りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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2020年シーズンを振り返る⑤ UCIワールドランキング「女子」個人20位~11位全レビュー

 

昨年に続き、今年もやります! 女子個人ワールドランキングベスト20レビュー!

女子レースは全然初心者な自分が勉強しながら紹介。間違いも多々あるかと思いますが、そのときはぜひご指摘を!

「自分も女子レース興味あるけど全然知識なくて・・・」な人の助けになれば幸いである。

 

目次

 

↓昨年のランキングはこちら↓

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第20位 マーレン・ローセル(エキップ・ポールカ)

昨年26位、スイス、29歳、TTスペシャリスト

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昨年もヨーロピアンゲーム個人TTで優勝し、今年も2年連続となる国内TT王者に輝いているスイス最強のTTスペシャリスト。

今年はついに世界選手権の舞台で、昨年6位から一気にジャンプアップして2位。終盤まで長くホットシートを守っていたが、最後の最後で女王ファンデルブレッヘンにわずか15秒差で敗れてしまった。

また、リエージュ~バストーニュ~リエージュでの7位のほか、バレンシアナで開催された丘陵~山岳レースでも4位と、登りへの適性も高い選手だ。

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第19位 グレイス・ブラウン(ミッチェルトン・スコット)

昨年190位、オーストラリア、28歳、パンチャー

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なんと言っても今年のリエージュ~バストーニュ~リエージュでの活躍が輝く。

残り30㎞のコート・ド・ラ・ルドゥットで抜け出した元世界王者エリザベス・ダイグナン。彼女の独走に対し、最後の勝負所コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォー・コンで唯一抜け出したのがこの、ブラウンだった。

今年絶好調のアンナ・ファンデルブレッヘンもアネミエク・ファンフルーテンも突き放し、独走するダイグナンにわずか9秒差にまで迫っての2位。昨年世界ランキング190位の「無名」の存在が、突如として台頭した瞬間だった。

そして、男子のリエージュ~バストーニュ~リエージュ「2位」のジュリアン・アラフィリップが直後のブラバンツペイルでリベンジを果たしたように、女子もまた、このブラウンが見事なリベンジ勝利をかましてくれた。

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TT能力も非常に高く、世界選5位。今後もまだまだ注目すべき選手だ。

 

 

第18位 サラ・ロイ(ミッチェルトン・スコット)

昨年87位、オーストラリア、34歳、スプリンター

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ピュアスプリントというよりはクラシック風のレイアウトでの集団スプリントに強いタイプのベルギー的なスプリンター。

その特性を生かし、今年はシーズン終盤の「秋のクラシック」にて大活躍。勝ち星こそ拾えなかったものの、キャリア最大の成果を出したと言えるのでは?

今年は彼女の得意とするイギリスのレースがなかったのは残念。すでにベテランの領域には達しているが、来年更なる活躍を期待したい。

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第17位 アミー・ピーテルス(ブールス・ドルマンス)

昨年6位、オランダ、29歳、パンチャー

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ヨーロッパ選手権を制した昨年と比べるとやや失速した今シーズン。ロンド・ファン・フラーンデレンも、2年前に続く2位と、悔しい結果に終わった。

ただ、彼女自身の成績以上に、彼女の存在がこの最強チームを支えているという点は変わらず。このロンド自体も、チームメートのシャンタル・ブラークが独走する中でファンデルブレッヘンらと共に集団の抑え役をこなし、最後に集団先頭を獲ってチームのワンツーを実現したという意味で完璧な走りだった。

また、今年はトラックでも活躍。マディソン種目にて、キルステン・ワイルドとタッグを組み、昨年に続く世界王者に輝く。東京オリンピックにも出場予定だっけ?

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第16位 シャンタル・ブラーク(ブールス・ドルマンス)

昨年39位、オランダ、31歳、ルーラー

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2017年ベルゲン世界選手権を制した元王者。兼ねてよりオンループ・ヘットニュースブラッドやヘント~ウェヴェルヘム、アムステルゴールドレースなど錚々たるワンデーレースを制し続けていた彼女が、今年はついに、ロンド・ファン・フラーンデレンの頂点に。

この6年間、常にTOP10に入り続けながらも届かなかったチャンスを手に入れた。それはまさにこの最強チームのチーム力のなせる業ではあったものの、与えられたチャンスをモノにして得意の独走力できっちりと逃げ切ったのは、3年前の世界選手権と同じ構図だった。

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そんな彼女だが、来年のアンナ・ファンデルブレッヘンの引退に続き、2022年の春のクラシック終了後の引退をすでに宣言している。その後はチームの監督/コーチに就任するとのこと。

 

 

第15位 デミ・フォラーリング(パークホテル・ファルケンブルク)

昨年21位、オランダ、24歳、パンチャー

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昨年プロデビュー初年度ながらジロ・デッレミリアを勝ち、リエージュ~バストーニュ~リエージュでも3位と素晴らしい成績を残したワンデーレーサー。

今年はその勢いをさらに強め、「女子版ツール・ド・フランス」ラ・クルスで3位にロンド・ファン・フラーンデレン7位、そしてフレーシュ・ワロンヌでも、アンナ・ファンデルブレッヘンがペースアップして集団をバラバラにしていく中、一旦先頭に出て勝利にあと一歩、というところまで迫った。

だが、さすがに女王ファンデルブレッヘンを打ち倒すのはまだ難しかった。残り350mでファンデルブレッヘンに捉えられ、セシリーウトラップ・ルドヴィグにも抜かれての3位となった。

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来年はそんなファンデルブレッヘンのいる最強チームSDワークス(旧ブールス・ドルマンス)への移籍が決まっており、さらなる活躍が期待できるだろう。

 

 

第14位 マビ・ガルシア(アレ・BTCリュブリャナ)

昨年32位、スペイン、36歳、クライマー

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本名はマルガリータビクトリア・ガルシア。

シーズン再開後最初の大きなレースとなったストラーデビアンケで、残り50㎞から形成された先頭集団から抜け出し、独走を開始。

元々いた集団からは3分、そしてメイン集団からは5分ものタイム差をつけ、これはいけるか、と思われた。

だが、ここから怪物が動き出す。5分突き放されたメイン集団から突如アタックしたアネミエク・ファンフルーテン。

あっという間に元先頭集団に追い付くといとも簡単にこれを切り離し、遥か先を進んでいたはずのガルシアに迫った。

 

まさに次元の違う走り。それでも、ガルシアもここから振り落とされないとばかりに背中にしがみつき、ツキイチで走り続けた。

最後のカンポ広場の激坂では自らアタックする姿も見せ、最後まで勝負を諦めない執念を見せたものの、最後は完全に足を止めてしまった。

 

息も乱さず余裕ある姿でフィニッシュ後インタビューを受けるファンフルーテンに対し、息も絶え絶えでゴールするガルシア。

だがそれでも、この怪物に22秒差でフィニッシュしたその走りは見事としか言いようがなかった。3位集団は1分53秒差だっただけに。

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11/29現在、来期の契約チームは未定。年齢が年齢だけに、どうなるのかは不安である。

 

 

第13位 ローレン・ステフェンス(チームティブコ・SVC)

昨年86位、アメリカ、34歳、パンチャー

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様々なレースで上位に入りこみポイントを貯めつつも、突出した強い印象はあまりない・・・そんな選手? プロデビューから8年の長めのキャリアだが、12勝はすべて1クラスということで、やはり「勝利」がなかなかない。
ただ、コリン・リヴェラなども沈む中、アメリカの女子選手の中で最も活躍した選手ということで、注目していきたいところではある。

いや、本当、いいレースで常に上位に入ってはいるんだけどねぇ・・・。

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第12位 ロレーナ・ウィーベス(チーム・サンウェブ)

昨年1位、オランダ、21歳、スプリンター

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昨年は驚きのUCI世界ランキング1位を獲得していた最強ピュアスプリンター。今年は新型コロナウイルスによる中断期間を経てチームをサンウェブに鞍替えし、相変わらず平坦では無双の足で数々の集団スプリントを制していった。

そんな中でも、今年はいつものスプリンターズクラシックの様相をかなり減じていたヘント~ウェヴェルヘムでは苦しんだ。

残り30㎞の最後のケンメルベルクでトレック・セガフレードとWNTプロサイクリングがペースアップ。 11名の先頭集団が出来上がり、ウィーベス率いるチーム・サンウェブは全力でこれを追走した。

しかしわずか8秒、届かなかった。結局、小集団スプリントを制したのはブールス・ドルマンスのヨリーン・ドール。ウィーベスは11位フィニッシュに終わる。

そして2週間後のドリダーフス・ブルッヘ~デパンヌはまさに、そんなウィーベスのリベンジの時であった。

このときも、先行したのはヨリーン・ドールだった。だが、これをコースの左端から猛烈な勢いでウィーベスが追い上げる。

勢いは完全にウィーベスだった。そして、その勢いに焦ったのがドールだった。トラックレーサーとしての性もあるのかもしれないが、ドールは進路を必要以上に左にとってしまい、進路を狭められてしまったウィーベスは落車を避けるために減速せざるを得なかった。

フィニッシュラインを先頭で突き抜けたのはドール。

しかし、一連の動きを上空のヘリカメラから捉えられてしまっていたドールは降格を言い渡され、ウィーベスが2年前4位、昨年2位のこのレースの頂点をついに掴み取った。

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その圧倒的なパワーは来年以降もきっと発揮され続けていくことだろう。すでにサンウェブとは2024年までの大型契約を結んでおり、しばらくは彼女がこのチームの「顔」となり続けるだろう。

 

 

第11位 カタジナ・ニエウィアドーマ(キャニオン・スラム)

昨年7位、ポーランド、26歳、クライマー

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ここ5年勝ち続けてきて、とくにここ3年はワールドツアーレースで常に勝利し続けるなど安定して高い成績を出し続けてきた彼女も、そもそもレース数が少なかったとはいえ今年は勝利なし。ジロ・ローザ総合2位はこれまでのキャリアで最大の成果と言ってよいが、それでも勝てなかったのは残念だ。

実際、ジロ・ローザでは、第2ステージの「ストラーデビアンケ」ステージで圧巻の走りを見せたアネミエク・ファンフルーテンが昨年に続く圧倒的な総合優勝を果たすのかと思いきや、第7ステージのフィニッシュ直前にファンフルーテンがまさかの落車。左手首を骨折し、マリア・ローザがニエウィアドーマのもとに転がり込んできた。

だが、そんなニエウィアドーマに対し、わずか15秒差で「女王」ファンデルブレッヘンが追いかけてきていた。そして迎えたクイーンステージの第8ステージ。

平均勾配8%超えの今大会唯一の山頂フィニッシュで、ラスト3.5kmからアタックしたファンデルブレッヘンの勢いに、ニエウィアドーマはもろくも崩れ去ってしまった。

相手が悪すぎた、としか言いようがない。まだ彼女が頂点を獲るには、早かったようだ。

 

だが、まだ26歳と若い。そして、今年は勝てなかったとはいえ、年々着実に成長しつつある女だ。

今後さらなる進化が起こることは間違いない。

その素敵なスマイルと共に、いつかホンモノのマリア・ローザを身に纏う瞬間を楽しみにしている。

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