りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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ツール・ド・フランス2021 総合優勝候補プレビュー

 

いよいよ今週末開幕するツール・ド・フランス2021。

例年以上に「オールラウンダー向き」に仕上がった今年のコースで、注目すべき4人の総合優勝候補と2つの総合優勝候補「チーム」を取り上げる。

 

いかにして彼らが今シーズンここまで戦ってきたのか。そして、いかなる理由で注目すべき存在であるのか、を詳細に解説。

少しでもツールを楽しめる助けになれば幸いだ。 

 

※身長、体重はProCyclingStatsを参照しております。

※年齢はすべて2021/12/31時点のものとなります。

※出場日数とは、ツール初日までに今期出場したレースの日数のことを表しています。

 

目次

 

全21ステージのコースプレビューはこちらから

第1週(第1~第9ステージ)

第2週(第10~第15ステージ)

第3週(第16~第21ステージ)

 

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タデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)

スロベニア、23歳、176㎝、66㎏、出場日数29日

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2018年ツール・ド・ラヴニール覇者。その才能は誰もが認め、プロデビュー初年度となった2019年にいきなりのツアー・オブ・カリフォルニアを総合優勝したときは、エガン・ベルナルに匹敵する才能であると多くの人が感じていた。

しかし同年のブエルタ・ア・エスパーニャで区間3勝と総合3位を成し遂げたとき、これはもしかしたらベルナルをも凌駕しうるのではないか?と思い始める。

そしてその年のツール・ド・フランス制覇。それも、あまりにも鮮烈な逆転勝利によって。

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「ディフェンディングチャンピオン」となって迎える、今年のツール。

もちろんエガン・ベルナルのように、その地位を継続し続けることは決して簡単ではないはずだ。

だが、彼がそれでもやはり「規格外」であることを感じさせたのが、今年のティレーノ~アドリアティコであった。

すでにUAEツアー総合優勝、ストラーデビアンケ7位と絶好調のシーズンを過ごしてきていたポガチャルが、クイーンステージとなる第4ステージで当たり前のように優勝した翌日に迎えた、第5ステージ。

この日、残り52㎞地点でマチュー・ファンデルプールが集団からアタックし、独走を開始した。

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奇しくも直後にポガチャルがメカトラ。総合リーダーのアクシデントにメイン集団のライバルたちもペースを上げるわけにはいかず、ファンデルプールは残り20㎞を切ってメイン集団に対して3分20秒ものタイム差をつけるという、必勝態勢を築き上げていく。

このままファンデルプールの独走勝利。

それ以外のシナリオは、考えられないような状況であった。

 

だが、残り18㎞。

それまでメイン集団はポガチャルのアシストであるダヴィデ・フォルモロが献身的に牽引していたが、そこからポガチャルが、一気にアタックを仕掛けたのである。

総合2位のワウト・ファンアールトがすぐさまこれを引き戻そうと反応する。

しかし、他のライバルはすべて突き放したワウト・ファンアールトすらも、引き続き加速していくポガチャルにしがみつき続けることは不可能であった。

 

あっという間にポガチャルは羽ばたき、単独で先頭のファンデルプールとの差を詰め始めていった。

 

残り20㎞時点で3分20秒。そのタイム差を、たった一人で埋めてしまうなど、常識的に考えればありえないことであった。しかも先頭はあのマチュー・ファンデルプールである。

残り10㎞地点でタイム差2分14秒。かなりいいペースで詰めてきているが、それでもまだ10㎞も残っていた。

ファンアールトも後続からポガチャルを追走し続け、一度はそのタイム差を30秒まで縮める。

しかしポガチャルはここから、さらに加速した。

 

残り4㎞。ポガチャルとファンデルプールとのタイム差が1分10秒に。さきほどは10㎞で1分しか縮まらなかったタイム差が、今度は5㎞でさらに1分縮めたこととなる。

ファンデルプールの足元がおぼつかなくなるなど、限界が近づいてきていることは確かだが、それにしてもポガチャルの加速がいつまでも終わらないその様子こそ異様であった。

 

残り3㎞。ポガチャルとファンデルプールとのタイム差が53秒差に。

残り1.2㎞。タイム差が――20秒に。

16秒・・・15秒・・・13秒・・・そして、10秒差。

ポガチャルの視界に、ファンデルプールの背中が映った。

 

 

さすがに最後は追いつくことはできず、ファンデルプールがなんとか先頭をキープしたままフィニッシュラインに入り込むことはできた。

しかしそこにガッツポーズはなかった。

力なく項垂れ、ふらふらのままフィニッシュし、その後は倒れこんでしまったファンデルプール。

これは彼の勝利ではあったが、同時にタデイ・ポガチャルという男の底知れなさを感じさせるシーンでもあった。

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昨年ツール第20ステージ個人TTで見せた、プリモシュ・ログリッチとの57秒差をひっくり返しての逆転総合優勝という「不可能を可能にした」男が、改めて不可能を可能にするような走りを見せたこのティレーノ~アドリアティコ第5ステージ。

このステージの存在1つ獲っただけでも、この23歳の青年が早くもツール・ド・フランス2勝目を飾ってしまったとしても、何ら不思議ではないと感じている。

 

 

また、昨年のツールでは終始課題であった「チーム力」についても、今年は多少改善されてきているように思う。

まずは、イツリア・バスクカントリーではポガチャルとのダブルエースに近い走りすら見せたブランドン・マクナルティ。

 

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元々はジロ出場予定だった彼が予定を変更しツールに出場することとなったのは、このバスクの走りを受けてポガチャルのアシストとして全力を尽くすことが求められたからであることは明白だ。

また、今年同じくポガチャルのアシストのためにボーラ・ハンスグローエから移籍してきたラファウ・マイカ。シーズン初頭のUAEツアーやティレーノ~アドリアティコでは正直全く存在感を示すことのできなかった(むしろフォルモロの方がずっと素晴らしいアシストをしていた)彼だったが、直近のツアー・オブ・スロベニアではしっかりとポガチャルを支え、自らも総合4位に。

元々ボーラでもグランツール総合において最大の実績を出していた彼だけに、その本来の力を取り戻し、ポガチャルのエースアシストになってくれることを期待したい。

 

単独の実力であればすでに世界最強であることは証明しているタデイ・ポガチャル。

そこにチーム力が加われば、あまりにも万全。

23歳にしてツール・ド・フランス2連覇。その栄誉を、彼は掴み取ることができるか。

 

 

 

プリモシュ・ログリッチ(ユンボ・ヴィスマ)

スロベニア、32歳、177㎝、65㎏、出場日数17日

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27歳でプロデビューを果たした2016年当時はまだTTスペシャリストといった印象だった。

翌年からオールラウンダーとしての才能を見せ始め、2018年にはツール・ド・フランス総合4位。

そして2019年にはブエルタ・ア・エスパーニャを制し、あっという間にツール総合優勝候補の最右翼となった。

そして2020年のツール・ド・フランス。前年覇者エガン・ベルナルの早期脱落によって、その勝利は揺るぎないもののように思えていた。

同国の後輩にして最大のライバルの1人、タデイ・ポガチャルが57秒差で迫ってきてはいたものの、本来であれば逆転されるような状況ではなかったはずだ。

事実、ログリッチは決してこの最終TTで「崩れた」わけではなかった。

ただただ、ポガチャルという男があまりにも規格外の走りをしてみせたのである。

 

だが、ログリッチという男の強さは、あまりにも衝撃的な敗北を喫しながらも、すぐに立ち上がり結果を残すという精神力にこそある。

ツールの敗北の直後にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ、そしてブエルタ・ア・エスパーニャにて見事に勝利。

今年のパリ〜ニースでも区間2勝しながら余裕の総合優勝、というところまであと一歩に迫りつつ、最終日のまさかの2回の落車によって大失速という悔しい敗北を喫したが、直後のイツリア・バスクカントリーではすぐにその力を発揮し、あのツール後初の直接対決となったポガチャルをここで打ち破った。

それも、UAEのブランドン・マクナルティに総合でリードされる中迎えた最終日で、早めにアシストをアタックさせてUAEのアシスト陣の足を疲弊させた上で、下りでの果敢なアタックによってポガチャルとマクナルティを置き去りにするという形で掴み取った、逆転勝利であった。

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その勝利の背景には、ここ1〜2年で急成長を遂げつつある若きデンマーク人ヨナス・ヴィンゲゴー。ログリッチの右腕としてはセップ・クスが存在感を示していたものの、彼に匹敵する登坂力とTT能力を兼ね揃えたより安定感のあるステージレーサーたる彼は、単なる山岳アシストを超えた「ダブルエース」としてこのバスクでは機能した。

ここにもちろんクス、そしてクライスヴァイクやワウト・ファンアールトが加わったユンボ・ヴィスマは、チーム総合力においては確実にUAEチーム・エミレーツを凌ぐ。

 

そしてエースのログリッチはアルデンヌ・クラシック以降、あえて一切のレースに出場せず高地トレーニングを経てツールに向かう。

その戦略は成功するのか。

「挑戦者」ログリッチの、大いなる戦いが始まる。

 

 

イネオス・グレナディアーズ

ゲラント・トーマス、リッチー・ポート、リチャル・カラパス、テイオ・ゲイガンハート

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2018年ツール・ド・フランス覇者ゲラント・トーマスは、決してツールの総合優勝候補筆頭となることはないだろう。その登坂力も、TT能力も、トラック世界王者の経歴に裏打ちされたその加速力も、世界トップクラスのものであることは間違いないが、しかし頂点に立つものでは決してない。いずれの能力も、ポガチャルやログリッチには、正直、劣っている。

しかし、そんなトーマスの最大の武器は、2010年代のツール・ド・フランスを支配し続けてきたチームにこそある。

昨年こそそのツールでの勝利を逃したものの、ジロを制し、ブエルタで総合2位に君臨し、今年は昨年その存在感をあまり示さずにいた山岳トレイン力を復活させ、ジロ・デ・イタリアではエガン・ベルナルによる完全勝利を成し遂げた。

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そしてツールには4人のエースを連れていく。

2018年ツール覇者ゲラント・トーマス。2019年ジロ・デ・イタリア覇者リチャル・カラパス。2020年ジロ・デ・イタリア覇者テイオ・ゲイガンハート。そして2020年ツール・ド・フランス総合3位リッチー・ポート。

とくにトーマスとポートは今年、すでにいくつかのステージレースでタッグを組み、その都度、「共に」成績を残している。

たとえば3月のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ。ここでは同じイネオスのアダム・イェーツに続き、ポートが総合2位、トーマスが総合3位と、表彰台を独占している。

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5月のツール・ド・ロマンディではトーマスが総合優勝し、総合2位にはポート。

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そしてつい先日のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは、ポートが総合優勝し、総合3位にゲラント・トーマスが入り込んだ。

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この2人の強みは、真の意味で「ダブルエース」を体現していることだ。どちらがエースであると明言することは常になく、そのときの瞬間にアタックできる方がそのままリードを奪い、総合優勝を成し遂げる。

それは今年の2月のツール・ド・ラ・プロヴァンスでベルナルとソーサがやってのけたことでもあり、また2019年にベルナルがツールを制したときに、トーマスと彼が成し遂げたことでもある。

常にそのときの状況次第で柔軟にエースをスイッチできるシステム。それはティレーノ〜アドリアティコではうまく噛み合わなかったり、あくまでも彼らが皆調子が良くなければもちろんうまくいかない戦略ではあるものの、いざというときに、絶対的な力を持つポガチャルやログリッチに対抗しうる大きな武器となることは間違いない。

 

そこにさらに、ツール・ド・スイス総合優勝で波に乗るリチャル・カラパスが連なる。

昨年のブエルタでログリッチを単身で追い詰めたこの男は、2019年のジロではそれこそまさにミケル・ランダとのダブルエース体制を利用して見事栄光を掴んだ実績を持つ。

そのときのカラパスはまだ、その実力を見誤られていたがゆえに実現した勝利でもあったが、同じく絶好調なトーマスやポート、そしてゲイガンハートらと共に乗り込むことで、再び同じように自由な走りを期待できる可能性もある。

 

ダブルエース、トリプルエースといったものは、机上の空論、派手な割には結果が伴わない砂上の楼閣という見方もできる。

しかし今年のイネオスのツール体制はその可能性を史上最も持ち合わせている瞬間であり、かつ「挑戦者」という立場、トップ2に対する第3軸という立場が、その可能性をさらに高めている。

 

イネオスの誰が勝つかは分からない。

しかし誰かが、再びこのチームにツールの頂点をもたらす可能性は高い。

それこそがチームの勝利。

そのときこそ、このチームの新たな時代が花開くことだろう。

 

 

モビスター・チーム

ミゲルアンヘル・ロペス、エンリク・マス、アレハンドロ・バルベルデ、マルク・ソレル

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イネオス同様、クアドラプルエース体制を築くモビスター・チーム。しかしここは、同様の体制を何年も続けながらも、イマイチ上手くいっていないという評価が固定化されている。

結局は、エース級を何枚か連れていきながらも、その調子が安定しないことが大きな原因。それよりはむしろ、明確にエースを決めた方が逆にうまくいくのではないかとすら思ってしまう。

その中で、今回このチームで最も期待したいのがミゲルアンヘル・ロペス。今年からモビスター入りした「新参」であり、諸々の理由でシーズンインが大きく遅れ、とくにその緒戦となる5月初頭のツール・ド・ロマンディとマヨルカ・チャレンジでは散々な状況であった。

しかしその後のブエルタ・ア・アンダルシアではクイーンステージでしっかりと勝利し、そのまま総合優勝。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも山岳ではリッチー・ポートに匹敵する登坂力を見せながらも、苦手なTTでタイムを落とし総合6位に終わってしまった。

しかしその後のモンヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジでは見事優勝。ツールに向けて、登坂力の観点でかなり調子を整えつつあることが明白だ。

それだけに、オールラウンダー向けの今回のツールは彼にとってはかなり苦しい。

昨年もクイーンステージで見事勝利し一度は総合3位にまで浮上しながらも、最後のTTで大失速をしてしまっている。

そのときはそれでもまだ苦手ではないはずの山岳TTでそれだったので、平坦で合計60㎞弱もある今大会は・・・。

 

その意味で、エンリク・マスの動きにも注目したい。

彼も、2019年の驚くべきブエルタ総合2位以来、高まりきった期待に比して十分とは言い切れない状況が続いている。

今年はボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナでステージ優勝しながらもTTでフィニッシュ直前のパンクに見舞われて総合優勝を逃すという悔しい思いをしたり、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも総合11位と微妙・・・

モンヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジでの3位は悪くなく、ツールに向けてまったく調子が良くないわけではないことは表している。ただこれも、ロペスを先行して自らはオスカル・ロドリゲスの番手にツキイチでついていたにもかかわらず、最後にこれに突き放されてしまっての3位ということで、あまり見栄えは良くない。

 

ただ、比較的TTも苦手ではないマスなので、本来の調子を取り戻せばロペス以上に今年のツール向きではある。

このロペスとマスが見事な「ダブルエース」を見せてくれれば、このチームにも十分可能性がある。そこにソレルやバルベルデが脇を固める存在としていてくれれば、これほど心強い存在はいないのだから。

 

噛み合わない姿はもうやめにしたい。本来であれば最強クラスの布陣。モビスターの逆襲を見てみたい。

 

 

ダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)

フランス、25歳、173㎝、53㎏、出場日数31日

純粋な登坂力で言えば、今や世界最強クラスである。

イツリア・バスクカントリーでも、ポガチャルやログリッチのバチバチの争いの中に、ミケル・ランダやゲラント・トーマスと並んで、常にくっついていた。

最終日ではポガチャルとの差を決定的なものとするために猛烈な勢いでライバルたちを引き千切っていったログリッチに唯一食らいつき、最後は勝利を掴んだ。

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リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも最後の5名に入り込み3位。

まるでティボー・ピノの魂が乗り移ったかのような強さとマインドを持ち合わせている男だ。

 

しかしTTは苦手。そしてチームはあくまでもアルノー・デマール最優先のため、マデュアスや昨年ブエルタの盟友アルミライルは優秀なアシストではあるものの、基本は1人で戦わざるを得ない場面が多いだろう。

そしてTTが苦手。

総合優勝は無理だとは思う。表彰台も厳しい気がする。

それでも今回このツールで総合TOP5に入り込めれば、彼にとって重要な一歩を踏める気がするので、応援したい。

TTが苦手なので、山でどれだけそのビハインドを埋められるか・・・。

 

 

ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ)

オランダ、30歳、185㎝、65㎏、出場日数26日

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オランダの未来を担う若手、という期待をもって登場した彼は、現ユンボ・ヴィスマの前身たるラボバンク~ベルキン・プロサイクリングチーム~ロットNLユンボを経て同国のエースたるトム・デュムランを支えるべく2017年にチーム・サンウェブに移籍。

そのデュムランが総合優勝したジロでは残念ながら早期リタイアしてしまったものの、デュムラン不在の同年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合4位。終盤まで総合3位を保ちつつ最後に逆転されてしまったわけだが、彼にとっては一つの達成となるリザルトだった。

 

だが、ある意味ここがピークであった。

2019年はデュムランが怪我で苦しみ、ケルデルマンにチャンスが回ってきた年ではあったが、彼自身もうまく噛み合わず。

数多くいる、実績と実力はあるがグランツール表彰台という壁を越えられないままに終わってしまう選手の1人ーーそんな風になるのではないかと、予感していた。

 

だが、昨年のジロは、そんな懸念を吹き飛ばす走りを見せてくれた。

新型コロナウイルスが猛威を振るい、有力選手たちの多くがリタイアする中ではあったものの、一時はマリア・ローザを着用しつつ、最終的にも総合3位。

グランツール表彰台の壁をついにぶち破った。

 

もちろん、肝心なところで力を失い落ちていく姿も実にケルデルマンらしいものではあったものの、今年もボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで総合5位、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは総合4位と、「3強」に次ぐ安定した実力を発揮している。

そしてTT能力が比較的高く、弱点にならないことも今年のツールにおいては強みである。

総合表彰台というのは難しいかもしれないが、ツールのTOP5入りを果たすことができれば、この男の未来への可能性はまだ開けるだろう。

 

もちろん、2年前のツール総合4位エマヌエル・ブッフマンも、今年のジロでも落車でリタイアしたものの調子はかなり良かった。

同じくTTを苦手としていない彼のコンディション次第では、それこそ昨年のジロのヒンドレーとの関係のように、主導権争いは起きてしまうかもしれない。逆にそれがダブルエースとしてうまく機能すればかなり強い2人だ。2018年のログリッチ&クライスヴァイクのような走りができれば完璧である。

パトリック・コンラッドも頼れるアシストである。急成長中のイーデ・スヘリンフもどちらかというとパンチャータイプだが、突然登れるようになってもおかしくはない。

ペテル・サガンによるマイヨ・ヴェール奪還もこのチームの目標の1つではあるが、わざわざパスカル・アッカーマンを外してでも狙うのは、この山岳ダブルエースによる、総合TOP5入りである。

 

その中で、ケルデルマンの名が響くことに期待したい。

ウィルコ・ケルデルマンは存在します。

  

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