いよいよ開幕する今年のツール・ド・フランス。
その全23チーム計184名のスタートリストと、簡単なプレビューを掲載していく。
オリンピックの兼ね合いもあり、必ずしも「最高」のメンバーではない部分もあるが、それでもポガチャル、ログリッチ、エースばかりのイネオスや、ユアン、デマール、そしてマチュー・ファンデルプールの初ツールなど、注目のメンバーは盛沢山。
果たして、どんなドラマが描かれるのか。
※年齢はすべて2020/12/31時点のものとなります。
※各国ロードチャンピオンについては表中の国名を太字にしております。
目次
- 1~.UAEチーム・エミレーツ(UAD)
- 11~.チーム・ユンボ・ヴィスマ(TJV)
- 21~.イネオス・グレナディアーズ(IGD)
- 31~.イスラエル・スタートアップネーション(ISN)
- 41~.トレック・セガフレード(TFS)
- 51~.ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)
- 61~.モビスター・チーム(MOV)
- 71~.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)
- 81~.グルパマFDJ(GFC)
- 91~.コフィディス・ソルシオンクレディ(COF)
- 101~.アルペシン・フェニックス(AFC)
- 111~.EFエデュケーション・NIPPO(EFN)
- 121~.AG2Rシトロエン・チーム(ACT)
- 131~.チーム・アルケア・サムシック(ARK)
- 141~.チームDSM(DSM)
- 151~.ロット・スーダル(LTS)
- 161~.チーム・バーレーン・ヴィクトリアス(TBV)
- 171~.チーム・バイクエクスチェンジ(BEX)
- 181~.アスタナ・プレミアテック(APT)
- 191~.チーム・キュベカ・ネクストハッシュ(TQA)
- 201~.チーム・トタルエナジーズ(TDE)
- 211~.アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ(IWG)
- 221~.B&Bホテルス・p/b KTM(BBK)
全21ステージのコースプレビューはこちらから
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関連リンク
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1~.UAEチーム・エミレーツ(UAD)
総合★★★ スプリント★ 逃げ★
昨年、戦後最年少でツール・ド・フランスの王者に輝いたタデイ・ポガチャルが、今年2連覇を狙う。達成されれば、2016-2017のクリス・フルーム以来の連覇達成となる。新たな「ポガチャル時代」の創設なるか。
そのための体制は万全だ。兼ねてよりチーム力の欠如が問題視されていたこのチームだが、今年はアレクサンダー・クリストフを欠場させてまで、元々ジロ・デ・イタリアのエース候補だったブランドン・マクナルティを引っ張ってきてまで、完全なるポガチャル体制を創り上げている。
ボーラ・ハンスグローエから獲得したラファウ・マイカは、シーズン初頭こそ存在感を見せられなかったが、直近のツール・ド・スロベニアでは悪くない走り。また、逆にUAEツアーやティレーノ〜アドリアティコなど、シーズン序盤の登りの終盤までポガチャルを助けていたダヴィデ・フォルモロもしっかりロースター入りしている。
もちろん、イツリア・バスクカントリーでポガチャルと「ダブルエース」体制を構築したマクナルティは最も期待すべきアシストだし、マルク・ヒルシもそのバスクでしっかりとポガチャルを助けており、単にステージ優勝要員と考えるべきではないだろう。
あとは、そのバスクでうまく回らなかったところをどう改善していけるか。未だイネオスやユンボとは水を開けられているように思えるチーム力の差をどう埋めていくかに注目だ。
ポガチャルの個としての力がいかに優れ、超越しているかは下記のリンクも参照のこと。
11~.チーム・ユンボ・ヴィスマ(TJV)
総合★★★ スプリント★★★ 逃げ★
昨年は最後の最後でまさかの逆転を許してしまった悲運の英雄ログリッチ。しかし彼の最大の強みは、そこからすぐに立て直し、結果を出していく精神力の強さ。
事実昨年は直後にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュとブエルタを制し、今年もパリ〜ニースで再び不運に見舞われながらも、イツリア・バスクカントリーでポガチャルに対するリベンジを果たした。
そして今年は前哨戦レースのいずれにも出場せず、高地トレーニングだけでツール入りを果たす。その戦略は吉と出るか? 今度は彼が最後までどうなるかわからない、不気味な存在になりそうだ。
チーム力は今回出場チームの中で随一。バスクではダブルエースの役割を果たした急成長中のヨナス・ヴィンゲゴーに、登坂力ではときにログリッチ以上のものを見せるセップ・クス、さらには自らスプリントやTTで勝利を狙える素質を持ちながら、超級山岳ではライバルたちを次々と切り離していくほどの山岳アシスト力を見せる男ワウト・ファンアールトが、最強の山岳トレイン力で集団を支配する。
とくにヴィンゲゴーの存在が今年、どんな意味をもたらすのかは注目したいところ。
なお、昨年との違いはマイク・テウニッセンの存在。2019年にワウト・ファンアールトとタッグを組み、初日いきなりの勝利とマイヨ・ジョーヌを手に入れたこの男が入り込んでいるのは、決して総合だけではなく、ファンアールトと共にステージ優勝に対しても意欲を見せている証拠と見ることもできるかもしれない。
何しろ今大会、ユアン、デマールに次ぐスプリンターは誰かと問われたらファンアールトの名前を上げざるをえない状況。総合力という観点においては、このチームは文句なしのNo.1である。
21~.イネオス・グレナディアーズ(IGD)
総合★★★ スプリント★ 逃げ★
エースの実力はポガチャル、ログリッチよりも劣ると言わざるを得ないだろう。しかし、このチームの強みは、総合表彰台クラスのエースが複数枚いて、そのどれもが本当の意味でエースをスイッチングしながら戦える体制の強さにこそある。
すなわち、2018年ツール覇者ゲラント・トーマス、2019年ジロ・デ・イタリア覇者リチャル・カラパス、2020年ツール総合3位リッチー・ポート、2020年ジロ・デ・イタリア覇者テイオ・ゲイガンハート。
とくにトーマスとポートは今年のカタルーニャ1周で総合2位・3位、ツール・ド・ロマンディで総合1位・2位、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも総合1位・3位と常にダブルで表彰台に登っている。カラパスも直前のツール・ド・スイスで総合優勝するなど、超絶好調である。
個々の力ではポガチャルたちには敵わなくとも、2人以上が上位に入り込み彼らに対して波状攻撃を仕掛ければ、当然「最強」を瓦解せしめることができる。
それは、王者としてではなく挑戦者としての戦い。それでもなお、このチームがいかに強いかを知らしめる絶好のチャンスである。
「帝国」は崩壊した。しかし、なおも彼らは2020年代のトップを走り続ける資格をもつ。これは、このチームの、新たなる時代の始まりだ。
31~.イスラエル・スタートアップネーション(ISN)
総合★★ スプリント★★ 逃げ★★★
直前までそのコンディションは戻らず、ツール出場も危惧されていたフルームだが、無事出場が決定。ただ、勝利を狙うとか山岳アシストとして最後まで残るとかではなく、チームキャプテンとして。それでも、何かしらその存在感を示してくれることに、やはり期待してしまう。
総合ではジロでも活躍したダニエル・マーティンが担う。調子が良ければ上位に食い込むこともできるだろうが、難しければステージ優勝に切り替え、結果を残すチャンスは十分にある。それはウッズも同様。山岳賞候補の1人でもある。
そして、フルーム同様に復活を企図するアンドレ・グライペルも、今年はマヨルカ・チャレンジとブエルタ・アンダルシアでの勝利を提げて、5年ぶりのツール勝利を目指して乗り込んでくる。
新興チームながら平均年齢は全チーム中最大。ベテランが名を連ねる独特なチームだが、印象的な活躍を期待する。
41~.トレック・セガフレード(TFS)
総合★ スプリント★★ 逃げ★★★
ニバリ、モレマのダブルエースに、ベルナール、エリッソンドなど優秀なクライマーが揃ってはいるものの、基本的に総合を狙うことはないだろう。各々がステージ優勝を狙って逃げに乗り、存在感を見せることが中心になりそうだ。
スプリントでは昨年のシャンゼリゼ2位のピーダスンがどこまでやれるか。大雨など荒れた展開に強いタフネススプリンターだけに、そういう展開であればチャンスを掴めそう。
あとは今年のミラノ〜サンレモ覇者ストゥイヴェンによる、得意のレイトアタックからの勝利。昨年のセーアン・クラーウアナスンのような。
今なお成長し続けるこの男の、満を辞してのツール初勝利の瞬間もぜひ見てみたい。
51~.ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)
総合★ スプリント★★ 逃げ★★★
今年はパンチャー向けのステージで開幕するため、アラフィリップにとってはマイヨ・ジョーヌ獲得の大きなチャンスが存在する。第5ステージの個人タイムトライアルを経ても、キープするのは苦ではないだろう。あとはマチュー・ファンデルプールとかワウト・ファンアールトなどのライバルたちとの争いだ。
そして、サム・ベネットの代役でまさかの出場となったマーク・カヴェンディッシュ。直前のベルギー・ツアーでは、カレブ・ユアンやティム・メルリールらを退けてステージ優勝するなど、調子は上々。
本人はあくまでもモルコフの力のおかげと謙虚な姿勢を崩さない。エディ・メルクスの記録への挑戦を問うてくるマスコミのインタビューに対しても控えめだ。
それでも、可能性は十分にある。諦めない男、戦い続けることをやめない男の、感動の勝利は見られるのか。
61~.モビスター・チーム(MOV)
総合★★ スプリント★ 逃げ★
新加入のミゲルアンヘル・ロペスは、様々なトラブルでシーズンインが遅れに遅れたが、徐々にコンディションを上げていき、直近ではモンヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジで優勝するなど、悪くない状態でツール入りを果たす。
純粋な登坂力だけなら今大会トップクラスに位置付けられうる。ただ、TT能力は弱点で、昨年も第20ステージの山岳TTで総合3位から6位に転落している。
今年は平坦のTTが合計60㎞弱。ロペスにとっては試練のツールとなるだろう。悪くない時は悪くないんだけど・・・。
その意味ではエンリク・マスの方が向いてはいる。2019年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位。しかしその後は期待されているほどには成果を出せていない。
モンヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジでは3位。しかしラストはツキイチの状態からオスカル・ロドリゲスに突き放されているので不安は残る。
再びの覚醒は訪れるのか。
なお、原則総合、あるいは山岳逃げがメインとなるチームではあるものの、今年新加入のガルシアも昨年パリ~ニースで区間優勝するなど、上位リザルトを獲ってもおかしくない実力は持っている。
71~.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)
総合★★ スプリント★★★ 逃げ★
昨年は完走したツールでは初となるマイヨ・ヴェール未獲得となったサガンだが、今年はジロ・デ・イタリアで久々のスプリントでのグランツール勝利とポイント賞を獲得。他にもカタルーニャやロマンディでもステージ勝利していたりと、谷を抜けた感がある。直前の国内選手権ロードでも余裕の勝利を見せ、ジロ-ツールWポイント賞獲得に向け、本気の体制だ。
そして総合争いでは2019年総合4位のエマヌエル・ブッフマンと、昨年ジロ総合3位のウィルコ・ケルデルマンのWエース体制。ともにTTは決して苦手ではない2人だけに、調子さえ良ければ今大会はかなり期待ができる。ブッフマンもジロは悪くない走りをしていた中での落車リタイアだったので、注目したい。
サガンに総合Wエースと、守らなければならない対象が多いため、逃げ切りなどの選択肢はどうしても狭められてしまいそう。良い選手は揃っているのだが、果たして。
81~.グルパマFDJ(GFC)
総合★★ スプリント★★★ 逃げ★
3年ぶりのツール出場となるデマールは今年はジロも出場せず万全の体制。ベネットも不在で直接のライバルは途中リタイアの可能性も高そうなユアンくらいで、真の最強を証明する大きなチャンスとなっている。とくにシャンゼリゼでは、18年ぶりのフランス人勝利に期待がかかる。もちろん、マイヨ・ヴェールも。
総合は総合で、ゴデュがどこまでいけるかに期待。TTは得意ではないし、アシストも枚数は少ないので表彰台などは厳しいだろうが、まずは総合6位以内などに入れれば上出来。せめてTOP10には入りたいところ。第2ステージのミュール・ド・ブルターニュなんかも得意なタイプのステージのはずなので、ここでまずはマイヨ・ジョーヌ着用・・・なんかも期待したい。
そしてガンナもデニスもカヴァニャもいない中、キュングはTT優勝候補の最右翼。チャンスを掴みたいところ。
彼にとって最大のライバルは同国人のシュテファン・ビッセガーくらい。先輩としての意地を見せられるか。
91~.コフィディス・ソルシオンクレディ(COF)
総合★★ スプリント★ 逃げ★★
右肩上がりで成長し続けているマルタンには今年も期待。ただ、TTが鬼門・・・。ヘスス・エラダがアシストとしてどこまで活躍してくれるかに注目だ。
一方、エリア・ヴィヴィアーニは出場しないことを決めた。結果を出せるか疑わしい状態であれば、マルタンのアシストを充実させる方が吉と考えたか。来季の移籍動向も気になるところ。代わりにスプリントを担うのはラポルト。彼もかつてブアニの代わりのエーススプリンターとして出場しながらも勝ちを得られずにいただけに、チャンスをものにしたい。
逃げスペシャリストとしてゲシュケとワライスの走りにも注目。中途半端になりかねない総合とスプリントに依存せず逃げにも望みを託す。
相変わらずUCIプロチーム感の残るチームマインドだが、結果さえついて来れば文句はない。
101~.アルペシン・フェニックス(AFC)
総合★ スプリント★★★ 逃げ★★
ついにツール・ド・フランスデビューとなる「自転車の天才」マチュー・ファンデルプール。前哨戦ツール・ド・スイスでも2勝しており、コンディションは万全。オランダ選手権も途中でバイクを降りはしたが、序盤から謎にアタックしており、本気モードなのは間違いない。オリンピックもあるので、完走はしないとは思うが・・・。
そして、もはやファンデルプールだけのチームではないこのチーム。すでにジロで1勝しているティム・メルリールはこのツールでも結果を出せるが。純粋なスプリント力ではユアン、デマール、ファンアールトに並ぶ素質を持っている。
もちろん、昨年ブエルタで1勝しているフィリプセンもエース候補だが、勢いと純粋な平坦でのスプリントであればメルリールがエースと見るのは間違いない、か?
また元AG2Rでジロでも1勝しているディリエも、直前の国内選手権で優勝し初のナショナルジャージを身に纏っての参戦。今期ここまであまり存在感を示せてはいなかったが、ここで結果を出せるか。
元ワンティのムーリッセも、2年前のツールでラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ山頂フィニッシュで区間3位など。
相変わらずUCIプロチームとは思えない結果を叩き出してしまいそうな、期待溢れるチームだ。
111~.EFエデュケーション・NIPPO(EFN)
総合★★ スプリント★ 逃げ★★★
資金不足で有力勢が流出したチームの中で、実力者たちを絞り出したような雑然としたロースターといった印象。
個々の力は高いのだが、統一された目的はなく、その個々に任せ何かしらの勝利を狙おう!みたいな雰囲気を感じはする。
それでも、総合エースを担うリゴベルト・ウランは前哨戦ツール・ド・スイス総合2位と絶好調だし、若手シュテファン・ビッセガーはTTステージで大先輩キュングを打ち破りグランツール初挑戦でいきなりの勝利を飾る素質は十分にある。
ツールで1回、ブエルタで3回勝利しているコルトは今回も期待ができるし、昨年からこっち本来の実力を発揮しきれない状況が続いているイギータも、そろそろ復活を期待できそうだ。
やっぱり個々の力は強い。彼らが全員自由に走れるロースターということもできるので、予想のつかない大活躍を楽しみにしていたい。
個人的には5年前からずっと期待しているポーレス、昨年もかなり積極的に逃げてはいたので、今回はチャンスをつかみ切ってほしい。
121~.AG2Rシトロエン・チーム(ACT)
総合★ スプリント★ 逃げ★★★
今年の新体制の大きなテーマ通り、グランツールの総合もスプリントも期待は最初からしていない。一方、「丘陵・山岳逃げ」での勝利は1勝はするだろうという信頼感がある。
ジロ・デ・イタリアでもアンドレア・ヴェンドラーメが優勝。今回のツールも、5月のツール・デュ・フィニステールで優勝しているコヌフロワ、今年の開幕戦グランプリ・シクリスト・ラ・マルセイエーズでトマ・ブダとブライアン・コカールを登りスプリントで破っているパレパントル、昨年ジロで勝っているオコーナー、そして一昨年のジロ・昨年のツールと勝っているピーターズなど、注目すべき選手たちで溢れている。
きっと誰かが勝つだろう。ファンアーヴェルマートも、いよいよ最後のオリンピックカラーバイクで走るチャンスとなるだろうから、目立っておきたいところだ。
131~.チーム・アルケア・サムシック(ARK)
総合★★ スプリント★★ 逃げ★★
2017年ツール区間2勝&山岳賞のバルギル、2010年代に3回のツール表彰台を掴み取ったキンタナのダブルエースだが、昨年はそれぞれ総合14位と総合17位と失墜。キンタナは直近のブエルタ・アストゥリアスで総合優勝してはいるものの、それ単体で2~3分失ってしまいかねないTTの存在もあり、期待するのはちょっと難しそう。
ただ、ステージ優勝に集中すれば、2018年も2019年も勝っているナイロ・キンタナ。まだまだその強さは並のクライマーを遥かに超えているだろう。あとはすこーしずつ実力を伸ばしつつあるジェスベールに、個人的には期待したい。
そしてブアニが4年ぶりのツール出場。今年も斜行でサスペンドを食らっていたりするため出場が危ぶまれたものの、なんとかメンバー入りを果たす。
出るからには勝ってみせてほしい。が、危険な走りだけは本当に控えてほしいところ。
141~.チームDSM(DSM)
総合★ スプリント★★ 逃げ★★
昨年は区間3勝と素晴らしい活躍をして見せたこのチーム。そのうえでチーム上位3名が流出するという相変わらずの事態に陥っているこのチームではあるが、それでも昨年区間2勝のクラーウアナスンや、勝ちはしなかったものの良い走りを見せ今年もパリ~ニースで1勝しているボルなど、実力者は揃っている。
あとはエークホフも並外れた才能をもつ男だが、発射台としても実績の多い男なので、ボルの勝利を導く素晴らしい働きに期待したい。
あとは昨年のブエルタ・ア・エスパーニャの山頂フィニッシュで2度上位に入り込んだ足を持つ若きドノヴァンの隔世の瞬間がもしかしたら見られるかも・・?
151~.ロット・スーダル(LTS)
総合★ スプリント★★★ 逃げ★★
ベネット不在の中、実績では今ツール最強のスプリンター、ユアン。ジロでも2勝。そのときの中心的なメンバーも全員連れてきて、本気の体制だ。道中の平坦をデヘントがしっかりと守護し、ラスト1㎞までクルーゲが運び上げ、最後はデブイストが発射。デブイストはジロ・デ・イタリアの身近な激坂を含むステージでも、完璧なアシストでライバルたちを封殺していた。
逆にユアン以外ではどこまで勝利を狙えるか。デヘントはもちろん、彼曰く「シーズン2つ目のグランツールが一番成績が良い」ジンクスから、2年前に続く勝利を狙うことはできるかも。ただ、彼もまたユアンと共にブエルタにも行く予定なので、あまり無理はしない可能性も(まあ2019年もそうだったんだけど)。
ジルベールはロット入りしてからイマイチ。そんな中、直近で実績があるのは生え抜きの若手、ファンムール。
ロンド・ファン・リンブルフでは最後の最後でコースミス(案内人のミス?)により逃げ切り勝利を逃すという悔しい敗北を喫したものの、直後のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでより大きな逃げ切り勝利を。しかも初日ということでマイヨ・ジョーヌを着用し、最高の瞬間を味わった。
その勢いをこのツール本戦で見せられるか。
161~.チーム・バーレーン・ヴィクトリアス(TBV)
総合★★ スプリント★★ 逃げ★★
ジロ・デ・イタリア以降、なんだか絶好調なこのチーム。ミケル・ランダはジロでの落車からの復帰が図れず、かなり期待できるコンディションだったにも関わらず参戦できないのは残念だが、ミッチェルトン・スコットから移籍してきたヘイグやビルバオ、プールスといったエース級の選手たちが総合や山岳逃げでどこまで活躍できるか。スロベニアロード王者になったばかりのモホリッチの調子もかなりよさそうだ。
そして、ドーフィネで1勝、イタリア国内選手権でも優勝し、キャリア最高峰に調子の良さそうなコルブレッリ。
2018年には2回の区間2位。今年はその殻を破れるか。
また、Podcastでも話をしたが、個人的に注目したいのが今大会最年少フレッド・ライト。
元トラックレーサーで、2019年のベイビー・ジロ&ツール・ド・ラヴニールでそれぞれ1勝ずつしているパンチャータイプ。イーデ・スヘリンフを打ち破っての勝利などもしており、丘陵系ステージでの逃げ切りなんかに期待したいところ。
171~.チーム・バイクエクスチェンジ(BEX)
総合★★ スプリント★★ 逃げ★★
ジロ総合3位のサイモン・イェーツは今回のツールはそこまで本気で総合は目指さないかも? もちろんステージ優勝を狙った時にはトップクラスの実力者であることは間違いない。
一方、本来は彼のアシストを担う役割をもつルーカス・ハミルトンの活躍にも期待したい。昨年のジロは早々にサイモン・イェーツが脱落したあと、それこそテイオ・ゲイガンハートと共に良い走りを見せていた。が、チーム毎撤退したことで「その先」は見えず。ポテンシャルは間違いなく高い選手だ。
また、チャベスも今年のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで区間1勝&総合6位と調子は悪くない。彼もまた、少しずつ「復活」しつつある男。
さらに、5年ぶりの古巣復帰となった「キラキラ」マシューズがエースナンバーをつけて乗り込んできた。2017年にはマイヨ・ヴェールを獲得しているこの男。最近はそこまで目立つ走りはできていないようにも見られるが、今年はアムステルゴールドレース4位やヘント~ウェヴェルヘム5位など状態は良い。
181~.アスタナ・プレミアテック(APT)
総合★★ スプリント★ 逃げ★★
2年前のリエージュ~バストーニュ~リエージュ、昨年はイル・ロンバルディアを制したヤコブ・フルサン。だが、今年はオリンピックもあり、総合は狙わない宣言はすでに出している。あとは総合を狙えるとしたらヨン・イサギレだが・・・全体的にはそこまで本気ではないかも?
ステージ優勝に集中したらこのチームも強い。昨年ブエルタでも勝利したイサギレに、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合2位と好調のルツェンコ、スペイン王者になったばかりのフライレ、そして登りスプリントステージでは常に優勝候補に数えられる若きバスクの才能、アランブル。
アランブルとフライレのコンビネーションは今年のイツリア・バスクカントリーでも実際に区間勝利を生み出している。
初日もブルターニュの登りスプリントということで、いきなり彼らがマイヨ・ジョーヌを掴み取るというパターンも、ありうるかも。
191~.チーム・キュベカ・ネクストハッシュ(TQA)
総合★ スプリント★ 逃げ★★
スポンサー危機に瀕し大量の選出流出と、慌てての補強。ワールドツアークラス並とはいえない戦力の中ではあったが、ジロ・デ・イタリアでは別々の選手で3勝。そもそも今年は北のクラシックなどでもアグレッシブな走りを見せており、数値からだけでは読み取れない強さがこのチームにはあるのかもしれない。
しかしニッツォーロが欠場となったのは驚いた。わざわざジロも途中リタイアしたのに。ヨーロッパチャンピオンジャージを着てのツールでの、昨年は果たせなかった1勝を楽しみにしていたが・・・。
少しだけ出場の可能性もあったファビオ・アルも結局出場せず。エースナンバー付けるのは元パリ~ニース覇者セルジオ・エナオだが、さすがに総合に期待するのは難しいだろう。
あとは逃げ切り。実力者サイモン・クラークか、ストラーデビアンケ6位など調子の良いゴグルか、若手ベネットがそろそろ覚醒するか・・・
なお、ワルシャイドはすでにTTスペシャリスト扱いで問題ないだろう。
201~.チーム・トタルエナジーズ(TDE)
総合★ スプリント★ 逃げ★★
ワールドツアーから多くの有力選手を獲得してきているこのチーム(トタル・ディレクトエネルジーから改名)。今回は元AG2Rのラトゥールと、元NTTのボアッソンハーゲンが参戦。ボアッソンハーゲンは逃げ切りでのステージ優勝経験を持つ。
そしてピエール・ラトゥールは2018年マイヨ・ブラン着用者。ロマン・バルデに次ぐAG2Rのエース候補として期待され続けてきた男が、バルデと共にチームを去り、新天地へ。
もう総合を狙うのはちょっと難しいかもしれない。それでも2019年にはブエルタのロス・マチュコスで粘り強い逃げを見せていたこの男の、ツール初勝利の瞬間は楽しみにしたい。
あとちょっと注目しているのが元カハルラルのクリスティアン・ロドリゲス。割と直前まで出場は確定していなかったはずだが、今年のツール・ド・ルワンダで総合優勝し、モンヴァントゥ・デニヴレ・チャレンジで5位、そして前哨戦の1つツール・ドクシタニーでも総合4位と、結構調子がいい。
ジロでもコフィディスのヴィクトル・ラフェとかが優勝しているし、同じような枠としてこのロドリゲス、注目する価値があると思うぞ。
211~.アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ(IWG)
総合★ スプリント★★ 逃げ★
昨年シーズン後半でのワールドツアーチーム入りが確定し、急いで補強。それでもまだまだUCIプロチーム感を脱することはできず、結果、5月までまったく勝利を得られないままシーズンを過ごしていた。
が、まさかのジロ3日目でのタコ・ファンデルホールンの感動的な逃げ切り勝利。それが今年のジロの「ワールドツアー初勝利者量産」の流れを作った。
同じ勢いを、このツールで発揮できるか。2013年に1勝しているバークランツや、「逃げ屋」ヴリーヘン・・・そして2019年ツール・ド・ラヴニール総合5位のツィンマーマン等に注目したい。
もちろん、ダニー・ファンポッペルにも。勝つ・・・のは難しいかもしれないけれど、上位に何度も名前を乗せて存在感を示してほしいところ。
221~.B&Bホテルス・p/b KTM(BBK)
総合★ スプリント★★ 逃げ★
今大会最も頑張ることが求められるチーム。コカールは今年も勝ちこそないもののベルギー・ツアーでユアンに次ぐ2位に入ったり、パリ~ニースで4位に入ったりと、決して悪くないので上位への入賞をどれだけ重ねられるか。2015年のシャンゼリゼ2位。かつて、あまりの悔しさに涙した男が、まさかの栄光を掴み取ることは、できるか。
登りではもちろんピエール・ロラン・・・といいたいところだが、個人的には昨年そのロランをアシストしつつ自らもかなり山岳ステージで積極的に逃げていた男、パシェに期待したいところがある。
そろそろビッグレースでの勝利があってもおかしくない。そんな風に思っている男だ。
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