Class:ワールドツアー
Country:フランス
Region:ドーフィネ地方
First edition:1947年
Editions:74回
Date:6/5(日)~6/12(日)
「ツール・ド・フランス前哨戦」・・・とは言うものの、ここ最近はそこまでツール・ド・フランスとの相関性も大きくはなく、出場選手もほとんどがここにも出場するというわけでもなく、前哨戦という言葉はそこまで決定的な意味を持たなくなりつつある。
だが、逆に言えば、このドーフィネというレースはそれ単体で、独立した個性をもつ1つのレースにもなりつつあると思っている。
わずか1週間だが、その中には容赦なく厳しいグランツール級の登りが数多く用意され、標準的な平坦ステージなどほとんどないような状況。そんな中勝利する選手たちは、ステージ優勝者にせよ、総合優勝者にせよ、若手からベテランまで、確かな実力を持ち、無名であってもその後確実に頭角を現しうる存在が並んでいる、そんなレースである。
今年も非常に面白い。前半はアタッカーが勝つかスプリンターが勝つかなかなか予想するのが難しいような一筋縄ではいかないステージが続き、今年のツール・ド・フランスを意識しているような長距離平坦TTも存在する。
さらに、最後の週末2連戦はクイーンステージが連続で来たような非常に厳しいステージ。1つは今年のツール・ド・フランスでも登場する「ガリビエ峠&クロワ・ド・フェール峠」ステージで、もう1つは5年前、驚きの逆転総合優勝を実現させた、凶悪な激坂長距離登坂山頂フィニッシュである。
そんな、魅力しかない今年の8日間の全コース詳細プレビューと、各注目チームのプレビューとを、今回はお届けすることにしよう。
- コースプレビュー
- 第1ステージ ラ・ヴルト=シュル=ローヌ 〜 ボーシャステル 191.8㎞(丘陵)
- 第2ステージ サン・ペレ 〜 ブリーヴ=シャランサック 169.8㎞(丘陵)
- 第3ステージ サン=ポーリアン 〜 シャストレ=サンシー 169㎞(丘陵)
- 第4ステージ モンブリゾン 〜 ラ・ベッチ・ドゥッフィ 31.9㎞(個人TT)
- 第5ステージ ティジー=レ=ブール 〜 シェントレ 162.3㎞(丘陵)
- 第6ステージ レリブ 〜 ギャップ 196.5㎞(丘陵)
- 第7ステージ サン=シャフレ 〜 ヴォジャニー 134.8㎞(山岳)
- 第8ステージ サン=タルバン=レイゼ 〜 プラトー・ド・ソレゾン 138.8㎞(山岳)
- 注目チーム紹介
- その他注目選手
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コースプレビュー
今年も全8ステージ。公式のカテゴリ上での「平坦」ステージは1つもなく、5つの丘陵ステージと2つの山岳ステージ、そして1つの個人タイムトライアルで構成されている。
1週間とはいえ厳しいステージが詰まっているため、その激しい展開からの逆転劇も何度も起きており、最後まで気を抜けない8日間となっている。
第1ステージ ラ・ヴルト=シュル=ローヌ 〜 ボーシャステル 191.8㎞(丘陵)
Jsports 20:05~
ドーフィネ地方の南西部、アルデシュ県の狭い範囲で繰り広げられる開幕ステージ。ラスト103㎞は3級コート・ド・シャンボン・ド・バヴァ(登坂距離4.7㎞、平均勾配5.2%)を2回登らせる、1周半の周回コースとなっている。
最後の山頂からフィニッシュまでは約30㎞。ドーフィネに来るレベルのスプリンターであればしっかりと生き残り、最後は集団スプリントで決着する可能性は十分にあるだろう。とくに、今年マイヨ・ヴェール獲得を狙っているというワウト・ファンアールトは最大の優勝候補となりそうだ。
ただ、昨年は開幕ステージでブレント・ファンムールが見事な逃げ切り勝利。今回も、序盤に山岳が用意されたレイアウトなどは、そういった展開を呼び起こしかねない、不穏な兆候を見せており、果たしてどうなるか。
第2ステージ サン・ペレ 〜 ブリーヴ=シャランサック 169.8㎞(丘陵)
Jsports 21:55~
アルデシュ県から西のオート=ロワール県へ。ブリーヴ=シャランサックはフランスを代表する大河ロワールが流れる町であり、名前のブリーヴは「橋」を意味する。ローマ時代に架けられたという最古の橋も残っている、歴史的なコミューンである。
この日も4つの山岳ポイントが用意され、とくに残り60㎞地点に用意された2級コル・ドゥ・メジアック(登坂距離11.6㎞、平均勾配4.1%)で一気に標高1,400m近くにまで登る。
そこからは小刻みなアップダウンと長い下りを経てフィニッシュへ。最後はフィニッシュ前9㎞地点に3級コート・ドゥ・ロアック(登坂距離1.2㎞、平均勾配5.9%)が用意され、これがステージ優勝争いにどんな影響を与えていくか。
決して難易度の高い登りではないが、第1ステージほどはスプリンター向きとは言い切れないレイアウトとなっているだろう。
第3ステージ サン=ポーリアン 〜 シャストレ=サンシー 169㎞(丘陵)
Jsports 21:55~
オーヴェルニュ=ローヌ=アルプ地域圏の西の端、ピュイ=ド=ドーム県に位置するシャストレの村へ。最後はその奥にあるスキー場シャストレ=サンシーへ。
そこまでの道程は大きな障害は少ないアップダウンレイアウト。中盤には平坦も用意されているが、ラスト70㎞を過ぎたあたりから少しずつ登っていき、スプリンターたちの出番は終了。
勝負はすべて最後の山頂フィニッシュで。2級シャストレ=サンシーは登坂距離6.2㎞・平均勾配5.6%。ラスト1㎞からは平坦が続くため、勝負所は平均勾配8%超えのラスト3㎞~2㎞のセクションだ。
まずは力試しの一戦。プリモシュ・ログリッチ&ヨナス・ヴィンゲゴーのユンボ・ヴィズマ最強コンビに、モビスター・チームのエンリク・マス、昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位のジャック・ヘイグらがどう立ち向かっていくか。
第4ステージ モンブリゾン 〜 ラ・ベッチ・ドゥッフィ 31.9㎞(個人TT)
Jsports 21:55~
オールフラットと言ってよいレイアウトで30㎞超えの長距離個人タイムトライアル。近年では珍しいタイプの、純粋TTスペシャリスト向けのステージだ。直線も多く、とりわけ困難なセクションは多くない。40㎞という超長距離(かつ、わりと平坦気味)のTTが用意された今年のツール・ド・フランスを意識しているのは間違いないだろう。
もちろん最大の優勝候補はフィリッポ・ガンナ。今年のTTは4戦3勝(残り1戦も2位)。あとはパリ~ルーベ以来となるレースでどこまで調子を取り戻しているか。元フランスTT王者レミ・カヴァニャにも注目だ。
もちろん、プリモシュ・ログリッチやヨナス・ヴィンゲゴー、ワウト・ファンアールトといったユンボ・ヴィズマ軍団もすべて優勝候補になりうる恐ろしい存在。総合争いにおいても、ケルデルマンはまだしも、マス、ヘイグ、オコーナー、カルーゾらはどこまで傷口を小さくできるかに集中する40分間となるだろう。
第5ステージ ティジー=レ=ブール 〜 シェントレ 162.3㎞(丘陵)
Jsports 21:55~
今大会最も平坦「っぽい」ステージ。それでも小刻みにでこぼこしており、ラスト12.7㎞地点には4級コート・ドゥ・ヴェルジッソン(登坂距離1.8㎞、平均勾配4.8%)が待ち構えている。
とはいえ距離も短く難易度は高くない、スプリンターが千切られず、また立て直すには十分な終盤レイアウトだとは思われる。
とはいえ、一筋縄ではいかないのもドーフィネの常。終盤の2連続登坂で勝負を仕掛けようとしてくるチームがないことはないだろう。
第6ステージ レリブ 〜 ギャップ 196.5㎞(丘陵)
Jsports 21:55~
ツール・ド・フランスでお馴染みのアルプスの麓の街ギャップ。ツールでも、そして過去ドーフィネで出てきたときも、アタッカーによる逃げ切り勝利のパターンが非常に多く、実際この日も、勝つのはスプリンターでも総合勢でもなく、逃げ切りで決まる可能性が高そうだ。
その展開の鍵となるのが、フィニッシュ前5㎞地点に用意されたカテゴリのない登り(登坂距離3.2㎞・平均勾配2.8%)。さらにそこの下りから残り3.5㎞地点および残り3.3㎞地点に90度カーブが用意されており、アタッカー有利のレイアウトとなっている。
ただこの残り3.3㎞からは広い幹線道路でほぼ直線になるため、逃げ切れるか、捕まるか、なかなか読めない展開になりそうだ。
第7ステージ サン=シャフレ 〜 ヴォジャニー 134.8㎞(山岳)
Jsports 22:10~
クリテリウム・ドゥ・ドーフィネは総合優勝者の相関関係も崩れ、出場選手も必ずしもツールと大きく重なるわけでもないことが多くなり、「ツール・ド・フランスの前哨戦」とは必ずしも言いづらくなってきた。
だがそれでも、やはり同じ主催者ということで、その年のツール・ド・フランスを想定した「予行練習ステージ」を入れてくることは多く、その意味ではやはりまだ「前哨戦」と言ってしかるべきものなのかもしれない。
この日がまさに、そんなステージである。今年のツール・ド・フランスでは2週目から2,000m級の山々が登場してきており、その代表格とも言えるツール・ド・フランス最標高峠「ガリビエ」を、今年は「2日続けて」「2週目に」登場させるという恐ろしいコース設定を行っている。
このクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第7ステージは、その2日連続ガリビエの2日目、ツール・ド・フランス本戦でいうと第12ステージをほぼトレースしたものとなる。
今年のツールの注目コースについてはこちらから
まずは超級ガリビエ峠。「1日目」とは違いすでに標高の高い地域から登るため、登坂距離23㎞・平均勾配5.1%と、長いけど必ずしもそこまで厳しくはない。序盤も序盤なので、総合争いに影響が及ぶことはまずないだろう。ただ、その足は確実に削っていく。空気の薄さも相まって、いきなりアシストを失うチームは出てくるかもしれない。
ガリビエのあとはテレグラフ。そして「鉄十字」超級クロワ・ド・フェール(登坂距離29㎞、平均勾配5.9%)へと挑む。
この山頂からフィニッシュまでは31㎞超。
ツール・ド・フランス本番ではこのあとにラルプ・デュエズが待ち構えているという恐ろしいコースなのだが、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネではそこだけはアレンジを加えている。
ラルプ・デュエズは使わないものの、最後はスキーリゾートの2級ヴォジャニー(登坂距離5.7㎞、平均勾配7.2%)に。
先二つに比べれば短い!と思うかもしれないが、凝縮された厳しさはむしろそれら以上かもしれない。
実質的なフィニッシュ地点とも言えるラスト1.5㎞に至る直前の1㎞は12%を超える「壁」。ここまでの厳しい道のりを経て足を失った総合優勝候補たちの、本当の戦いが幕を開けることとなる。
なお、6年前のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第5ステージでもフィニッシュで使われた登りでもあり、そのときは残り3㎞(すなわちやはり上記の最も厳しい区間)から加速したクリス・フルームが抜け出し、当時は敵同士だったリッチー・ポートが唯一食らいつき、最後はこの2人によるスプリント勝負となっていた。
今年、新たな時代の王として、この頂上で手を挙げるのは誰か。
第8ステージ サン=タルバン=レイゼ 〜 プラトー・ド・ソレゾン 138.8㎞(山岳)
Jsports 22:10~
ガリビエ、クロワ・ド・フェール、そして激坂ヴォジャニーという強烈かつツール・ド・フランス前哨戦らしいステージを経て、お腹一杯になっているかもしれないが、実はこの日はとても重要な最終日ステージとなっている。
何しろこの日は、5年前のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2017最終日でも使われた「1級コロンビエ―ル峠(登坂距離11.8㎞、平均勾配5.8%)を経て超級プラトー・ド・ソレゾン(登坂距離11.3㎞、平均勾配9.2%)へと至る」というルートを再現しているコースであり、5年前も最終日に用意されたこのレイアウトは、前日まで1分15秒差で総合3位につけていたヤコブ・フルサンが、この登りのラスト7㎞だけで、この1分15秒差をひっくり返し、最後はステージ優勝のボーナスタイム10秒を得て逆転総合優勝を果たしたのである。
同年に亡くなったチームメートのミケーレ・スカルポーニに捧げる勝利を飾ったフルサン。
今年は彼は出場しないが、同様にドラマティックな展開がこの日に期待することができるかもしれない。
何しろ、こんなにも凶悪な登りなのだから。
これだからこそ、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネは面白い。
「前哨戦」の域を超え、1つの独立したレースとして、独特で、強烈なステージレース。
今年もきっと、予想がつかない展開が待っていることだろう。
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注目チーム紹介
ユンボ・ヴィズマ(TJV)
1つだけ次元の違うメンバーを揃えてきた感のあるチーム。全ステージこのチームが優勝してもおかしくない。というか、ログリッチとファンアールトとヴィンゲゴーだけで全ステージ制覇してもおかしくない。TTに至ってはこの3名で表彰台独占してしまう勢いである(さすがに長距離平坦TTなのでガンナやカヴァニャが黙ってはいないだろうが)。
とはいえ、ログリッチとこのレースとの相性は決して良くはない。一応、今年のパリ~ニースで「マイヨ・ジョーヌとの相性は良くない」のジンクスを破りはしたものの、それもまたギリギリではあった。
何よりも、彼にとってここは本番ではない。怪我・病気がないことが一番の目標である。その意味で、ヴィンゲゴーにチャンスが巡ってくる可能性もあるかも。
そしてワウト・ファンアールト。今年のツール・ド・フランスではマイヨ・ヴェールを狙っていくことを明言している彼にとって、まずはこのドーフィネでどれだけの勢いを見せられるか。純粋なド平坦スプリントはなく、単純なスプリント力でも彼以上の選手はほとんどいないようなメンバーでもあり、第1・第2・第5あるいは第6ステージまでも戴ける可能性はある。
そんな彼らを支えるティシュ・ベノートとクリストフ・ラポルトの「新メンバー組」。3月のクラシックシーズンでは想定以上の大活躍を見せてくれた彼らだが、ツール・ド・フランスの「あと1枠」を巡り、今回のドーフィネでの活躍は重要なセレクションの舞台となるだろう。ハーパーにとっても、もちろん。
イネオス・グレナディアーズ(IGD)
ユンボ・ヴィズマと比べると、ツール・ド・フランスメンバーを連れてきた・・という感じではない面子。総合エースはテイオ・ゲイガンハートなのだろうが、2年前のジロ・デ・イタリア覇者もここ2年はあまり結果を出せてはいない。
だが、2年前共に表彰台に登ったジャイ・ヒンドレーが今回のジロでついに頂点を掴み取った。あのジロが決して奇跡ではないことを証明した彼の活躍に触発され、ゲイガンハートが再び覚醒を見せられるか。首脳陣もそれを期待しての今回の起用であることは間違いない。
ここ数年のドーフィネ覇者はログリッチのような「定番」よりも、彼のような存在にこそ、光が当たりつつあるレースでもあり、期待度は十分である。
フィリッポ・ガンナへの期待は言うまでもなく。昨年は東京オリンピックへ照準を合わせることもあり常に勝利というわけにはいかなかったが、そこから解き放たれた今年はここまで4戦3勝。のこり1戦も2位と絶好調である。
直近のレースがパリ~ルーベと少し間が空いてしまってはいるが、ツール・ド・フランスに向けて良い足慣らしになるだろう。逃げ切り勝利も十分に狙っていける。
あと個人的に期待したいのは、イーサン・ヘイター。ワウト・ファンアールト並に、今回の一筋縄ではいかないスプリントステージの優勝候補筆頭である。今年もすでに4勝とかなり調子がいい。
あとはどこまで自由が許されるかだが・・・今回のイネオスのメンバーであれば、彼がスプリントに参加することに何の障害もないようには見える。
モア・レーシング・スタイルを体現する走りで、チームの新しい可能性を見せてくれ!
バーレーン・ヴィクトリアス(TBV)
ここもかなり「いろんなことができる」チームである。まず総合エースは昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位のジャック・ヘイグ。ブエルタでは飛び抜けて強い走りをしていたわけではないが、常にライバルチームエースに食らいつき、「落とさない」走りでしっかりと生き残り続けていた。その意味では昨年ジロのダミアーノ・カルーゾに近い走り方だった。
そのカルーゾももちろんエース候補。2年前のツール・ド・フランスでは総合10位、そして昨年のジロで総合2位の彼が、再びツールに戻ってきた。実質的なダブルエース体制だが、それが結構うまくいくのもこのチームの強みである。TTのことを考えるとややカルーゾ向きか? ベテランも割と活躍することの多いこのドーフィネ。昨年が「奇跡」でなかったことを示しにいこう。
そしてスプリントでは、平坦スプリント実績No.1のバウハウス。ジロ・デ・イタリアでは残念ながら勝利とはならなかったがそれでも区間2位には食い込んだ。ただ今回はアップダウンの激しい丘陵レイアウトでのスプリントを強いられるため、ファンアールトやヘイターに比べるとやや苦しいのは確か。平坦でも、フルーネウェーヘンという強力なライバルが待ち構えており、ここで勝利するのは簡単ではないが、それだけに勝利は大きな価値を持つことだろう。
あとはとにかく逃げに激坂にとオールラウンドな活躍を見せているディラン・トゥーンス。今年フレーシュ・ワロンヌ覇者である彼は、生き残りさえすれば第7ステージの激坂フィニッシュなんかにもチャンスはあるだろう。
総合・スプリント・そして伏兵のトゥーンス。あらゆる戦い方ができるこの不思議なチームが今年もまたかき回してくれそうだ。
モビスター・チーム(MOV)
純粋な登坂力でログリッチ&ヴィンゲゴーのユンボ・ヴィズマに対抗しうる最大のライバル候補という意味では、昨年のツール・ド・フランス総合6位・ブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位のこのエンリク・マスが筆頭に挙げられるだろう。
問題はTT能力(山岳TTならまだしも、平坦では・・)とチーム力。とくに今回のメンバーは、かろうじてイサギレとベローナ、あとはヨルゲンソンの覚醒に期待したいところといったところで、終盤マスが一人だけになるパターンは非常に多そうだ。とくに第7ステージの強烈な山岳連戦で一人になったときは非常に怖くはある。
だが、本格的にスペインの未来を背負う必要に迫られるつつあるマス。ここで漢を見せろ!
UAEチーム・エミレーツ(UAD)
エースはツール・ド・フランスでタデイ・ポガチャルをアシストする予定のブランドン・マクナルティ。ただ、同じく最強アシスト予定のジョージ・ベネットもダブルエースの可能性は十分にあり、さらに言えば驚異の新人(昨年のU23版ジロ・デ・イタリア覇者であり、落車リタイアさえなければラヴニールも制していたかもしれないと言われている)フアン・アユソーの存在も、この大舞台でいよいよ頭角を現しうる可能性は十分にある。
総合優勝候補チームかといえばそうではないだろう。ただ、何かしらの爪痕はしっかりと残していく気がするチームである。平均年齢の低さも驚異的。
また、スプリントではフアン・モラノが期待大。その実力、すでにガビリア以上かもしれない彼は、直近のブークル・ドゥ・ラ・マイエンヌでも1勝しており、ここで「先輩超え」を果たすためのビッグ勝利を持ち帰りたいところ。
その他注目選手
ダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)
明確なティボー・ピノの後継者として、今年のツール・ド・フランスも決してアシストではない形で挑むことになるだろうこの男。
とはいえ、まだまだ突き抜け切れてはいない。やはりまだ全盛期ピノの域には達していないのは明白で、いよいよキャリアも中堅に差し掛かってきている今、「成し遂げ」ないといけない。
TTが苦手なのが致命的だが・・・今更ステージ優勝で満足はしていられない。めざすは総合表彰台である。
ベン・オコーナー(AG2Rシトロエン・チーム)
昨年ツール・ド・フランス総合4位。いよいよ来るべきところまできたという印象の彼は、今年もブエルタ・ア・アンダルシア総合7位、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合6位、ツール・ド・ロマンディ総合5位と調子は良い。だがツール・ド・フランス本番で「昨年超え」を実現するためには、このドーフィネでの総合表彰台は必須目標となるだろう。やはりTTの苦手さは鬼門ではあるが・・・。
トビアスハラン・ヨハンネセン(UNO-Xプロサイクリングチーム)
昨年ツール・ド・ラヴニール覇者。とは言っても、エガン・ベルナルとタデイ・ポガチャルがあまりにも常識はずれなだけで、ラヴニール覇者が常に初年度から結果を出すなんてことは‥と思っていたら最初のステージレースであるエトワール・ド・ベセージュでいきなり勝利と総合3位、その後もボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合7位、ツアー・オブ・ノルウェー総合4位&ポイント賞と、やはり最近のラヴニール覇者は恐ろしいと実感させてくれた。
とくに純粋登坂というよりはパンチャーレイアウトに強い彼だけに、今回のドーフィネのようなレイアウトはまた活躍できる機会が多そうだ。問題は最終週末の山岳2連戦でどこまで耐えられるか。チームメートのニクラス・イーグとアントン・チャーマもそれなりに登れるが、やはりワールドツアーチームと対等に渡り合うにはまだまだ力不足なのは確か。
しかし期待したい選手の一人だ。
ディラン・フルーネウェーヘン(チーム・バイクエクスチェンジ・ジェイコ)
純粋な平坦スプリント力だけでいえば今大会最強と言っても良いだろう。直近のツール・ド・ハンガリーやフェーネンダール~フェーネンダール・クラシックでも勝利している。
ただ名リードアウターのルカ・メズゲッツが今回いないのはやや不安要素。アレックス・エドモンドソンやルーク・ダーブリッジに期待したいが・・・あとはド平坦スプリントは基本的にないため、そこで持ちこたえられるかどうか。
ヨルディ・メーウス(ボーラ・ハンスグローエ)
元SEGレーシングアカデミー。当時からプロ3勝を重ねており、プロ初年度の昨年もツール・ド・ハンガリーとパリ~ブールジュで勝利するなど着実に実績を重ねてきている。
とはいえ、まだまだ1クラスのみなのは確か。実力はあるが、今大会勝利までもぎ取るのはさすがに難しいか。それでもその存在感を示せるリザルトに期待している。
チームメートのマシュー・ウォルスも元トラックの英国代表でネオプロの昨年はツアー・オブ・ノルウェーとグラン・ピエモンテというプロシリーズのレースで2勝している。実績的にはこちらの方が上と言えてしまうかもしれない。
その他、総合ではウィルコ・ケルデルマン、逃げなどでニルス・ポリッツにも期待したいチームだ。
レミ・カヴァニャ(クイックステップ・アルファヴィニル)
現フランスロード王者にして昨年のフランスTT王者。昨年の欧州選手権TTでも2位になるなど、平坦TTスペシャリストとしての実績は世界トップクラスであり今回もガンナと共に第4ステージの優勝候補である。
とはいえ、今年はあまりここまで調子が良いとはいえない。イツリア・バスクカントリーの初日TTでは3位だったが、ツール・ド・ロマンディのプロローグでは17位、最終日TTでは33位だ。
とはいえ超短距離や山岳TTは元々得意ではない。今回のTTは平坦という、彼の最も得意とするレイアウトだけに、その実力を見せつけてやるチャンスである。
なお、チームメートにはマッティア・カッタネオやヨセフ・チェルニーといった、これもまたTT上位入賞候補の実力者たちが揃っている。そしてカヴァニャも含めたこの3名は、逃げでもチャンスを狙っていける選手たちである(とくにカッタネオは結構登れるので)。
今回のクイックステップは正直、総合でもスプリントでもエース級の選手たちを揃えてきてはいないだけに、アンドレア・バジョーリなども含め、ステージ優勝でどんどん稼ぐのを狙っていきたいところだ。
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