りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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2019-2020注目移籍情報まとめ

↓最新の2020-2021移籍情報はこちらから↓

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いよいよ8月1日をもって正式に解禁となった移籍市場。

すでにいくつかの話は噂として出てはいたが、その中でも公式で発表された移籍ニュースのうち、一部の注目選手たちについて紹介していく。

 

最新情報は随時更新していく予定。来年のロードレースシーンを展望するうえでも、ぜひ参考にしていただきたい。 

※年齢はすべて2019/12/31時点のものとなります。

 

 

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AG2Rラモンディアル(フランス)

ヴェンドラーメを獲得

今年のジロ・デ・イタリアで活躍したアンドローニ・ジョカトリの有力選手の1人、アンドレア・ヴェンドラーメ(イタリア、25歳)

脚質としてはパンチャータイプで、今年はGPインダストリア&アルティジアナート3位、GPデュ・カントン・ダルゴヴィ5位、イタリア国内選手権ロード5位など、パンチャー向けレース各種で成績を残している。

一方、ジロでは山岳逃げに積極的。チャベスの勝った第19ステージでも、一度遅れたと思ったら最後には復活して区間2位。メカトラにもめげずの驚きの成績だった。

また、ツアー・オブ・スロベニアでも(チャベスより上位の)総合5位と、クライマーとしての素質も見せている。まだ今年25歳と若いのに、有望である。

どちらかというと元気に山岳エスケープを試みる、ある意味、AG2Rにはぴったりなタイプと言える。役割はもしかしたらあまりアンドローニ時代と変わらないかも。ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアで積極的に逃げ、今度は勝利を掴み取って見せよう。 

 

タンフィールドを獲得

コンチネンタルチーム所属の2018年にツール・ド・ヨークシャーで鮮烈な逃げ切り勝利を決めて一躍注目を集めた男、ハリー・タンフィールド(イギリス、25歳)

2018年のコモンウェルスゲームスの個人TTで銀メダル、2019年のヨークシャー世界選手権ミックスドリレー英国代表に選ばれて銅メダルなど、その独走力の高さは評価を集めている。

そんな彼のプロデビューは非常に期待が高かったものの、それが混迷極めるカチューシャだったということが大きな痛手だった。

今回のAG2Rへの移籍が彼にとっては吉となるか。グランツールでも自由な走りが許されやすいこのチームであれば、大舞台での逃げ切り勝利も、楽しみに思えるかもしれない。

 

  

アスタナ・プロチーム(カザフスタン)

ウラソフを獲得

昨年のU23版ジロ・デ・イタリア総合優勝、ツール・ド・ラヴニール総合4位、いわばシヴァコフの「次」とも言うべき(といっても年齢的には上の)アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、23歳) がいよいよワールドツアーに。

今年もブエルタ・ア・アンダルシア総合8位、ツアー・オブ・ジ・アルプス総合10位、ツアー・オブ・スロベニア総合3位など、きっちりと上位入賞を果たしており、実力は間違いなし。次々と強力な山岳アシストを放出していくアスタナにとって、こういった強力な選手をこれからいかに集めていけるか。まずは第一手としては、悪くない選択である。

 

アランブルを獲得

バスクの原石、アレックス・アランブル(スペイン、24歳)がついにワールドツアーに。

武器は激坂適性と加速力。地元バスクの激坂レース、シルキュイ・ドゥ・ゲチョでは昨年優勝、今年2位を獲ったほか、ブエルタ・ア・ブルゴスでも登りフィニッシュで1勝+2位でポイント賞も獲得。ツアー・オブ・ジ・アルプスでもタオ・ゲオゲガンハートに惜しくも敗れながら区間2位。そして今回のブエルタ・ア・エスパーニャ。ニキアス・アルント、フィリップ・ジルベールらと競り合いながら区間2位が2回。実力は間違いなくホンモノである。

その脚質から、今後はアルデンヌ系クラシックでの活躍が期待できそうだ。それこそ、ジルベールに近いタイプの活躍が。まだまだ若く、今後10年は期待し続けられる存在である。

 

ロドリゲスを獲得

2018年ブエルタ・ア・エスパーニャの激坂フィニッシュで驚きの勝利を挙げ、今年もブエルタ・ア・ブルゴス総合2位やブエルタ総合22位など着実に成長を続けているオスカル・ロドリゲス(スペイン、24歳)

将来有望間違いなしの男だったが、所属チームのエウスカディ・バスクカントリー・ムリアスが今季限りの解散を発表・・・

の直後に、アスタナ・プロチームが獲得を宣言。これだけの才能、そのまま野に出してしまうのはありえない。ひとまずは安心だ。

ところで、これでアスタナはイサギレ兄弟にペリョ・ビルバオ、そして来期獲得のアレックス・アランブルに続きさらに強力なバスク人ライダーを獲得することに。グライドさんの情報で、これらの選手がみな共通してジュゼッペ・アクアドロというエージェントを雇用しており、彼がアスタナとのつながりを強めているからだ、ということを知る。

移籍事情の裏にエージェントあり。このあたりはあまり表に出てこない情報なのだろうが、熟知すればいろいろと見えてくるものは多そうだ・・・。

(セルヒオ・イギータがなぜあの中途半端な期間だけフンダシオン・エウスカディにいたのかも、たしかエージェントの関係だったはず)

 

 

 

ボーラ・ハンスグローエ(ドイツ)

ケムナを獲得

チーム・サンウェブの2017年世界選手権チームTT優勝の立役者の1人であり、クライマーとしても今年、ツール・ド・スイスおよびツール・ド・フランスにて目覚ましい飛躍を遂げたドイツ人オールラウンダー最大の有望株、レナード・ケムナ(23歳)

デュムランを失ったサンウェブにとって、次代の総合系期待の星と思っていた矢先の移籍であった。移籍先のボーラもドイツ籍だし、違和感はないけれど・・・。

ここから見えるのはサンウェブの、総合系を捨ててスプリンターとクラシックに注力する体制への先祖帰りというイメージ。果たして・・・。

そしてボーラとしても、フォルモロを手放した後のチームの若手総合系の有力候補として期待できる存在に。ブッフマンにとっては良き後輩となるだろう。

 

ラースを獲得

元チーム・イルミネート所属で、2018年のツアー・オブ・ジャパン東京ステージでも優勝しているマーティン・ラース(エストニア、26歳)が来期からボーラへ。

今年はコロンビア2.1でホッジに次ぐ2位に入っていたり、ツール・ド・コリアで3勝していたりする。なお、過去にツール・ド・コリアで3勝している選手にカレブ・ユアンがいたりもする。

育成に定評があり、サム・ベネットやブッフマンなど生え抜きを世界クラスの選手に仕立て上げているボーラであれば、この男ももしかしたら数年後には新たなエース担っている可能性も。

  

 

カハルラル・セグロスRGA(スペイン)

アウラールを獲得

今年、今やJプロツアー最強チームの一角となったマトリックス・パワータグにて、ツール・ド・栃木総合2位、ツアー・オブ・ジャパン区間3位を4回、ツール・ド・熊野区間1勝と総合優勝、そして母国ベネズエラのレースでの大活躍など、存在感を示し続けた男オールイス・アウラール(ベネズエラ、23歳)が、名門カハルラルに移籍。

カハルラルにはすでに、元チーム右京のジョン・アベラストゥリも所属しており、彼もワールドツアーを含め活躍を続けている。同じくチーム右京に1年だけ所属していたネイサン・ハースが現在はイスラエル・サイクリングアカデミーで活躍しているなど、近年、日本のコンチネンタルチームで名前を売ってそのまま世界のトップチームへと移籍・返り咲きするパターンも増えてきている。

安原監督が言っているように、日本のレースが海外にも注目され始めていることの証なのかもしれない。今後、良い影響に繋がっていくことに期待したいところ。

アウラール自体は、安定したスプリント力が持ち味で、かつTT能力や山岳能力もそれなりにあるオールラウンダータイプ。ベネズエラ籍というのも珍しく、今後も常に注目していきたい選手。

 

 

CCCチーム(ポーランド)

トレンティンを獲得

昨年シーズン途中の突然のスポンサー離脱、そしてそこからの新スポンサー獲得難航の経緯もあり、大量の戦力流出と移籍市場での大幅な出遅れを経験したこのチームは、今年の移籍市場においてはどのチームよりも強い意欲を持っているはずだった。

その第一報として出てきたのが、ミッチェルトン・スコットのクラシックエース、マッテオ・トレンティン(イタリア、30歳)である。これは正直、絶妙な補強だったように思われる。

CCCチームのエース、グレッグ・ファンアーフェルマートはすでにパリ〜ルーベも制しており、非常に優れたクラシックハンターであることは疑いようがない。そして、ファンケイルスブルクやウィシニオウスキーなど、CCCチームの抱えるクラシックスペシャリストたちも高い能力を持った選手たちが揃ってはいる。

しかし、それでもやはり力不足だった。ドゥクーニンク・クイックステップやその他の有力ワールドツアーチームに対抗するためには、せめてもう1人、ファンアーフェルマートと並ぶだけの実力をもったクラシックハンターの存在が必要不可欠であった。

それはトレンティンにとっても同様だった。ミッチェルトン・スコットも、その意味でクラシックスペシャリストに不足していた。ルーク・ダーブリッジも期待できる存在だったが、彼も負傷により今年の北のクラシックは欠場することとなった。

ゆえに、CCCチームもミッチェルトン・スコットも、今年の北のクラシックは「エースは強いのに・・・」という状態が続いていた。

その中での、トレンティンのCCCチーム移籍。そしてファンアーフェルマートとの合流。これは、双方にとって益を生み、そしてチームに大きな成果をもたらしうる完璧な補強だったように思う。

ただ、まだまだ力不足は否めない。総合系選手の不足もまだまだ深刻だ。CCCチームの更なる戦力補強が待たれる。

 

ザッカリンを獲得

そして移籍情報第2弾は、チーム待望の総合エース、イルヌール・ザッカリン(ロシア、30歳)! 

2015年より「ロシア籍」チーム、カチューシャで活躍し、2017年にはジロ・デ・イタリア総合5位、ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位と、グランツール総合争いに加わる実力の高さを見せつけた。ステージ優勝もジロで2回、ツールで1回。

しかし近年のカチューシャがマルセル・キッテルをうまく使いこなせなかったように、もう1人のエースであった彼もまた、十分にその力を発揮させることができなかった。それが彼の問題なのか、チームの環境なのかはわからない。いずれにせよ今回彼は移籍を選んだ。それが彼にとって、大きなプラスになればよいのだが。

CCCチームは山岳アシストは地味ながら良い選手が揃ってはいる。ゲシュケ、テンダム、ツォイドル、アントゥネス、デマルキ、デラパルテ、パウェルス、ロスコフ・・・。ただ、中心となるべき選手だけが欠けていた。

このザッカリンが新生CCCチームを引っ張り上げ、新たな希望の星として輝くことを強く強く願っている。

 

マスナダを獲得

今年のアンドローニジョカトリで最強の強さを見せつけた3大クライマーの1人、ファウスト・マスナダ(イタリア、26歳)はCCCチーム行きを選んだ。 

今年のツアー・オブ・ジ・アルプスで区間2勝と総合5位、ジロ・デ・イタリアでも1勝と、プロコンチネンタルチーム離れした実力を示しており、ワールドツアー行きは確実と思われていた。もう2人の実績を出したクライマー、ヴェンドラーメとカッタネオが行先を決める中、彼の行き先はずっと気になっていた中、まさかのCCC。

もし彼がCCC行きを積極的に選んだのだとしたら、それは彼がエースとして走れる環境を求めてなのかもしれない。そしてチームにとってもエースを担える存在と、そしてザッカリンのためのアシストを求めて、ということだろう。

あとはCCCがしっかりと彼を使いこなせるかどうか・・・。ある意味で、アントゥネスやマレツコなど、プロコンチネンタルチームで活躍した選手たちを集めた結果「大きなプロコンチネンタルチーム」にしかならなかった今年のCCCの二の舞にならないことを願う。

 

ヒルトを獲得

2017年のCCCスプランディ・ポルコウィチェ(現CCCディベロップメントチーム) 所属時に参戦したジロ・デ・イタリアで活躍し、それをもってアスタナ入り、その後も山岳アシストとして期待通りの活躍をしながら、ツアー・オブ・ジ・アルプスやツール・ド・スイスではエース格での活躍もこなすという間違いなく実力のあるクライマー、ヤン・ヒルト(チェコ、28歳)

彼が来期はCCCチームということで、運営母体自体は違うものの、ある意味では出戻り。総合系選手の少ないこのチームにおいてはエースクラスでの活躍が期待されるところだろう。

そしてアスタナの山岳アシストがまた一人・・・。

 

 

コフィディス・ソルシオンクレディ(フランス)

ヴィヴィアーニとサバティーニを獲得

プロコンチネンタルチーム最強格の一角であるこのチームにとって、ツール・ド・フランスでの勝利は悲願であった。高いサラリーを払いながらナセル・ブアニを抱え続けていたのはそのためであったが、彼はそれを成し遂げることができなかった。ブアニを超える存在としてのクリストフ・ラポルトにも期待したが、彼の2年間のチャレンジも結果を残すことはできなかった。

そこでこのチームは、ブアニを放出することで得た資金的余裕を用いて、世界トップスプリンターの1人エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、30歳、現ドゥクーニンク・クイックステップ)とその最強発射台の1人ファビオ・サバティーニ(イタリア、34歳)とを獲得することに決めた。

ヴィヴィアーニは2018年シーズンはジロ4勝ブエルタ3勝といずれも最多勝を獲得。年間18勝と、シーズン通して最強であることを示した。2019年シーズンはジロ・デ・イタリアの降格処分を受けてからどこか歯車が噛み合わない感じがしてジロ0勝ツール1勝に留まるが、年間勝利数では8まで伸ばしており、先日のライドロンドン・サリークラシックも昨年に続く連勝を記録している。

もちろん、この成績はクイックステップというチームにいたからというのはあるかもしれない。だが、今回は盟友サバティーニを連れ立っての移籍であり、キッテルのような悲劇には陥りづらいとは思っている。

また、UAEチーム・エミレーツから同じイタリア人の若手有望スプリンター、シモーネ・コンソンニも獲得するという噂も立っており、ヴィヴィアーニのための体制作りはしっかりと進められそうだ。コフィディスのワールドツアー化の可能性もある。

 

マルタンを獲得

こちらも注目のニュースである。元ワンティ・グループゴベールのフランス人エース、ギヨーム・マルタン(フランス、26歳)。昨年・一昨年は正直、期待されていたほどの活躍はできていなかったが、今年はついにツール・ド・フランスで総合12位と躍進。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも勝利まであと一歩というところにまで迫っており、成長著しい男だ。

そんな彼がいよいよフランスチームのエースに。コフィディスもこれまで、フランス人総合エースにはなかなか恵まれてこなかった。今年もスペイン人のヘスス・エラダがエースだ。だからこそ来年は、しっかりと実力と実績のあるフランス人エースを迎え入れることは非常に重要。目指すは総合TOP10入りである。

 

コンソンニを獲得

こちらも噂が真実となった。イタリアの若き野心家のスプリンターであり、今年は新加入のフェルナンド・ガヴィリアの発射台としても活躍してくれたシモーネ・コンソンニ(25歳、現UAEチームエミレーツ)の獲得である。 

彼の面白いところは、十分にエースを張れるだけの足を持っているがゆえに、単純な発射台としては留まらず、隙あらば自ら勝利を狙って行こうとする姿勢である。つい昨日まで開催されていたツール・ド・ポローニュでも、そんな場面が見られていた。

若くアグレッシブなその姿勢は、チームにとっても大きな刺激となるだろう。同じイタリア人のヴィヴィアーニ&サバティーニを支えつつ、ラポルトなど既存のエーススプリンターたちともうまく絡み合いながら、チーム全体でスプリント勝利を量産していってほしい。コフィディスがワールドツアーに昇格すれば、ジロ・デ・イタリアなどでエースを任される可能性はあるだろう。

2020年はコフィディスがツール・ド・フランスでのステージ勝利を量産する年になれるか。

 

ハースを獲得

日本人みんな大好きネイサン・ハース(オーストラリア、30歳)さん。実際、絶妙な登坂力とスプリント力とで、色んなレースで上位に入ったり勝ったりできる非常に「便利」な選手である。昨年のカチューシャのわずかな勝利数の1つに貢献していたりもする。

あとはその使い方である。その意味でコフィディスは彼の活躍できる機会の多そうなチームである。コフィディスは今でも強力な選手は多いが、もしも噂通りにワールドツアーに昇格するのであれば、出場しなければならないレースが増える中で、彼の存在は重宝するはずだ。たとえばツアー・ダウンアンダーとか。。

またもしプロコンチネンタルチームのままであれば、プロコンチネンタルチームの主戦場となる1クラスやHCクラスのレースこそ、ハースが得意とする舞台である。今までよりも勝利を量産できる可能性が高い。 

 

フェルモートを獲得

2017年のツール・ド・フランスで、「銀河系軍団」クイックステップのほぼ唯一の平坦牽引役として、カメラに映らなくても常に仕事をし続けていた「職人」ジュリアン・フェルモート(ベルギー、30歳)。

翌年からはマーク・カヴェンディッシュのための牽引役と自らのクラシック勝利のためにディメンションデータに移籍したものの、いずれもうまく花咲くことがなかった(なお、クイックステップにおける同役職の後継者はティム・デクレルクが引き受けることに)。

そして2020年は、コフィディスに。

目的は明確。このチームに新たにやってくる、ヴィヴィアーニのための平坦牽引である。また、ワールドツアーでなかったがゆえもありあまり強化していなかったクラシック要員としても期待されることだろう。

最強のアシストは最強のエースがいてこそ輝く。再び彼の名が世界に轟く瞬間が実に楽しみだ。

 

 

ドゥクーニンク・クイックステップ(ベルギー)

カッタネオを獲得

今年のジロで活躍したアンドローニの強力クライマー陣の1人、マッティア・カッタネオ(イタリア、29歳)。今年のジロのイル・ロンバルディアステージ(第15ステージ)で、アスタナのカタルドに惜しくも敗れるも、2位につける大健闘を見せた。

そんな彼が来季はクイックステップの手薄な山岳アシストに。アラフィリップやエヴェネプールなど、総合を狙う選手も増えていく中で、彼の存在は貴重だ。

あるいは、シャフマンが今年からチームを離れてしまったのに対し、グランツールでの山岳逃げ要員の新たな可能性としても期待できるかも。そのあたりはイギリス人若手ノックスなどにも期待したい役回りだ。

 

サム・ベネットとアーチボルドを獲得

2014年のプロコンチネンタルチーム時代から在籍し続けた、チーム叩き上げのエーススプリンター、サム・ベネット(アイルランド、29歳)。ワールドツアー化した2017年シーズンも、サガンに喰われるかとおもったが、きっちりと勝ち星を重ねて10勝。2019年はアッカーマンと並ぶ13勝、ブエルタ・ア・エスパーニャでは2勝と4回の2位を叩き出し、ジロやツールと同じ基準であれば十分にポイント賞を手に入れられる走りを見せつけた。

そんな彼にとって、2020年以降もボーラで居続ける意味はなかった。何しろここには、2020年にジロとツールで共にポイント賞を狙う男サガンがいて、チームと同じ国籍をもつエーススプリンター、アッカーマンがいる。3人目のエースの居場所は難しい。どんなに力があっても。

そして、全スプリンター垂涎の、と言っても過言ではない「クイックステップのエーススプリンター枠」が、目の前に用意されていた。ベネットが長年お世話になったチームを飛び立つことを、責めることのできるものなどいなかった。

かくして、2020年の「最強」候補が誕生する。しかも、2019年にベネットのターキーやブエルタでの勝利を支えた発射台、シェーン・アーチボルド(ニュージーランド、30歳)を携えて。ニュージーランド人のアーチボルドにとっても、ドイツチームは決して安住の地ではなかったのかもしれない。

果たして2020年、彼らは何勝してしまうのか。

 

 

デルコマルセイユ・プロヴァンス(フランス)

石上・岡を獲得

来年、NIPPOとのコラボレーションが予定されているという南フランスのデルコマルセイユ・プロヴァンスに、日本の若手有望株2人が移籍することが決まった。

岡 篤志(日本、24歳)は元々浅田監督の若手育成チーム「EQADS」に所属しておりフランスでも走ったことがあるが、生活の違いで苦しみ、一時は自転車から離れていた。しかしそこからJエリートツアーだった頃の弱虫ペダルサイクリングチームで復帰し、Jエリートツアーの個人総合優勝を経て、宇都宮ブリッツェンへ。そして今回、欧州復帰を果たすことに。

石上 優大(日本、22歳)は2018年のU23全日本王者。同年の大分アーバンクラシックでも優勝しており、若手選手の中では最も期待されている選手の1人である。彼もEQADS所属。

最初はNIPPOがコラボレーションする関係で日本人選手を取り入れたのかと思っていたが、NIPPOに近い軸からではなく、浅田監督に近しい立場の選手たちの立て続けの加入。NIPPOとは関係がないのかもしれない。

いずれにせよ、大事なのはここから。ただ在籍するだけでなく、新城・別府に続く日本人選手としての存在感を示せるような走りを期待している。

 

中根、別府を獲得

岡、石上に続き、驚きの日本人獲得。

旧NIPPOから唯一の移籍となったのは、今年のコロンビア2.1で区間5位、先日のジャパンカップで6位に入っていたりと、着実に世界で戦える実力をつけつつある中根英登(日本、29歳)

そして別府史之(日本、36歳)は言うまでもなく世界レベルの男。トレックとの契約を1年残しての移籍は、彼自身の東京オリンピック出場に向けた意欲であると同時に、後進の育成を強く願った結果なのかもしれない。

このデルコマルセイユ・プロヴァンスの狙いと日本人選手たちについては、以下の記事でも詳しく書いている。

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EFエデュケーション・ファースト(アメリカ)

コルトニールセンを獲得

元はブエルタ・ア・エスパーニャでも2勝した「登れるスプリンター」。・・・が、最近では専ら山岳逃げスペシャリストとしての活躍が中心。昨年のツール・ド・フランスや今年のパリ~ニースでも、とくに後者はトーマス・デヘントを下しての勝利を果たしている。

そして、今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、山岳アシストとしての活躍も。より万能な力量とサンタのような立派な髭を獲得したマグナス・コルトニールセン(デンマーク、26歳)が、来期からEFエデュケーション・ファーストへ。

EFは今年、ロンド・ファン・フラーンデレンでの優勝やジロ・デ・イタリアで総合11位・12位・18位獲得など、調子を上げているチーム。現在ブエルタ・ア・エスパーニャでも活躍しているヒュー・カーシーやセルヒオ・イギータなど若手のオールラウンダー候補も有力な選手が多く、そんな彼らによる今後のステージレース&グランツール制覇に向けた大きなアシスト役を担ってくれることだろう。

ところでアスタナは本当に強力な山岳アシストを失っているようだけど、本当に大丈夫なんだろうか・・・。 

 

パウレスを獲得

ブエルタ・ア・エスパーニャでもプリモシュ・ログリッチェの総合優勝を助ける役割を果たしていた現ユンボ・ヴィズマのニールソン・パウレス(アメリカ、23歳)が、来期から母国籍チームのEFエデュケーション・ファーストに。

元アクセオン・ハーゲンスバーマン所属。2016年にはツアー・オブ・カリフォルニアで、最年少選手ながら厳しい山頂フィニッシュのジブラルタルロードでワールドツアー顔負けの走りを見せていた。結果、総合9位と新人賞。同年のツール・ド・ラヴニールの最終日山頂フィニッシュでも勝利しており、間違いなく今後、大きな活躍を見込める大型新人であると確信させてくれた。TT能力も高く、ステージレースに強いオールラウンダータイプだ。

昨年ついにユンボ・ヴィズマに移籍する形でプロデビュー。大いに期待したものの、現時点ではまだ覚醒には至っていない。ユンボの強力な山岳アシストへと成長することを期待していたが、母国チームへの移籍は彼にとってもプラスになると信じている。EFで見事覚醒し、カーシーやマルティネスらと並ぶ、このチームの次代を担うエースへと進化してほしい。 

 

ハルヴォルセンを獲得

 2016年U23世界王者、2017年ツール・ド・ラヴニールで区間1勝。間違いない才能をもった男クリストファー・ハルヴォルセン(ノルウェー、23歳)をスカイは早めに手に入れた。同じく活躍したクリス・ローレスと一緒に手に入れるんだから、贅沢なものである。

初年度はそこまででもなかった。同じラヴニール組のホッジやヤコブセンと比べるとまったく沈黙していた。しかしそこは「スカイ2年目のジンクス」である。今年、年初のヘラルドサン・ツアーで優勝したかと思えば、スプリンター向けの北のクラシックでも上位にはいり、そして地元のツアー・オブ・ノルウェーでは新人賞も獲得した。

今や、トップスプリンターの仲間入りを果たしたが、それがゆえに、よりスプリントに集中できる環境を求めて移籍することに。少なくともイネオスでは、グランツールを走ることは難しそうだ。

対してEFは今のところ、抜け出るようなレベルのスプリンターはいない。年間2〜3勝が関の山といったところ。ハルヴォルセンの存在はチームにとっても大きな意味を持ち、ハルヴォルセンにとってもエースで走るチャンスを得られる理想的なチームだ。

とりあえずチームとしては、今回のハルヴォルセンの獲得で「ミラノ〜サンレモ勝利へのチケットを手に入れた」と考えているらしい。今年はロンドを制したEF。さらなる進化を遂げられるか。

 

ゲレイロを獲得

カチューシャ流出組がまた一人。 ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、25歳)はニールソン・パウレスがツアー・オブ・カリフォルニアで新人賞を獲ったときにタオ・ゲオゲガンハートと共にアクセオン・ハーゲンスバーマンに所属していた選手で、パウレス、タオ、ゲレイロのアクセオン3名で当時の新人賞TOP3を独占していた。

そのため、彼もまた、間違いなく才能のある選手だったのだが・・・期待していたのだが・・・カチューシャにいたことが悪かったのか? なかなか芽を出せず。

しかし、今年のブエルタ・ア・エスパーニャ終盤での積極的な走りは目を瞠るものがあった。勝てはしなかったが、かつてのチームメート、ゲオゲガンハートと共に、山岳ステージの終盤で常に姿を見せていたような気がする。

着実に経験を積み重ね、強くなりつつある。今年は勢いの良いEFであれば、カーシーやマルティネスのように、きっと大きな勝利を挙げてくれるはず!

 

 

ガスプロム・ルスヴェロ(ロシア)

カノラを獲得

2017年ジャパンカップのクリテリウム&ロードレース完全制覇を果たし、同年のツアー・オブ・ジャパンでは区間3勝を記録した、日本人にも大人気のマルコ・カノラ(イタリア、31歳)が、衝撃のNIPPO離脱からのロシアチーム入り。

NIPPO自体のチーム状況が不透明(フランス籍でのデルコマルセイユ・プロヴァンスとのパートナー関係になる?選手はどうなる??)ということもあり、仕方ないとは思うが、ちょっと残念。

ガスプロム自体はイタリアの有名レースへの出場が多く、ジロ・デ・イタリアにも出場経験があるため、そういったところを評価しての移籍と考えることもできるだろう。ただ、日本のレースへの出場はまずないチームなので、今後日本でのレースで彼を見ることは難しいだろうというのはちょっと残念なところ。

 

チーマ兄弟を獲得

チームとしては解散を決めたNIPPOヴィーニファンティーニ。先日のマルコ・カノラと合わせ、チームのメンバーがどんどん散らばっていく。

その中には栄転する選手もいれば、行先が見つからず困る選手やコンチネンタルチームへと行ってしまう選手もいるだろう。その中で、このチーマ兄弟は「栄転」というべきガスプロムへ。RCSスポルトとも仲の良いこのチームならば、有名なイタリアのレースへの出場機会も多いかも。

その評価の鍵になったのは間違いなく、イメリオ・チーマの今年のジロでのステージ優勝。それ以外でも、逃げに積極的なこの2人。来期も色んなレースでその活躍を見たい。

 

 

イスラエル・サイクリングアカデミー(イスラエル)

マーティンを獲得

これも非常に驚きの移籍。ダニエル・マーティン(アイルランド、33歳)は確かに今年のツール・ド・フランスは振るわず、総合18位と近年稀に見る大失敗を犯してしまったものの、それでもイツリア・バスクカントリー総合2位などまだまだ衰えない実力の高さを見せつけていたように思う。

だから今回のこの移籍は、彼の能力がピークを過ぎたからというネガティブな移籍ではなく、イスラエルが本気で獲りたいと願って無理をしてでも手に入れた移籍、と考えた方が良いのかもしれない。マーティンとしてもポガチャルやフォルモロなど次から次へと現れるチームへの総合系の新たな風に対し危機感を持っていたのもあるだろう。

問題はイスラエルが来期、グランツールへの出場権を得られるかが不透明なところ。

 

ピッコリを獲得

ジェームス・ピッコリ(カナダ、28歳)を知ってるか。今年のツアー・オブ・ユタで大ブレイクした男だ。いや、今年は、ユタ以前のレースから強さを見せていた。ユタ含め、今年出場したステージレースは5つ全てで総合2位か総合優勝。

それでも、やっぱりHCクラスのユタでの活躍は別格。まずは初日のプロローグで優勝候補と目されたローソン・クラドックを打ち破って世界を驚かせた。そのあとも、山岳ステージで常に上位に残る走り。最終的にはニクラス・イーグもジョー・ドンブロウスキーも斥けての総合2位である。

この実績を評価し、イスラエルサイクリングアカデミーが早速彼を迎え入れる。しかも、このチームは来期ワールドツアーチーム化が噂されている。コンチネンタルチームからこの年齢で一気にワールドツアーデビューである。

昨年ユタで爆発したセップ・クスは今年のブエルタで期待通りの大活躍。ピッコリも、今度はワールドツアーの舞台で名を轟かせることができるか。

   

グライペルを獲得

衝撃のアルケア・サムシック行きから1年。想像していた以上に振るわない1年を過ごし、アンドレ・グライペル(ドイツ、37歳)は契約途中でのチーム離脱を宣言。そして、イスラエル移籍が確定したことで、彼は再びワールドツアーの地に戻ってくる。

あとはこのチームでどういう役割を担うのか。チームのスプリンターはダヴィデ・チモライ、トム・ファンアスブルック、元カチューシャのリック・ツァベル、元コフィディスのユーゴ・ホフステーテ、そして純粋なスプリンターとは言えないがミッヘル・ライムなど。

グライペルがまだまだエースを担うべき布陣とも言えるし、彼がアシストに回る可能性もありえなくはないし・・・いずれにせよ、元気な彼の姿が見られれば、それでよい。

 

ポリッツを獲得

絶望に沈んだ2019年シーズンのカチューシャ・アルペシン。その中でひときわ輝く戦績を誇ったのが、このニルス・ポリッツ(ドイツ、25歳)である。

元々2018年にはドイッチュラント・ツアーで区間1勝、スパルカッセン・ミュンスターラント・ジロで3位など、地元で強いスプリンターという印象だった。

しかし2019年には、E3ビンクバンク・クラシック6位、ロンド・ファン・フラーンデレン5位、極め付けはパリ〜ルーベ2位と、北のクラシックで圧倒的な強さを誇っていた。

元々の武器である登れるスプリンター力も健在で、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ初日ステージでも4位に入った。

今後もフランドル、アルデンヌともに高レベルな成績を出していけるか。まさにジルベールの後継者になりうる存在だ。

なお、パリ〜ニースの個人TTでは2位。あのクウィアトコウスキーを凌駕した。世界選手権ミックスドリレーではドイツ代表に選ばれるなど、TT能力の高さも大きな武器である。

 

マケイヴを獲得

元ユナイテッド・ヘルスケア、そして2019年はフロイズ・プロサイクリングに所属し、ナショナルチームの一員として参加したツアー・オブ・カリフォルニアではワールドツアーの選手たちを相手取って堂々たる走りを見せつけていたトラヴィス・マケイヴ(アメリカ、30歳)が、いよいよワールドツアーデビュー。その強さは世界を舞台に発揮できるか。

しかしマケイヴ、グライペル、チモライ、ホフシュテッター、バルビエなど、実力はあるが現状突き抜けてはいないスプリンターがたくさんあつまったこのイスラエル、各グランツールのエースとかは本当、どうするんだろう。

  

 

ロット・スーダル(ベルギー)

ジルベールを獲得

「私はもっとレースを走りたい」。引退も間近に迫りつつあるこの「アルデンヌの皇帝」にとって、現チーム、ドゥクーニンク・クイックステップから提示されたわずか1年の契約延長は満足できるものではなかった。

それがゆえにフィリップ・ジルベール(ベルギー、37歳)は、かつて在籍したもう1つのベルギーチームとの3年契約を結ぶことに決めた。当時はサイレンス・ロット、もしくはオメガファーマ・ロットと呼ばれていたこのチームでの在籍期間中に、驚異的なアルデンヌ制覇(同一年度におけるブラバンツペイル、アムステルゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ全勝利)を成し遂げている。彼が皇帝と呼ばれるに至った場所である。

だが、彼は彼自身の成績だけに興味を持っているわけではなさそうだ。

「過去数年間、このチームを外側から眺めてきて、ここには本当の意味でのリーダーが欠けていると感じていた。僕は自分の走りでだけでなく、他の選手たちをよりよくすることを通して、このチームをより高いレベルに引き上げていきたい」

実際、ジルベールが在籍した3年間で、クイックステップも非常に良いチームへと変化していった。移籍初年度から、若き(そしてのちのベルギー王者である)イヴ・ランパールトのための走りを買って出て、その後も常に、「ウルフパック」の真髄を大先輩の彼自身が見せてきていた。本当に良いチームとは、そういった姿勢を見せられるエースの元に作られる。

だから、彼の存在によって、ロット・スーダルも間違いなく進化するだろう。スタン・デウルフ、ゲルベン・ティッセン、ブレント・ファンムール、あるいは来年から合流するラスムス・イヴェルセンなど、ベノートやカンペナールツが抜けたあとにも、このチームには実に将来有望な若き才能が揃っている。「皇帝」が自ら彼らを育て、そして将来のスター選手たちを作っていくことを楽しみにしたい。

 

デゲンコルブを獲得

ミラノ~サンレモとパリ~ルーベの覇者、ブエルタ・ア・エスパーニャで区間5勝を達成している男、そしてさいたま王、ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、30歳)。2016年の事故以来、幾度となくその復活が期待されながらも、かつての精彩を取り戻せずにいるという印象の彼が、トレック・セガフレードを離れ初のベルギーチーム入りを果たした。

基本的にデゲンコルブは純粋なスプリントというよりは、起伏やクラシック系の環境の中で生き残った選手たちの中でのスプリントを得意とする。トレックでもそこを武器にして走ってきたが、最近はエドワード・トゥーンスやマッズ・ペデルセンが強力になってきて、存在感を失いつつあった。ツール・ド・スイスでも、得意なはずの登りスプリントで、むしろジャスパー・ストゥイヴェンの方が好調だった。

その意味で、ロット・スーダルは意外にもそういったクラシック系のスプリンターの有力所が少ない。ベノートがチームを去るため、なおさらだ。

というわけで、今回のこのデゲンコルブ移籍は「良い移籍」の1つだと思っている。来期活躍する彼の姿を期待する。

 

 

ミッチェルトン・スコット(オーストラリア)

ゼイツを獲得 

衝撃のニュースである。アスタナを離れることはないと思っていたカザフスタン人が、まさかの他チーム移籍。とくにこのアンドレイ・ゼイツ(33歳)という男、アスタナでプロデビューを飾ってから12年にわたり、18回のグランツールに出場し、ヴィンツェンツォ・ニバリの2回のジロ制覇とファビオ・アルのブエルタ制覇とを支えたチームの超重要アシストなのである。 

噂にはカザフスタン車連との不仲という話もあるようだが・・・果たして。

 

もちろん、ミッチェルトン・スコットにとってはこの上ない大きな獲得である。経験も実力も申し分のないこの名アシストの獲得により、イェーツ兄弟やチャベスのグランツール総合優勝に向けて更なる補強が完遂される。

トレンティンの放出もあり、さらなるグランツール集中型チームへの変貌を狙うミッチェルトン。果たして、うまくいくか?

 

 

モビスター・チーム(スペイン)

マスを獲得

個人的には今回の移籍の中でも特に注目したいディールの1つ。エンリク・マス(スペイン、24歳)の獲得。モビスターとしてもキンタナ、ランダ、カラパスを輩出し、丹念に育ててきたマルク・ソレルと共にこの若き才能をエースに据える。純スペイン、そして若手を中心にした新総合体制にベテランアシスト陣を添えて、新たな気持ちでグランツールを狙いにいく。そしてそれは成功する確信をもっている。トリプルエースとか、ウンスエも正直持て余してる感あったからなぁ。

マスにとってもこれは大きなチャンス。クイックステップはとても良い環境だったが、やはり総合を狙うには不向き。いつかは輩出されるだろうし、それが早いか遅いかの違い。じっくり腰を据えて経験を積み、数年後のグランツール頂点を確実に目指していこう。

 

カタルドとヴィレッラを獲得

ソレル、そして新獲得のマスと、新たな若手エースを中心にグランツール総合狙いの態勢を組み上げなおしつつあるモビスターが、彼らを支える超強力なアシストを2名獲得した。いずれもアスタナ・プロチームからのイタリア人、ダリオ・カタルド(34歳)ダヴィデ・ヴィレッラ(28歳)だ。

カタルドはリクイガス→クイックステップ→スカイそしてアスタナと変遷し、ジロ・ブエルタを中心に合計で19回のグランツールに出場。主に山岳アシストに徹するも、今年のジロの「ロンバルディア」ステージで念願のジロ初勝利を遂げた。イル・ロンバルディア本戦でも13位や16位といった成績を残している。

ヴィレッラはU23版イル・ロンバルディアの覇者としてキャノンデールでプロデビューを果たし、以後イタリアの秋のクラシックでは好成績を連発。イル・ロンバルディアも2016年に5位に入り込んでいる。

その2016年にはジャパンカップを制したことで日本での人気も高い。2017年にはブエルタ・ア・エスパーニャで山岳賞を獲得し、解散危機に揺れるチームを励ます働きをしてみせた。

アスタナに入ってからは山岳アシストとして活躍。2017年・2018年はジロ・ブエルタに両方出場し、チームから重宝されている存在だ。

 

カラパスが抜け、ウィネル・アナコナも抜けることがほぼ決まっているモビスターにとって、この2人の加入はかなり心強い。と同時に、チームのスペイン語圏中心主義からの脱却も象徴しており、このチームは今、確実に変革の時を迎えようとしている。

 

 

NTTプロサイクリング(南アフリカ)

カンペナールツを獲得

元ヨーロッパTT王者であり、今年ブラッドリー・ウィギンスの記録を打ち破り4年ぶりにアワーレコードを更新したヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、28歳)が、来期からNTTプロサイクリングと名前を改めるディメンションデータへ。

彼自身の目標は来年に控えたオリンピックや世界選手権での優勝。そのうえで、過去いくつものチームTTで勝利をもたらしてきたバイクサプライヤー、BMCの存在が彼にとって魅力に映ったのではとの話もあるとか。

そして、ロードレースにおける彼の役割は、平坦に限らず山岳でも発揮されるその牽引力。そして今年はベルギー・ツアーでレムコ・エヴェネプールと激戦を繰り広げたことからもわかるクラシック適性がチームに可能性をもたらすだろう。

 

ヴァルシャイドを獲得

チーム・サンウェブの、ブエルタ・ア・エスパーニャにおけるエーススプリンターであったマックス・ヴァルシャイド(ドイツ、26歳)が、来期からNTTへ。 

近年急激に台頭しつつあるドイツ人若手スプリンターの一角。彼自身も昨年はツール・ド・ヨークシャーやスパルカッセン・ミュンスターラント・ジロなどでの勝利で間違いなく活躍していたのだが、パスカル・アッカーマンの台頭などもあり、早くも影が薄くなりつつある。

NTTは比較的スプリンターを中心としているチームということで、ヴァルシャイドにとってもやりやすい環境かもしれない。ただしこのチームには今年また調子を上げつつあるジャコモ・ニッツォーロがおり、基本的にエースは彼に任されることになるだろう。セカンドエースの座を、これもまた強くなりつつある南アフリカ人スプリンター、レイナルト・ヤンセファンレンズバーグや、同じく南アフリカ人のライアン・ギボンズなどと競い合うことになるだろう。

 

入部を獲得

衝撃のニュース。11/12に新チーム名およびキット発表記者会見を東京で開催したその日、UCIの定める最低人数に1名足りないことを指摘する声も聞かれたが、まさにその夜、その最後の1人との署名が行われたのである。それが、現日本王者、シマノレーシングの入部正太朗(日本、30歳)。電撃的な新加入であった。

もちろんこれは、日本のスポンサーをタイトルに置くことの影響という面は間違いなくあるだろう。しかし、ファンにとっては、世界の舞台で再び日本のナショナルジャージが翻るチャンスとあって、純粋に嬉しい。

そして、与えられたこの機会を入部がいかに活用することができるか。その重みを、彼は十分によく知っているはずだから。

 

 

チーム・アルケア・サムシック(フランス)

キンタナ兄弟、アナコナ、ローザを獲得

こちらも噂通り、ジロ&ブエルタ覇者ナイロ・キンタナ(コロンビア、29歳)を獲得。

さらにその弟で、今年はネーリソットーリに所属し、ブエルタ・ア・サンフアンでもナイロ相手に引けを取らないアタック合戦を繰り広げたダイェル・キンタナ(コロンビア、27歳)や、ナイロの盟友とも言うべき男で彼のグランツールでの活躍を支え続けたウィネル・アナコナ(コロンビア、31歳)も揃え、このキンタナファミリーが来期のアルケアの中心的な存在となることは間違いがなさそうだ。

また、過去にイル・ロンバルディア2位の経験もある「ピンク色のアイウェア」の伊達男ディエゴ・ローザ(イタリア、30歳)も獲得。

多方面に活躍できる人材を揃えると共に国際化も図っていくこのアルケア。来期ワールドツアー入りの可能性も噂されているが、果たして。

 

ブアニ・ブダ・マクレーなどを獲得 

以前から噂はあったナセル・ブアニ(フランス、29歳)のアルケア入りが確定。グライペルとの兼ね合いに不安はあったが、同じタイミングでグライペルの今季限りでの契約破棄が決まった。

そして、ブアニだけでなく、同時にダニエル・マクレー(イギリス、27歳、元EFエデュケーション)トマ・ブダ(フランス、25歳、元ディレクトエネルジー)などの強力なスプリンターたちを獲得。

ほかにもスポートフラーンデレンからクリストフ・ノッペ(ベルギー、24歳)、ベンジャミン・デクレルク(ベルギー、25歳)、CCCチームからはルカシュ・オウシアン(ポーランド、29歳)も加入。それぞれ、上記のエーススプリンターを支える役割を担う。

強い選手たちを集めたが、集めただけ、になってしまっているような気がするのは不安である。あれ、それって前のキンタナのときも感じたような・・・。

 

 

チーム・バーレーン・マクラーレン(バーレーン)

ランダを獲得

今年イサギレ兄弟を放出し、来年ニバリを放出するこのチームにとって、次のエースとして考えて手に入れるのが現モビスターのミケル・ランダ(スペイン、30歳)だ。ランダにとっても、自らが唯一絶対のエースになれる念願のチャンスと言えるだろう。

バスク人のランダは2011年にエウスカルテル・エウスカディでプロデビュー。2014年からは2年間アスタナ・プロチームに在籍し、2015年にはエースのファビオ・アルのアシストとして、ジロ・デ・イタリアでは区間2勝と総合3位、ブエルタ・ア・エスパーニャでも区間1勝を成し遂げている。

2016年にはチーム・スカイに移籍。エースとして出場したジロではなかなか結果を出せなかったものの、2017年のツールではクリス・フルームのアシストとして目覚ましい活躍を見せ、総合4位に登りつめる。

2018年からはモビスター・チーム。今年はジロでエースとして走りつつ、後半では総合首位に立ったリチャル・カラパスをアシストしつつ自らも総合4位に入った。ツールでも総合6位。

これまでなかなか唯一のエースとして走る機会に恵まれずにいた彼が、今度こそ、エースとして最も優先される存在になることを認められそうだ。ただこれまで、アシストとして走ったときのほうが良い走りを見せられている男なので、果たしてどうなるか。

また、バーレーンのアシスト体制にはやや不安が残る。アスタナ所属のペリョ・ビルバオの移籍なども噂されているが、そういった補強が合わせて必要となるだろう。

 

プールスを獲得

2009年にヴァカンソレイユでプロデビューを果たし、その後2015年よりチーム・スカイでクリス・フルームの最強山岳アシストの1人として活躍してきたワウト・プールス(オランダ、32歳)。彼がいよいよ、エースとして羽ばたくときが来た。

とはいえ、登坂力もTT能力も申し分のない彼ではあるが、3週間のグランツールで総合上位に入るには、やや安定感が足りないきらいがある。アシストとしても3週間活躍するというよりは、どこかの1週間にひたすら強いというパターンが目立つ。

よって、このバーレーンでも、グランツールはたとえばランダのアシストなどとして活躍してくれそうだ。そうして、1週間程度のステージレースでの総合成績を狙ってほしい。

あるいはワンデーレース。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュも制したことのある彼の、次の目標にしたいのはクラシカ・サンセバスティアンやイル・ロンバルディアだ。

 

ビルバオ、ハラー、カペッキなどを獲得

以前から噂にはなっていたペリョ・ビルバオ(スペイン、29歳)の移籍が正式に決まり、 同じバスク人のランダにとっては、このうえなく頼れる山岳アシストとなった。ビルバオ自身も2018年ジロ総合6位・2019年ジロ区間2勝などエースを十分に担える存在だ。

バーレーン・メリダは同時に5名の選手の移籍を決めた。元デゲンコルプの盟友マルコ・ハラー(オーストリア、28歳)、ドゥクーニンク・クイックステップの数少ない山岳アシストの1人だったエロス・カペッキ(イタリア、33歳)、昔はパリ~ニースやボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャの総合上位に入ったこともあるラファエル・バルス(スペイン、32歳)など。

スコット・デイヴィス(イギリス、24歳)はU23版ジロ・デ・イタリア総合4位の若手クライマー。ケヴィン・インケラー(オランダ、22歳)は現在FDJのディヴェロップメントチームに所属しており、今年ジロ・デッラ・ヴァッレ・アオスタ・モンブランで1勝している選手。

 

カヴェンディッシュを獲得

2016年にツール4勝を成し遂げ、復活したと思われていたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、34歳)だったが、その後は崩れ落ちていくように振るわなくなってしまった。

ただ、まだまだ引退を考えるべきときではない。2020年にはバーレーン・メリダの新たなGMとして、かつての恩師ロッド・エリングワースが就任することも影響し、移籍を決めた。2020年はもしかしたら東京オリンピックを主軸とするかもしれないが、いずれにせよまだまだ現役の姿を見せてくれそうだ。

以下の記事も参照のこと。

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チーム・イネオス(イギリス)

カラパスを獲得

こちらもビッグディール。昨年あたりからモビスターの強力な山岳アシストの1人として注目を集め、かつ今年、まさかのジロ・デ・イタリア総合優勝を果たした南米の新星リチャル・カラパス(エクアドル、26歳)。彼が「最強軍団」イネオスの一員となる。

イネオスにとってもカラパスにとっても良い結果をもたらす移籍となる。ポート、ニエベ、セルヒオ・エナオ、ランダと過去にも強力なアシストたちを手放してきて、今年はプールスを失う可能性すら囁かれる中、カラパスの存在は非常に大きいだろう。カラパスにとっても、エースを約束してもらえる舞台ではないが、統制の取れた強力なチームの中での経験は、数年後の彼のさらなる躍進の大きな糧となるだろう。

ただし、イネオス=スカイ入りが必ずしもプラスになるだけとは限らない。ランダも2年でチームを去ったし、ブエルタ山岳賞争いで活躍し期待されてチーム入りしたケニー・エリッソンドもおそらく今年、イネオスを去る。

今、このイネオスで、とくにツールで走るうえで重要になる要素は単純な登坂力だけではなく、平坦も力強く走る能力である。クウィアトコウスキーやキリエンカが重宝され、今年はファンバーレが評価されているのもその点である。ニエベやエナオやエリッソンドがチームを去った理由ももしかしたらそこにあるのかもしれない。

カラパスがイネオスの中で絶対の立ち位置を獲得するためには、平坦能力の向上が求められそうだ。逆に、その点を強化してもらえる大きなチャンスでもある。そのチャンスを掴めるか、カラパス。

 

ヘイターを獲得

2018年のトラック世界選手権金メダリスト(チームパーシュート)、かつヨーロッパ選手権金メダリスト(オムニアム)のイーサン・ヘイター(イギリス、21歳)が母国イギリスの最強チームでプロデビュー。トラックで鍛え上げた選手らしく、TT能力とスプリント能力はずば抜けており、2019年のベイビー・ジロではプロローグとスプリンター向きの第1ステージで優勝。ツール・ド・ラヴニールでも、同じく集団スプリントで優勝。2位には同じ英国の天才児トム・ピドコックが入り英国ワンツーフィニッシュを飾った(なお、マティアス・ノルスガードが優勝した第1ステージでも、集団の先頭を取ったのがこのヘイター、集団の2位がピドコックであった)。

トラックで活躍し、イネオスへ、というのはまさにこのチームのかつての黄金パターンである。ブラッドリー・ウィギンス、ゲラント・トーマス、ピーター・ケニャック、あるいはマーク・カヴェンディッシュなんかも、確かそのパターンである。

古き良き英国チームの伝統に則って、次の時代の中心たる存在になれるか。ただ、このチームはやや、スプリンター系の選手には冷たいところが気になる・・・英国人なら大丈夫か? TT能力の高さは重宝されるだろうし・・・。

 

デニスを獲得

今年のツール・ド・フランスで衝撃の「早退」をしてみせ、世界選手権では謎の黒いTTバイクで2連覇を果たして見せたローハン・デニス(オーストラリア、29歳)。実は世界戦を前にしてバーレーン・メリダからは契約を解除されていたことがのちに分かり、その行き先に注目が集まっていた。

彼がこだわりを見せる(世界戦でも使用していた)BMCバイクを供給されているNTTプロサイクリングか?みたいな話もあったが、やがてその噂は「イネオス」という名前を示すことになる。

そして、噂が現実のものとなった。満を持して発表された、デニスのイネオス入り公式発表。なんかめっちゃ格好いい音楽と動画と共に、今年のイネオス最大の獲得であるかのように演出された。

実際、これはただ単にTT世界王者を獲得した、という事実に留まらない。ヴァシル・キリエンカ、ジョナタン・カストロビエホ、ディラン・ファンバーレと、TTスペシャリストたちを次々と「登れる重機関車」へと育て上げているイネオス。デニスはもともとグランツールライダーを期待されていた時期もあり登りへの潜在能力は十分に持っている。イネオスの得意の「手術」を受け、彼が最強山岳アシストになる可能性は――もしかしたらその先に、本気でグランツールエースになる可能性すら――十分にある。

とはいえ、2020年はまだ活躍することはないだろう。このチームには「2年目のジンクス」がある。その正体は、おそらくは、1年目は徹底的に「イネオス流」を叩き込まれることにあるだろう。デニスはこの「イネオス流」を叩き込まれることは非常に重要になる。しっかりと手綱を握り、彼を一皮も二皮も剥くことができるか。

 

 

チーム・ユンボ・ヴィズマ(オランダ)

デュムランを獲得

衝撃のニュース。噂はあったが、現実のものになるとは。

2021年まであった契約を破棄して、トム・デュムラン(オランダ、29歳)がサンウェブからユンボ・ヴィズマに移籍。すでにログリッチェ、クライスヴァイク、ジョージ・ベネットとグランツール上位を狙えるタレントが揃っている中で、さらなるツール総合優勝候補を獲得することとなった。

チームとしても、どのような戦略で来期を組み立てていくのか。ユンボ・ヴィズマのマネジメント力が試されるディールだ。

 

ハーパーを獲得

ベネロング・スイスウェルネス所属の2018年にオセアニア大陸王者に輝き、同時にツアー・オブ・ジャパンで総合4位&新人賞。そしてブリッジレーン所属の今年のツアー・オブ・ジャパンで富士山ステージを勝利して堂々の総合優勝となったクリス・ハーパー(オーストラリア、25歳)が満を持してワールドツアーチーム入り。しかも、現在飛ぶ鳥を落とす勢いで進化を続けるユンボ・ヴィズマに。これはハーパーにとってもこれ以上ないくらいのチャンスである。

ハーパーは今年、ほかにもツール・ド・サヴォワ・モンブランでステージ2勝&総合優勝と圧勝している。2クラスのレースではあるものの、2016年にエンリク・マスが、2017年にエガン・ベルナルが総合優勝している由緒あるレースだ。

素質は十分。まずはこの最強チームの山岳アシストとして成果を出し、さらなるチャンスを掴みにかかろう。目指すは、エヴァンスに次ぐグランツール制覇者・・・リッチーが苦しいいまだからこそ彼にかかる期待は大きい。 

 

 

チーム・サンウェブ(ドイツ)

ズッタリンとデンツを獲得

デュムランを頂点に置くドイツ籍総合系チームは、2020年に向けた補強の第一手として2人のドイツ人を手に入れた。モビスター・チームに所属していたヤシャ・ズッタリン(27歳)と、AG2Rに所属していたニコ・デンツ(25歳)である。

ズッタリンはTTスペシャリストとして高い才能を持つほか、終盤アタックからの独走などを得意とする。そして2人とも、タイプとしては北のクラシック向け。北のクラシック要員に乏しいサンウェブにとっては的確な補強とは言える。

ただ、2人とも北のクラシックにおいてはまだまだ即戦力ではない。ニューウェンハイスやヒルシ、クラークアナスンらと共に、しっかりと育てて使い物にできるかどうか、チームの力量が試されている。

 

ベノートを獲得

こちらも驚きの移籍。ロット・スーダルの柱の1つとして、チームが手薄の北のクラシックやステージレースを支えるものと思われてきたティシュ・ベノート(ベルギー、25歳)が、 サンウェブへの電撃移籍を決めた。

ベノートはネオプロ時代の2015年にいきなりロンド・ファン・フラーンデレンで5位に入り大注目を浴びた選手。しかし以後、高まりすぎた期待に対し、なかなか勝利を得られずにいたところで、2018年についにプロ初勝利。しかも、ストラーデ・ビアンケでの勝利というビッグウインとなった。

その脚質は北のクラシック向きともアルデンヌ・クラシック向きとも判断がつかず、さらにいえば昨年のティレーノ~アドリアティコ総合4位や今年のツール・ド・スイス総合4位など、本格的な山岳を含むステージレースでも上位に入り込めるというさらに謎な脚質をもっている。

今後、サンウェブがどういう方向を目指して彼を育成していくのか、興味が尽きない。その溢れ出る才能を扱うのは一筋縄ではいかないはず。うまく大成させてくれよな!

 

 

トレック・セガフレード(アメリカ)

ニバリ兄弟を獲得

兼ねてより確定的な噂となっていた3大グランツール覇者ヴィンツェンツォ・ニバリ(イタリア、35歳)のトレック入りが公式発表された。2010年にブエルタ、2013年にジロを制覇し、2014年にはツールも制して史上6人目の3大グランツール制覇者となった(現在はフルーム含め7名)。

2016年には2度目のジロ制覇を果たし、今年も総合2位。モニュメントも2015年・2017年にイル・ロンバルディアを制して2018年にはミラノ〜サンレモも優勝するなど、各方面で活躍する現代イタリア最強の選手である。ジロからの連戦となった今年のツールでも最終山岳ステージで絶妙な逃げ切り勝利を果たすなど、とにかく勝負の運び方が上手い。

トレックにはすでにリッチー・ポートがいるため、おそらくジロはニバリ、ツールはポート、のように棲み分けはすると思う。チッコーネやベルナールなどの若手クライマーも少しずつ育ってきているので、彼らの育成役としての役割にも期待したい。

また、バーレーン時代に合流した弟アントニオ・ニバリ(イタリア、27歳)も一緒に移籍。元々はプロコンチネンタルチームのNIPPOで走っていた彼だが、山岳ステージでの逃げやジロ・デッレミリアでの強力な牽引など、一定の成果を上げている。昨年のツアー・オブ・オーストリアではついにプロ初勝利。

今年も第一線とまで言わなくとも活躍に期待したい。「ヴィンツェンツォの弟」としてではなく、「アントニオ・ニバリ」として。

 

エリッソンドを獲得

↓書きたい内容が長くなったため詳細はこちらで↓

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2016年のブエルタ・ア・エスパーニャで、オマール・フライレと熾烈な山岳賞争いを演じたフランス人クライマー、ケニー・エリッソンド(28歳)が、 3年間在籍したチーム・スカイ/イネオスを離れ、トレック・セガフレードに。

彼の武器は、2018年ジロのフィネストーレで見せた短距離の爆発的な登坂力。あの一撃でライバルたちは突き放され、フルームによる伝説的な80km独走勝利の引き金となった。

また、今年のツアー・ダウンアンダーでも、ウィランガ・ヒルでその登坂力が発揮され、ワウト・プールスの総合3位の立役者となった。

それゆえに、来年のダウンアンダーではまず、このエリッソンドのアシストから放たれれるリッチー・ポートのウィランガ7連覇を楽しみにしたい。

そして、この男の存在によって、近年不調のポートが、再び輝くことを期待している。

それはすなわち、このフランス人が夢見るツール・ド・フランス出場のきっかけにもなるだろう。

 

 

UAEチーム・エミレーツ(アラブ首長国連邦)

マクナルティとビョーグを獲得

現代アメリカ若手最有力選手の1人、ブランドン・マクナルティ(21歳、現ラリーUHCサイクリング)。すでに今年からワールドツアーチーム入りを囁かれていたが、本人のもう少し母国チームでの経験を積みたいという意思もあり、プロコンチネンタルに留まっていた。

そんな彼を手に入れたのはUAEチーム・エミレーツ。今年、ラヴニール覇者タデイ・ポガチャルを獲得し、早速ツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝など目覚ましい成果を出しているこのチームで、マクナルティもまた、大きく羽ばたくことができるか。

2017年世界選手権U23個人TT銀メダリスト。2018年にはドバイ・ツアーのハッタ・ダムステージで「残り50m」まで逃げたことで一躍有名に。今年も大逃げによりジロ・デ・シチリアを制しており、その独走力が最大の武器である。

また、登坂力においても才能を見せ、昨年のツアー・オブ・カリフォルニアではサウスレイクタホ山頂フィニッシュなどでアダム・イェーツやタオ・ゲオゲガンハートに食らいつき区間4位。総合でも7位。その年のツール・ド・ラヴニールの山頂フィニッシュではイバン・ソーサやポガチャルと勝利を争い、気の早いガッツポーズさえなければ彼らを差していたはずだった。

よって、オールラウンダーとして類稀なる才能を持つ男と言える。ポガチャルと並ぶ次代のエース候補だ。

もう1人、注目を集める移籍情報が、ミッケル・ビョーグ(デンマーク、21歳、現ハーゲンスバーマン・アクセオン)の獲得である。彼もまた若手の有力選手であり、2017・2018連続でU23世界選手権個人TTを制している。すなわち、マクナルティを倒した男である。

ロードではまだ大きな成果を残していない彼ではあるが、今後のチームにとっても欠かせない機関車役として育ってくれることだろう。目指すは世界選手権エリートでの王者獲得である。

UAEは他にも、ジャスパー・フィリプセンやファンセバスティアン・モレーノ、トラック種目で活躍しているオリヴェイラ兄弟など、若手の才能を多く獲得している。

どうしてもダニエル・マーティンやファビオ・アル、フェルナンド・ガビリアなどの大物の存在が注目を浴びるが、プロトン随一の若手育成マインドを持つチームとして今後も期待していきたい。

 

リケーゼを獲得

昨年のツール・ド・フランスでガビリアの右腕として活躍したクイックステップの最強発射台の1人マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、36歳)。今年も、ともすればサバティーニ以上の強さを見せていた彼が、ガビリアのためにUAEに。チームとしては、コンソンニを失って空いてしまった穴を埋めるのに、十分すぎる戦力の増強となった。
今年は年初こそコンソンニやクリストフとのコンビネーションを発揮して、チーム移籍による急激な戦績ダウンからは免れていたように感じていたガビリアだったが、春の怪我が影響してジロを早期リタイア、ツールも欠場。そこから戻ってきた先日のツール・ド・ポローニュでも、何かかみ合わないというか、駆け出しが早すぎてゴールまで届かず失速する姿が目立った。
結果として今年は不調の年となってしまいつつあるガビリアだが、来年はこのリケーゼの力を借りて大復活を遂げられるか。

 

フォルモロを獲得

若手の超補強が目立つUAEだが、中堅どころの実力者もしっかり獲得。今年イタリアロード王者に輝いたアルデンヌ・クラシック・スペシャリスト、ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、27歳、現ボーラ・ハンスグローエ)の獲得だ。
もちろん、ステージレースでの総合における活躍も期待できる選手。すでにダニエル・マーティンもファビオ・アルも在籍しているチームではあるが、いずれも安定感はなく絶対の総合エースとして据えるには不安が残る。むしろポガチャルの方が安心できるレベルだ。
フォルモロも総合エースとしてはまだまだトップクラスではないものの、これだけ総合を狙うメンツが揃っていれば、あとは噛み合いさえすれば大きな成績を期待することはできる。
そしてもちろん、本領発揮はアルデンヌ系クラシック。ダニエル・マーティンとタッグを組んで、荒稼ぎしてもらいたいところ。

 

ドンブロウスキーを獲得

日本でも「ドンちゃん」の愛称で親しまれている?ジョー・ドンブロウスキー(アメリカ、28歳)が、5年間在籍したスリップストリームチームから離脱し、UAEへ。直近のツアー・オブ・ユタでも、区間1勝と総合3位など活躍していた。

28歳~29歳と聞くと、 なんだか最近の若手台頭の波に押されてもう旬を過ぎた・・・とか感じてしまいかねないが、本来は最もプロ勝利数の多い、ロードレース選手にとっての最盛期であることがデータからも示されている。

UAEは来期大きなチーム改革を経て、強力に総合も狙って行くチームとなるだろうが、その中でどんな役割を任されるか。エースのアシスト、もしくは積極的に逃げを打ってステージを狙うか。

 

デラクルスを獲得

またもビッグ選手を獲得。元クイックステップ→スカイ(イネオス)のダビ・デラクルス(スペイン、30歳)。ブエルタやパリ~ニースなど、大きなレースでの勝利が目立つ。 ただエリッソンド同様に、イネオスの戦略にはやや合わないタイプの選手か? より自由に走れるUAEへの移籍は彼にとってもプラスだろう。

ただし、同じように期待されたセルヒオ・エナオが現在UAEでちょっと目立っていないのが気になるところ・・・。今回のブエルタでは全く機能しなかったポガチャルの山岳アシストとしても、活躍してほしいところではある。

 

 

ワンティ・グループゴベール(ベルギー)

ファンポッペル兄弟を獲得

2015年ブエルタ・ア・エスパーニャにて、残り12㎞でパンクに見舞われながらも集団復帰してそのままスプリント勝利を果たした男、ダニー・ファンポッペル(現ユンボ・ヴィズマ、オランダ、26歳)が、ルームポット・シャルル在籍の兄ボーイ(31歳)と共にワンティへ移籍。5年ぶりの兄弟合流となる。

ダニーは前述の大金星ののち、2年間チーム・スカイに在籍。ツール・ド・ポローニュなどコンスタントに勝利を得る。その後は母国オランダのトップチームに在籍し、初年度はジロ・デ・イタリアでヴィヴィアーニ、サム・ベネットに次ぐ3番目の実力者として連日ステージ上位に食い込んだ。

しかし今年は振るわず。むしろマイク・テウニッセンやワウト・ファンアールトなどのシクロクロッサーたちが好成績を出す中、ディラン・フルーネウェーヘンに続くチーム2番目の男という地位も危うくなりつつあった。

移籍先のワンティはプロコンチネンタルチームとはいえ、先日のビンクバンクツアーで存在感を示したティモシー・デュポンなど、ライバルとなりうる存在は少なくない。

その中でこの兄弟はきっちりと結果を出せるか。

 

 

(以後、随時更新予定・・・)

 

 

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