りんぐすらいど

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Team BikeExchange 2021年シーズンチームガイド

 

読み:チーム・バイクエクスチェンジ

国籍:オーストラリア

略号:BEX

創設年:2011年

GM:ブレント・コープランド(南アフリカ)

使用機材:ビアンキ(イタリア)

2020年UCIチームランキング:11位

(以下記事における年齢はすべて2021年12月31日時点のものとなります) 

 

【参考:過去のシーズンチームガイド】 

Mitchelton-Scott 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Mitchelton-Scott 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Mitchelton-Scott 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

 

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2021年ロースター

※2020年獲得UCIポイント順

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新型コロナウイルスに対するオーストラリアの厳格な水際対策は、このチームのオーナーであるゲイリー・ライアン氏の事業にも大きなダメージを負わせることとなった。これまでこのチームをスポンサードしてきたバイクエクスチェンジやミッチェルトンといった企業はいずれもライアン氏の手掛ける事業であり、そのライアン氏が経済的な苦境に立たされたとき、チームのGMであったシェーン・バナンが金策に走るのも無理のないことであった。

しかし、それがどこまでライアン氏の承認を得た動きであったのか。結果として、マヌエラ・フンダシオンを巡る騒動の末にバナンは解雇され、元バーレーン・メリダのGMであったブレント・コープラントが新たなGMとして招かれ、しかしスポンサーはつかず、結局は苦しいながらもライアン氏自身の企業がタイトルスポンサーになるという元の木阿弥。

そんなこんなだから、資金的にはかなり苦しい。アダム・イェーツ、アッフィーニ、ヘイグ、インピーといずれも手放してはならないくらいに重要な選手たちを手放さざるを得なくなったのである。

 

代わりに、マイケル・マシューズがこのチームに戻ってきてくれたことはかなり大きい。昨年も、いろいろと恵まれなかったものの、ここ数年でもとくに強い姿を見せていたのは確かだった。ユアンもトレンティンもインピーもいなくなってしまったこのチームにとってはツールで勝ちを狙えるスプリンターの存在は非常に大きいし、マシューズ自身にとっても、かつてとは違ってエースとして走れる立場での母国チームへの復帰は喜ばしいことだろう。

あとは、この2年、決して強くないわけではなかったが、満足のいく走りができずにいたサイモン・イェーツの復活と、新たなエース候補として着実に成長しつつあるルーカス・ハミルトンがしっかりと結果を出してくれれば、意外と悪くない布陣となる。

 

しっかりと目立って、チームに新たなスポンサーを呼び込もうじゃないか。

 

 

注目選手

サイモン・イェーツ(イギリス、29歳)

脚質:クライマー

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2020年の主な戦績

  • ティレーノ~アドリアティコ区間1勝・総合優勝
  • ツール・ド・ポローニュ総合3位
  • サントス・ツアー・ダウンアンダー総合7位
  • カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース10位
  • UCI世界ランキング27位

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大ブレイクした2018年にはもちろん敵わないまでも、決して悪くない2020シーズンだった。少なくとも2019年よりはずっと。

とくにティレーノ~アドリアティコ総合優勝のその瞬間までは、今年は復活のジロ総合優勝も狙えるんじゃないか、と期待できる強さだった。結果、エトナ山のステージから突如として調子を落としていたのは、やはり新型コロナウイルスの影響だったのか。そのあとはもう、どうしようもなかった。

ここで気持ちを切り替え、2021年は正真正銘の「今度こそ」。

だが、その闘志が狙う今年の最大の目標はまだ不明だ。クライマー向けの東京オリンピックのコースは明確に彼の目標であり続けており、もしそれに出るとしたら、ツール・ド・フランスで総合を狙うことは難しくなるかもしれない。となれば、やはり「4度目の正直」のジロ・デ・イタリアがグランツールでは最大の目標か。

いずれにせよ、ジロのコースが完全に発表されるまでは、彼の目標が明かされることはないだろう。

 

 

マイケル・マシューズ(オーストラリア、31歳)

脚質:スプリンター

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2020年の主な戦績

  • ブルターニュ・クラシック優勝
  • ミラノ~サンレモ3位
  • 世界選手権ロードレース7位
  • UCI世界ランキング32位

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オランダ籍のラボバンクチームでプロデビューを果たした彼は、3年目の2013年にこのチームに一度目の合流を果たした。しかし4年間を過ごしたオージーチームのキャリアでは、似た脚質の大先輩サイモン・ゲランスの存在もあり、むしろその後のサンウェブでのキャリアの方が、より大きな成果を残したと言える。

すなわち、ツール・ド・フランス2勝と、マイヨ・ヴェール着用と、(かつてゲランスも成し遂げた)カナダ2連戦の完全制覇と、ブルターニュ・クラシックでの優勝。

しかしそれまでも多くの「ベテラン」の離脱を許してきたサンウェブが再び「チーム最年長」のマシューズの離脱を認めたとき、彼は彼が完全なるエースとして走れる立場で、母国チームに復帰するチャンスを得た。

チームとしても、カレブ・ユアン、マッテオ・トレンティン、ダリル・インピーと、チームを支えてきた重要なスプリンターたちを失う中、スプリントでも一級品でかつ登りも激坂もアルデンヌもこなせるマシューズの存在は、資金難に苦しむ中で得た僥倖であった。

あとは、この才能を十分に生かせるのか、ということ。もちろん最大の目標は、ツール・ド・フランスだろう。昨年はペテル・サガンが真正面からマイヨ・ヴェールを失うなど、戦国時代の様相がより深まっているツールの最強スプリント決戦に、しっかりと爪を立てていきたいところである。

また、チームの若き才能に満ちたオージースプリンター、カーデン・グローブスにとっても、よき先輩として多くのものを与えてあげてほしいところ。

 

 

ルーカス・ハミルトン(オーストラリア、25歳)

脚質:クライマー

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2020年の主な戦績

  • サントス・ツアー・ダウンアンダー総合9位
  • ティレーノ~アドリアティコ区間1勝
  • オーストラリア国内選手権ロードレース2位
  • UCI世界ランキング163位

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ロバート・パワー、ジャック・ヘイグ、ダミアン・ホーゾンといった、同じオーストラリアの実力派クライマーたちと同様に、オーストラリアの実質的なU23ナショナルチームである Jayco-AIS World Tour Academy 出身。

2019年のツアー・ダウンアンダーあたりからその実力の片鱗を見せつけていた彼は、その年のジロ・デ・イタリアで、エステバン・チャベス以上の山岳登坂力を見せて(前年のジャック・ヘイグに匹敵する)サイモン・イェーツの右腕的存在として活躍していた。

www.ringsride.work

 

そして2020年。彼は本来のレーススケジュールにおいては、ジャック・ヘイグとの「ダブルエース」でブエルタ・ア・エスパーニャに臨むはずだった。結果としてそのスケジュールは新型コロナウイルスの影響で破壊され、再びジロ・デ・イタリアにサイモン・イェーツのアシストとして出場することになる。

だが、直前のティレーノ~アドリアティコでも1勝するくらい調子の良かったハミルトンは、ジロ第1週の序盤でサイモン・イェーツが(新型コロナウイルスの影響で)崩れ落ちると、第9ステージの終盤には積極的なアタックによって、総合ライバルたちからタイムを奪うことに成功した。

そのとき同じタイミングで抜け出して総合順位を上げていたのが、テイオ・ゲイガンハートである。ハミルトンは結局、チームごとジロ・デ・イタリアを途中リタイアすることになるが、もしそのままジロに残っていたとしたら、もしかしてゲイガンハートのように・・・なんて妄想まで、してしまいたくなる。

 

だが、今年は、その「もしも」を狙いうるチャンスである。

すなわち、アダム・イェーツが去り、ジャック・ヘイグも去り、さすがにエステバン・チャベスもエースとして走るのは厳しくなりつつある中で、ルーカス・ハミルトンがサイモン・イェーツに次ぐこのチームの「セカンドエース」であることは疑いようのない事実である。

サイモンがたとえばオリンピックを重視してジロとブエルタを今年も狙うのであれば、必然的に彼はツールをエースとして走ることさえありうる。

 

もちろん、それでいきなり結果を出すことまでは期待しない。

しかし、もしかしたら彼のキャリア最大のチャンスとなるかもしれない今年、誰もが驚くようなリザルトを残す瞬間を、ぜひとも期待したいところである。

 

 

その他注目選手

ルカ・メズゲッツ(スロベニア、33歳)

脚質:スプリンター

かつてはジャイアント・シマノ(現サンウェブ)に所属し、2014年にはボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで3勝、同年のジロ・デ・イタリアでも区間1勝するなど、マルセル・キッテル、ジョン・デゲンコルプに並ぶ才能と期待されていた。

しかしその後はしばらく、沈黙。2016年から現チーム入りを果たしたが、1年以上にわたり勝利がないまま時を過ごしていた。

そんな彼が、2019年にツール・ド・ポローニュを2勝するなど、復活の兆し。カレブ・ユアンが去り、マッテオ・トレンティンが去ったチームの中で、ダリル・インピーと並ぶチーム2番目のスプリンターとして、その存在感が一気に高まっていった。

今年はインピーが去った代わりにマシューズが来たものの、トレンティンの発射台としても活躍していたことのある彼は、マシューズと共にチームに大きな勝利をもたらしうる存在となるだろう。

今をときめくスロベニア人の「先輩」として、昨年のツール・ド・フランスのシャンゼリゼステージでログリッチ、ポガチャルたちと共に仲良く写真に写っていた姿も印象的。

 

ロバート・スタナード(オーストラリア、23歳)

脚質:パンチャー

2018年のU23版イル・ロンバルディア(ピッコロ・ロンバルディア)優勝者。ゆえに大いなる期待をもってミッチェルトン・スコットでのプロデビューを飾った。

その1年目は正直、期待が大きかった分、肩透かしを食らうような成績ではあったものの、2020年は、グラン・ピエモンテ8位、ジロ・デッラ・トスカーナ2位など徐々にその才能を発揮していき、ブエルタ・ア・エスパーニャでも果敢な逃げでステージ5位やマドリードでの9位などを記録した。

2019年のピッコロ・ロンバルディア覇者アンドレ・バジョーリは昨年いきなり勝利を得ていたりするものの、焦ることなくじっくりと成績を重ねていってほしい。

タイプとしては純粋なクライマーというよりパンチャータイプで、しかも結構本気でスプリントが強かったりする。マドリード9位というのは、もちろん集団スプリントの中での結果だ。

だからイメージとしてはディエゴ・ウリッシ、あるいはむしろサイモン・ゲランスとかに近いかもしれない。グランツールの総合とかは厳しいだろうが、その才能が花開いた暁には、各グランツールでのステージ勝利やカナダ2連戦、あるいはブルターニュ・クラシックなどでの勝利も期待ができそうだ。

もちろん、過去8位を記録しているジャパンカップでも、そのうち勝利を掴み取ってほしいところ。

 

カーデン・グローブス(オーストラリア、23歳)

脚質:スプリンター

2017年、オーストラリアのコンチネンタルチームに所属していた19歳のときに、中国のレースとはいえ、1クラスのツアー・オブ・福州にて「プロ初勝利」。さらに翌年、20歳のときに、シーズン途中でミッチェルトン・スコットの育成チームに移籍し、そこでHCクラスのツアー・オブ・チンハイレイクでも勝利をもぎ取る。

その後、ハーゲンスバーマン・アクセオンと並ぶ昨今の有力育成チームであるSEGレーシングアカデミーに移籍。実力と経験を積み重ね、2019年のシーズン後半から「プロデビュー」。

2020年も実質的なネオプロにあたる年と言えそうだが、その3レース目にあたるヘラルドサン・ツアーでいきなり2勝してしまうのだから、才能の塊とも言うべき存在である。プロ1年目にして、通算「プロ勝利」数は5勝である。

チームのエーススプリンターはもちろんマイケル・マシューズやルカ・メズゲッツだが、そこに次ぐチーム3番手の地位を早くも手に入れているとさえ言えそうだ。

グランツールでの勝利はさすがにまだ早いだろうが、ワールドツアークラスのステージレースなどでの勝利は期待したい。何しろ、「大先輩」カレブ・ユアンは、プロ1年目にしてブエルタ・ア・エスパーニャ含む11勝を稼ぎ出している。グローブスも昨年の成績だけでは満足できないだろう。

 

 

総評

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財政問題は頭の痛い問題だし、戦力の流出は確かだが、それでもなぜか悲観的な印象はそこまでない。もしかしたら昨年以上に。

もちろんそれは、サイモン・イェーツの「復活」やマシューズの大暴れ、あるいはルーカス・ハミルトンの「成長」にこそかかっている。とくにサイモンは、再びグランツールの総合の頂点を目指して大暴れしてほしい。少なくとも2020年は、十分に戦えるシーズンだったはずだ。

あとはそろそろマイケル・マシューズがミラノ~サンレモかアルデンヌ・クラシックを獲ってほしいところ。彼のこのオージーチームへの復帰は、彼の「サイモン・ゲランス」越えのための第一歩だと思っているから。 

 

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