことだろう。

それは実現した。ツール・ド・フランスで念願の勝利を手に入れることはできた。

しかし、ジロ・デ・イタリアでの「降格」騒動による影響はツールにも及んでいたのだろうか。あるいは、別の理由か。シャンゼリゼでの走りを見ていても、どことなく、チームとの連携がうまくいかない様子がそれとなく見られた。

 

ただ、個人としての実力は間違いなく圧倒的だった。昨年もイタリア国内選手権で、ジョヴァンニ・ヴィスコンティらに登りでも食らいつき勝利するピュアスプリンターとは言えない走りを見せていた彼。

今年もヨーロッパ選手権でイヴ・ランパールトと逃げに乗ったり、アッカーマンが脱落するようなサイクラシックス・ハンブルクできっちりと勝利を掴むなど、サバイバル能力に長けた「強い」スプリンターであることを示した。その安定感においては、正直、ユアン以上といっても良いかもしれない。

Embed from Getty Images

 

だから、あとは、今年のグランツールでの「ちぐはぐ」さが解消されれば、来年こそ正真正銘の「最強」スプリンターになれるはずだ。今回のコフィディスへの移籍は、そのために必要な選択肢だったと言えるだろう。

 

新チームメートとしては、ドゥクーニンクから「盟友」サバティーニが付いてくる。また、トラック競技では最高の相棒として働いてくれているシモーネ・コンソンニも加える。コンソンニもまた、今年UAEで活躍し実力を高めつつある期待の若手だ。

ただ、来年の夏は東京オリンピックもまた、彼にとっては重要な目標であるはずで、どこまで本気でツール・ド・フランスに挑めるかは分からない。まずはジロ・デ・イタリアで、新チームのコンディションを確認していきたいところ。

チームとしても念願のツール・ド・フランス勝利のためにヴィヴィアーニを手に入れたのは間違いないだろうから、出ないということはないとは思うのだけれど・・・。

 

 

パスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグローエ)

この男は年を重ねるごとに着実に成長している。わずか数年前までは、この地位は決して約束されてはいなかった。まだグライペルも強く、マルセル・キッテルも引退はずっと先だと思われていた。

しかし今やキッテルは去り、グライペルも沈みつつある。新たなジャーマンスプリンターの星と思われていたアルントもワルシャイドもバウハウスも、トップと呼べる地位にまでは遠い。そんな中、キッテルのいた地位に収まるに相応しい男として、見事に台頭してきたのがこの男であった。

とくに、今年のジロ・デ・イタリアでの勝利は実に素晴らしかった。第2ステージ、最初のラインレースで、完璧なトレインを組んでいたロット・スーダルのユアンを追い抜き、慌てて後ろに貼り付いたヴィヴィアーニを突き放し、巨大なるジャーマンスプリンターは力強いジロ初勝利をモノにした。

Embed from Getty Images

 

以後、この男はこのジロ最強の男として君臨した。最終的にはアルノー・デマールとのチクラミーノ争いを制し、昨年のベネットが逃したジロ最強スプリンターの座を手に入れることができたのだ。それは決して、有力スプリンターが去ったあとの「残りもの」ではない。彼はたしかに、強かった。

そしてジロだけでなく、ワンデークラシックでも次々と勝利、もしくは2位を重ねていった。その結果が、UCI世界ランキング7位という評価。当然これは、スプリンターの中では最高位である。

www.ringsride.work

 

彼が今年「最強」になれなかったのは、ある意味で、チーム事情ゆえだったかもしれない。ペテル・サガンというマイヨ・ヴェールが約束された男に、サム・ベネットという存在。彼らと同じチームにいることで、彼はようやくジロという舞台を用意はされたものの、残り2つのグランツールへは手出しできなかった。

来年はサム・ベネットがチームを去ることが確定。これは、アッカーマンの時代がきたか?

・・・と思ったところで、ペテル・サガンのジロ・ツール連戦が発表される。しかもジロはマリア・チクラミーノを狙うことも明言。

来年も、アッカーマンはまだまだ、グランツールで稼げる男にはなれないかも、しれない・・・。

 

 

サム・ベネット(ボーラ・ハンスグローエ)

2014年のプロコンチネンタルチーム時代からこのチームに在籍する叩き上げのアイルランド最強スプリンター。元より実力は高かったが、その評価が確定するのは2017年から。パリ〜ニース第3ステージの冷たい雨の中でクリストフ、デゲンコルプ、キッテルを打ち破った彼は、その年のジロ・デ・イタリアで3回の2位と1回の2位。勝てはしなかったが、ガビリアに次ぐ実力者であることは明らかであった。

そして、同年のツアー・オブ・ターキーで鮮烈なる4勝。単純なピュアスプリントだけではない強さを発揮してみせた。

Embed from Getty Images

 

2018年はさらに驚くべき進化を遂げていた。ジロ・デ・イタリアに君臨したエリア・ヴィヴィアーニ。その彼に食らいつき、3勝も奪ってみせた彼は、もはやトップスプリンターの1人であることは疑いようがなかった。

そして2019年。ハンマー・スタヴァンゲルで登りでのパワー(とその効率的な使い方)を見せつけていた彼は、ブエルタ・ア・エスパーニャでも同様に、登りスプリントでの圧倒的な強さを発揮して2勝と4回の2位を稼ぎ出した。間違いなく、今回のブエルタの最強スプリンターであった。

Embed from Getty Images

 圧倒的な強さ。だがそんな彼でも、このボーラ・ハンスグローエに居続けていては、決してツール・ド・フランスの主役にはなれずにいただろう。

何しろこのチームには、ペテル・サガンというツールの英雄がいるのだから。そうでなくとも、ドイツ人という、チームにとっては重要な国籍をもつ強いスプリンターも抱えているのだから。

 

だからベネットは来期、チームを抜け出すことを決めた。春先に口約束で残留を決めてしまっていたものだから、ちょっと(ちょっとじゃない?)ゴタゴタはついて回ったけれど、なんとかチーム離脱は認められた。

6年間自分を育ててくれたチームにさよならを告げて。

 

行先は現時点では確定していない。有力先としてはドゥクーニンク・クイックステップと言われている。

実際、ヴィヴィアーニを失い、ホッジ・ヤコブセンがまだまだ育ちきっていないドゥクーニンクにとって、明らかなトップスプリンターであるベネットの存在は喉から手が出るほど欲しいだろう。

サバティーニ、リケーゼを失ったとはいえ、まだまだモルコフもいて最強スプリンターズチームとしてのフィロソフィーも抱えているドゥクーニンクへの移籍は、ベネット自身にとってもメリットの大きいものではあるだろう。

 

我々としても、ドゥクーニンクで走るベネットは実に楽しみだ。かつてのキッテルやガビリアやヴィヴィアーニがそうであったように、このチームとの融合は、そのスプリンターを一躍「最強」の座に持ち上げてくれるものとなる。

 

このディールが成功すれば、来年の最大の「最強」候補は、このアイルランド人が最右翼と言えるのかもしれない。

 

 

ディラン・フルーネウェーヘン(チーム・ユンボ・ヴィズマ)

昨年、ある意味で「最強」と思っていたのはこのフルーネウェーヘンだった。

もちろん、ヴィヴィアーニの17勝や、ジロ・ブエルタ合計7勝のような派手さはなかった。ツール・ド・フランスでも2勝「しか」していなかったし、アルプスで早々にリタイアしてしまった。

しかしその勝ち方は実に強かった。マキシミリアーノ・リケーゼとのコンビネーションがあって初めて勝利していた感のあるガビリアに対し、より遠くから、単独の力でこれをねじ伏せたフルーネウェーヘンの走りは衝撃的だった。その他、小さなステージレースでのピュアスプリントステージでの強さは圧巻で、その童顔に似合わない太い首と巨大な上半身の印象深さも相まって、「最強」の響きの実によく似合う男だった。

 

だが、今年はややその勢いが失速した。もちろん、シーズン初頭から、やっぱり強いな、と感じさせる走りはしていた。

www.ringsride.work

 

しかし、この記事で「弱点」としていた部分も含め、今年のフルーネウェーヘンはその「ピュアすぎる」部分が色濃く出た「安定感のなさ」が印象的なシーズンだった。

すなわち、少しの登りやクラシックなコースにも弱いという点。ビンクバンク・ツアーでも、サム・ベネットに完全にしてやられた。ツール・ド・フランスでの大きなチャンスも、落車によってふいにした。

UCIポイントを稼ぐ上で重要なワンデーレースでの勝利も少ない、というかそもそもあまり出ていないのも、そういうレースが多く含んでいる登りなどの要素に向いていないからだろうか。その意味で、キッテルとも結構似ている選手である。

パリ〜ニースの横風をものともしない走りからは、そういった面の改善がされたのかと期待していたのだけれど・・・

Embed from Getty Images

 

ただ、このあたりの得意不得意は仕方がない部分はある。登りやクラシックなレースではテウニッセンが勝ってくれればいい。フルーネウェーヘンはひたすらステージレースでの勝利と、そしてグランツール、とくにツール・ド・フランスでの勝利に集中してくれればいい。

今年はチームとしては成功したもののフルーネウェーヘンにとっては悔しい結果に終わったツール・ド・フランスだったけれど、来年こそここでリベンジしてほしい。その資格は十分にある男だ。

ただ問題点としては、来年のツールが非常に山がちで純粋なスプリントステージが少ないということ。そして、いよいよプリモシュ・ログリッチェがツール制覇を目指す意欲を示しており、そこにフルーネウェーヘンの居場所があるか、定かではないこと。

果たして来年のフルーネウェーヘンはどうなる???

 

 

フェルナンド・ガビリア(UAEチーム・エミレーツ)

彼にとって2019年シーズンは、実に辛いシーズンとなったようだ。

とは言え、彼の移籍が失敗だったという意見には与しない。彼の失敗の大きな要因はジロ・デ・イタリアでの落車とその怪我からの回復の遅れにあり、また緩やかな不調自体は移籍前の昨年から始まっている。

シーズン初頭はチームとのコンビネーションも決して悪くはなかった。新たなチームでの居場所もそれなりに確保できているように思えた。

とにかく、切り替えて来年である。来年は、昨年のツール・ド・フランス2勝を支えた盟友マキシミリアーノ・リケーゼがやってくる。

もう一度、勝利を量産する野獣のような彼の姿を見てみたい。先日のツアー・オブ・グアンシーでの久しぶりの勝利が、そのきっかけと言うべきものであることを願っている。

Embed from Getty Images

 

 

ファビオ・ヤコブセン(ドゥクーニンク・クイックステップ)

2018年シーズンは同期のアルバロホセ・ホッジと共に競い合うようにして勝利を重ねていった。2019年シーズンは、そこで少し個性と差が出てきたようだ。

純粋なピュアスプリントにおいては、ホッジに軍配が上がる。一方で、さすがオランダ人と言うべきか、起伏があったり未舗装路があったり、悪天候や荒れた展開のときには、ヤコブセンの方がずっと安定感のある走りを見せる。

この新人スプリンターたちに初めてのグランツールを経験させるにあたり、用意できたのはブエルタ・ア・エスパーニャの舞台。となれば、上記の特徴から、ヤコブセンがその栄誉に最初に与れたのは必然であった。

ヤコブセンはこの期待にしっかりと答え、先輩リードアウターたちの力を借りて、マドリードを含む2ステージの勝利を獲得した。その意味で、成功したとは言えるかもしれない。

 

だが、まだまだトップスプリンターと言うべき位置に入れているかというと、微妙な気がする。このブエルタでも、あるいはツアー・オブ・カリフォルニアでも、まだまだ位置取りには苦労しているようで、重要なフィニッシュ前に姿がないことは1度や2度ではなかった。

そりゃ、まだまだ23歳、ネオプロ2年目の若手である。ガビリアのように若くしてトラックレースで世界と戦っていた経験もない。となれば、このあたりはまだまだ成長途上ということはできるだろう。これからが楽しみだ。

 

ともあれ、まだ来年のツールを任せられるレベルに達していないのは確かで、その意味でドゥクーニンクとしては、ヴィヴィアーニに代わる存在がなんとか欲しいところ・・・

噂通り、サム・ベネットが来てくれれば、文句はないのだが。

 

 

 

以上、7名の選手を見てきた。

2020年、これらの選手たちが引き続き活躍するのか、あるいはまた新たなスターが生まれるのか。

 

 

なお、冒頭のCyclingNewsの記事中には、これらトップスプリンターたちの「直接対決における勝敗数」も表でまとめられていて結構面白いので、そちらも必見。

なんだかんだ、カレブ・ユアンvsエリア・ヴィヴィアーニでは、ヴィヴィアーニが勝ち越していたり、とか・・・。 

 

スポンサーリンク

 

 

スポンサーリンク