りんぐすらいど

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ジロ・デ・イタリア2022 コースプレビュー第3週

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比較的おとなしい(けれど結果的には結構激しい展開にはなった)第2週に続き、第3週はアルプスの西から東へと横断する激しい山岳ステージが続く。

総獲得標高5,200mのモルティローロステージ、標高2,000m超えの山が連続し最後は超激坂フィニッシュとなる第20ステージ。さらには、見た目は大人しいながらも、「悪魔」が潜んでいそうな第19ステージなど・・・

最後の17㎞丘陵中距離TTにも逆転の可能性が眠っており、第2週の最終総合成績からも大きな変動が予想される1週間である。

 

近年稀に見る接戦もありえそうな今年のジロ・デ・イタリア。

果たして、この最後の6日間にどんなドラマが待ち受けているのだろうか。

 

目次

 

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第16ステージ サロー 〜 アプリカ 202㎞(山岳)

総獲得標高5,200m。モルティローロ含む4連続登坂

休息日明けのジロ・デ・イタリア第16ステージは、過去何度もクイーンステージ(イタリア語ではタッポーネ)級のコースが用意されてきた。2019年、2017年、そして2015年・・・いずれもロンバルディア州の名峠モルティローロを舞台としており、2015年はアルベルト・コンタドールによる30人ごぼう抜きの「怒りのモルティローロ」で有名な地だ。

今年もモルティローロが用意された。そして同じように高く厳しい登りを全部で3つ。最後のスプリントポイントでさえ、登坂距離5.1㎞・平均勾配8.7%の立派な「山岳」である。

総距離も200㎞を超え、総獲得標高は5,200m。第9ステージを凌ぐ、今大会ここまでで間違いなく最も厳しいステージであり、総合争いにおける大きな分水嶺となるステージになることは間違いないだろう。

昨年はこの第16ステージでエガン・ベルナルが勝利。今年も、今大会で「最も強い男」が勝つのか。

 

最後は1級山岳を登ってからの下りフィニッシュ。

この1級山岳サンタ・クリスティナはフィニッシュまでの残り11.5㎞地点に最大勾配13%区間が用意され、そこから山頂まではひたすら10%~12%の急勾配区間が続く。

ここがこの日最大の勝負所となりそうだ。

フィニッシュ地点のアプリカは現時点では雨予報。

波乱は巻き起こるのか。それとも。

 

 

 

第17ステージ ポンテ・ディ・レンニョ 〜 ラヴァローネ 168㎞(山岳)

逃げ切り向き? 但し終盤はやはり厳しい

スタート直後に登り。そして常に小刻みなアップダウンが繰り返される中での最後の1級山岳の連続と下りフィニッシュ。

厳しいが第16ステージほどではなく、総獲得標高も3,730m。大逃げ集団ができての逃げ切りという展開が一番ありそうだが、その場合でも最後の登りで総合勢は総合勢の争いをすることになりそうだ。

その最後の登り2連続のプロフィールは以下の通り。

 

1つ目の1級山岳パッソ・デル・ヴェルティオーロの山頂からフィニッシュまでは33.7㎞。そのあとも平坦はほぼないため、この1つ目の登りから勝負が動く可能性は十分ある。とくに第16ステージで大きくタイムを失った選手たちにとっては仕掛けるべきポイントである。

そして2つ目の1級山岳メナドールは、8㎞にわたり常に10%以上の勾配が続くような厳しい登りで、山頂1㎞手前に最大勾配15%。

そしてこの山頂からフィニッシュまでは8㎞。

見た目以上の激しさを伴うステージとなりそうだ。

 

 

 

第18ステージ ボルゴ・ヴァルシュガーナ 〜 トレヴィーゾ 156㎞(平坦)

ただの大集団スプリントで終わるとは限らない

ラスト40㎞はオールフラットな大集団スプリントステージ。とはいえ、ジロ・デ・イタリアの第3週の平坦ステージが純粋に集団スプリントになるとは全く限らない。2019年のダミアーノ・チーマの劇的なギリギリ逃げ切り勝利や、2021年の28名大逃げ集団の形成など、何が起きてもおかしくはない。

ただ、マリア・チクラミーノ争いにおいては、すでにアルノー・デマールの一人勝ちに違いはないだろう。あとは2020年同様に、「4勝目」を飾れるかどうか、だ。

 

 

 

第19ステージ マラーノ・ラグナーレ 〜 サンチュアリオ・ディ・カステルモンド 178㎞(丘陵)

意外な「落とし穴」ステージなるかも

総獲得標高は3,230m。フィニッシュも登りとはいえ標高612mへの登りということで、全体的なレイアウトは第16・第17ステージや明日の第20ステージに比べるとイージーなように思えるかもしれない。

が、意外な落とし穴がこのステージにはあるとにらんでいる。とくに、スロベニアに入ってから現れる1級山岳コロヴラットは登坂距離10.3㎞・平均勾配9.2%。

とくに前半の4㎞は常に11%以上の勾配が続くような超激坂登坂であり、その山頂はフィニッシュまで43.4㎞。

「何か」が起こりうることを予感させてくれるような登りである。

一言付け加えておくと、あのクリス・フルームによる劇的な80㎞独走勝利が決まったのも、第19ステージであった。

 

フィニッシュもラスト4㎞が平均勾配8%超の急勾配登りフィニッシュ。最後まで総合勢による秒差の争いは巻き起こりそうなレイアウトとなっている。

 

 

第20ステージ ベッルーノ 〜 マルモラーダ 168㎞(山岳)

今大会最難度ステージ

最初に標高1,900m超の1級山岳を登らせ、次いで標高2,239mのチマ・コッピ、ポルドイ峠。フィニッシュも標高2,000m超のフェダイラ峠を登らせるという、ドロミテ山塊の名所を巡る文句なしのクイーンステージである。

しかも、最後の1級フェダイラ峠はラスト5㎞が常に11%超。ラスト3㎞に最大勾配18%という「壁」が控える、真に強いクライマーだけが生き残る、まさに最終決戦の舞台として相応しい、凶悪な登りである。

 

ただ、ジロ・デ・イタリアのチマ・コッピステージは悪天候でキャンセルされることも多く・・・。

この派手な最終決戦ステージが肩透かしに終わらないことを願っている。

 

 

 

第21ステージ ヴェローナ 〜 ヴェローナ 17.4㎞(個人TT)

丘陵中距離TT決戦

ドロミテの激戦を終えたプロトンは北イタリア中央部のヴェローナへと戻ってくる。『ロミオとジュリエット』の舞台にもなった街である。

総獲得標高280mの登りを含んだ中距離タイムトライアル。今年は優勝候補の選手たちの実力が拮抗しているように感じるため、もしかしたら第20ステージを終えた段階で、必ずしも決定的なタイム差はついていないかもしれない。

そうなったとき、この最終日TTは重要な役割を担うことになるだろう。2017年は、この日トム・デュムランがナイロ・キンタナを逆転して総合優勝を果たした。

 

この記事を書いている第13ステージ終了時点での総合順位では、ジョアン・アルメイダが最も有利な位置にいるのは間違いない。あとは彼がここまでの厳しいステージで遅れて居なければ。

カラパスが総合優勝候補筆頭ではあるが、TTについては強いときもあれば全然なときもある、ムラの多い選手。できれば前日までに、圧倒的な差をつけておきたいところ。

あるいはブッフマン、ビルバオ、ケルデルマン、アレンスマンといった、TTも得意なライダーたちがいい位置で生き残っていることがあれば、チャンスがもたらされる可能性はある。

いずれにせよ、前日までの結果でこの日を迎える際の視聴者側の心境も大きく変わってくる。

 

もちろん、できれば、接戦のまま迎える白熱の展開こそが、一番望ましいものではある。

 

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