「平穏」な第2週。とくに総合争いにおいてはその予想を大きく離れることはなかった。
が、やはりこの6日間においても数多くのドラマがあった。マチュー・ファンデルプールを倒した男ビニヤム・ギルマイ、ここまで勝てなかったイタリア人による鮮烈なる2連勝。グルパマFDJの最強トレイン、そしてジェットコースター・ステージでの激しい展開。
総合争いの「主役」たちにとっては決して派手な動きが巻き起こる1週間ではなかったものの、それ以外の、グランツールを彩る「脇役」たちによるドラマが繰り広げられた1週間ではあった。
その6日間の、レースの展開のポイントを振り返っていく。
各ステージの詳細は以下のレースレポートで
目次
- 第10ステージ ペスカーラ~イエジ 196㎞(丘陵)
- 第11ステージ サンタルカンジェロ・ディ・ロマーニャ 〜 レッジョ・エミリア 203㎞(平坦)
- 第12ステージ パルマ 〜 ジェノヴァ 204㎞(丘陵)
- 第13ステージ サンレモ 〜 クーネオ 150㎞(平坦)
- 第14ステージ サンテナ 〜 トリノ 147㎞(丘陵)
- 第15ステージ リヴァローロ カヴァネーゼ 〜 コーニュ 177㎞(山岳)
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第1週の全ステージレビューはこちらから
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第10ステージ ペスカーラ~イエジ 196㎞(丘陵)
「最強の2人」によるマッチスプリント
アドリア海沿いを北上する前半部分はオールフラット。そこから少し内陸に寄り道する後半はアップダウンが激しくなる。
そのコースレイアウトに合わせるように、前半の無風のような展開に対して、ラスト20㎞は出入りの激しい混沌とした打ち合いが展開された。
それこそ2019年ツール・ド・ラヴニール覇者のトビアス・フォス(ユンボ・ヴィズマ)や今年躍進中の若手パンチャー、アレッサンドロ・コーヴィ(UAEチーム・エミレーツ)、そしてヴィンツェンツォ・ニバリやサイモン・イェーツまでもが参加する激しい動きの連続に、アルノー・デマールやジャコモ・ニッツォーロなどのスプリンター勢は全滅。
残り4.7㎞地点では、その中からついにマチュー・ファンデルプールがアタック。ダヴィデ・フォルモロが追いすがろうとするが突き放され、ファンデルプールの危険な独走が始まった。
これをしっかりと抑え込んだのがビニヤム・ギルマイだった。みずから集団の先頭に立って全力追走。残り3㎞で、なんとかファンデルプールを引き戻す。
そこからもまた、リチャル・カラパスやマグヌス・コルトなど強力な選手たちによるアタック合戦が繰り広げられる。
それでも、誰も抜け出すことのないまま、ラスト1㎞を迎える。
激しいクラシックレースのような展開で傷ついた小集団によるスプリント決戦。残り450mまで、アンテルマルシェとボーラを中心にゆったりとしたペースで突き進んでいく。
残り450m。集団の右側にいたドメニコ・ポッツォヴィーヴォがスプリントを開始。このすぐ後ろにマチュー・ファンデルプールがつき、さらにビニヤム・ギルマイがこのファンデルプールの右隣についた。
先に仕掛けたのはギルマイの方だった。残り350m。すぐさまファンデルプールもその後輪を捉える。
一度はギルマイの横に並び立ち、勢いでは勝っていたように思えたファンデルプール。だが、ギルマイはそれでもなお、失速することなく加速を続け、最後はファンデルプールが先に折れた。
項垂れ、そしてギルマイに向けて右手を挙げ、その力を讃えるサムズアップを掲げた。
これを見てギルマイも前を向き、両腕を天に掲げ、歓喜を爆発させた。
黒人アフリカ人による初のグランツール勝利。今年のヘント~ウェヴェルヘムに続き、歴史を創りつつある男、ギルマイ。
そもそも、マチュー・ファンデルプールとのマッチスプリントを制したということがあまりにも衝撃的である。第1ステージのときにも思ったが、引き続き、来年のロンド・ファン・フラーンデレンのフィニッシュで、同じようにファンデルプールとマッチアップしていたとしても何も驚くべきことではないかもしれない。
そしてこの勝利でマリア・チクラミーノ争いにおいて首位デマールに3ポイント差まで迫り、この点においてもかなり白熱した展開が楽しめそうだ・・・と思っていたが、なんと表彰台にて開けたコルクが目に当たり、病院に運ばれる事態に。
最終的に翌日のステージDNSを選択したギルマイ。鮮烈なる勝利と歓喜の翌日、まさかの事態に見舞われることとなった。
だが、歴史は刻んだ。ゆっくりと体を休め、再び世界のトップステージに舞い戻ってくることを期待している。
第11ステージ サンタルカンジェロ・ディ・ロマーニャ 〜 レッジョ・エミリア 203㎞(平坦)
「意外」な大集団スプリント
実にジロ・デ・イタリアらしいオールフラットステージ。横風も警戒されたが、一瞬カレブ・ユアンが遅れる姿が見られただけで、それもすぐ復帰し、問題なく大集団スプリントに。
いや、問題なくはなかった。残り57㎞地点で不意を突く形で抜け出したドリース・デボント(アルペシン・フェニックス)が、そのまま独走を続け残り10㎞を切っても20秒差。その後もそのタイム差が、なかなか縮まらない。
元ベルギー王者の逃げスペシャリスト。大金星、なるか——が、それを許さないのが絶好調のグルパマFDJ。残り1.3㎞でなんとか、デボントを吸収する。
そして残り800mからはここまでのデマールの勝利の立役者にもなってきたラモン・シンケルダムが牽引を開始。
しかしこの日のシンケルダムは、これまでのステージのような圧倒的な力は見られず、残り400mの左カーブでクイックステップのベルト・ファンレルベルヘに被せられ、戦と支配を奪われてしまった。
そこで飛び出す、マキシミリアーノ・リケーゼ。これを呼び水として、アルノー・デマールが残り300mちょっとのかなり早い段階で最終発射台ジャコポ・グアルニエーリの背中から飛び出してしまう。
追い風気味ということで行けるとは思ったのだろうが、それでも遠すぎた。結局フィニッシュに至る前に失速を開始してしまう。
そして狙い通りその後輪をしっかりと捉えていたフェルナンド・ガビリアが完璧なタイミングでスプリントを開始し、デマールを追い抜いて先頭に立った。
ここまで3位と2位には入り込み、良い走りをしながらも勝てずにいた男、ガビリア。
その彼がついに——と思っていた、残り75m。
このガビリアの背後にいつのまにかついていたアルベルト・ダイネーゼが、最後に驚異的な加速を見せてギリギリでガビリアを差し切ってしまった。
元SEGレーシングアカデミーで2020年にプロデビュー。同年のヘラルドサン・ツアーでいきなりのプロ勝利を飾り多大な期待が寄せられたが、そこからしばらく、沈黙。
だが昨年のブエルタ・ア・エスパーニャで6回のシングルリザルトを経験するなどを経て、今回まさかの勝利。2020年の栄光のあと、有力選手の流出や明らかになるチーム内トラブルなど、苦しい立場に立たされていたDSMにとっても、希望を感じさせる勝利となった。
第12ステージ パルマ 〜 ジェノヴァ 204㎞(丘陵)
25名の大規模逃げ集団による争い
綜合争いが起きるほど厳しくなく、かつスプリンターにとっても残れるか微妙なレイアウトということで、25名の大規模逃げ集団が形成される逃げ切りステージとなった。総合勢にとっては前日に続く休息日に。
その逃げメンバーの中にマチュー・ファンデルプールも入り込んでいた。が、単独で逃げ集団に入って徹底的にマークされた結果勝利を逃した第8ステージと違って、今回はステファノ・オルダーニ、オスカル・リースベーグといったチームメートを2人入り込ませている。実際、第8ステージの後、ファンデルプールはチームに苦言を呈したという。自分一人だと勝てない。メンバーがいることで、自分が囮役になって、彼らを勝たせることができるのだから、と。
その言葉通り、この日、あからさまなくらいにアタックを連発し集団をかき乱し続けたファンデルプール。その流れの中、残り55.8㎞。3級山岳ラ・コッレッタ(登坂距離9㎞、平均勾配4.4%)の登りの途中で、昨年のクラシカ・サンセバスティアン4位のロレンツォ・ロータ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)がアタック。
そこに昨年ツール・ド・ラヴニール4位のハイス・レームライズ(ユンボ・ヴィズマ)と、そしてステファノ・オルダーニがしっかりとここに食らいついていった。
そのまま、3名が先頭を駆け抜けていく。バウケ・モレマやウィルコ・ケルデルマンが含まれる4名の追走集団が懸命にこれを追いかけるが追いつかず、最後はロータ、レームライズ、オルダーニの3名によるスプリント決戦に。
その中で最も有利なのは、ジロ・デ・イタリアやブエルタ・ア・エスパーニャでシングルリザルトを連発している「スプリンター」のオルダーニ。
スプリント争いでは劣勢に立たされるであろうクライマーのレームライズは残り1㎞の鋭角カーブをうまく使って抜け出しにかかるが、オルダーニがロータと牽制に陥ることなくしっかりと踏んでこれを引き戻し、最後は残り300m過ぎ。再び最初に仕掛けたレームライズのスプリントを難なく追い抜き、食い下がるロータを月う話ながら、期待通りの勝利を掴み取った。
第13ステージ サンレモ 〜 クーネオ 150㎞(平坦)
「最強」スプリントチーム
アルプスの麓クーネオへと至るフィニッシュラインは、標高こそ高いものの、登りの数は多くはなく、「集団スプリント」ステージとなっている。
逃げは5名(のちにタリアーニが脱落して4名)。最も総合でタイムがいい選手でも50分遅れのパスカル・エーンクホーンということもあり、集団はスプリンターを抱えるチームを中心に牽引。じっくりと、少しずつタイム差を縮める予定であった。
が、意外とそのタイム差が縮まらない。残り30㎞を切ってタイム差は3分以上。集団も慌て始め、クイックステップからはマウロ・シュミット、イスラエル・プレミアテックからはアレッサンドロ・デマルキや最終発射台のリック・ツァベル、そしてグルパマFDJからはイグナタス・コノヴァロヴァスが先頭牽引を担い、先頭4名を全力追走する。
残り7㎞でタイム差49秒。残り4㎞でも32秒。
残り1.6㎞で15秒。きわどいタイム差。
だが、先頭4名も飛び出しと吸収、牽制が続き思うようにペース維持が図れない。
そして残り1㎞。
集団はラモン・シンケルダムが先頭。このペースアップに対抗できるチームはなく、集団は縦一列。シンケルダム、デマール、リケーゼ、ガビリア、ニッツォーロ、バウハウス、カヴェンディッシュ、ダイネーゼ、コンソンニの順。アシストを残せているチームはほとんどいない。
残り500mでシンケルダムが仕事終了。先頭は最終発射台ジャコポ・グアルニエーリにバトンタッチ。逃げ集団はすべて吸収し、このタイミングで3番手にいたマキシミリアーノ・リケーゼが飛び出してガビリアを牽き上げようとするが、ガビリアはデマールの背後に残ることを選択。
残り200m手前。ポジションを落としていたカヴェンディッシュが横に飛び出して加速し、自分の前にいる数名を飛ばしてデマール、ガビリアの背後を獲ろうとする。
だがこのタイミングでデマールがスプリントを開始。
残り180m。当然ガビリアもここに食らいつくが、早すぎるタイミングで最終的に失速したデマールを追い抜けた第11ステージと違い、この日は彼にとって完璧すぎる残り距離。ガビリアは彼の横に並ぶこともできず、その背後に沈んだまま、悔しがることもできずに敗北した。
そしてガビリアの背後についていたカヴェンディッシュは残り100mで発射。バウハウスもここで一気に上がっていき、カヴェンディッシュすら抜いてデマールに迫っていく。
それでも、デマールは先頭を譲らなかった。今大会3勝目。この日は、チームのアシストが完璧に機能した結果の勝利となった。
第14ステージ サンテナ 〜 トリノ 147㎞(丘陵)
第2週最大の激戦が繰り広げられる
ミラノ~トリノ(登坂レース時)でも有名なスペルガ大聖堂への登り、そして実質的な登りとしては登坂距離2㎞・平均勾配11.6%・最大勾配20%という凶悪なマッダレーナ峠を含む周回コースを使用したアップダウンステージ。
標高自体は最大でも700m弱とそこまで高くはないものの、リエージュ~バストーニュ~リエージュやイル・ロンバルディアにも近い厳しいステージレイアウトとなっている。
そして、それゆえに、この日は(ある程度予想していたが)ある意味第2週で最も激しい展開に。最初にアレッサンドロ・コーヴィやディエゴ・ローザ、イバン・ソーサなどを含む12名の逃げが出来上がったものの、残り83㎞地点から始まる周回コースの入り口である下り区間。鋭角コーナーやスピードバンプなどが連続するこのテクニカルな下りで、ボーラ・ハンスグローエが集団の先頭に数を揃えて一気にペースアップ。
ジョヴァンニ・アレオッティ、さらには最初逃げに乗っていたベン・ツヴィーホフも使って加速したボーラの攻撃で、総合16位のヒュー・カーシー、総合11位のテイメン・アレンスマン、総合10位のアレハンドロ・バルベルデ、さらには総合5位のギヨーム・マルタンも完全に脱落。総合3位ジョアン・アルメイダも一時遅れ苦しい状況に置かれていた。
そして周回コース最初の登りである「スペルガ(登坂距離5㎞・平均勾配8.6%・最大勾配14%)」で、総合12位のウィルコ・ケルデルマンが先頭をひたすら牽いていく。アルメイダもしばらく10数秒のタイム差で追いかけ続けていたが、その頂上付近でなんとか合流。アシストもすべて失ってしまったとはいえ、第9ステージもそうだが、遅れてもしっかりとペース走行で戻ってくるのはさすがである。
残り65㎞。この時点で、先頭集団は以下の12名。
- 総合1位:フアン・ロペス(トレック・セガフレード)
- 総合2位:リチャル・カラパス(イネオス・グレナディアーズ)
- 総合3位:ジョアン・アルメイダ(UAEチーム・エミレーツ)
- 総合4位:ジェイ・ヒンドリー(ボーラ・ハンスグローエ)
- 総合6位:ミケル・ランダ(バーレーン・ヴィクトリアス)
- 総合7位:ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
- 総合8位:エマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ)
- 総合9位:ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)
- 総合12位:ウィルコ・ケルデルマン(ボーラ・ハンスグローエ)
- 総合13位:ヴィンツェンツォ・ニバリ(アスタナ・カザフスタンチーム)
- 総合14位:ヤン・ヒルト(アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ)
- 総合32位:サイモン・イェーツ(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
残り32.3㎞。2回目の、そして最後のスペルガの登り。
ここまでずっと先頭を牽いていたケルデルマンがついに仕事終了。同時にヒルトも脱落。
さらに残り31.6㎞。ここでついにカラパスがアタック!
ニバリ、ランダ、ヒンドリー、ロペスが食らいつき、残りのメンバーは遅れる。
が、アルメイダも強い。追走の先頭に立ってマイペースに距離を詰めていき、残り30㎞で先頭は1つに。
残り28.6㎞。再びカラパスがアタック!
ここで、マリア・ローザのフアン・ロペスが完全に脱落してしまう。
そして一人抜け出すリチャル・カラパス。
このまま、3年前の再現――第14ステージでの独走勝利によるマリア・ローザ獲得へとつながるのか?
だが、追走集団から抜け出す影が2人。残り15㎞。最後のマッダレーナ峠の登りが始まると共にヴィンツェンツォ・ニバリがその集団の先頭を牽引し、ここに2年前の総合2位ジェイ・ヒンドリーだけが食らいつく。
元々30秒近くあったタイム差を一気に詰めていくニバリとヒンドリー。さらに少し遅れて、サイモン・イェーツが単独でブリッジを仕掛けてきた。
残り14㎞。「地獄の入り口」マッダレーナ峠の最も厳しい20%勾配区間でついにカラパスに追い付いたヒンドリー。間もなくニバリも合流し、サイモン・イェーツはまだ少し後方だが追いつくのも時間の問題だった。
そして残り12㎞。マッダレーナ峠の頂上へと至り、あとは下りと少しの登り返しだけ。サイモン・イェーツも合流し、先頭は4名になった。
最後の一撃は、残り4.6㎞。フィニッシュ直前の登り返しのラスト100mでのサイモン・イェーツのアタックだった。
そのまま登り返しの頂上の「スプリントポイント」を先頭通過し、そのまま独走を開始。
今年も総合では脱落したが、激坂ステージでの逃げ切りという、実に彼らしい勝利を遂げて見せた。
ある意味予想通り、第2週で最も激しいステージとなったこの第14ステージ。総合も大きく変動し、ついにフアン・ロペスが脱落。それでもこのトップ勢に最後の最後まで食らいついたその走りは本物であり、彼がこの先さらに躍進していく可能性を感じさせた。
そして新たにマリア・ローザを身に纏ったのはやはりこの男。2019年の覇者リチャル・カラパス。今大会最大の総合優勝候補と目されていた彼が、3年前と同様、第14ステージでマリア・ローザを手に入れた。
だが、決して「万全」ではない。確かにこの日、積極的な走りを見せはしたものの、他のライバルたちを完全に突き放すほどの圧倒ぶりを見せたわけではない。
その意味で、ジェイ・ヒンドリーが正直想像以上の活躍を見せている。ジョアン・アルメイダもこの日は遅れたとはいえ、何度突き放してもじっくりと戻ってくるその安定感は不気味である。「3週目の男」であることも、この先の展開を読めないものにしてくれる。
まだまだ、総合争いの行方はわからない。「まだ何も決まってはいない」。
第15ステージ リヴァローロ カヴァネーゼ 〜 コーニュ 177㎞(山岳)
1級山岳×2&2級山岳山頂フィニッシュ。とはいえ、最後は比較的緩やかなフィニッシュでもあり、意外と総合争いは動かないのではないか——という事前の予想通りの展開となった。
激しいアタック合戦の末に残り100㎞を切ってようやく形成された28名の逃げ集団。その中に11分47秒遅れの総合15位テイメン・アレンスマン(チームDSM)も含まれていたことで、メイン集団を牽引するイネオス・グレナディアーズもしばらくは5分程度のタイム差を維持し続けていたが、それ以上の争いを起こそうとする気は彼らにはなかった。
最終的に8分近く開いたメイン集団は先頭の大集団での逃げ切りを許容する展開となった。
残り76㎞。最初の1級山岳ピラ・レ・フルール(登坂距離12.3㎞、平均勾配6.9%、最大勾配15%)の登りでクーン・ボウマン(ユンボ・ヴィズマ)が単独で抜け出し、そこに下りで追い付いてきたマチュー・ファンデルプール(アルペシン・フェニックス)とマーティン・トゥスフェルト(チームDSM)が追いついてきて先頭は3名に。
2つ目の1級山岳ヴェロンニュ(登坂距離13.8㎞、平均勾配7.1%、最大勾配14%)の登りで、この先頭3名を追いかける追走集団は10名に絞られる。
残り49.3㎞。この追走集団からジュリオ・チッコーネ(トレック・セガフレード)がアタック。ここに今年のサウジ・ツアー総合2位のサンティアゴ・ブイトラゴ(バーレーン・ヴィクトリアス)と2020年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位のヒュー・カーシー(EFエデュケーション・イージーポスト)、そして昨年のルート・ドクシタニー総合優勝のアントニオ・ペドレロ(モビスター・チーム)が食らいつく。
結局、このヴェロンニュの登りで元々の先頭3名(ボウマン、ファンデルプール、トゥスフェルト)はすべて脱落して、入れ替わるようにして後発の4名(チッコーネ、ブイトラゴ、カーシー、ペドレロ)が新たな先頭に立ち、最後の2級山岳コーニュ(登坂距離22.4㎞、平均勾配4.3%、最大勾配11%)の長い長い登りへと突入していく。
登り始めてすぐの激坂区間にて、2020年ブエルタ・アングリルの覇者カーシーが強烈なアタック。チッコーネがこれに反応し、ブイトラゴも何とかついていく。
残り20.2㎞。チッコーネがカウンターでアタック。ブイトラゴは突き放されるが、カーシーは何とか食い下がる。アングリルのときもそうだが、常に苦しい表情を見せ続けながらも、執念深く食らいつき続けるのがカーシーの持ち味だ。
が、残り18.7㎞。
もう一度チッコーネが加速すると、今度はさすがのカーシーも、ついていけなかった。
カーシー、チッコーネ。どちらも、栄光をかつて掴みながらも苦しい時期を過ごしてきていた男たち。
決して負けるわけにはいかない一戦で、この日最後に勝利を掴み取ったのはチッコーネの方であった。
「平穏」な第2週が終わりを告げた。
いよいよ、迎えるは激動の第3週。
それを前にしての総合順位は下記の通りである。
既に述べたように、「まだ何も決まってはいない」。ここから先の激しいステージの連続は、2~3分のタイム差を容易にひっくり返すだけの可能性が秘められている。
ここから先は一瞬たりとも目が離せない。近年稀に見る拮抗したジロ・デ・イタリアの行方やいかに。
第3週のコースプレビューはこちらから
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