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サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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2019年シーズン 各チームのグランツール出場予定選手概覧 Part.2

Part1に続き、2019年シーズンにどの選手がどのグランツールに出場するのか、チーム毎に見ていこう。

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今回はフルームやデュムランに対抗しうる選手を抱える3つのチームを扱っていく。

 

 

 

ミッチェルトン・スコット(MTS)

サイモンはジロでリベンジを狙う。アダムはツールへ。

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2018年のジロ・デ・イタリアでステージ3勝、2週間にわたってマリア・ローザを着続けながら、フィネストーレの登りで完全にガス欠に陥り、最終的には総合21位で終えてしまったサイモン・イェーツ(イギリス、25歳)。

 

その年のうちにブエルタ・ア・エスパーニャを制して実力を証明してみせた彼が、今年はまずジロでリベンジを狙うようだ。

 

「またジロに戻れることが楽しみだよ。ジロは僕にとって沢山の良い思い出と1つの苦い記憶とを味わわせてくれたレースだからね。だから僕はそこにもう1度戻って、やり残した仕事を終わらせに行きたい」

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2018年ジロ・デ・イタリアで大ブレイクを果たしたサイモン。再び、今度は最後までその力を発揮し続けられるか。 

 

 

問題は、今年のジロが3つのタイムトライアルを有しており、クライマータイプのサイモンにとっては必ずしも有利とは言い切れないことだ。

 

これについては、ミッチェルトン・スコットのスポーツディレクターであるマット・ホワイトが答えている。

 

「サイモンにとっては問題のないコースだよ。確かにタイムトライアルが3つあるけれど、いずれも登りを含んでおり、TTスペシャリストたちのためだけのコースにはなっていない。私たちも彼のTT能力の改善のために色々と手を尽くしてきており、まだまだ改善の余地はあるものの、少しずつ成果は出てきているところだ」

 

彼の言う通り、2019年のジロが用意した3つの個人タイムトライアルはすべて、登りが用意されたノット・フラットなレイアウトだ。

 

例えばボローニャを舞台にした第1ステージは、8kmの行程のうち、最後の2kmが平均10%、最大勾配16%の激坂となっている。

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第1ステージレイアウト。http://www.giroditalia.it/eng/stage/stage-1-2019/

 

さらに、34.7kmと今大会最長のタイムトライアルである第9ステージ「サンマリノ」は、残り12km地点で登坂距離5km、平均勾配6.7%、最大11%の登りが登場し、最後の2kmも平均6.4%の登りとなっている。

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第9ステージレイアウト。http://www.giroditalia.it/eng/stage/stage-9-2019/

 

そして最終日第21ステージ、ヴェローナの街を舞台にした15kmの個人タイムトライアルも、コース中央に登坂距離4.5km、平均勾配4.6%、最大勾配9%の登りが設定されている。

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第21ステージレイアウト。http://www.giroditalia.it/eng/stage/stage-21-2019/

 

これでは、トニー・マルティンやヴァシル・キリエンカなどの純粋なTTスペシャリストたちの方が悲鳴をあげそうなコースレイアウトである。

 

 

さらに、ホワイトが後半で言っている通り、サイモン自身のTTも間違いなく改善されつつある。

 

2018年ジロ・デ・イタリアの第1ステージ、ややアップダウンのある9.7kmのTTでは区間7位。34.2kmのフラットに近いレイアウトの第16ステージでも、デュムランから1分15秒遅れの区間20位であった。

ブエルタの、これもそこまでアップダウンの激しくない第16ステージ(32km)では1分28秒遅れの13位。

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TTの苦手なクライマー、といった評価は彼にはもはや当てはまらない。

この調子であれば、よりより厳しい勾配が用意された今年のジロのTTにおいても、3つのTT全て合わせたとしても、デュムランやログリッチェから失うタイム差は2分程度で抑えられるかもしれない。

 

そしてアシストとしては、かつてフルームの右腕の1人としてチーム・スカイで走り、昨年もサイモンを常に助けながら第20ステージでは自らも勝利を挙げたトップクライマー、ミケル・ニエベ(スペイン、35歳)も参戦を決めている。

昨年同様にチャベスやヘイグが加わることも予想されており、ブエルタに次ぐグランツール連勝の可能性は十分に高いと言えるだろう。

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そして、サイモンの双子の兄弟であるアダム・イェーツ(イギリス、25歳)は、昨年同様にツール・ド・フランスに出場する。

昨年のツールでは惜しいところで勝利が掴めず、悔しい思いをした彼だが、ブエルタの第3週では誰よりもサイモンを助ける力強い走りを見せていた。

 

その才能は間違いない。今年はアダムが、サイモンに続くグランツールの頂点を目指す。

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サイモンはブエルタ・ア・エスパーニャ2019コースプレゼンテーションにも参加しており、そこで「今度のブエルタのコースも僕に合ってるね」と発言している。ブエルタへの再挑戦も十分にありうるか?

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モビスター・チーム(MOV)

トリプルエースは解体され3つのグランツールに再編成される。

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「キンタナとランダは昨年、まったく期待に応える走りができなかった。だからすべてを変えなくてはいけない」

 

と、モビスター・チームのジェネラルマネージャーであるエウゼビオ・ウンスエは厳しい口調で告げた。

 

その言葉を反映するかのように、モビスターは2019年のグランツールを、以下のラインナップで戦う。

 

ジロ:ランダ、バルベルデ

ツール:キンタナ、ランダ

ブエルタバルベルデ、キンタナ

 

3つのグランツールそれぞれでダブルエース体制を敷く形に。

確かにこれなら、トリプルエースよりは成功しそうだ。

ただ、これによって、世界最高峰のレースであるツール・ド・フランスに、世界チャンピオンが出場しないという事態がおよそ10年ぶりに起きてしまうという。

 

 

 

ミケル・ランダ(スペイン、30歳)は2015年にチームメートのアルと共にジロ・デ・イタリアの表彰台に登った。

2016年・2017年はチーム・スカイの一員としてエース待遇でジロを走ったが、いずれも不運に見舞われて総合では結果を出せずに終わった。

 

今回、ツールではなくジロから出場することを望んだのは他でもない、ランダ自身だったという。

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個人タイムトライアルが少なく、山がちなツールの方が彼には向いているのではないか?

そんな、自然と浮かび上がる疑問に対して、ランダは答える。

 

「そうは思わないよ。最近のジロは、最終週に沢山の山を用意してくれている。ツールはそうじゃない」

 

2017年のジロは序盤のステージで落車に巻き込まれ、総合優勝争いから脱落してしまったものの、終盤の山岳地帯で復調し、ステージ1勝と山岳賞ジャージを獲得した経験が、彼にジロに対する良い印象を持たせているのかもしれない。

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また、その年のツールで、彼にとって最も良い成績(総合4位)を得られたことも、今年の決断を後押ししているのかもしれない。

 

 

地元バスクエウスカルテル・エウスカディを離れたのち、アスタナ、スカイ、そしてモビスターとトップチームを転々としてきているランダ。

今年は、モビスターにとっての2年目。これまでの流れであれば「最終年」となる年だ。

 

「エースで走りたい」という思いをもってアスタナを飛び出し、スカイを飛び出した彼が、このモビスターで走り続けるのであれば、バルベルデにもキンタナにも出せない結果を出すほかない。

さあ、どうする。 

 

 

 

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「まだツールで勝てる足は残っている」

 

ナイロ・キンタナ(コロンビア、29歳)は23歳で初出場したツール・ド・フランスで総合2位を獲得し、翌年にジロ・デ・イタリアを制覇。25歳で再びツールの総合2位、そして26歳でブエルタ・ア・エスパーニャを制した。

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だが、彼のピークはここで終わってしまったのか。

 

2017年はかろうじてジロ・デ・イタリアで総合2位を死守するも、2018年シーズンは2012年以来初めてのグランツール表彰台を逃した年となった。

 

冒頭にも挙げたように、GMのウンスエにも厳しい態度を取られ、弟のダイェルとも離れ離れになるなど、彼に対する風当たりは確実に厳しくなっている。

 

そんな中、彼がやれることはただ1つ。

結果を出すこと、だけである。

 

そのために彼が選んだ2019年の最初のレースはブエルタ・ア・サンフアン。

ブエルタに勝った2016年以来の南米での開幕戦である。

 

このブエルタ・ア・サンフアン、及びその前身のツール・ド・サンルイスについては、キンタナは総合優勝(2014年)、総合3位(2015年)と相性の良さを見せつけている。2016年にも、総合優勝を弟のダイェルに譲りチームとしての勝利を演出してみせた。

 

願掛け、というわけではないだろうが、キンタナは、この南米のレースでのシーズン入りをすることで、かつてあった良い流れを再び引き寄せようと考えているのだろうか。

1/27から始まるこの1週間のレースでの彼の走りには是非とも注目していきたい。

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チーム・ユンボ・ヴィスマ(TJB)

グリッチェがジロに、クライスヴァイクはツールに

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2018年のツール・ド・フランスで総合4位・5位を獲得したプリモシュ・ログリッチスロベニア、30歳)とステフェン・クライスヴァイク(オランダ、32歳)の2人は、それぞれジロとツールをターゲットにすることを決めた。

 

グリッチェにとってはジロは、彼がワールドツアーレースで最初に注目を浴びた思い出深いレースである。

今年のジロは得意の個人タイムトライアルの総距離も長く、彼向きであると言えるだろう。

 

また、クライスヴァイクも再度、それも今度は単独エースとして挑戦することになるツール・ド・フランスに向けて、意欲を燃やしている。

 

「ツールのコースは僕にとても向いている気がする。今僕は、グランツール表彰台の獲得に向けてあと一歩というところまで来ている。僕にとってそれは、究極の目標なんだ」

 

2018年はツール総合5位だけでなく、単独エースで臨んだブエルタ・ア・エスパーニャでも総合4位と好調だったクライスヴァイク。

いよいよキャリアも終盤が近づいてきつつある今、「表彰台」というやや控えめな目標を、確実に狙うべく力を溜めている。

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まとめ 

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こうやってみると、ジロがいかに豪華な面子が揃いそうか、よくわかるというものである。

 

 

次回はバーレーンメリダUAEチーム・エミレーツなどを扱う予定だが、そこまで多く情報も出ていないので、いつ作れるかは未定。

アル、ニバリは共にジロ出場予定とのことなので、やっぱりジロは凄く面白そうである。 

 

 

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