読み:チーム・アルケア・サムシック
国籍:フランス
略号:ARK
創設年:2005年
GM:エマニュエル・ヒューバート(フランス)
使用機材:キャニオン(ドイツ)
2020年UCIチームランキング:15位(昨年26位)
(以下記事における年齢はすべて2021年12月31日時点のものとなります)
【参考:過去のシーズンチームガイド】
Fortuneo - Samsic 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Arkéa Samsic 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
Team Arkéa Samsic 2020年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
目次
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2021年ロースター
※2020年獲得UCIポイント順
「キンタナ組」やブアニ、ローザなどの加入、そして前年から加入していたフランス王者バルギルも含め、ワールドツアー級のラインナップを揃えていた昨年のアルケア・サムシック。
とくにシーズン序盤はブアニの勝利、キンタナの勝利、そしてキンタナをアシストするバルギルの姿など、期待感を持たせるリザルトが続いた。
そのまま、もしかしたら今年のツールで、驚くような結果を出すかも・・・と思っていたが、新型コロナウイルスによるシーズンの中断、混乱が悪影響をもたらしたのか、シーズン後半はイマイチ目立てずに終わった印象がある。
大きな補強に走った昨年と対照的に、今年は3名の加入と抑え目。ただし、ベルギーや北フランスのスプリンター向けクラシックにひたすら強いアモリー・カピオや、ベルナル、ソーサに連なる「アンドローニの強力な南米系選手」として期待できる走りをするミゲル・フローレスなど、新加入選手もなかなか良い味出している選手たちだ。
2021年も派手なものは求めないが、そこそこに良い結果を積み重ねていってほしい。
注目選手
ナイロ・キンタナ(コロンビア、31歳)
脚質:クライマー
かつて世界の頂点に最も近いところにまで到達していたこの男の、UCIプロチームで過ごす最初の1年は、少なくともその前半戦においては決して悪くはなかった。
むしろ、モビスターで過ごした晩年の苦境からの復活を期待させるような走り。ランクは低いとはいえ、シーズン最序盤のツール・ド・ラ・プロヴァンスとツール・ド・オー・ヴァルで立て続けに総合優勝したときは、今年のツールでチームに念願の表彰台すらもたらすことができるのではないかとも期待させていた。
しかし、ロックダウン期間中の7月、トレーニング中の事故によって膝を負傷。
シーズン再開後もツール・ド・ラン総合3位など一定の成果は出すものの、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネは膝の痛みでリタイア。
ツール・ド・フランスには出て完走するものの、総合17位とあまりにも悔しい結果に終わった。
ツール後は両膝の手術を敢行。2ヶ月に及ぶリハビリを経て、ようやく年末頃にバイクに乗り始めるようになってきたところだという。
今シーズンもまだレースの予定は未定。どこからその全力を出せるようになるのかはまだわからないが、今年こそ、彼が彼の本来の力を全力で出せる環境が用意されることを願う。
ワレン・バルギル(フランス、30歳)
脚質:クライマー
気づけばこのチームで4年目。最初は驚きのプロコンチネンタルチームへの移籍だったが、今ではチームの顔として安定した結果を出している。
2020年は勝利なし。ただしクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合9位やツール・ド・フランス総合14位。今年はワンデーレースでの成績も目立っており、フレーシュ・ワロンヌ4位、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ9位、パリ〜ツール5位など。
年初のドローメクラシックなどパンチャー向きのワンデーレースでも2位など、上位に入賞している。
そして、自身の走りだけでなく、ツール・ド・ラ・プロヴァンスではナイロ・キンタナの総合優勝を支える走りも披露。
その後のパリ~ニースなどは初日からレースを去るなど、あまりかみ合わない部分もあったが、チームの一員として新たに加わったキンタナとのコンビネーションも、決して悪くなかったと評価できる1年にはなったであろう。
2020年シーズンはチームで最もポイントを稼ぎながらも、勝利はなく、そこまで目立つことはできなかったとは思うので、その高い実力でもって2021年は名実ともに中心的な役割を担ってほしい。
ナセル・ブアニ(フランス、31歳)
脚質:スプリンター
ジロ・デ・イタリアとブエルタ・ア・エスパーニャでそれぞれ3勝ずつ。プロ通算69勝の輝かしい成績を誇る世界トップクラスのスプリンターの1人。
しかしその喧嘩っ早いダーティなイメージと相まって、FDJからはデマールと比較されチームを去り、プロコンチネンタルチームとしては破格の待遇で在籍したコフィディスでは、チーム悲願のツール勝利を実現させられぬままときにツール開始前の失格などもあり、ついにはここも新エースラポルトに追い出される形で去ることになってしまった。
そんな彼が辿り着いたアルケア・サムシック。とりあえず2020年は、通算4勝と決して悪くない結果をもたらすことには成功した。
そして他のエース陣より一足先にスタートした2021シーズン。現在開催中のエトワール・ド・ベセージュにおいて、第1ステージの急勾配登りスプリントフィニッシュで集団から勢いよく飛び出し、あと一歩で勝利、というところにまで迫ることができた。
Raise your hand if you can feel the lactic acid in your legs just watching this finish. 🙋♂️ #EDB2021
— CyclingTips (@cyclingtips) February 3, 2021
Congrats @LAPORTEChristop. pic.twitter.com/jkCj0DmI1P
このときは残念ながら「宿敵」クリストフ・ラポルトに最後敗れてしまうが、それでも後続のトップスプリンターたちを2秒突き放してのフィニッシュとなり、シーズン序盤から今年も非常に好調であることを示した。
なんだかんだで、嫌いじゃない選手。これからも、汚名返上するような強い走りを、結果で示していってほしい。
その他注目選手
アモリー・カピオ(ベルギー、28歳)
脚質:スプリンター
なんというか・・・「最強ベルジャンスプリンター」の一人だと、思っている。ベルギーとか北フランスのクラシック風味のスプリントフィニッシュにおいて、無類の強さを誇る男。勝つ・・・というわけではないのだけれど、上位には安定して入ってくれるので、Pro Cycling Statsの予想ゲームでは困ったらカピオ、と思っている。
たとえば2018年のノケレ・コールス2位。ドリダーフス・ブルッヘ~デパンヌの6位。2019年のパリ~ブールジュ3位、パリ~ツール5位、そして2020年のシュヘルデプライスとクラシカ・ドゥ・アルメリアの6位、ツール・ド・ワロニーでは区間5位と6位で総合でも3位、ツール・ド・ルクセンブルクでも区間2位・5位・7位など。
しかし勝利はない。プロ勝利は0。とにかく勝てないけど上位には入る。私の好きなタイプの選手である。
2021年の緒戦クラシカ・コムニタート・バレンシアナ1969ではここでも3位に入り新チームでも相変わらずだ・・・と思って続くグランプリ・シクリスト・ラ・マルセイエーズでも期待していたが、こっちでは2位に入ったアルケア・サムシックの選手は彼ではなくトマ・ブダだった。
マルセイエーズはときにアルデンヌ・クラシックかと見紛うほどのアップダウンでのセレクションがかかり、この時も実際結構激しい展開が終盤に巻き起こっていたため、そこで足を削られてしまったのかもしれない。
いずれにせよ、今後も活躍が期待できる選手。注目だ。
ミゲル・フローレス(コロンビア、25歳)
脚質:クライマー
名伯楽ジャンニ・サヴィオが率いるアンドローニ・ジョカトリは、かねてより非常に優秀な南米系選手たちを輩出してきた。その筆頭がエガン・ベルナルやイバン・ソーサであり、南米系以外でも、昨年のジロ・デ・イタリアでは破格の活躍を収めたファウスト・マスナダやマティア・カッタネオ、同じ活躍するアンドレア・ヴェンドラーメなど、とにかくワールドツアーチームに即戦力級の選手たちを輩出する、かなり上質なチームであると言える。
そんなアンドローニの2020年の個人的大注目選手がこのミゲル・フローレスだった。元々はウィリエール・トリエスティーナ(現ヴィーニザブ)に所属しており、2019年からアンドローニに。
その実力を覚醒させたのが2020年で、レムコ・エヴェネプールが総合優勝した年始のブエルタ・ア・サンフアンではクイーンステージのアルト・コロラドで最後はオスカル・セビリャやブランドン・マクナルティを振り切って見事ステージ優勝を果たしている。一度遅れて総合の危機に瀕しながらも後続から驚異の追い上げを見せて追いついてきたレムコ・エヴェネプールも、さすがに終盤のこの攻撃を抑え込むだけの体力は残っていなかったようだ。
その後もツアー・コロンビア総合5位など活躍。9月のセッティマーナ・コッピ・エ・バルタリを途中リタイアしてしまったあとはレースを走れていなかったが、今年、このアルケアで、キンタナやアナコナと共に経験を積んで更なるレベルアップを図っていってほしいところ。
トマ・ブダ(フランス、27歳)
脚質:スプリンター
2019年まではディレクトエネルジーに所属。そこではクラシカ・ドゥ・アルメリア6位やコクサイデ・クラシック9位、そしてシルキュイ・ド・ワロニー優勝など、地味ながらも確かに強さを感じさせる活躍を見せていた。
昨年からアルケアに所属したものの、そこでは思ったほどの活躍を見せられず。今年も、脚質的に似ているカピオたちに喰われてしまうかな・・・と危惧していた中で、年初のグランプリ・シクリスト・ラ・マルセイエーズではラストにブライアン・コカールやマッテオ・トレンティンを追い抜いての2位フィニッシュ。
最後はまさかのオウレリアン・パレパントルに敗れてしまったものの、まだまだブアニに次ぐセカンドエースの座は諦めない!という強い意志を感じさせるリザルトを残してくれた。というか最初は完全にカピオだと思っていた・・・舐めていてすみません。
やはりフランスチームのセカンドエースはフランス人が担わなくては、という意味でも、これからの活躍にさらなる期待。
なお、このGPマルセイエーズは「クープ・ドゥ・フランス」の緒戦でもある。この結果を携えつつ、割と過去にも良い選手が名を連ねているクープ・ドゥ・フランス総合優勝もひそかに狙っていってほしいところ。
総評
上記取り上げた選手以外にもディエゴ・ローザやウィネル・アナコナなど、とにかくUCIプロチーム(旧プロコンチネンタルチーム)らしからぬ豪華さを誇るこのチーム。昨年もワールドツアーチームに混じってのUCIチームランキング15位は立派とも言えるが、それに満足していてはもちろんいけない。
とにかく、活躍すべきはツール・ド・フランス。キンタナとバルギルが、せめてどちらかだけでも総合TOP10に入ること。
ブアニが今年こそはツール・ド・フランスに出場するのかはわからないが、出場したからには、今度こそ悲願のツール勝利を手に入れること。
それが「最低ライン」だ。そんな中、フローレスや、エリ・ジェスベールなど、若手の台頭に注目しても行きたい。
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