元々はデンマーク・コペンハーゲンでのグランデパールが予定されていた2021年のツール・ド・フランス。
新型コロナウイルス流行の影響により東京オリンピックのスケジュールが変更されて・・・などの様々な要因が重なった結果、デンマーク開催は翌年に延期。2021年は急遽、ブルターニュ地方での開幕に変更された。
ベルナール・イノーを始めとする名選手たちを多く輩出してきたブルターニュから始まり、アルプス山脈を目指す今年のツールの第1週を、詳細に解説していこう。
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目次
- 第1ステージ ブレスト~ランデルノー 197.8km(丘陵)
- 第2ステージ ペロス=ギレック~ミュール=ド=ブルターニュ 183.5㎞(丘陵)
- 第3ステージ ロリアン〜ポンティビー 182.9㎞(平坦)
- 第4ステージ ルドン〜フジェール 150.4㎞(平坦)
- 第5ステージ シャンジェ〜ラヴァル(エスパス・マイエンヌ) 27.2㎞(個人TT)
- 第6ステージ トゥール〜シャトールー 160.6㎞(平坦)
- 第7ステージ ビエルゾン~ル・クルーゾ 249.1km(丘陵)
- 第8ステージ オヨナ〜ル・グラン・ボルナン 150.8km(山岳)
- 第9ステージ クルーズ〜ティニュ 144.9km(山岳)
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第1ステージ ブレスト~ランデルノー 197.8km(丘陵)
ブルターニュ半島の西端に位置する、フランス最大の軍港を有する港湾都市ブレスト。ここが今年のツール・ド・フランスのグランデパールとなる。第1ステージは同じフィニステーレ県のランデルノーまで。
ベルナール・イノーを始めとした数多くのスター選手を輩出し、フランスでも特に自転車熱の高いと言われるブルターニュ半島。2008年の同じくブレストスタート以来13年ぶりとなるこの地でのグランデパールは、アップダウンの激しさで定評のあるブルターニュらしい、丘陵ステージ。
集団スプリントステージ、個人TT、チームTTなど、平坦レイアウトで始まることの多いグランツールの開幕ステージらしからぬレイアウトに、最後も登坂距離3㎞・平均勾配5.7%の登りフィニッシュ。とくにその最初の500mの平均勾配は9.4%・最大勾配は14%ということで、ピュアスプリンターには太刀打ちできないフィニッシュレイアウトとなっている。
すなわち、大体においてスプリンターかTTスペシャリストの手にわたることの多かった最初のマイヨ・ジョーヌが、今回は珍しくパンチャーの手に渡る可能性が大きい。
その最右翼となるのはフランスの英雄ジュリアン・アラフィリップやマルク・ヒルシ、ワウト・ファンアールト、そして、大会初出場となるマチュー・ファンデルプールもまた、この日いきなりの勝利とマイヨ・ジョーヌという可能性は十分にある。
個人的には、このブレスト出身のパンチャー、ヴァランタン・マデュアス(グルパマFDJ)に期待したい思いはある。アルデンヌ・クラシックでも活躍する実力派ライダーだ。
とはいえ、スター選手が揃う中で、彼が勝つのはさすがに難しい・・・か?
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第2ステージ ペロス=ギレック~ミュール=ド=ブルターニュ 183.5㎞(丘陵)
ブルターニュ半島北西部のリゾート地ペロス=ギレックから、(自転車界における)ブルターニュ最大の名所「ミュール・ド・ブルターニュ(ブルターニュの壁)」まで。
2018年以来3年ぶりの登場となるミュール・ド・ブルターニュは、登坂距離2㎞・平均勾配6.9%。とくに前半の1㎞は10%弱の勾配が続く正真正銘の激坂である。しかもこの登りの最大の特徴は、完全なストレートの直登であること。目の前にそびえるまさに「壁」たる勇姿は、見るものの戦意を削ぐのには十分な圧力を持っている。
そして、3年前と同様、今年もこのミュール・ド・ブルターニュを2回登らせる。
フィニッシュまで15.3㎞地点に用意された1つ目のミュール・ド・ブルターニュの頂上には、今大会最初の「ボーナスタイムポイント」が用意されてもいる。もしかしたらここで、アタッカーによる攻撃が行われるかもしれない。
同じく2回登坂となった3年前はダニエル・マーティンが勝利。それ以前にこの登りがフィニッシュとなったときには、カデル・エヴァンス(2011)、アレクシー・ヴュイエルモ(2015)が勝利している。
今回も初日に引き続き激坂に自信のあるパンチャーたちが鎬を削ることになるだろう。ただし、過去のミュール・ド・ブルターニュでも、少なからず総合勢の中でのタイム差がつく事態も巻き起こっており、その意味で今回も、総合系ライダーたちにとっても決して油断のできないフィニッシュとなっている。
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第3ステージ ロリアン〜ポンティビー 182.9㎞(平坦)
実に「ブルターニュらしい」丘陵アップダウンステージを2つ越えて、ようやく第3ステージで集団スプリントの期待できるレイアウトに。ブルターニュ半島の南海岸に位置するモルビアン県のロリアンから、北上して内陸のポンティヴィーまで。
平坦とはいえ、そこはやはりブルターニュ。フィニッシュ手前には緩やかな起伏があるように見えるが、勝利に飢えたスプリンターチームの足を止める役割を果たすことはないだろう。
今大会も豪華なスプリンターたちが揃っている。昨年珍しく真っ向勝負でペテル・サガンからマイヨ・ヴェールを奪うことに成功したサム・ベネットに、今年全グランツールでの勝利を目指すカレブ・ユアン。昨年ジロ4勝でマリア・チクラミーノを獲得し、今年このツールで最強を証明すべくやってきたアルノー・デマールなど・・・今大会最初の集団スプリントを制するのは、果たしてどの選手か?
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第4ステージ ルドン〜フジェール 150.4㎞(平坦)
ブルターニュ半島での戦いもいよいよ最終章。半島を少しずつ東に進んでいったプロトンは、いよいよ半島の付け根に位置するルドンからフジェールまでを北上する。
少なくともレイアウトだけ見れば、そこはもうブルターニュの香りをほとんど残してはいない。山岳ポイントは1つもなく、第3ステージよりももっとずっと集団スプリントが期待できるステージとなっている。
となれば、大事なのはチーム力である。ドゥクーニンク・クイックステップやロット・スーダル、あるいはグルパマFDJなど。エーススプリンターのためにリソースを投入できるチームこそが勝利を掴める。
とくにカレブ・ユアンは、もしかしたら昨日は「いつも通り」失敗しているかもしれないが、そこから立て直しての2戦目以降は無類の強さを発揮しがちである。直近のベルギー・ツアーでもきっちり強さを見せつけたポケット・ロケットが、早速の今年のグランツール「3勝目」を果たすことができるか。
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第5ステージ シャンジェ〜ラヴァル(エスパス・マイエンヌ) 27.2㎞(個人TT)
ブルターニュを離れ、プロトンはお隣のペイ・ド・ラ・ロワール地域圏のマイエンヌに。20年ぶりにツールが訪れることになるラヴァルの周辺で、近年では珍しい中長距離の平坦基調タイムトライアルが開催される。
小さな起伏がありながらも全体的にはフラット。大きく時計回りをするコース全体も平均的なストレートとコーナーの数でとりわけテクニカルな箇所も多くはない。
基本的には純粋なTTスペシャリスト向け。オールラウンダーにとっては、ライバルに明確な差をつけるチャンスとなるだろう。逆にTTをそこまで得意としないピュアクライマーたちはここでどれだけ時を犠牲にせず済むか。
なお、今大会の最大の総合優勝候補であるポガチャル、ログリッチ、イネオスの面々(トーマス、ポート、カラパス、ゲイガンハート)はいずれもTTスペシャリスト顔負けのTT能力を持ち合わせているため、大勢に影響はないとの見方もできる。
ステージ優勝争いでは元世界王者のローハン・デニスが最右翼。ただなかなか安定しない&アシストとしての任務も持ち合わせた彼が必ずしも優勝するとは限らない。ほかの候補としては、ツール・ド・スイスでも絶好調だったシュテファン・キュングやシュテファン・ビッセガー、カスパー・アスグリーン、あるいはベルギー王者のワウト・ファンアールトや、ポガチャルのアシストとして参戦しているブランドン・マクナルティなど。
オールラウンダーvsTTスペシャリストの、プライドを賭けた戦いが勃発する。
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第6ステージ トゥール〜シャトールー 160.6㎞(平坦)
第4ステージに引き続き、山岳ポイントのほとんどないオールフラットな集団スプリント向けステージ。
ブルターニュからアルプスに向かう移動ステージで、シャトールーは2011年以来のツール登場。当時も集団スプリントで争われ、そのときはマーク・カヴェンディッシュが勝利した。まだ彼がHTCハイロードに所属していた時代で、シャンゼリゼ含むステージ5勝を稼ぎ出した年である。
その後ツールで「4勝」以上するスプリンターはアンドレ・グライペルやマルセル・キッテルなどがいたものの、近年は群雄割拠というべきか、なかなか大量勝利する選手が現れない。
今年はそこから抜け出す選手が現れるのか。
また、自転車ロードレースシミュレーションゲーム「Pro Cycling Manager」ではステージ後半に横風区間が用意されている。
現実のレースでももしかしたら横風による混乱が巻き起こるかも?
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第7ステージ ビエルゾン~ル・クルーゾ 249.1km(丘陵)
アルプス突入前日に、2000年以降のツール・ド・フランスで最も長距離のステージが用意された。
さらに、フィニッシュ前18.1㎞地点に、ツール初登場の登り「シニャル・ドゥション」が待ち構える。その山頂に今大会2回目のボーナスタイムポイントが用意されたその登りのプロフィールは、登坂距離5.7㎞・平均勾配5.7%。
だが、一見平凡に思えるそのプロフィールはとんだ詐欺。
実際にはラスト2㎞が真っ黒な色で染まった超激坂なのである。
公式サイトのコメントでも「総合争いに影響を及ぼすかも」と書かれているステージでもあり、アルプス突入前とはいえ全く油断できない。
なお、シニャル・ドゥションを越えた先にも、フィニッシュ前8㎞地点に4級山岳が用意されている。
シニャル・ドゥションと比べればずっと大人しい登りではあるが、いずれにせよこの日はスプリンターの出番はないだろう。
翌日から厳しい山岳2連戦が待ち構えていることもあり、もしかしたらこの日が、今大会最初の逃げ切りステージとなるかもしれない。
あるいはシニャル・ドゥションからのアタックでの短距離逃げ切り。
そうなるとジュリアン・アラフィリップやマチュー・ファンデルプール、マルク・ヒルシなんかが好きそうなパターンである。
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第8ステージ オヨナ〜ル・グラン・ボルナン 150.8km(山岳)
ジュラ山脈の麓から始まるステージ前半はまだまだ平穏さに溢れている。問題はラスト50㎞を切ってから。
残り28.7㎞地点の1級山岳ロム峠、残り14.7㎞地点のラ・コロンビエール峠、そして長い下りからのル・グラン・ボルナンフィニッシュは2018年のツール・ド・フランス第10ステージを踏襲している。
あのときは逃げ切りからのジュリアン・アラフィリップ勝利。この年、彼はステージ2勝と山岳賞を手に入れ、「覚醒」。翌年はマイヨ・ジョーヌを14日間着るという、偉業を達成した。
今年もまた逃げ切りが決まるのか。そしてそれは新たな伝説を生むのか。
総合優勝候補たちはまだ、動かないかもしれない。何しろ翌日に本当の勝負ステージが待ち構えているのだから。
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第9ステージ クルーズ〜ティニュ 144.9km(山岳)
ツール・ド・フランス2021の第1週を締め括るのは、今大会最初の超級山岳と今大会最初の山頂フィニッシュで彩られた山岳ステージ。
アルプス山脈の奥深く、標高1,700mを超える超級山岳コル・デュ・プレ(登坂距離12.6㎞・平均勾配7.7%)から標高1,900mを超える2級山岳ロズラン峠までは、どちらかというと山岳賞を狙う選手たちによる争いが繰り広げられることだろう。2018年にこのロズラン峠を先頭で通過したワレン・バルギルも、2020年に先頭で通過したマルク・ヒルシも、同じく山岳賞を争うプレイヤーであった。
そして、長い下りを経た後に現れる、今大会最初の山頂フィニッシュ、標高2,100m超えの1級山岳「ティニュ」(登坂距離21㎞・平均勾配5.6%)は、2019年のツール・ド・フランス第19ステージに登場しーーそして、突然の悪天候によってプロトンを迎え入れることのできなかった幻の山頂フィニッシュである。
いや、正確には山頂フィニッシュではない。
1級山岳の山頂から約2㎞の平坦区間が用意されている。
「今大会勝てない選手たち」が淘汰される登りの果てに、生き残った数名のトップクライマーたちによるスプリント争いが繰り広げられるかもしれない。
あるいは、逃げ切った選手による、凱旋とも言うべき2㎞になるか。
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