りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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NTT Pro Cycling 2020年シーズンチームガイド  

  

読み:エヌティーティー・プロサイクリング

国籍:南アフリカ

略号:NTT

創設年:2007年

GM:ダグラス・ライダー(南アフリカ)

使用機材:BMC(スイス)

2019年UCIチームランキング:22位

(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります) 

 

参考 

Dimension Data 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Team Dimension Data 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

 

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2020年ロースター

※2019年獲得UCIポイント順。

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「ワールドツアー万年最下位チーム」は2020年も苦しいロースター。当然、2019年基準のUCIポイントでは全チーム中最下位レベルだし(ただし平均値を取るとモビスターの方がひどい)、最も得点の高いヴァルグレンでも1000ポイントいっていないのはかなり危機的だ。総合でもスプリントでもクラシックでも、トップレースで勝利を狙えるとびぬけた選手がほとんどいない。

2020年の新獲得選手としては、アジアで強いダイボール、準トップスプリンターと言っても悪くはなさそうなワルシャイド、TTで勝利を狙えるカンペナールツと、決して悪くはない補強だが、決定的ではない。大きく躍進する!と期待するのは難しいだろう。

そんな中で、地道に勝利を重ねていってほしい。また、期待したい若手選手も、ギボンス、ゲブレイグザブハイアー、オコーナーと、いないわけではない。まだまだメインチェスへの期待も完全に消えてはいない。

あとは、U23世界王者バッティステッラを獲得したことは大きいんだけど・・・2019年も期待の新人ジノ・マーダーを獲得しておきながら育て切れていなかった印象があるので、過度な期待はしないようにする。

 

 

注目選手

ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、29歳)

脚質:TTスペシャリスト

Embed from Getty Images

2019年の主な戦績

  • ベルギー・ツアー区間1勝、総合2位
  • ティレーノ〜アドリアティコ第7ステージ(個人TT)優勝
  • ジロ・デ・イタリア第9・21ステージ(個人TT)2位
  • ツール・ド・ロマンディ第5ステージ(個人TT)2位
  • 世界ランキング191位

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2019年4月、4年前にブラッドリー・ウィギンスが叩き出した記録を更新し、現アワーレコード保持者となったカンペナールツ。次の目標は当然、2020年のオリンピック。そのために彼は、世界王者を生み出した実績をもつBMCのバイクと、チーム内でのフリーな役割を求めて、このチームへの移籍を決めた。

そんな彼だが、東京オリンピックTTに無条件で出場できるわけではない。ベルギーに許された出場枠は2つ。1つは、ヨーロッパ王者であり、世界選手権銀メダリストのレムコ・エフェネプールが既に手にしている。残り1つは、カンペナールツと、そしてワウト・ファンアールトが争っている状況。

それがゆえに、カンペナールツは、自らのオリンピック出場枠を懸けて、2020年はジロ・デ・イタリアに挑む。ここには、3つの個人タイムトライアルが用意されている。2019年のジロ・デ・イタリアでも同様に3つ用意されており、そのうち(激坂短距離という特殊な第1ステージを除く)2つのタイムトライアルで2位につけていた。

しかも第9ステージのサンマリノでは、残り1.5㎞でメカトラに襲われたがゆえの敗北だった。第21ステージのヴェローナでは、登りの頂上の中間計測地点では、トップタイムを記録していた。その後のテクニカルな下りで、エースを失ったチャド・ハガの、チームに勝利を届けるという強い思いが生んだアグレッシブさを前にわずか4秒、届かなかった。

強い思いは、2020年のカンペナールツにもあるはずだ。タイムトライアル種目における世界の頂点という、限られた枠を目指して。カンペナールツにとって、キャリア最大の正念場となるのがこの年かもしれない。

 

 

 

ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、31歳)

脚質:スプリンター

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2019年の主な戦績

  • サイクラシックス・ハンブルク3位
  • ライドロンドン〜サリー・クラシック6位
  • ドリダーフス・ブルッヘ〜デパンヌ9位
  • ツアー・オブ・オマーン1勝
  • ツアー・オブ・スロベニア1勝
  • ブエルタ・ア・ブルゴス1勝
  • 世界ランキング112位

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イタリアのスポンサーがついたトレックチームで長年走り、ジロ・デ・イタリアでもポイント賞が2回。しかし勝利はない。いや、一度だけ、先頭でゴールを突き抜けたことはある。2016年の最終ステージ。しかしそのときも、彼は斜行と判定を下され、降格の末勝利を認められずに終わった。その日のポディウムで、彼はポイント賞ジャージ確定の表彰を受けるが、その表情は審判団への抗議の感情に溢れ、無表情を貫いていた。

そんな、強いのになかなか勝てないことが続き、日本では「2位ッツォーロ」なんて呼ばれることも。だが、やっぱり強いのは間違いない。2019年は、ツアー・オブ・オマーン、ツアー・オブ・スロベニアでそれぞれ1勝したほか、ブエルタ・ア・ブルゴスでは、激坂を得意とするパンチャー、アレックス・アランブルやジョン・アベラストゥリと並んで上位に入り込んでいった。単なるピュアスプリンターではなく、登りスプリントもいける強さを身につけ始めている。

まだまだツールのエーススプリンターとして勝利を狙えるような存在ではないのは確かだ。世界で5本の指に入るレベルのトップスプリンターと呼ばれることはまだないだろうし、これからも難しいかもしれない。だが、ジロ・デ・イタリアでの念願の勝利くらいは期待したい。

 

 

ミカエル・ヴァルグレン(デンマーク、28歳)

脚質:パンチャー

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2019年の主な戦績

  • ブルターニュ・クラシック4位
  • グランプリ・シクリスト・ド・モンレアル5位
  • 世界選手権ロードレース6位
  • ビンクバンク・ツアー総合10位
  • 世界ランキング80位

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2018年にオンループ・ヘット・ニュースブラッドとアムステルゴールドレースを制し、ブルターニュ・クラシックで2位、ロンド・ファン・フラーンデレンで4位、そしてインスブルック世界選手権ロードレースでも7位に入った男。稀代のワンデーレーサーとしての才能を見事に発揮してみせたわけだが、2019年はそれと比べるとやや物足りない結果ではあった。

だがそれでも確かに、特にこのチームでは随一の実績を出したことは間違いなく、パンチャー向けのヨークシャー世界選手権でも前年以上の成績を残した。

引き続き2020年は、最も得意であるはずのアルデンヌ・クラシックと、北のクラシックを含めた各種ワンデーレースで結果を出してほしい。今やチーム最大の稼ぎ頭であるのだから。

ただ2020年の世界選手権は彼にとってはやや山すぎるか? インスブルックでそれなりの結果を出したことを考えればいける? 2021年の世界選手権はフランドルを舞台にするということでよりチャンスは大きそうだ。同年のツール・ド・フランスは彼の母国であるデンマーク開催ということも、期待できる要素である。

そこに向け、2020年はより飛躍していくためのシーズンだ。

 

 

その他注目選手

ベンジャミン・ダイボール(オーストラリア、31歳)

脚質:オールラウンダー

アジアツアーを中心に走り、日本でもお馴染みの選手。2018年ツール・ド・熊野総合2位に、2019年ツール・ド・栃木総合3位。2019年は他に、オセアニア大陸選手権ロードレースで優勝したり、ツール・ド・チンハイレイクで総合3位、そしてツール・ド・ランカウイで総合優勝していたりする。

あとはその力量がどれだけヨーロッパ、そして世界を舞台にして発揮できるか。開幕戦は地元オーストラリア最大のレース、ツアー・ダウンアンダー。初出場のこの夢の舞台は彼の脚質的には悪くないはずのレースだ。

 

 

ライアン・ギボンス(南アフリカ、26歳)

脚質:スプリンター

2017年にツール・ド・ランカウイで総合優勝して以来、注目している選手。ジロ・デ・イタリアでは同年から連続出場し、毎年区間上位には入り込んでいる。なかなか勝てず、殻を破れていないが、2020年こそは、という思いもある。

まだ若いし、南アフリカ人だし、ということで、本来であればニッツォーロ以上に期待したい選手ではある。実際、2019年はニッツォーロ以上のUCIポイントを獲得してはいる。

ただ、この3年間、期待し続けてきた中でそこそこの位置を保ちつつ殻を破り続けられていないのが、自分の中では不安。いや、2020年こそは・・・きっと・・・

 

 

アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(エリトリア、26歳)

脚質:クライマー

2018年にアフリカ大陸選手権ロード&TTの二冠を達成した青年は、2019年にはジロとブエルタの山岳ステージで積極的な逃げを見せ、ブエルタ・ア・ブルゴスでも総合6位と奮闘した。2020年に覚醒する資格を十分に持つ男だ。

エリトリア人といえば、今はもう所在不明のダニエル・テクレハイマノのことを思い出す。2015年ツールで、アフリカ人として初めてツールの特別賞ジャージを身につけた男。その後は鳴かず飛ばずだったが、今、エリトリア人の次なる才能の担い手になりうるのは、このゲブレイグザブハイアーかアスタナのメルハウィ・クドゥスだ。

 

 

入部正太朗(日本、31歳)

脚質:パンチャー

日本人選手の中では一番好きな男だった。実力は間違いなく高いのに、なかなか勝ち切れない、そんな自分が好きになる要素を十分に持ち合わせていた男だった。

そんな彼が2019年の日本選手権で優勝したことに、感動しないわけがなかった。あのサバイバルな展開の中で、新城幸也の走りに千切られずに最後まで戦い抜いたことは、この男の実力の高さと執念の賜物だった。

だからといって、彼が日本人最強であるとはもちろん思っていない。ワールドツアー入りした理由が単純にその実力によるものではないことは、本人ももちろん分かっているだろう。

あとは、そこでどれだけの走りを見せられるか。これまでも、ある意味では(サイドバイサイドレディオで語られたのとは別の意味での)恵まれてない環境にいた彼が、ワールドツアーでいかに想いを見せられるか。楽しみにしていたい。

 

 

総評

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少し厳しすぎる評価かもしれないが、実際、現実的にグランツールやスプリント含めたステージ優勝には、期待するのは難しい。北のクラシックとアルデンヌもほぼほぼヴァルグレンのみ期待ができるレベル。

冒頭に書いたのと繰り返しになるが、ギボンス、ゲブレイグザブハイアー、オコーナーなどの若手の躍進に、希望を抱くしかなさそうな。いや、悲観的なコメントばかりで、申し訳ないけれど・・・。

 

 

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