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獲得UCIポイントで見る ツール・ド・フランス2022 全チームランキング&レビュー(22位~12位)

 

歴史に残る激戦となった今年のツール・ド・フランス。

その出場全22チームを、大会中に獲得したUCIポイントでランキング。

最も活躍したチーム、そしてうまくいかなかったチーム・・・これを客観的な指標で見ていこう。

 

まず前半戦は22位から12位。今年、正直うまくいかなかったチームたちである。プロチームは仕方ないが、いつもなら上位常連のチームも何チームかこちらに入っており、その詳細を探っていこう。

 

Youtube・Podcastでも全ステージのレビューを行っております!

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目次

 

全ステージレビュー記事はこちらから

【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2022 第1週 - りんぐすらいど

【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2022 第2週 - りんぐすらいど

【全ステージレビュー】ツール・ド・フランス2022 第3週 - りんぐすらいど

 

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第22位 ロット・スーダル 15pt.

2019年 6位 790pt.

2020年 14位 305pt.

2021年 23位 25pt.

逃げ一覧

  • アンドレアス・クロン(第14・18ステージ)
  • フィリップ・ジルベール(第10・16ステージ)
  • フレデリック・フリソン(第8ステージ)
  • ティム・ウェレンス(第16ステージ)

 

昨年も最下位で散々だったが今年は輪をかけて悲惨な状態に。カレブ・ユアンは昨年と違って完走したものの、そもそもピュアスプリントの機会が少ない中で、なぜかいつものトレインメンバーを連れてこなかったこともあり全く存在感を示さなかった。

昨年のルーベ2位フェルメールシュもウェレンスもジルベールも逃げ強者ファンムールも、非常に有能な選手たちばかりが集まっているにも関わらずのこの結果は、もはやチーム自体の状態に問題があるのではないかとすら思ってしまう。クロンもステージ4位1回で満足できる選手でもない。そもそも逃げた数が少ない。

果たしてワールドツアークラスは維持できるのか。不安極まりない状況である。

 

 

第21位 B&Bホテルス・KTM 25pt.

2020年 16位 185pt.

2021年 18位 90pt.

逃げ一覧

  • アレクシー・グジャール(第5・16・19ステージ)
  • シリル・バルト(第2・7・16ステージ)
  • フランク・ボナムール(第9・14・18ステージ)
  • ピエール・ロラン(第2・10ステージ)
  • セバスティアン・シェーンベルガー(第12ステージ)

 

このチームは妥当な順位。というか過去2年が割と良すぎた?

ロランは前哨戦ドーフィネで山岳賞を取るなど調子良かったので期待していたがツール本戦ではあまり目立てなく、昨年逃げで存在感を示していたボナムールも今年は地味だった。グジャールは相変わらずの逃げスペシャリストぶりを発揮して結構目立てていたけれど。

ただ、全員完走した割にポイントを取れたのがシェーンベルガーだけだったというのは割と驚き。キャリア10年目の28歳にしてグランツール初出場という、今回のメンバーの中でも最も実績のない選手だったはずの彼が、チームで最も総合成績の良い選手だったというのは意外である。

今後もしかしたらその名がより目立つ瞬間がくるかも?

 

 

第20位 トタルエナジーズ 85pt.

2019年 21位 30pt.

2020年 22位 25pt.

2021年 22位 40pt.

逃げ一覧

  • エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(第5・9・10・18ステージ)
  • マチュー・ブルゴドー(第16・18・21ステージ)
  • ピエール・ラトゥール(第9・11ステージ)
  • マチェイ・ボドナル(第11ステージ)

 

昨年までは最下位クラスをずっと進んでいたツール常連プロチーム。今年も決して良くはないが、それでも新加入ペテル・サガンが多少なりとも稼いでくれた。

実際、前哨戦ツール・ド・スイスも3年ぶりに勝利してやってきたサガン。今回も4位が2回、5位が2回と、決してものすごく悪いわけではない。存在感は示してくれた。

まだまだ諦めず、戦い続けることを願っている。

他にも、こちらはほとんど活躍を諦めていたボアッソンハーゲンが、第5ステージの「パリ〜ルーベ」ステージで3位に入り込む大健闘。

名選手を集めてはやや肩透かしの状態が続く近年のトタルエナジーズだが、今年は前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでアレクシー・ヴィエルモが勝利するなど、なかなか良い傾向が続く。

その勢いでラトゥールにもまたスポットライトが当たってほしいところ。

 

そういった元ワールドツアー組以外にも、今年急成長中のブルゴドーも積極的な逃げを見せていた。ただ、彼にはぜひ近いうちのグランツール勝利を達成してほしいところ。

 

 

第19位 コフィディス 110pt.

2019年 20位 60pt.

2020年 13位 330pt.

2021年 13位 355pt.

逃げ一覧

  • シモン・ゲシュケ(第7・9・11・14・16・17ステージ)
  • ヨン・イサギレ(第9・10・11ステージ)
  • アントニー・ペレス(第4・12ステージ)
  • バンジャマン・トマ(第10・18ステージ)
  • ピエールリュック・ペリション(第17ステージ)

 

毎年順調に総合順位を伸ばしていたギヨーム・マルタン。昨年はついに総合8位。今年はさらに上を目指せるか・・・と思っていた中で、Covid-19に罹患したことで第9ステージを未出走でリタイア。彼にとってこれまで出場してきた9回のグランツールで初めてのリタイアとなってしまった。

ただ、それでも他の選手たちが結構活躍してくれた。とくにシモン・ゲシュケ――2015年ツールで区間勝利し、その後はトム・デュムランのジロ・デ・イタリア総合優勝などをアシストした仕事人――が山岳賞獲得に向けて尽力してくれた。

最終的には総合優勝者ヨナス・ヴィンゲゴーに奪われてしまったが、総合勢以外では文句なしの首位ということで、成績には残らない魅力的な走りを見せ続けてくれた。

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あとは今年新加入のバンジャマン・トマ。元トラック・オムニアム世界王者でもあるスピードマンの彼は、実に積極的な逃げと終盤のアタックでその名をよく轟かせた。今年はツール以外でもその名を聞く場面も多く、アグレッシブさNo.1選手である。

が、なんだろう、男子のシュテファン・クンやビッセガー、女子のマーレン・ローセルのようなスイス系ルーラーに多い印象でもあるのだけれど、アグレッシブなんだけどその中で常に積極的に前を牽きすぎて勝機を逃すことが多い気がする。今回も第10ステージで勝利したマウヌス・コルトを含んだ追走集団を先頭に追い付かせたのはトマの尽力であった。が、それがゆえに彼は勝負に絡めなかった。

見る側としてはレースを面白くしてくれるとてもありがたい存在だが、彼自身の大きな勝利も見てみたい。

 

 

第18位 モビスター・チーム 175pt.

2019年 4位 1160pt.

2020年 7位 740pt.

2021年 9位 570pt.

逃げ一覧

  • マッテオ・ヨルゲンソン(第10・13・16・18ステージ)
  • カルロス・ベローナ(第9・18ステージ)
  • グレゴール・ミュールベルガー(第14・17ステージ)
  • ゴルカ・イサギレ(第16・18ステージ)
  • イマノル・エルビティ(第7ステージ)
  • エンリク・マス(第18ステージ)
  • ネルソン・オリヴェイラ(第12ステージ)

 

昨年はツール総合6位、ブエルタ総合2位と、「アルベルト・コンタドールの後継者」として復調の兆しを見せていたマスだったが、今回は一時総合8位にまで浮上するも、そこからなかなか良い動きは見せられず、最終的に第19ステージでCovid-19陽性によりDNS。前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも山で早々に落ちる姿も見せており、苦しい状況が続いてしまっている。ブエルタで挽回なるか。

一方、若きアメリカの才能マッテオ・ヨルゲンソンが、今シーズン冒頭のツール・ド・ラ・プロヴァンス総合4位や前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合13位などの勢いをそのままに、今回も逃げに総合にと活躍してくれた。今後の成長が楽しみ。

それ以外にもチーム全体でアグレッシブに逃げる展開。かつてのグランツール総合上位常連チームの見る影はあまり見られなくなっているが、新たな世代による新たな魅力を見せられるチームになっていってほしい。

 

 

第17位 バーレーン・ヴィクトリアス 230pt.

2019年 11位 365pt.

2020年 4位 825pt.

2021年 4位 960pt.

逃げ一覧

  • ディラン・トゥーンス(第7・11・16・17ステージ)
  • フレッド・ライト(第8・10・13・19ステージ)
  • ルイスレオン・サンチェス(第9・10・14ステージ)
  • マテイ・モホリッチ(第18・19ステージ)
  • カミル・グラデク(第11ステージ)
  • ダミアーノ・カルーゾ(第16ステージ)
  • ヤン・トラトニク(第21ステージ)

 

ここ数年、ある意味で最強チームの一角だったこのバーレーン・ヴィクトリアス。今大会はジャック・ヘイグとダミアーノ・カルーゾというダブルエース体制で挑み期待も多かっただろうが・・・結果としては正直残念なものとなってしまった。

最も活躍したのが大ベテランのルイスレオン・サンチェスという時点で、苦しい状況。トゥーンス、モホリッチといった実力派選手たちも積極的に動いてはくれたが、結果を持ち帰ることはできなかった。

その中で、今後も含めて注目の走りを見せてくれたのがフレッド・ライト。今年23歳のイギリス人で、元はCCCチームのトレーニーを経験していたが、2020年に現チームでプロデビュー。かつては登れるスプリンターのようなイメージだったが今年はロンド・ファン・フラーンデレンの終盤で先頭付近で残り最終的には7位など、優れたタフネスぶりを発揮。今大会もそれこそサンチェスが活躍した第10ステージなんかでは、そのサンチェスがとくに終盤アタックで抜け出したあと、残った追走集団で危険な追走飛び出しを抑え込むために存分に働く姿が印象的で、今大会最もバーレーン・ヴィクトリアスらしい強さを創出した選手の1人であった。

今回は残念だったが、今後クラシック含めこの選手がチームの中心選手になっていく可能性を感じさせた。これからも注目し続けていくべき選手だ。

 

 

第16位 AG2Rシトロエン・チーム 245pt.

2019年 12位 335pt.

2020年 15位 216pt.

2021年 7位 785pt.

逃げ一覧

  • ブノワ・コスヌフロワ(第9・14・18ステージ)
  • ボブ・ユンゲルス(第9・17・18ステージ)
  • スタン・デウルフ(第18・21ステージ)
  • ミカエル・シェレル(第11ステージ)

 

昨年総合4位のベン・オコーナーは今年も絶好調だった。前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネではプリモシュ・ログリッチとヨナス・ヴィンゲゴーに唯一食らいついていける存在であった。彼らやポガチャルに勝つことは難しくとも、総合表彰台は十分に狙えるだけの男であった。

しかし第8ステージで落車。臀筋を断裂し、そのまま2週目に入らずにリタイアを決断した。そもそも第5ステージの石畳ステージでも大きくタイムを失うなど苦しんではおり、今回のツールは悔しい結果となってしまった。

だが、元々総合は決して強くは狙っていないチーム。それよりもコンスタントにステージ勝利を重ね続けていることがこのチームの特長であり、今回もボブ・ユンゲルスがそれを叶えることとなった。

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そう、ユンゲルス。かつてジロの新人賞を2年連続で獲り、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュも制し、北のクラシックでも才能を見せたオールラウンダー。

新時代の中心を担うと思われていた彼が、ここ2年ほど病気などで苦しみ、一気に最前線から姿を消してしまった。

そんな彼が前哨戦ツール・ド・スイスから少しずつ調子を取り戻していき、今回まさかの逃げ切り勝利。しかも厳しい山岳ステージで、残り60㎞からの独走。実に彼らしい勝ち方であった。

最終的にも総合12位と、かつての強さを完全に取り戻したかのような成績。再びオールラウンダーとして、少しずつまたキャリアを積んでいってほしい。

 

 

第15位 クイックステップ・アルファヴィニル 285pt.

2019年 2位 1540pt.

2020年 6位 750pt.

2021年 3位 1115pt.

逃げ一覧

  • マッティア・カッタネオ(第8・11・18ステージ)
  • ミケルフローリヒ・ホノレ(第15・16・19ステージ)
  • カスパー・アスグリーン(第7ステージ)
  • アンドレア・バジョーリ(第11ステージ)
  • フロリアン・セネシャル(第18ステージ)

 

初日のまさかのイヴ・ランパールトの勝利とマイヨ・ジョーヌ。そして2日目のファビオ・ヤコブセンの圧倒的な強さによる勝利。そこまでは良かった。

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だが、第3ステージのヤコブセンのフィニッシュ前コースアウトから歯車が狂い始めた。そもそもまともな集団スプリントの機会がほとんどない中、ヤコブセンの体調も芳しくなかったのか多少の登りでずるずると落ちていく姿が見られ、勝負に参加することすら叶わなかった。

ミケル・モルコフも途中でタイムアウトでリタイアし、彼もおそらくは万全のコンディションではなかったのだろう。

ヤコブセンが苦しいときはセネシャルがエースを務め、カッタネオも逃げで頑張るが、結果はついてこなかった。春のクラシックに続き、クイックステップ帝国の崩壊を思わせる苦しい3週間となってしまった。

ただ、ブエルタはここから挽回ができるはずだ。リエージュ〜バストーニュ〜リエージュに続きクラシカ・サンセバスティアンも圧倒的な勝ち方をしてみせた絶好調レムコ・エヴェネプールが乗り込み、ジュリアン・アラフィリップもおそらく参戦予定。

苦しくても、上手くいかなくとも、そこから改善していくのがこのチームの魅力。じっくり見守っていこう。

 

 

第14位 トレック・セガフレード 285pt.

2019年 9位 410pt.

2020年 3位 975pt.

2021年 12位 370pt.

逃げ一覧

  • クイン・シモンズ(第6・10・13・14・17・19ステージ)
  • マッズ・ピーダスン(第7・10・11・13ステージ)
  • ジュリオ・チッコーネ(第7・12・17・18ステージ)
  • トニー・ギャロパン(第11・16・18ステージ)
  • ジャスパー・ストゥイヴェン(第9・19ステージ)
  • バウケ・モレマ(第14ステージ)

 

序盤はデンマーク人ピーダスンに地元勝利を捧げるべくストゥイヴェンがさすがのリードアウト力を披露。フィニッシュ直前で先頭を奪うまでは良かったが、流石に相手が悪すぎた。

結局デンマークでの勝利は得られなかったが、代わりに第13ステージでは見事優勝。集団スプリントの恐れもあったステージだが、一緒に逃げに乗ったシモンズが素晴らしい牽引を見せて集団とのタイム差をキープ。最後は残り12.5㎞地点でピーダスン自ら加速し、シュテファン・クンやフィリッポ・ガンナなど危険な選手を振り落とす。

最後は3名での小集団スプリント。元シャンゼリゼ2位の実力を遺憾なく発揮し、完勝した。

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シモンズはそれ以外にもひたすら逃げに乗り、そのタフさを遺憾なく発揮。元々2019年のU23世界王者であり、2020年に19歳でプロデビュー。すなわち、レムコ・エヴェネプールを踏襲するキャリアを持ち期待された天才だったが、ここまでは彼ほど華々しい成績を出してはいない。

だが、実力は確かに高いのだということを証明した3週間。ここから20代の中盤、そして後半にかけて、堅実に成績を積み上げていきそうだ。

チッコーネも今大会は完全に総合は忘れ挑む。ジロに続くステージ優勝はなし得なかったが、第3週では本来の力を取り戻しポイントを収集。最終的には山岳賞3位と、爪痕を残した。

今後総合系として大成していくことを目指すのかどうかは分からないが、プレッシャーを感じすぎず伸び伸びと走ってほしいところ。

 

 

第13位 アスタナ・カザフスタンチーム 430pt.

2019年 16位 165pt.

2020年 5位 790pt.

2021年 10位 430pt.

  • シモーネ・ヴェラスコ(第10・16ステージ)
  • ジョセフロイド・ドンブロウスキー(第9ステージ)
  • アレクセイ・ルツェンコ(第17ステージ)
  • アレクサンドル・リアブシェンコ(第18ステージ)

 

開幕前からその厳しさは悟っていたが、そもそも逃げに乗ることすらままならず、どこよりも目立つことのできなかったチームかもしれない。唯一アレクセイ・ルツェンコが昨年に続く総合シングルリザルトということでなんとかこの位置に。

そのルツェンコは本当に素晴らしい。昨年は驚きだったが、それでもやはり彼のことはどこかエスケープスペシャリストとしてのイメージしか持てなかったが、今回で本物であることをさらに示した。

1週目はまだそこまででもなかったが、第11ステージのガリビエ〜グラノン峠のあのあまりにも厳しいステージで区間8位に入ったことが驚きであった。今後さらに伸ばしていく素質も十分にある。

ただ本当、それ以外のメンバーがあまりにも寂しすぎた。パンチャータイプの新加入ヴェラスコが総合31位とかは結構すごいとは思うのだが、それよりはやはりステージ上位に名前を見せてほしかったところ。

 

 

第12位 イスラエル・プレミアテック 355pt.

2020年 21位 35pt.

2021年 19位 65pt.

逃げ一覧

  • ユーゴ・ウル(第9・13・16・18ステージ)
  • サイモン・クラーク(第5・10ステージ)
  • ヤコブ・フルサン(第6・14ステージ)
  • クリスツ・ニーランズ(第11・14ステージ)
  • マイケル・ウッズ(第16・18ステージ)
  • オメル・ゴールドスタイン(第9ステージ)
  • クリス・フルーム(第12ステージ)

 

2014年にサガンの名を冠して設立され、2017年からはプロコンチネンタルチームに昇格。そして2020年からはワールドツアー入りを果たした、カナダ系イスラエル人のオーナー、カナダのスポンサー、そしてイスラエル若手育成を掲げるチーム。

地味だが味のある選手を多く抱え個人的にも結構好きなチームだったが、創設以来ツール・ド・フランスでの勝利はなし。しかし今回はマイケル・ウッズも連れてきており、彼の手によりチーム初のツール勝利は今度こそ達成されるだろうーー

と、思っていたら、早くも第5ステージで、サイモン・クラークが実現。そりゃ確かに彼も非常に安定感のある勝利ゲッターではあるが、石畳ステージでそれを成し遂げてしまうのは驚きであった。ニールソン・パウレスの残り1㎞のアタックをエドヴァルド・ボアッソンハーゲンが捨て身の追撃で引き戻してくれたことが勝因ではあゆが。

さらに、ユーゴ・ウルがとにかくひたすら強かった。第13ステージでも逃げ切り集団に残っていたが、その時点ですらまさかこのあとツール勝利に繋がるとは思ってもいなかった。だが、第16ステージ。最初の1級山岳の下り、テレビ中継でも別の企画をやっていて小さくなっていたライブ中継の画面の中で、ひっそりと集団から抜け出していた。そのまま一人でミュール・ド・ペゲールに挑み、その激坂をまさか単独先頭のままこなすとは。

その山頂さえ越えてしまえば、カナダTT王者の彼を止められるものはいなかった。そのまま、ロードレースでは初の勝利。10年前に亡くなった弟へと捧げる勝利を掴み取った。

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その後もウルはトップ選手たちに食らいつく走りも見せて最終的に総合24位。

今後もさらなる躍進を期待できるのか?

 

そして何と言ってもフルームだ。昨年、カヴェンディッシュがエディ・メルクスの記録に並ぶという事実を、1年前に心から信じることのできた人がどれほどいるか。

同じように、クリス・フルームが再びツール・ド・フランスの山岳ステージで勝利できるということを1年前に心から信じることのできた人がどれくらいいるか。

しかしカヴは成し遂げた。そして、フルームもまた、チッコーネやパウレスが脱落する中、1人で先頭を追い続け、ラルプ・デュエズで区間3位を記録した。

不可能などない。限界なんてものは誰にも決められない。

クリス・フルームの区間3位もまた、今年のツール・ド・フランスが見せてくれた美しき瞬間の1つであった。

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