ツール・ド・フランスにおいては5年ぶりの登場となるモン・ヴァントゥ、そしてアンドラが登場する今年のツール・ド・フランスの第2週。
しかもモン・ヴァントゥはその頂上まで登るという意味では2013年以来8年ぶりとなるし、しかも今年はこのモン・ヴァントゥを2回登る。
アンドラも標高2,400m超の超々標高バトルが繰り広げられる。
早くも佳境に突入する今年のツール・ド・フランス。
昨年はポガチャルの躍進とエガン・ベルナルのまさかの失速を見ることとなったこの運命の第2週で、今年は果たしてどんなドラマが描かれるのか。
目次
- 第10ステージ アルベールヴィル〜ヴァランス 190.7㎞(平坦)
- 第11ステージ ソルグ~マロセーヌ 198.9km(山岳)
- 第12ステージ サン・ポール・トロワ・シャトー〜ニーム 159.4㎞(平坦)
- 第13ステージ ニーム~カルカソンヌ 219.9㎞(平坦)
- 第14ステージ カルカソンヌ〜キヨン 183.7㎞(丘陵)
- 第15ステージ セレ~アンドラ・ラ・ベリャ 191.3km(山岳)
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第10ステージ アルベールヴィル〜ヴァランス 190.7㎞(平坦)
ほぼ毎年ツール・ド・フランスもしくはクリテリウム・ドゥ・ドーフィネのプロトンが訪れるアルプスの麓の町アルベールヴィル。
例年山岳ステージに組み込まれることの多いこの町だが、今年はローヌとイゼールの2つの川で形成される谷間を抜け、ヴァランスへと向かう平坦移動ステージとなった。
フィニッシュ地点のヴァランスは2015年にアンドレ・グライペルを、2018年にペテル・サガンを勝利に導いた地。ベテランの域に達しつつあるこの2人も、今年は少し復活傾向。
とくにペテル・サガンはマリア・チクラミーノに次ぐ同年2枚のポイント賞獲得に意欲を燃やしているはずで、その活躍にはぜひ期待したいところ。
昨年からずっと、小さな登りでも平気でピュアスプリンターたちを篩い落とすようなプッシュを続けるボーラ・ハンスグローエが、もしかしたらこの日のラスト35㎞〜30㎞地点の登りで動いてくるかもしれない。
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第11ステージ ソルグ~マロセーヌ 198.9km(山岳)
今年のツール・ド・フランスの目玉とも言うべきステージ。
過去数多くの名勝負が繰り広げられてきた「死の山」モン・ヴァントゥが5年ぶりに登場。しかも、「2回」登り、最後は山頂フィニッシュではなく、そこからの長い下りを経てのフィニッシュだ。
1つ目の登りは普段のモン・ヴァントゥ登坂とは逆方向のソーからの登り。登坂距離22㎞・平均勾配5.1%と、比較的緩やかな登りが続く。
2つ目はベドアンから登る、モン・ヴァントゥの「本来の姿」。
登坂距離15.7㎞・平均勾配8.8%の、非常に厳しい登りである。
そしてこのベドアンからの登りの山頂にはボーナスタイムポイント。
序盤はそこまで厳しくないシンプルなレイアウトも合わさって、この日は逃げ切りと言うよりは、総合優勝を狙うエースクライマーたちが殴り合う展開になりそうだ。
ツール・ド・フランスで前回モン・ヴァントゥが登場した2016年はトーマス・デヘントが勝利。ただしこのときは強風の影響で登りの中腹(シャレー・レイナード)までしか使われなかった。
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ直後に開催された今年の「モン・ヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジ」ではこのステージ同様にモン・ヴァントゥを2回登らせ、このとき勝ったのはモビスターのミゲルアンヘル・ロペス。3位にはチームメートのエンリク・マスが入った。
昨年もクイーンステージで見事優勝したロペス。今年はシーズン入りが遅れ序盤苦しんでいたものの、しっかりとコンディションを整えつつある様子。
新チームでの活躍も、十分に期待ができそうだ。
ただし、この日はあくまでも下りフィニッシュだということを忘れてはいけない。
山頂でリードを保てたとしても、わずか数秒〜十数秒程度であれば、下りがよほど上手くないと追いつかれてしまう。
下りが得意で単独で抜け出せればリードを拡大し、追走に入れば先頭に追いつけそうな選手としてはニバリ、バルデ、アラフィリップ、ログリッチなどが思いつく。
もちろんポガチャルやトーマス、ゲイガンハートなども、下りが苦手というわけではないだろう。
あとはリッチー・ポートが、少し大丈夫か不安にはなる・・・。
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第12ステージ サン・ポール・トロワ・シャトー〜ニーム 159.4㎞(平坦)
モン・ヴァントゥでの激戦を終え、南仏の観光都市ニームへと向かう典型的な移動ステージ。
ただし、「南仏の移動ステージ」は常に横風との戦い。油断はできない。
横風のことを考えなければ、ニームはスプリンターたちのための街でもある。
2年前の第16ステージではカレブ・ユアンがエリア・ヴィヴィアーニとディラン・フルーネウェーヘンを打ち倒してその年の2勝目を飾る。
今年は3大グランツール全てでの勝利を目指し、ジロ・デ・イタリアでは早速2勝を重ねている絶好調のユアンが、この日までにどれだけの勝利を重ねているのか。
また、2014年にはアレクサンダー・クリストフがこの地で勝利しているが、そのときは逃げていたジャック・バウアーがわずか100mを残して集団に捕まるという悲劇が演じられていた。
今年もそんなドラマが描かれるのか。ジロではさまざまな驚くべき勝利が連発していただけに、ツールでも良い波乱を楽しみにしたい。
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第13ステージ ニーム~カルカソンヌ 219.9㎞(平坦)
カテゴリは平坦である。そして山岳ポイントも1つしかない。それは集団スプリントの約束されたステージのようにも見える。
しかし、 公式サイトでもプリュドム氏が述べているように、カルカソンヌと集団スプリントとは相性が悪い。
2018年は中央山塊の色を残してはいたもののマグナス・コルトによる逃げ切り勝利をもたらし、その前のカルカソンヌフィニッシュは2006年まで遡るが、そのときはヤロスラフ・ポポビッチによる逃げ切り勝利であった。
今回も、カテゴリは平坦。山岳ポイントも1つだけ。
しかしカテゴリのない小さな起伏がフィニッシュ前20㎞近くまで残されており、逃げ屋やアタッカーたちによる勇気ある攻撃が実を結ぶ可能性は十分にありそうだ。
そしてまた南仏プロヴァンスの地を横切るという事実が、横風とのドラマチックな戦いを演出するかもしれない。
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第14ステージ カルカソンヌ〜キヨン 183.7㎞(丘陵)
第2週最終日のアンドラ決戦を前にして、この日は逃げ屋に最適のステージとなるだろう。山岳ポイントは合計19ポイントと、そこまでおいしくはないけれど・・・。
逆に言えば本格的なクライマーでなくても勝利の可能性があるということで、たとえばマルク・ヒルシやアレクセイ・ルツェンコ&アレックス・アランブル、イェレ・ワライスやヴィクトール・カンペナールツ、ボブ・ユンゲルス&オレリアン・パレパントル、ニルス・ポリッツ、フィリップ・ジルベール、マグナス・コルト、ロイック・ヴリーヘン、クリスツ・ニーランズ、セーアン・クラーウアナスンあたりの名前がパッと思いつく。ポイントは多少の起伏はこなせる登坂力(丘陵系クラシックへの適性)と独走力あるいはスプリント力だ。
その意味で個人的に期待したいのは昨年ツールでナンス・ピータースを勝たせ、今年のジロではアンドレア・ヴェンドラーメを勝たせたAG2Rシトロエン。総合が狙えない以上(そしてスプリントも期待できない以上)、どこかで逃げ切りステージ勝利を狙わないといけない。
最後まで残ってのスプリント力ならファンアーヴェルマートやオリバー・ナーセンに期待できる。オレリアン・パレパントルはシーズン序盤のフランスのパンチャー向けレースでスプリンターを相手取って勝利している。ブノワ・コヌフロワも直近のレースで勝っていたりと調子は良い。
あとは独走力でリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ覇者ボブ・ユンゲルス・・・ここ最近ずっといいところのない彼が、復活の勝利を飾る姿も、見てみたい。
(と、思ったら、ユンゲルス、ツール欠場するらしいね・・・)
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第15ステージ セレ~アンドラ・ラ・ベリャ 191.3km(山岳)
オクシタニー地域圏のツール初登場の町セレから、モン・ヴァントゥ同様に2016年以来の登場となるピレネー山中の小国アンドラへ。
ひたすら山、山、山を特徴とするアンドラらしい、標高2,000m前後の山々が連なる。このステージを今大会のクイーンステージ(最難関ステージ)とみなす向きもあるらしい。
とくに残り44.6㎞地点に位置するフランス-アンドラ国境を通過する1級山岳ポート・デンバリラは、海抜2,408mで今大会の最標高地点。アンリ・デグランジュ賞が設定されている。
そしてフィニッシュ前14.8㎞地点には、平均勾配8.5%の厳しい1級山岳ベイクサリス峠が待ち構えている。
逃げ切りもありうるが、総合勢の中でここで積極的に仕掛けようとする者が現れれば、簡単に逃げも捕まえられてしまうことだろう。
逃げ切れるとしてもそれが許されるのは本格的なクライマーだけであり、ごく少数に限られるだろう。
最近で言えばクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで鮮烈なる連勝を遂げたマーク・パドゥンや、あるいは元々総合を狙ってこのツールに乗り込んできたにも関わらず、ここまでの間にいろんな理由で総合争いから脱落してしまった選手たちなど。
白熱すること間違いなしのステージではあるが、気になるのは天気。ピレネーは天気が悪いときが多いイメージを持っており、前回2016年のアンドラステージも大雨の中トム・デュムランが勝利した。
特に今回はデンバリラからの下りや、最後のベイクサリスからもフィニッシュのアンドラ首都までも下り。
雨の下りが勝負を面白くしてくれる可能性もあるが、それ以上に悲劇が起きないことを願う。
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