りんぐすらいど

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今年のツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアのワイルドカードについて考察する

 

先週から今週にかけて、各種ビッグレースのワイルドカード*1が続々と発表されている。

今回は主にツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアのそれを確認し、それぞれどういうチームなのか紹介しつつ、注目選手を確認していきたいと思う。

 

とくにジロ・デ・イタリアは新チームが選出されるなどなかなか意外な結果に。

合わせて、まだ未発表のブエルタ・ア・エスパーニャの予想や、その他の主要レースのワイルドカードなども確認していきたいと思う。

 

目次

 

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今年のワイルドカードのルールについて

まず、大前提として、2021シーズンのワールドツアーレースにおけるワイルドカードの決め方についておさらいしていこう。

ワールドツアーは原則、ワールドツアーチーム全19チームに出場義務がある*2

そこに加えて昨年からの新ルールとして、前年のUCIチームランキングにおけるUCIプロチーム最上位のチームは、グランツールを含む全てのワールドツアーレースへの「参加権」が与えられる。

また、UCIチームランキングにおけるUCIプロチームの中で2番目の順位のチームに関しては、ワールドツアークラスのすべての「ワンデーレース」への「参加権」が与えられる。

それぞれに該当するのがアルペシン・フェニックスとアルケア・サムシックである。

アルペシン・フェニックス(昨年UCIプロチームランキング1位)・・・すべてのワールドツアーレース(グランツール、ステージレース、ワンデーレースすべて含む)に出場可能。

アルケア・サムシック(昨年UCIプロチームランキング2位)・・・すべてのワールドツアークラスのワンデーレース(グランツール、ステージレースは除く)に出場可能。

 

よって、グランツールに関しては、ワールドツアー19チームに加えて自動招待枠のアルペシン・フェニックスの参加が確定しているため、本来、主催者が自由に招待チームを決められるワイルドカードは2枠しかない*3

しかし、2021年シーズンに関しては特例で、出場チームの上限を23チームにするとUCIが発表。

www.velonews.com

 

その結果、ワールドツアー19チームにアルペシン・フェニックスを加えても、なお3チームを主催者が自由にワイルドカードとして選出することができるようになった。

 

よって、以下グランツールに関して紹介するのはその3チームについてである。

なお、ワンデーレースに関してはステージレースよりもチーム上限数が多いため、主催者招待枠も合わせて増えている。

こちらはあとで一覧で紹介していこう。

 

 

ツール・ド・フランスについて

2021年ツール・ド・フランスのワイルドカードは以下の3チームである。

  • アルケア・サムシック
  • トタル・ディレクトエネルジー
  • B&Bホテルス p/b KTM

 

非常に妥当な選出である。

過去この枠で選ばれ続けてきたコフィディスがワールドツアーチームになった以上、誰がASOでもこの3チームを選ぶだろうなというチームである。

あえて迷うとすれば残る1つのフランス籍UCIプロチームであるデルコだろう。実はその前身、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンスは昨年、トタル・ディレクトエネルジーよりもUCIチームランキング的には上位であった。

しかし、日本でも多く報道されたスポンサー問題によって戦力も流出し、今年の状態は決して良いとは言えない。

一方のトタル・ディレクトエネルジーは今年、新たにピエール・ラトゥールやエドヴァルド・ボアッソンハーゲンなど、ツール・ド・フランスでも活躍した選手たちを多数獲得。

その下のB&Bホテルスもブライアン・コカールやピエール・ローランなど、これまたツール・ド・フランスとも縁のある選手たちが在籍しているため、デルコよりも優先されてしまうのは致し方ない。

 

だが、B&Bなんかは実際、その創設から2年間は選出されることがなかった。

そのとき代わりに選出されていたのは、今年からワールドツアー化しているアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ(当時はワンティ・グループゴベール)。

彼らが選ばれていた理由は何よりもそのフランス人エース、ギヨーム・マルタンの存在。実際、彼がコフィディスに移籍した2020年は早速その出場権をB&Bに奪われ、そのことが今年のワールドツアー昇格のきっかけになったと言っても過言ではないだろう。

 

逆に言えば、強力なフランス人ライダーや、ツール・ド・フランスでの活躍経験のある選手を獲得すれば、これからもデルコや非フランスチームがワイルドカードを手に入れる可能性は十分にある。たとえばビンゴール・ワロニーブリュッセルやガスプロム・ルスヴェロなど。

ゆえに、B&Bを筆頭に、今回選ばれた3チームも今後、油断するわけにはいかない。

以下、その3チームについて、ツール・ド・フランス出場可能性のある有力選手たちを含め紹介していこう。

 

アルケア・サムシック(ARK)

www.ringsride.work

元々2018年から所属していたワレン・バルギルを始め、2020年には新たにナイロ・キンタナナセル・ブアニが加入。

登りからスプリントまで、ツール・ド・フランスで勝ち星を狙える有力選手たちが集まった。アシストもキンタナの盟友ウィネル・アナコナや元アスタナ&スカイのディエゴ・ローザなど有力勢が揃っている。

とはいえ、昨年はバルギルが総合14位、キンタナが総合17位と決して望ましい結果ではなかった。あまりピュアスプリンターに向いたレイアウトではなかったという理由でブアニも欠場していた。果たして、投資に見合うだけの結果は得られたのか?

今年新加入の選手はアモリー・カピオとかミゲル・フローレスとか、個人的には好きな選手たちばかりだが、ツール・ド・フランスでいきなり活躍できるようなタイプの選手たちではない。

ツール出場メンバーは昨年とさほど変わらないだろうから、それでどれだけのリベンジをかけられるか、注目だ。

 

チーム・トタル・ディレクトエネルジー(TDE)

www.ringsride.work

2年前のUCIチームランキングにおけるプロコンチネンタルチーム内1位となり、昨年は全ワールドツアーレースへの参加権を手に入れることのできていたこのチーム。だが、2020年は散々な結果に。

そこからの挽回を目指した大きな移籍戦略に着手。「ポスト・ヴォクレール」と期待されながらも近年なかなか結果を出せずにいたリリアン・カルメジャーヌを手放した代わりに、2018年マイヨ・ブランのピエール・ラトゥール、2015年のミュール・ド・ブルターニュステージ勝利者のアレクシー・ヴュイエルモ(そして今年もミュール・ド・ブルターニュが登場する!)、過去3度のツール・ド・フランスステージ勝利経験をもつエドヴァルド・ボアッソンハーゲンなどが新たにチームに加わっている。

他にも、FDJやAG2Rを渡り歩き、過去2回のツール・ド・フランス出場と、3回のブエルタ・ア・エスパーニャ区間勝利経験をもつアレクサンドル・ジェニエも獲得し、2019年からこのチームにいるニッコロ・ボニファツィオもまた、いつツール・ド・フランスでステージ勝利を果たしてもおかしくはない実力を持っている。

タレントは揃っている。あとは、実際に勝利を掴み取るだけだ。そして目指すは、Proチームランキング首位の座の奪還である。

 

B&Bホテルス・p/b KTM(BBK)

2018年発足の比較的新しいチーム。元選手のジェローム・ピノーが立ちあげ、その目玉選手として当時ディレクトエネルジーに所属していたブライアン・コカールが牽き抜かれるなど注目を集めた。結果、コカールは2017年のツール・ド・フランスに出させてもらえず、その後2年間、このチーム自体がツールに出られないことによってコカールはしばらくツールから引き離されてしまったのだが・・・

昨年からようやくこのチームもツールに呼ばれるようになり、コカールにとっても2015年シャンゼリゼ2位の栄光を再び取り戻すチャンスがやってきた。2019年からは2011年ラルプデュエズ覇者かつマイヨ・ブランのピエール・ローランが加入し、その意味でもツールでの存在感は大きい。だが、そんな体制で挑んだ2020年がどうだったかというと、正直結果を出せたわけではない。コカールも3位が1回、4位が1回と、悪くはないけれど、良いとも言えない。今年こそは結果を出さないと、来年以降再びワイルドカードが2枚になったときにチャンスはまず間違いなく失われるだろう。

元FDJのスプリンター、ケヴィン・レザや元AG2Rでツール9回出場のシリル・ゴチエなども在籍。今年からはAG2Rに6年間在籍したカンタン・ジョレギなども加わり、ワールドツアー級の戦力は地道に補強はしている。

一方で、若手とか、生え抜きとかの選手をしっかりと強くしていくことも必要。昨年はカンタン・パシェが結構いい走りをしてローランを助けていた場面が目立ったので、さらなる活躍に期待だ。

 

 

ジロ・デ・イタリアについて

問題はこちらである。

選ばれた3つのワイルドカードは以下の通り。

  • バルディアーニCSF・ファイザネ
  • EOLO・コメタ
  • ヴィーニザブ

 

まず、アンドローニジョカトリ・シデルメクの不選出である。

このチームは少なくとも「アンドローニジョカトリ*4」の名が冠される2010年以降は、2016年と2017年を除きほぼ毎年出場し続けてきた。その名になる前からもかなりの頻度でジロに選ばれ続けてきており、同じく遥か昔からの皆勤賞のバルディアーニと並び、ジロ常連チームである。

昨年は積極的な逃げで中間スプリントポイント賞やフーガ賞を獲得。2019年にはファウスト・マスナダが区間優勝しており、このマスナダを始め、マッティア・カッタネオ、アンドレア・ヴェンドラーメ、イバン・ソーサ、エガン・ベルナル、ディエゴ・ローザ、アレッサンドロ・デマルキなど、数多くの有力選手がこのチームから輩出されてきた。

とくに南米系の才能を尽く掘り起こしてきた名伯楽ジャンニ・サヴィオGMも、今回の決定に怒り心頭である。

www.cyclingnews.com

 

EOLOコメタとバルディアーニが選出されることには不思議はないと言いつつ、残る1つの席をヴィーニザブと比較して奪われることには納得いかないとやや過激な表現で語るサヴィオGM。

そして彼は最後に付け加える。「この瞬間、もし来年も続けるかと問われたら、30年以上も続けていた中ではあるが、何も答えることはできない。続けないと言っているわけではないが、確実に続けるとも言い切れない。何も言うことはできない」

 

それは決して大げさな話ではない。グランツールに選出されないということは、それだけ小さなチームにとっては重大なことなのだ。

 

しかしかといって、ヴィーニザブを含め、選ばれた3つのチームが悪いチームであるというわけでは決してない。

以下、その3つのチームを注目選手含め紹介していこう。

 

バルディアーニCSF・ファイザネ(BCF)

私の知る限り2~30年近くは少なくとも出場し続けている常連チーム。途中、ドーピングスキャンダルなども何度か発生したものの、それでも選出され続けているチームである。

ジロへの「投資」を行っていることも上記のサヴィオの発言からも推測できる。事実、ジロ・デ・イタリアは兼ねてより経済的な動機でチームやコースを選択する傾向が強いことは言われており、海外スタートを積極的に推し進め、チームとしてもポーランドやロシアのチームを積極的に招待している。それはツールとそれ以外のグランツールとの大きすぎる経済的格差が原因でもあるだろう。

ただ、もちろんこのチームも実績は十分にある。かつてはステージ優勝は頻繁に果たしていたし、近年でも2019年にジョヴァンニ・カルボーニが大逃げの結果一時マリア・ビアンカを着用している。2016年にジュリオ・チッコーネがネオプロ初年度初参戦初勝利を挙げたのも、このバルディアーニに所属していたときであった。

そして今年はジロ3勝を挙げている元バーレーン・マクラーレン、エンリーコ・バッターリンや、2013年にジロ2勝、昨年もエトナ山ステージで逃げて区間2位となるなどまだまだ活躍し続けているジョヴァンニ・ヴィスコンティなどを新規で獲得。

今年は勝利も狙えるか。

 

ヴィーニザブ(THR)

かつてはヴィーニファンティーニやネーリ・ソットーリ、サウスイースト、そしてウィリエール・トリエスティーナなどと名前を変えてきて、最近はこのヴィーニザブを名乗っている。昨年ついていたKTMも外れてB&Bに合流したことによって非常にシンプルな名前に。昨年活躍したルカ・ワッカーマンやヴィスコンティを手放すなど、経済状況にやや不安があるか・・・?

とはいえこのチームもやはり伝統チーム。オスカル・ガットやダニエル・マルティネスなどを輩出してきており、ヴィーニファンティーニ時代は佐野淳哉やアイラン・フェルナンデスも所属していた。

今年は2017年に区間2位を2回経験しているヤコブ・マレツコが出身チームのこのヴィーニザブに出戻ってきたり、昨年最終日TT9位のカミル・グラデクが同じCCCチームから移籍してきたり。もちろん前述の通りヴィスコンティの喪失は結構な痛手ではあるが、マルコ・フラッポルティロレンツォ・ロタエドゥアルド・ザルディーニなどのジロ常連組を中心に逃げも含めて積極的に活躍してほしい。

ツールにおけるB&Bのように、来年以降生き残るかどうかが不確実なチームだけに・・・。

 

EOLO・コメタ(EOK)

2013年にアルベルト・コンタドールがスペインの若手育成のための財団を立ち上げる(コンタドール財団チーム)。エンリク・マスがそのチーム出身であることは有名だ。

このチームを発展させる形で、元チームメートのイヴァン・バッソと組んで

2018年からはポーラテック・コメタと名を変えてコンチネンタルチームに発展。元チームメートのイヴァン・バッソを共同運営者とし、コンタドールの兄であり代理人でもあったフランシスコをGM、そしてショーン・イェーツやヘスス・エルナンデスらを監督に据えた体制でここまで歩んできた。その中では現トレック・セガフレードのマッテオ・モスケッティなどの才能も輩出してきた。

今年からはイタリアのインターネット関連企業EOLO(エオーロ)をメインタイトルスポンサーに据えたことで予算を大幅増額。チーム国籍もイタリアに変更し、UCIプロチームに昇格。見事にジロ・デ・イタリアへの参加資格を獲得したというわけだ。

当然、それを見据えて体制も大幅強化。アンドローニジョカトリからはブエルタ勝利経験のあるフランチェスコ・ガヴァッジやジロ勝利経験のあるマヌエル・ベレッティなどのベテランを獲得。ヴィーニザブからは昨年ジロ初出場ながら第2ステージの登りスプリントで終盤アグレッシブなアタックを行い区間5位に入ったルカ・ワッカーマンも移籍してきた。

ほか、UAEから移籍してきた2016年ラヴニール総合2位のエドワルド・ラヴァッジや昨年からこのチームに在籍している若手セルジオ・ガルシア(スペイン)、アレッサンドロ・ファンチェロ(イタリア)などの「育成」にももちろん期待だ。

純粋な戦力でいえばまだまだ今回のワイルドカードの中では最下位に沈みそうな立場なのは間違いない。

UCIプロチームとして相応しい実績を今年、どこまで積み上げられるか。

 

 

ブエルタ・ア・エスパーニャについて

2月13日現在、まだワイルドカードは発表されていない。

ただ、例年の傾向を元に、ある程度は想像することはできるだろう。

まずはカハルラル・セグロスRGAブルゴスBH、彼らはスペイン籍のプロチームであり、実績もあることからほぼ確定と見てよい。

あと1チームだが、スペイン籍のプロチームとしてはエウスカルテル・エウスカディエキッポ・ケルン・ファルマの2チームが存在する。

ケルン・ファルマは昨年コンチネンタルチームとして創設? 今年からプロチームに昇格したばかりの若いチームで、メンバーとしてもスペイン籍の20代前半の選手でほぼほぼ固められている。育成チームとしての側面も強そうで、1年目という意味ではEOLOコメタと同様ではあるものの、その基盤やバリューは結構異なりそうなので、いきなりグランツールに選ばれる可能性は高くなさそうだ。プロチームに昇格するにあたって、強力な新規獲得を行ったかといえばそうでもなさそうなので・・・。

となれば、エウスカルテル・エウスカディが選ばれる可能性は十分にありそう。かつてブエルタにも出場していたが2年前に解散してしまったエウスカディ・バスクカントリーから、ブエルタ優勝者も含め有力選手が多く移籍していることも追い風になりそうだ。

とはいえ、現役有力選手のミケル・ランダがチームのオーナー?的な立場にいることは何かマイナスに働く可能性はあるのだろうか・・・?

ほかに可能性があるとしたら昨年も自動招待枠で参加、それ以前もユーロップカー時代から度々招待されているトタル・ディレクトエネルジーが、ビクトル・デラパルテなどの有力スペイン人ライダーなどの存在も含め、招待される可能性はある。

 

ここでは一応、カハルラル・セグロスRGAとブルゴスBH、そしてエウスカルテル・エウスカディが招待されると予想し、この3チームについて見ていくことにする。

 

カハルラル・セグロスRGA(CJR)

こちらも10年以上常連で招待され続けているスペインの強豪プロチーム。昨年ブエルタ総合3位のヒュー・カーシーもこのチーム出身である。

新規獲得は2名いるが、ともに20歳の若手でブエルタ・ア・エスパーニャで活躍できるタイプの選手ではないため、基本的には昨年出場したメンバーが今年も主力メンバーになりそうだ。

シルキュイ・ドゥ・ゲチョ優勝者のジョン・アベラストゥリや2019年のブエルタ・ア・エスパーニャで区間2位の経験があるヨナタン・ラストラに注目。

また、個人的に注目しているのが、2018年のベイビー・ジロ区間1勝・総合6位の今年23歳コロンビア人、アレハンドロ・オソリオ。2019年にはNIPPOヴィーニ・ファンティーニに所属し、チーム消滅後にこのカハルラルに。まだプロでのレースではあまり結果が出ていないが、可能性を十分に秘めている選手だ。

 

ブルゴスBH(BBH)

その名のとおりブエルタ・ア・ブルゴスの開催地として有名なブルゴス県(バスクに隣接するスペイン北西部の県)を拠点とするチーム。

ブエルタ・ア・エスパーニャには2018年以降は毎年招待されているものの、それ以前では長らく招待のないチーム。

ただ、その短い間にもしっかりと実績を残した。2019年の第5ステージで。ここでこのチームの主力とも言うべきアンヘル・マドラソが優勝し、さらに2位にはチームメートのイェツ・ボルも入っていた。マドラソはさらに14日間にわたり山岳賞ジャージを着続け、最終的にもランキング2位。

非常にインプレッシブな走りを見せてくれたこのチームに今後も期待したいところ。

元からいたメンバーの中でほかに注目したいのは、昨年のトロフェオ・マッテオッティで2位、2018年のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャでも区間2位に入っているパンチャーのディエゴ・ルビオ

新戦力としては元コロンビアロード王者でツール・ド・台湾やツール・ド・ルワンダなど、マイナー国での実績が多いスプリンター、エドウィン・アビラや、シクロクロススペイン王者を連覇中のフェリペ・オルツなどに期待したい。

 

エウスカルテル・エウスカディ(EUS)

2013年に解散した、バスク出身者を中心に集めたワールドツアーチームとして存在感を示していたエウスカルテル・エウスカディ。ゴルカ兄弟やペリョ・ビルバオ、ミケル・ニエベなど数々の有力選手がこのチームから輩出されてきた。

その出身者の1人であるミケル・ランダがオーナーとなって、そのチームの流れを組む団体として設立されたのが「フンダシオン・エウスカディ(エウスカディ財団)」。2018年にコンチネンタルチームとして登録されたこのチームには、2019年に半年だけ、セルジオ・イギータを在籍させていたことなどもあり、そのときにブエルタ・ア・アンダルシアで区間2位を獲らせていたりもする。

その後、同じエウスカディの名をもつプロコンチネンタルチーム、エウスカディ・バスクカントリー・ムリアスが在籍的な理由で19年末に解散。在籍していた有力選手たちを吸収し、このチームも2020年にUCIプロチームに昇格した。

しかも、かつてのエウスカルテルがスポンサーに復帰してくれたことによって、今年からはついに、この古の名を復活させることができたのである。

前述の通り、エウスカディ・バスクカントリーの有力選手を多く取り入れることで、ブエルタ・ア・エスパーニャでも実績のある選手が揃っている。

その代表が2019年ブエルタ・ア・エスパーニャ第11ステージでまさかの逃げ切り勝利を果たしたミケル・イツリア。2018年のブエルタ・ア・エスパーニャで総合17位という実績を残しているミケル・ビスカラも獲得している。

さらに2019年のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで区間5位を2回獲得しているスプリンターのミケル・アリスティも有力な選手だし、長くコフィディスで走っていたルイスアンヘル・マテ、モビスターやNIPPOヴィーニ・ファンティーニで走っていて「登りスプリントといったらこの人」といった感のあるフアンホセ・ロバトなどもこのチームに合流している。

これら安心感のあるベテランに囲まれて、どれだけ若手を育てていけるか。かつての名チームの魂をどこまで継承していけるかに注目である。

 

 

その他のワールドツアーレースのワイルドカードについて

最後に、その他公式に発表されているレースについてのワイルドカードを紹介していこう。

こちらは一覧のみとなるが、参考にしていただければ幸い。

(抜け漏れ・間違いなどありましたらご指摘のほどよろしくお願いいたします)

 

UAEツアー(UAE、2/21~2/27)

[自動招待枠]

  • アルペシン・フェニックス(ベルギー)

(主催者招待枠無し) 

ストラーデビアンケ(イタリア、3/6)

[自動招待枠]

  • アルペシン・フェニックス(ベルギー)
  • チーム・アルケア・サムシック(フランス)

[主催者招待枠]

  • アンドローニジョカトリ・シデルメク(イタリア)
  • バルディアーニCSF・ファイザネ(イタリア)
  • EOLOコメタ(イタリア)
  • ヴィーニザブ(イタリア)

パリ~ニース(フランス、3/7~3/14)

[自動招待枠]

  • アルペシン・フェニックス(ベルギー)

[主催者招待枠]

  • B&Bホテルス・p/b KTM(フランス)
  • チーム・アルケア・サムシック(フランス)
  • チーム・トタル・ディレクトエネルジー(フランス)

ティレーノ~アドリアティコ(イタリア、3/10~3/16)

[自動招待枠]

  • アルペシン・フェニックス(ベルギー)

[主催者招待枠]

  • アンドローニジョカトリ・シデルメク(イタリア)
  • EOLOコメタ(イタリア)
  • ガスプロム・ルスヴェロ(ロシア)
  • チーム・アルケア・サムシック(フランス)
  • チーム・トタル・ディレクトエネルジー(フランス)

ミラノ~サンレモ(イタリア、3/20)

[自動招待枠]

  • アルペシン・フェニックス(ベルギー)
  • チーム・アルケア・サムシック(フランス)

[主催者招待枠]

  • アンドローニジョカトリ・シデルメク(イタリア)
  • バルディアーニCSF・ファイザネ(イタリア)
  • チーム・ノヴォ・ノルディスク(アメリカ)
  • チーム・トタル・ディレクトエネルジー(フランス)

ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(スペイン、3/22~3/28)

[自動招待枠]

  • アルペシン・フェニックス(ベルギー)

[主催者招待枠]

  • エキッポ・ケルン・ファルマ(スペイン)
  • エウスカルテル・エウスカディ(スペイン)
  • ガスプロム・ルスヴェロ(ロシア)
  • ラリー・サイクリング(アメリカ)
  • チーム・アルケア・サムシック(フランス)

ラ・フレーシュ・ワロンヌ(ベルギー、4/21)

[自動招待枠]

  • アルペシン・フェニックス(ベルギー)
  • チーム・アルケア・サムシック(フランス)

[主催者招待枠]

  • ビンゴール・ワロニーブリュッセル(ベルギー)
  • デルコ(フランス)
  • ガスプロム・ルスヴェロ(ロシア)
  • スポートフラーンデレン・バロワーズ(ベルギー)

リエージュ~バストーニュ~リエージュ(ベルギー、4/25)

[自動招待枠]

  • アルペシン・フェニックス(ベルギー)
  • チーム・アルケア・サムシック(フランス)

[主催者招待枠]

  • ビンゴール・ワロニーブリュッセル(ベルギー)
  • ガスプロム・ルスヴェロ(ロシア)
  • スポートフラーンデレン・バロワーズ(ベルギー)
  • チーム・トタル・ディレクトエネルジー(フランス)

 

 

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*1:強制参加のワールドツアーチーム以外に、主催者の権限で参加を決められるチームのこと。

*2:昨年もそうだが、今年も新型コロナウイルスの影響によりレーススケジュールなどに問題が生じた場合はその義務が例外的に緩和される可能性はある。

*3:なお、自動招待枠は「参加権」であるため、その権利を持つチームが「辞退」することができる。実際昨年その権利をもっていたトタル・ディレクトエネルジーが、ジロ・デ・イタリアに関しては「辞退」したことで、昨年のジロの主催者招待枠は3枠だった。一方、今年の「参加権」をもつアルペシン・フェニックスはすでに3大グランツールすべてに出場することを宣言している。なお、2019年まではこのルールが適用されず、かつワールドツアーチームも18チームしかなかったため、グランツールの主催者招待枠は4枠あるのが通例だった。

*4:イタリアのおもちゃメーカー。

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