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ワウト・ファンアールト、今期シクロクロス初参戦の結果は? 2020-2021シーズン11月最終週2連戦レビュー

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前回の記事でお伝えしたように、先日の11/28(土)11/29(日)の週末に2つの3大シリーズ戦*1レースが開催され、元世界王者のワウト・ファンアールトが今期シクロクロス初参戦を果たした。

その結果を簡単に振り返りつつ、今後のシクロクロスシーズンの展望を確認していく。

 

 

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11/28(土) X2Oトロフェー第2戦コルトレイク

ベルギー・ウェストフラーンデレン州の街コルトレイクで開催された別名「アーバンクロス」。

その名の通り市街地を利用した人工物多めのコースとなっており、ラストが橋の上のフィニッシュ地点に向けて登りスプリントになっているのが特徴。

女子レースではこの登りスプリントを制したルシンダ・ブラントテレネット・バロワーズライオン)が勝利している。

 

女子レースに続き開幕した男子レースでは、ファンアールトが久々の出走ということで2列目からのスタート。直近の成績で決められるこのスターティンググリッドは、スタートダッシュが重要で序盤から位置取り争いで勝敗が決まる恐れもあるシクロクロスではキーとなるポイントの一つ。

だがさすがのファンアールトはしっかり番手を上げていき、すぐに先頭の重要な精鋭集団の中に入っていき、開幕早々調子は決して悪くないところを証明してくれた。

 

レース自体は2周目中盤からキャンバー区間を利用してマイケル・ファントールノートパウェルス・サウザンビンゴール)が抜け出し独走を開始。

全部で9周回するうちの5周目終了時点でファントールノートと追走集団とのタイム差が30秒にまで開くなど、先週のメルクスプラスに続く勝利の可能性がかなり大きくなっていた。

 

しかし、6周目にファントールノートの後輪がパンク。

すぐさまピットエリアでバイク交換したものの、この一連のトラブルによって30秒のリードは失われ、ファンアールト、エリ・イゼルビット(パウェルス・サウザンビンゴール)、ラース・ファンデルハール(テレネット・バロワーズライオン)の3名の追走集団に追い抜かれてしまった。

 

そして先頭に躍り出たファンアールトら3名。

シクロクロス初参戦でいきなり勝利を狙えるか、と期待されたファンアールトだったが、今年のヨーロッパ王者に輝いたエリ・イゼルビットにもやはり意地があった。

 

最後から2周目となる8周目の中盤でペースアップしてファンアールト、ファンデルハールに差をつけ始めるイゼルビット。

そして直後のキャンバー区間にてファンアールトがミスをしてファンデルハールもその煽りを受けて立ち止まってしまったことで、イゼルビットの独走は決定的に。

さらに理由は不明だが最終周回にファンアールトがバイク交換したこともあり、最終的にはファンデルハールにも突き放されてファンアールトは3位フィニッシュ。

開幕戦としては上々の出来。だが、圧倒的な力を見せつけるところまではいけなかった。

 

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11/29(日) UCIワールドカップ第1戦ターボル

チェコ・南ボヘミア州の都市ターボルで開催されたチェコ最大のシクロクロスレース。

登りの頂上に用意されたシケインやライン次第では致命的な遅れが多発するキャンバー区間など難易度の高いレイアウトで、女子レースでは世界王者セイリン・アルバラードアルペシン・フェニックス)がミスを連発し、前日に続きルシンダ・ブラントが連勝を飾った。

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男子レースでは前日に引き続きファンアールトが出場。

さらには来年イネオス・グレナディアーズ入りが決まっている今年のベイビー・ジロ覇者トム・ピドコックが今期初参戦。ファンアールト同様に期待されたが、序盤・中盤でそれぞれミスをして出遅れ、最終的には16位と沈んでしまった。

 

前半戦で8名の先頭集団が形成され、しばらくはそのパックのまま推移。前日覇者イゼルビットもファンアールトもここに含まれていた。

そして8周回中のちょうど半分にあたる4周目でマイケル・ファントールノートが独走を開始。鬼門となったシケインではただ一人、ほぼタイムロスなしの完璧な走りで攻略できていたことで、徐々にそのタイム差を開いていく。

6周目には追走集団からイゼルビットがアタック。すぐさま先頭のファントールノートに追いついて2人旅となったが、最終周回の後半部でいよいよイゼルビットの体力も底をつき、一気にファントールノートが突き放す。

そして、前日の悔しい敗北を晴らすかのような完璧な勝利となった。

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そして3位争いでは元ベルギー王者のトーン・アールツ(テレネット・バロワーズライオン)と一騎討ちとなったファンアールト。

最終周回のキャンバー区間でファンアールトは大きくバランスを崩すが、そこにアールツが巻き添えを喰い、すぐ立て直したファンアールトに対して一度バイクを降りてしまったアールツは一気に遅れる。

結果として幸運にも助けられファンアールトはなんとか前日に続く3位。

ただ、やはり実力が十分に発揮された結果とは言い難い。久々のシクロクロスレースに対し、まだまだ完全に順応仕切ってはいない様子を見せた2日間となった。

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今後の展望

ロードレースシーズンで最高の走りを見せてくれた今年のファンアールト。

その勢いでもってシクロクロスシーズンでも大暴れしてほしいという期待もあったが、さすがに疲労も溜まっていたのか、爆発的な姿を見せることはまだなかった。

とはいえ、実はコルトレイクの前日夜にはフランドリアン・トロフェーの授賞式があったり、(これは他の選手も同様だが)ベルギーからチェコのターボルまで一晩で移動したりと、なかなか万全の体勢とはいかない事情もあった。

それでいて連日表彰台なので、十分すぎる結果なのは間違いない。

 

ただ、やはり気になるのは、ロードレースでも熱い一騎打ちを見せたマチュー・ファンデルポールとの直接対決。

ワウト・ファンアールトの次戦は12/6(日)のスーパープレステージ第5戦「ボーム」だが、ファンデルポールの初参戦は12/12(土)のX2Oトロフェー第3戦「アントワープ」。そしてここにはファンアールトは出場しない予定のため、2人が相まみえるのは今のところ12/23(水)のX2Oトロフェー第4戦「ヘーレンタルス」が最初となるはずだ。

 

そこまでにファンアールトも調子を整え、またファンデルポールも万全の体勢で、激突してくれることを楽しみにしたい。

そしてその中に、エリ・イゼルビットやマイケル・ファントールノート、そしてトーン・アールツなどがどこまで入り込めるか。

 

もしかしたら例年以上に混戦すなわち激アツなシーズンになるかもしれない予感もあり、実に楽しみである。

 

 

次戦スーパープレステージ第5戦「ボーム」は12/6(日)予定。

女子レースは21:00頃、男子レースは22:30もしくは23:00頃スタートのはずで、いずれもGCN passで視聴可能。

ただし日本語実況があるかは未定。

いずれにせよまたりんぐすらいど・のーつのほうで速報レースレポートを書くつもりではいるので、確認していただけると幸いだ。

 

 

若き注目選手たち

最後に、今回の2連戦で台頭してきた若き才能について確認していきたい。

 

まずは男子から。今年のU23王者ライアン・カンプ(パウェルス・サウザンビンゴール)は、今年20歳のオランダ人。

まだカテゴリとしてはU23ながら、新型コロナウイルスの影響でU23レースの多くが中止になっていることもあり、今年はヨーロッパ選手権以外は全てエリートカテゴリのレースに出場。そしてそこで好成績を出し続けている。

たとえばスーパープレステージ第1戦ギーテン(10/11)ではいきなりの6位。第2戦ルッデルフォールデ(10/24)では16位と相応の成績となるが、続くX2Oトロフェー第1戦コッペンベルフクロス(10/31)ではまたも9位とシングルリザルト。

そしてスーパープレステージ第3戦ニール(11/11)で8位、第4戦メルクスプラス(11/22)16位ときて昨日のX2Oトロフェー第2戦コルトレイクではギーテンと並ぶ6位。

今回のUCIワールドカップ第1戦ターボルには出場しなかったものの、ここまでの成果をもってスーパープレステージ総合では10位、そしてX2Oトロフェー総合では7位ということで、エリートクラスに混じってすでに世界トップクラスの活躍を見せている。

ロードレースでもシクロクロスと同じパウェルスサウザンのメンバーとしてベルギーツアーやツール・ド・ワロニーに出場してはいるものの、目立った成績は挙げていない。U23オランダ国内選手権ロードレースでも全く目立たない存在ではある。

だが、若くしてシクロクロスで活躍することは、その先の大きな可能性を生む。この男も、シクロクロスではもちろん、もしかしたらロードレースでも今後台頭しうる選手かもしれない。注目しておこう。

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女子では、ターボルで序盤に形成された6名の集団の中に唯一の非オランダ人として入り込み、その後ルシンダ・ブラントとセイリン・アルバラードが抜け出した後も追走集団の中で食らいつき、最後は4位でフィニッシュすることになるブランカ・ヴァスに注目。

なんとロードレース界トップリーグではまだまだ珍しいハンガリー人であり、今年でまだ19歳。当然U23カテゴリ所属だが、カンプ同様に今年はヨーロッパ選手権以外常にエリートレースを走っている。というか3年前からエリートレースばかり走っていて、2年前にはジュニアの年代なのにエリート国内王者に輝いている。

U23初年度となる昨年は3大シリーズ戦のエリートレースでもシングルリザルトを記録しており、今回のターボルではついにTOP5に。

すでにして世界では名の知れた有力な若手であり、ロードレース界でも今年ハンガリー国内王者に(当然、エリートカテゴリ)。

その他の主要レースにはまだ出場しておらず成績も出てはいないが、男子でも少しずつワールドツアーに現れつつあるハンガリー人選手。女子の方でも存在感を示していくことを期待している。

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以上、11月最終週に繰り広げられたシクロクロス2連戦を振り返ってみたが、いかがだったろうか。

 

もはやシクロクロスがロードレースに与える影響が無視できなくなっている以上、ようやく訪れたこのロードレースオフシーズンも、しっかりと最新のレースをチェックして来シーズンに備えておくべきだろう。

 

今後も、このりんぐすらいどではシクロクロスに注目していくと共に、りんぐすらいどれでぃおでもお世話になっているちゃりよるむさんのブログTwitterでも精力的にシクロクロスを取り扱っていくようなので、チェックしておこう。

chariyorum.com

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次回はスーパープレステージ第5戦「ボーム」は12/6(日)。

見逃すことないように!

 

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*1:シクロクロスにおける最も重要なシリーズ戦。UCIワールドカップスーパープレステージX2Oバドカマー・トロフェー(旧DVVフェルゼクリンゲン・トロフェー)の3つ存在する。詳細は2年前の記事となり恐縮だが次の記事で→シクロクロス初心者による、シクロクロス初心者のための2018-2019シーズンレビュウ第1弾 - りんぐすらいど

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