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シクロクロス初心者による、シクロクロス初心者のための2018-2019シーズンレビュウ第1弾

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今年はシクロクロスがアツい。

 

いや、毎年アツいんだけど、今年はとくにロードへの影響力も大きく、普段ロードしか観ていない層からの注目度も高まっているように感じる。

 

かつては、3度世界選手権を制した男ゼネク・スティバルなんかがシクロクロスからの転向組で注目を集めていた。

今年はストラーデ・ビアンケでシクロクロス世界王者ワウト・ヴァンアールトが3位につける大躍進。

7月のツール・ド・ワロニーではクインテン・ヘルマンスがよもや総合優勝というところにまで達し、8月のアークティックレース・オブ・ノルウェーではマチュー・ファンデルポールが2勝したほか、彼のチームであるコレンダン・サーカスが合計3勝と席巻。

ワールドツアークラスのチームを喰ってしまう活躍を見せていた。

 

来期はこのコレンダン・サーカスがプロコンチネンタルへの昇格が決まっており、ファンデルポール自身もロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)への参加意欲を見せているという噂。

ヴァンアールトは元所属チームであるヴェランダス・ウィレムス(というかGMのニック・ナイエンス)との移籍を巡るいざこざの末に現在は「チームなし」で走る世界王者として、レース以外のところで話題を集めている。

bikenewsmag.com

 

と、いうことで、昨年までは「オフシーズンまで全力で自転車なんて見てられるか!」と思ってほとんど注力していなかったシクロクロスに、今年はさすがにちゃんと見ていかないといけないと思った次第。

と、いうことで、シクロクロス観戦初心者である私が、私自身の勉強も兼ねて今年のシクロクロスシーンを眺めていく。

第1弾となる今回は、基本的なシクロクロスの情報と、これまで開催されているレースの確認をしていこう。

なお、第2弾以降も書かれるかどうかは完全に未定である。

 

少しでも参考になれば幸い。

 

※なお、以下の基礎知識については次のリンク先を参考にした。

その他、過去のレースの内容などもCyclowiredさんの記事を確認しながら記述している。

www.cyclowired.jp

 

 

 

これだけは知っておきたい① 3大シリーズと世界選手権

ここからは今年のシクロクロスを楽しむために最低限必要だと自分が思う基礎知識をまとめてみた。

既に知っているよ!という人は読み飛ばしてもらって結構。

 

まずはレースの種類。

ロードレースでいえば3大グランツールやモニュメントなど、注目すべきレースというのはいくつかあって、このブログを読んでいる人であれば大体の名前は言えることだろう。

シクロクロスにももちろん注目すべきレースというのはある。

ただし、当たり前だけれどロードレースとは名前の付け方やレース群のシステム自体が全然違うため、そのあたりをちゃんと理解しておかないと、「あれ?このレースはどういう位置づけのレースで、選手たちは何を目的にしているんだろう」と混乱してしまうあるいは楽しさが半減してしまうため、しっかり確認しておこう。

 

まず、大前提として、シクロクロスにはロードレースでいう「ステージレース」的なものは存在しない

すべてワンデーレース。その日だけで勝敗がつく。

 

ただし、「シリーズ戦」というのがあって、これは日本のJプロツアーやDAZNでやっていたベルギーの「ナポレオンズカップ」のようなカップ戦・リーグ戦と呼ばれているものとかなり似ている。

要は、8~9個のワンデーレース群が1つのシリーズを形成し、各レースの着順やタイムといった成績の累計によって、そのシリーズの総合優勝を決める、というものだ。

 

 

現在のシクロクロスには「3大シリーズ」と呼ばれる、ロードでいう3大グランツールのような重要性の高い3つのシリーズ戦が存在する。

それが以下の3つである。

 

UCIワールドカップ(以下、WC)

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UCIワールドカップ 2018-2019 スケジュール

 ② スーパープレスティージュ(以下、SP)

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スーパープレスティージュ 2018-2019 スケジュール

DVVフェルゼクリンゲン・トロフェー (以下、DVV)

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DVVフェルゼクリンゲン・トロフェー 2018-2019 スケジュール


日付を見てもらえばわかるように、それぞれ法則性もなくバラバラにレースが開催され、週末の土日で別々のシリーズ戦のレースが開催されるなんてこともザラにある。

選手によっては「こっちのレースはこのシリーズで、このシリーズでは自分が今優位だから本気出そう、でもこっちはそこまで本気出さなくてもいいや」ということもあるため、シクロクロスをより楽しみたければ、「このレースはどのシリーズのレースで、このシリーズでは誰が今優勢なんだろう」というのを理解しておく必要がある。

そんなときに上の表を活用してもらえれば幸いだ。

 

 

そしてまた、この3大シリーズ戦とは別に、世界選手権も当然、存在する。

今年は2/3・2/4の2日間、デンマークのボーゲンセで開催される。

この3大シリーズと世界選手権とを全て制覇することをグランドスラムと呼び、最近では現世界王者のワウト・ヴァンアールトが、2015-2016シーズンで達成している。

昨年、マチュー・ファンデルポールは年間30勝以上を記録し、3大シリーズ全て総合優勝を果たす圧倒的な強さを見せつけたものの、唯一世界選手権だけはヴァンアールトに敗れたことで、グランドスラム達成は叶わなかった。

 

ロードレースで言えばダブルツール並みに難しいというべきか。

いや、もしかしたら「トリプルクラウン」に匹敵するレベルかもしれない。

 

 

これだけは知っておきたい② 現在の注目選手

レースについて学んだあとは、続いて選手について学ぶことにしよう。

多種多様なレースがあり、それぞれに向いた多様な脚質が存在し、覚えなければならない注目選手が無際限に存在するロードレースと比較し、3大シリーズに限れば上位に来る選手は(とくに現在はかなり)限られてくるシクロクロスにおいては、覚えなければならない注目選手というのはそう多くない。

 

以下、現在最も注目すべき4名の選手たちを簡単に紹介していこう。

 

 

マチュー・ファンデルポール(オランダ、コレンダン・サーカス)

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現役最強の男。

昨年は年間30勝以上を叩き出し、3大シリーズ全てで総合優勝を果たしながらも、世界選手権だけは逃した男。

今年はロード、MTBシクロクロス全てでオランダ王者に輝き、シクロクロスヨーロッパ選手権では2年連続となる優勝を果たした。

今年すでに9勝。スーパープレスティージュでは全勝中で、当然総合優勝に最も近い男。ただし、他2つのシリーズ戦では欠場や落車でかなり厳しい状況となっており、今年もグランドスラムには届かなさそう。

まずは世界王者になること。

ロードでも国内選手権だけでなく活躍中で、今年はHCクラスのアークティックレース・オブ・ノルウェーで、ワールドツアークラスの選手たちを差し置いて圧倒的なスプリント力で2勝。

来年は所属チームのコレンダン・サーカスがプロコンチネンタルチームに昇格することで、ロンド・ファン・フラーンデレンでパリ~ルーベなどのモニュメントへの参戦に意欲を示す。

ただし、彼は現在マウンテンバイクにも強い興味を示しており(UCIワールドカップの最初の2戦を欠場したのもそれが理由)、2020年オリンピックもこの種目でのメダル獲得を狙っている様子。

「それが終わった後でもまだ25歳。ロードはそれから10年は走れるんだ」

と、才能溢れる若者はその野望を高らかに宣言している。

www.cyclingnews.com

 

 

ワウト・ヴァンアールト(ベルギー)

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2015-2016シーズンから3年連続で世界王者の座を手に入れている、ファンデルポールと並ぶ現代シクロクロス界の生んだ怪物。

2015-2016シーズンでは3大シリーズと世界王者全てを制覇するグランドスラムを達成。しかし翌年はスーパープレスティージュのみファンデルポールに総合優勝の座を奪われ、そして昨年は3大シリーズ全てを奪われた。

ロードにおいてはプロコンチネンタルチームのヴェランダスウィレムス・クレランに所属していたことで、ライバルのファンデルポールよりも一足先に頭角を現した。

まずは3月のストラーデ・ビアンケでまさかの3位。そして、その後もロンド・ファン・フラーンデレン9位、パリ~ルーベ13位など、ロードのベテランたちと十分に張り合えるだけの実力を示した。HCクラスのデンマーク1周レースでは総合優勝まで手に入れた。

しかしその後、そのヴェランダスウィレムス・クレランの運営母体であるスナイパー・サイクリングと激しく対立。最終的にはチーム離脱という結末に至ったことは、この記事冒頭で紹介した記事に詳しい。

現在は個人スポンサーによる支援を受け、所属チーム無しの状態で走る世界王者という世にも珍しい状況を生んでいるが、やはりしっかりとしたチームのバックアップがないことは想像以上に負担となっているのか、今期のヴァンアールトは正直、精彩を欠いている。3大シリーズでの勝利は未だ、ない。

せっかくロードでも名を挙げつつある彼の名が、来年のビッグレースで見られないのはロードファンとしても寂しい。来年はファンデルポールがロードでも活躍する可能性があるからなおさらだ。

一応現状、ヴァンアールトの弁護士がロードでも堂々と走れるだろうと期待しているようだが、元所属チームからの違約金支払いの訴えも受けている身であり、どうなることか、まったく先が見えないのである・・・今年の世界選手権は大丈夫か、ワウト。

www.cyclingnews.com

 

 

トーン・アールツ(ベルギー、テレネット・フィデア・ライオンズ)

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2016-2017シーズン、すなわちファンデルポールの前のヨーロッパ王者であった。

これまでは正直、勝ちきれないことが多く、ファンデルポール・ヴァンアールトという2人のあまりにも巨大すぎる才能の前に霞むような存在であった。

しかし、今年は3大シリーズの開幕戦となるWCアメリカ2連戦で連勝。ファンデルポール不在とはいえ、世界王者ヴァンアールトを前にしての堂々たる勝利であった。

さらに、その2大巨頭がともに失速した難所「コッペンベルグクロス」で見事に優勝。現在、UCIワールドカップおよびDVVフェルゼクリンゲン・トロフェー共に総合首位を走っており、ヴァンアールトが不調に苦しむ中、ファンデルポールに次ぐ最強格としてその名を轟かせつつある。

今年、せめてワールドカップは獲っておきたい。

 

 

トーマス・ピッドコック(イギリス、TPレーシング)

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シクロクロスをあまり知らないロードファンでも、彼の名前は聞き覚えがあるのではないだろうか。

そう、昨年のベルゲン世界選手権で、ジュニア部門個人タイムトライアルで優勝した青年の名である。シクロクロスでも2年前にジュニア世界王者に、昨年はU23世界王者に、そして今年、U23ヨーロッパ王者になりつつも、エリート部門でファンデルポール・ヴァンアールトといった怪物たちに挑むことを決めた。まだ19歳だというのに。

イギリスが生み出した、新時代の最有力有望株である。

直近のSP第4戦「ガーフェレ」ではファンデルポール、アールツ、ヴァンアールトに次ぐ4位でゴールしており、名実ともにエリート部門上位5名には入る実力の持ち主であると言える。

パリ~ルーベジュニアでも昨年優勝しており、将来的にはロードでの活躍も十分に見込めるだろう。

 

 

 

今年のこれまでのレース結果

最後に、今年(2018-2019シーズン)のこれまでのレース結果を、3大シリーズを中心に確認しておこう。

 

ロードでは世界選手権が行われている頃、アメリカを舞台に3大シリーズ開幕戦となるUCIワールドカップ2連戦(ウォータールー、ジングルクロス)が開催される。

マウンテンバイクシーズン明けの休養を選んだファンデルポールは欠場。彼に次ぐ最強と目されていた世界王者ヴァンアールトの圧勝か、と思いきや、この2連戦を制したのはトーン・アールツであった。

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絶好調のアールツに対し、細かなミスの目立ったヴァンアールト。

泥沼化する移籍問題が、彼の心身に影響を及ぼしていたのかもしれない。

 

 

10月に入ると欧州シクロクロスシーズンもいよいよ本格化。

そんな中、ついにファンデルポールが参戦する。10/6に開催されたブリコクロス*1第2戦「ミューレベーケ」にて、シーズン初参戦にして難なく勝利を掴んだ。

 

衝撃的だったのが10/14に開催されたスーパープレスティージュ開幕戦「ギーテン」。

前日のブリコクロス第4戦で落車し、靭帯損傷と言われていたファンデルポールが、その怪我を全く思わせない圧倒的な走りで、2位のヴァンアールトを30秒以上突き放す完全勝利。

このレースは2位ヴァンアールトに続きトーン・アールツも落車しながらも3位に入り、今年最強の3人が表彰台を独占する結果となった。

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その後もファンデルポールの快進撃は止まらない。

スーパープレスティージュは全戦全勝。

ヴァンアールトもSPでの総合優勝は早々に諦め、その第2戦を欠場。翌日のワールドカップ第3戦「ベルン」に全てをかけた。

すでに第1戦・第2戦を欠場しているファンデルポールにとって、WCの総合優勝はもはや望むべくもない。ヴァンアールトにとってはチャンスといえるのがこのシリーズ戦だった。

しかし、全てをこの日曜日に注いでいたにも関わらず、連戦だったファンデルポールは難なくベルンを勝利。メカトラにも見舞われたヴァンアールトは失意の2位で終わってしまった。

11/4にはヨーロッパ選手権がオランダで開催。

ファンデルポールは昨年に続き連覇を達成し、母国にて欧州チャンピオンジャージ防衛を果たした。

 

 

そんなファンデルポールが初めて弱みを見せたのが、DVVフェルゼクリンゲン・トロフェー開幕戦にあたる「コッペンベルグクロス」。

その名の通り、ロードでもお馴染みの激坂「コッペンベルグ」を使用したこの名物レースにおいて、ファンデルポールは序盤から異様な遅れを見せ始める。

最終的に4分以上遅れてゴールしたファンデルポールは、他2つのシリーズ戦と違って累計「タイム」で勝敗を決めるこのDVVフェルゼクリンゲン・トロフェー総合争いから早くも脱落。

逆に、強さを見せつけたトーン・アールツが勝利し、ワールドカップに続きこのDVVでも総合首位で発進することとなった。

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相変わらず「最強」のファンデルポール。

しかし、彼が弱みを見せたDVVや、欠場したワールドカップ序盤2戦では、トーン・アールツがこれまで以上に強い姿を見せつけ、総合首位に立つ。

一方、世界王者ヴァンアールトは2位こそ繰り返し獲るもののここまで3大シリーズでの勝利なし。苦しいシーズンを過ごしつつある。

 

 

そんな中、先週末にはDVV第2戦およびSP第4戦が行われた。

泥と落ち葉に塗れた、実に「シクロクロスらしい」シクロクロスとなったこの2連戦を勝利したのはやはりファンデルポール。

しかしDVV第2戦「ヤールマルクトクロス」では前半、落車する姿を見せるなど調子が上がらず、むしろローレンス・スウィーク(ベルギー、パウエルスサウゼン・ファストフートサービス)がテクニカルな区間で快走を見せるなど、番狂わせの予感を感じさせた。

が、後半でスウィークが失速。結局は体力でも勝るファンデルポールの圧勝に終わった。

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SP第4戦「ガーフェレ」はスタートからファンデルポールがライバルたちを圧倒。

唯一ついていけたアールツも3週目には千切れ、現役最強の男は文句なしの独走勝利を成し遂げた。

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逆にヴァンアールトはこの日、序盤から完全に失速し、集団の中に埋もれてしまった。

最終的には3位表彰台には登ったものの、明らかに例年と比べ精彩を欠いている様子が見受けられる。

このまま、ファンデルポールに次ぐ位置をキープするどころか、台頭してきたアールツにすらその座を奪われかねない事態に陥っている。

ヴァンアールトの復活、なるか。

 

そして、この「ガーフェレ」で体格の違うエリートクラスの選手たち相手に奮闘し、まさかの4位に入り込んだのが若き才能ピッドコックであった。

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昨年、U23カテゴリで実に10勝を挙げたピッドコックは、エリートクラスに軸足を移した今年はまだ勝利なし。それはそうだ。3世代・4世代違う大先輩たちを相手取っているのだから。

それでいて、「ベルン」に続き3大シリーズで4位にまで登りつめた今回の「ガーフェレ」は、1つのターニングポイントとなるのかもしれない。

今週末はWC第4戦「タボール」とDVV第3戦「フランドリアンクロス」が開催される。

最強ファンデルポールとこれを追うアールツ、不調のヴァンアールト、そして可能性を秘めたピッドコック、この4名を中心に注目しつつ、レースの展開を楽しむことにしよう。

 

 

いかがだっただろうか。

なんとなくルールは見ていれば分かるのだけれど、いまいちレースとレースの関係が分からないとか、どの選手に注目すればいいのかわからない、という、シクロクロス観戦初期に筆者が感じた疑問に答えられるような内容を目指したつもりだ。

もちろん、筆者の主観が多分に入り込んだ記事であるため、内容的な偏りや間違いなども含まれているかもしれない。

もっとこういったポイントが知りたい、とか、いやこれは間違っている、というような部分があれば指摘していただければ幸い。

 

シクロクロスはロードとはまた違った面白さがあるものの、慣れて楽しめるようになるには(ロードほどではないかもしれないが)時間がかかる。

今回の記事を参考にしつつ、少しずつその面白さを感じ取っていけるようになるとよいだろう。

この記事が、その助けに少しでもなっていれば嬉しい。

 

では、これからも良きシクロクロス観戦ライフを!

 

 

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*1:3大シリーズに次ぐ格をもつシリーズ戦。