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獲得UCIポイントで見る ジロ・デ・イタリア2021 全チームランキング&レビュー(11位~1位)

 

前回の23位~12位に続き、いよいよ今大会最も活躍した11チームを確認していく。

基準はUCIポイント。総合順位だけでなく、各特別賞の順位やステージ順位、さらにはマリア・ローザを何日間着用したかで、ポイントが蓄積されていく。

どれだけ「目立ったか」の基準でもあり、ある程度は客観性をもって見ることもできるだろう。

また、こちらはポイントには影響しないが、各チームの「逃げ」も一覧にしてみた。

 

今年のジロ・デ・イタリアでどのチームが最も活躍したのか。

その参考にしていただければ幸い。

 


昨年のランキングはこちらから

獲得UCIポイントで見る ジロ・デ・イタリア2020 全チームランキング&レビュー(22位~12位) - りんぐすらいど

獲得UCIポイントで見る ジロ・デ・イタリア2020 全チームランキング&レビュー(11位~1位) - りんぐすらいど

2020年やその他のグランツールについても「獲得UCIポイントで見るシリーズ」のカテゴリーからどうぞ

 

目次

 

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第11位(昨年10位) EFエデュケーション・NIPPO 348pt.

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逃げ一覧

  • サイモン・カー(第9ステージ)
  • ルーベン・ゲレイロ(第9ステージ)
  • アルベルト・ベッティオル(第18ステージ)

 

昨年のブエルタで総合3位に輝き、新時代のグランツールライダーとしての可能性を花開かせ始めたカーシー。今回もしっかりと総合トップライダーに食らいついてはみせたものの、安定感の面でやや奮わず、最上位というべきラインからは一段劣るラインでの戦いに終始してしまった。

とはいえまだ今年27歳。来年、再来年こそが最盛期であり、今は少しずつ経験を積み重ねていこう。

 

その意味で今大会このチームで最も成功したのはベッティオル。今シーズンここまでのレースでは決して万全ではなかった彼だが、このジロでは第1週目からアグレッシブ。第6ステージでは最後の登りを前にした3級山岳の下りでアタック。ついてきたバルデとチッコーネの消極性に怒りを露わにしながらも、チャンスを掴もうと奮闘する姿が印象的だった。

それが第18ステージで実を結ぶ。23名の大規模逃げ集団でポー平原を突き進む。残り26㎞で集団からレミ・カヴァニャが抜け出すと、集団は牽制状態に陥りそのまま逃げ切られる恐れすらあった。

だが、残り14㎞の小さな登りでベッティオルが勝負を仕掛けた。食らいついてきたニコラス・ロッシュも突き放し、単独でカヴァニャに追いついた後、早すぎる抜け出しに限界がきていたカヴァニャも置き去りにして独走を開始した。

彼にとってプロ初勝利となった2019年のロンド・ファン・フラーンデレン同様、適切なタイミングでの強力なアタックが勝負を決めた。

これでようやく、プロ3勝目。

あのロンドが重圧になり続けていた男が掴んだ、ジロ・デ・イタリアのあまりにも大きな勝利であった。

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その他、クラシックからその存在感を示し続けている元NIPPOデルコ・ワンプロヴァンスのサイモン・カーの成長も著しい。山岳ステージではベッティオルやヴァンガーデレンと並び、エースのカーシーを守る役目も果たしていた。

今年22歳の彼もまた、2020年代を通してその活躍に注目すべき男だ。

 

 

第10位(昨年8位) UAEチーム・エミレーツ 376pt.

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逃げ一覧

  • ディエゴ・ウリッシ(第9・12・16・18ステージ)
  • アレッサンドロ・コーヴィ(第11・14・17ステージ)
  • ヴァレリオ・コンティ(第4・17ステージ)
  • ジョセフロイド・ドンブロウスキ―(第4ステージ)
  • フェルナンド・ガビリア(第8ステージ)
  • フアン・モラノ(第15ステージ)
  • ダヴィデ・フォルモロ(第16ステージ)
  • マキシミリアーノ・リケーゼ(第18ステージ)

 

ガビリアはまだ復活には至らず。相変わらずモレノはエースを食ってしまいかねない実力の高さを見せてはいるものの、ガビリア自身がなかなか手応えを感じられずにいた。

このまま沈んでしまうのか? いや、ユアンも一度は沈みかけつつも見事に復活した。ガビリアもきっとそのときがくると信じている。

 

若手で注目すべき走りをしたのがネオプロ2年目、今年で22歳のイタリア人、コーヴィ。ストラーデビアンケステージではシュミットとの最後のスプリントに敗れ、ゾンコランでは先行するフォルトゥナートとトラトニクに後続集団からアタックしてなんとか迫りはしたものの、届かなかった。

いずれも間違いなく強かったが、あと一歩が届かなかった。だからこそ、プロ初勝利はもちろん、ビッグレースでの勝利もまた、そう遠くないと信じられる。

 

そして、ある意味で「そういう」男だったドンブロウスキー。2013年にスカイ(現イネオス・グレナディアーズ)でプロデビューを果たし、その後はキャノンデール(現EFエデュケーション・NIPPO)で5年間を過ごす。

昨年から現チーム入り。9年間のプロ生活で得た勝利はツアー・オブ・ユタでの総合優勝含む3勝のみ。

2019年のジロ・デ・イタリアでは総合12位に輝くなどその実力は常に認められていたものの、そこから結果に結びつくことがなかなかなかった。

彼は決して新人ではない。若手でもない。レジェンド級のベテランの復活でもない。

「中堅」を代表するような存在をそんな彼がグランツール初勝利を手に入れたこともまた、今年のジロを象徴する瞬間だったと言える。

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第9位(昨年9位) チーム・キュベカ・アソス 388pt.

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逃げ一覧

  • ヴィクトール・カンペナールツ(第4・8・12・15ステージ)
  • ベルトヤン・リンデマン(第11ステージ)
  • マウロ・シュミット(第11ステージ)
  • マックス・ワルシャイド(第15ステージ)
  • ルーカス・ヴィシニオウスキー(第15ステージ)

 

正直、このチームが今年のグランツールでこの位置にいるなんてこと、想像することは難しかった。

それくらい昨年から今年にかけての弱体化はひどく、苦しいシーズンを過ごすことが宿命づけられていたように思えるから。

しかし蓋を開けてみれば3勝。しかも、ニッツォーロだけでなく、カンペナールツと・・・シュミット!? シュミット。しかも、あの凶悪なるストラーデビアンケで。

正直、この勝利が今年のジロで一番驚くべき勝利であった。他の勝利はまだ、後付けでも納得できるが、この男のこの勝利は今でもなお不思議だ。ネオプロ、21歳、スイス人。プロ初年度の最初のグランツールの、難易度の高いステージでの鮮やかな力による勝利。

こういう才能が突然出てくる瞬間がある意味、ロードレースで一番楽しい。

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もちろん、その資格がありながらようやく手に入れることのできたグランツール初勝利となったニッツォーロ、そして昨年もあと一歩のところで届かなかったジロ勝利を、人一倍アグレッシブに逃げ続けてようやく手に入れたカンペナールツ。

その勝利はすべて印象的なものである。

 

ちなみにこのチーム、クラシックレースでもカンペナールツや元コフィディスのディミトリ・クライスなどが、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでもルイ・メインチェスなどが、積極的にアタックし、勝利への執念を見せつけている。

決して強いチームではない。どうしても寄せ集めの統一感のないチームでもある。

それでも、この先のグランツールでも決して無視できないチーム。そんな風に感じもする。

ところでワルシャイドってもうTTスペシャリスト扱いしていいかな?

  

 

第8位(昨年2位) チームDSM 468pt.

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逃げ一覧

  • ニコ・デンツ(第4・18・20ステージ)
  • ニキアス・アルント(第8・18ステージ)
  • ニコラス・ロッシュ(第16・18ステージ)
  • マイケル・ストーラー(第9ステージ)
  • クリス・ハミルトン(第12ステージ)

 

昨年総合2位のジェイ・ヒンドレーがいるとはいえ、今年の彼の調子は悪いし、結果を出すことはまったく期待していなかった。

にも関わらず、まさかの、移籍してきたロマン・バルデがかつての実力を取り戻しかけてるかのような走り。

とくに第16ステージの最後の下りで、カルーゾに追いついて、さらにはこれを最後追い抜いての2位フィニッシュは、下りエキスパートの本領発揮という感じで、それこそ一つの「復活」を見た気がする。

もちろんこれでまた余計なプレッシャーを与えるつもりはない。引き続き伸び伸びと、彼自身が満足できる走りを続けられることを願う。

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また、各選手それぞれが積極的にアタックし、上位に食い込んだことも、昨年から続くこのチームの良さを感じさせた。とくにアルントは安定している。逃げ職人スプリンターとして独特の地位を築きつつある。

個人的にはクリス・ハミルトンやストーラーなど、ヒンドレーと並ぶ若手オージータレントたちがもっと躍進していくことを期待している。今回はハミルトンが勝利まであと一歩。そしてストーラーが総合31位。

花開くまではもう少し時間かかるだろうが、応援していきたい。

 

 

第7位(昨年3位) ドゥクーニンク・クイックステップ 508pt.

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逃げ一覧

  • ピーター・セリー(第4・17ステージ)
  • ミケルフローリヒ・ホノレ(第12ステージ)
  • ジョアン・アルメイダ(第16ステージ)
  • ジェームス・ノックス(第17ステージ)

 

レムコ・エヴェネプールは間違いなく強かった。もちろん初日のTTの7位は彼のコンディションが100%に戻ってないことを意味してはいたが、その後の第6ステージや第9ステージの走りは、誰もが(おそらくルフェーブルもが)信じていなかった姿を見せ、常に驚きを与え続けてきたこの男がもう一度、伝説を創るのかと期待してしまった。

しかし、もちろん彼は神ではない。8ヶ月ぶりの復帰でいきなり飛び込んだジロ。しかも彼はまだ21歳であり、当然初のグランツールであった。初めての休息日。そして第11ステージ。崩れ落ちる彼の姿は誰も非難しようがないし、それでも最後まで走り続けると宣言してくれた彼の姿は頼もしかった。

最後は落車で去ってしまったが、彼はまた必ず戻ってくる。焦らず、待っていようと思う。

 

そして入れ替わるようにして鋭くなるアルメイダの走り。そもそも第4ステージでの驚きの失速がなければ終始彼がエースとして走れていただろう。そのタイミングでエヴェネプールが強さを見せたばかりに、第11ステージや第14ステージでエヴェネプールをアシストするためにさらにタイムを失う結果となってしまった。

もし彼が最初から最後までエースとして走ることができていれば、もう少し結果は上げられていたかもしれない。たとえば表彰台。

それくらい第3週での走りは安定していた。とくに、厳しい勾配で一度突き放されても、マイペースを保って追いつき、緩斜面ではむしろライバルを突き放すその走りは、ここ最近のコロンビア勢やサイモン・イェーツ、カーシーなどの純クライマータイプが心なしか増えてきた事態に対する、何か10年代のクリス・フルームやトム・デュムランの輝きを思い出させるような懐かしさを感じる走りだった。

なので、思い入れは結構ある。彼の走りが報われる瞬間が来てほしいとも思う。

それは新チームで、なのかもしれないけれど。

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あとは、昨年強かった山岳アシスト陣が今年は苦しかったこともアルメイダにとっては逆風だった。昨年総合9位のマスナダは前半でリタイア。昨年総合14位のジェームス・ノックスが今年は総合53位。

ただ、ノックスは3週目に力を取り戻し、アルメイダをしっかりとアシストする姿も見せていた。

まだまだ総合争いにおいては「若い」チームであるが、その勢いはこれからも決して衰えることはないだろう。

  

 

第6位(昨年16位) イスラエル・スタートアップネーション 516pt.

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逃げ一覧

  • ダニエル・マーティン(第16・17ステージ)
  • アレッサンドロ・デマルキ(第4ステージ)
  • ガイ・ニーブ(第12ステージ)
  • パトリック・ベヴィン(第18ステージ)

 

強い選手が集まっている割にはまとまりがなく、どこかUCIプロチームらしさを感じさせてしまうこのチームだが、今回は結果的に素晴らしい結果を見せてくれた。

アレッサンドロ・デマルキの大逃げによるマリア・ローザ着用、ダヴィデ・チモライの起伏のある荒れたステージでの安定した強さ、そしてダニエル・マーティンの、ツール、ブエルタに次ぐ、3大グランツールすべてでのステージ勝利の達成。

タレントを集めても結果を出せないチームも多い中、そのタレントをしっかりと活かし切ったのはさすがといったところだ。

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だが、このリザルトを並べてもどこか統一感のなさを感じるのも確か。あきさねさんも言っていたが、「個々人が頑張って結果を出した」印象だ。昨年のドーセットの勝利なんかも、そんな感じはする。

総合エースのためにチーム一丸となってこれを守り、あるいはエーススプリンターのためにチーム一丸となってトレインを作り・・・そんな風になれるかどうかが、このチームの「UCIプロチームっぽささ」を無くす道なのかもしれない。

もちろん今のままでも味はあるのだが。

 

 

第5位(昨年22位) チーム・ユンボ・ヴィズマ 552pt.

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逃げ一覧

  • ジョージ・ベネット(第9・12・14ステージ)
  • クーン・ボウマン(第9・16ステージ)
  • エドアルド・アッフィニ(第14ステージ)

 

ジョージ・ベネットにとっては待望の単独エース。しかし結果は残念なものに。せめてステージ優勝を得られれば良かったのだが。

果たして次のチャンスはあるのか。それとも強力なアシストとして走ることをメインにしていくのか。彼もまた90年生まれの「黄金世代」の一人。ベテランの域に差し掛かろうとしているこの世代の1人である彼にとっても、難しい時期にきている。

 

一方、輝きを見せたのがツール・ド・ラヴニール覇者トビアス・フォス。どうしてもベルナルやポガチャルと比較させられてしまう男ではあるが、それでもプロ2年目でジロ総合9位は見事としか言いようがない。また個人TTでは第1ステージではカヴァニャやアルメイダを抜いて3位に位置づけ、オールラウンダーとしての才能も見せつけた。

彼は間違いなく今後も伸びる。大注目の存在だ。

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そしてもちろん、初日TTで2位、最終日TTで3位と安定したTT能力の高さを見せつけると共に、第13ステージではフィニッシュ直前に集団の先頭から飛び出し、あわや集団スプリントでのレイトアタックからの逃げ切りという、かつてのカンチェラーラを思い起こさせるような勝ち方をしでかす一歩手前までいった。

このときはあり得ない勢いで加速してきたニッツォーロが強すぎたため2位だったが、十分価値を狙える走りをしていた。TT能力といざというときの加速力に優れた、未だ未知数の若手イタリア人である。

 

最後にもう1人、優れた活躍をして見せたのがクーン・ボウマン。第1週のハイライトとなった第9ステージで逃げていたジョフリー・ブシャールに追いつく走りを見せたほか、第3週ではフォスのアシストとして、ベネット以上に登れる姿も見せていた。

今年28歳のオランダ人。キャリア最盛期に差し掛かりつつある今年もしくは来年に、大きな勝利を期待しても良さそう。

イタリア秋のクラシックあたりに注目だ。

 

 

第4位(昨年7位) アスタナ・プレミアテック 600pt.

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逃げ一覧

  • ルイスレオン・サンチェス(第9・17ステージ)
  • ゴルカ・イサギレ(第16・18ステージ)
  • サミュエーレ・バティステッラ(第18ステージ)

 

昨年急成長を遂げた元ベイビージロ覇者ウラソフ。今年はこのジロで、サイモン・イェーツに次ぐ期待株として注目されていたがーー蓋を開けてみれば総合4位と、十分にその期待に応えているといっても良い結果。だが、総合3位サイモン・イェーツとのタイム差は2分25秒。表彰台からの距離は見た目以上に遥か遠い結果となってしまった。

これはウラソフ以外のほとんどすべての総合有力勢に共通していたが、とにかく安定感がなく日替わりでタイムを失っていた状態。第16ステージでは勝負所でのパンクという不運にも見舞われたものの、それ以外でもまだまだ表彰台を取るにはたしかに今一歩実力が足りなかったように見受けられる。

だが才能は確かに見せつけた。ベルナルのアタックに彼だけが食らいつく場面などもあった(すぐ突き放されたけど)。まだ25歳。これから1年ごとに更なる進化を見せてくれることだろう。

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一方、期待していたテハダが今回はイマイチだったのが残念。彼含め、総じて今回のアスタナのアシストは、登り初めでは前の方に出てきながらも、勝負が佳境に入る頃にはウラソフ一人残して姿を消すようなことが多かった気がする。

今回ウラソフがあと一歩届かなかったのはチームの責任もあるとは思う・・・サンチェスとかはいい加減いい歳ではあるので、本当にテハダの安定が重要な鍵となる。

 

また、ソブレロの最終日TT4位は驚き。元NTTのネオプロ2年目イタリア人。重量級のTTスペシャリストというわけではなく、2年前のトロフェオ・ライグエーリアでは3位に入るなどパンチャーとしての素質も持つ。

使い方次第ではアシストとしてもフィニッシャーとしても万能に活躍しうる存在(ファビオ・フェリーネみたいな)。契約は今年末までのようだが、更新するだけの価値はあるような気がする。

 

 

第3位(昨年22位) チーム・バイクエクスチェンジ 759pt.

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逃げ一覧

  • タネル・カンゲルト(第9・16ステージ)
  • クリストファー・ユールイェンセン(第4ステージ)

 

前哨戦ツアー・オブ・ジ・アルプスも制し、調子の読めないベルナルやエヴェネプールを除き、最有力とされていたサイモン・イェーツ。

第1週は(本人曰く風邪気味だったとのことで)昨年までと同様少しずつタイムを失うような状況ではあったが、第14ステージのゾンコランで突如覚醒。

続く第16ステージでは再び大きく崩れるものの、第3週も常に積極的にベルナルからタイムを奪いにかかった。

そして第19ステージでは2段階にわたるアタックで独走を開始し、3年ぶりのジロ勝利。

最終的に総合優勝に向けたチャレンジは4度目の失敗となったわけだが、それでも十分に魅せる走りをしてくれていた。

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このあとはツール・ド・フランス。

この良い流れを引き継ぎ、驚くべき成果を期待している。

 

なお、アシストで注目すべき走りを見せたのはニック・シュルツ。これまではパンチャーというイメージのあった彼が、今大会、サイモンの傍に最後までついていく姿を見せていた。

残念ながら第18ステージで落車してリタイア。そこまでは総合23位とかなり好調だっただけに残念だ。

 

個人の力だけでなく、チームの力でイネオスやユンボに対抗していくためにも、このチームの山岳アシストたちのさらなる進化に期待したい。

 

 

第2位(昨年4位) バーレーン・ヴィクトリアス 1064pt.

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逃げ一覧

  • ヤン・トラトニク(第4・14・16ステージ)
  • ジーノ・マーダー(第6ステージ)
  • マテイ・モホリッチ(第6ステージ)

 

今大会、ベルナルも含め、すべての総合系ライダーの中で、最も安定していたのがカルーゾだぅた。自ら積極的にアタックすることはほぼほぼないながらも、大崩れすることなく自分のペースを守り、周りが崩れていくなかで上位を守り続けた。

そんな中、第20ステージの1級山岳からの下りで、先行したバルデらのDSMに続いて、ペリョ・ビルバオと共にアタック。今大会唯一彼が見せた攻撃的な走りで、その一発で、彼は大きな大きな勝利を手に入れた。

最後は牽き続けたのちに落ちていくビルバオを労うように背中を叩く。それは、アシストという立場のことを誰よりもよく理解しているからこその仕草であった。

そして最後はバルデを突き放し、先頭でジロのフィニッシュラインを乗り越えた。

ダミアーノ・カルーゾ、数多くのグランツールライダーたちを支え続けた名アシストによる、ジロ初勝利。そして総合2位を決定づける勝利であった。

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翌日の個人TTでは危なげなくフィニッシュし、その右手には小さなサムアップ。

序盤でエースを失ったチームに、最高の成績をもたらした。

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カルーゾについてはこちらの記事も参照のこと

www.ringsride.work

 

さらには、パリ〜ニースで残り50mで勝利を奪われた元ラヴニール区間2勝マーダーが(より大きなレースでの)リベンジとなる勝利。今後もまだまだ進化が期待できる男だ。

トラトニクもゾンコランで粘り強い走りを見せての区間2位。

ドーフィネでのパデュンといい、今年のバーレーンの調子の良さは本当に驚くべきことである。

 

そんなチームを支えたのが新城幸也の存在。エース級の選手がひしめく中、平坦でも登りでも存在感を示し、山岳の奥深くでも集団の先頭に陣取っていた彼は、実力はさることながら、プロトンの中での立ち位置もしっかり確立できているのだと感じさせる。

これからもチームを支えていってくれ、ユキヤ。

 

 

第1位(昨年1位) イネオス・グレナディアーズ 2128pt.

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逃げ一覧

  • ジャンニ・モスコン(第17ステージ)

 

2019年に戦後最年少でマイヨ・ジョーヌを手に入れたベルナル。その後プレッシャーと背中の痛みとに苦しみながらも、チームの助けを借りながら復活し、ある意味でそのマイヨ・ジョーヌ以上に価値ある勝利を手に入れた今年のジロのベルナルの走りと2つのガッツポーズとについては、以下の2つの記事を参照してほしい。

www.ringsride.work

www.ringsride.work

 

もちろん、このチームの主人公はベルナルだけじゃない。

昨年のドーフィネ総合優勝者ダニエル・マルティネスは、自らも総合6位に入り込む登坂力とTT能力の持ち主であり、3週目はベルナル以外の全てのクライマーたちを突き放すほどの走りを見せていた。

遅れるベルナルを励ますシーンは今大会を象徴する1枚。昨年のゲイガンハートの勝利はローハン・デニスなくしてはありえなかったのと同様、今回のベルナルの勝利はこのマルティネスの勝利なくしてはあり得なかった。

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また、そんなマルティネスと共に最終盤までベルナルを守り続けたのはジョナタン・カストロビエホ。元はスペインTT王者の経験ももつTTスペシャリストといった印象だった彼も、今や当たり前のように登る。

その強さ、存在感はかつてのヴァシル・キリエンカを彷彿とさせ・・・登坂力については彼以上のものがあるようにすら思う。

 

ガンナの強さは言うまでもない。逃げ勝利こそなかったものの、今回は最初から最後までエースのためのアシストとして奮闘し、山岳も深み常に集団を牽引し続けた。

そのうえでTTは2つとも当たり前のように勝利するのだから、これまでの常識をいとも簡単に破り捨てる恐ろしさすら感じさせる。

そもそも後輪パンクしてTT普通に勝つとは一体。

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直前のツアー・オブ・ジ・アルプスでも絶好調だったジャンニ・モスコンも、さすがに今回のイネオスの体制の中では勝利は得られなかったものの、ベルナル初のグランツールステージ勝利となった第9ステージでは、最後の数百メートルまでベルナルのために集団牽引をこなしていた。かつてパリ〜ルーベ5位の実績をもつ彼だからこその活躍。その後も、マルティネスとカストロビエホに引き継ぐ前の段階を、ジョナタン・ナルバエスと共に担っていた。

逆に、序盤で落車リタイアとなったパヴェル・シヴァコフは存在感を示せず。実力は十分にある彼だが、いつも落車に巻き込まれているイメージが強い。

今後、挽回できるのか。

 

昨年はゲラント・トーマス早期リタイアからのまさかのゲイガンハート総合優勝へと繋げ、「やはりイネオスは強い」と思わしめたこのチーム。

今年はオーソドックスな山岳トレインの強さを終始発揮しつつ、頼れるエース、ベルナルを最後まで守り切った。

2020年はスカイ/イネオス帝国の終焉を感じさせたシーズンだったが、今ここに改めて、「最強グランツールチーム」としての誇りを取り戻した。

この勢いをツールに持っていけるか。実に楽しみだ。

 

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