Class:ワールドツアー
Country:イタリア
Region:トスカーナ州
First edition:2007年
Editions:14回
Date:3/7(土)
新型コロナウイルスの流行によって引き起こされた長期のシーズン中断。
その災禍を乗り越えて、いよいよ本格的なロードレースシーズンが再開する。
その、ワールドツアー第1弾となるのがこの「ストラーデビアンケ」である。
思えば、UAEツアーやパリ~ニースの途中キャンセルなど、その影響が如実に表れつつあったころ、最初に完全キャンセルの憂き目にあったワールドツアーレースもまた、このストラーデビアンケだった。
そんなレースをもって再びシーズンが幕を開けるというのは、なかなか象徴的なことである。ペテル・サガン、ジュリアン・アラフィリップ、グレッグ・ファンアーフェルマート、そしてマチュー・ファンデルポールなど・・・注目選手たちが一堂に会するこのレースを、今回は徹底的にプレビューしていく。
なお、中止直前に作成したプレビューは以下の通り。
コースプレビューなどはほぼそのままだが、出場選手が微妙に変わっているため、今回はそのあたりを書き直しているので要チェック。
また、中止になった当時、自転車ロードレースシミュレーションゲーム「Pro Cycling Manager2019」と2020年シーズン化MODを使用してスタートリストを再現しながら実況してもいる。
こちらもある意味予習として楽しんでいただけると幸い。
結構リアルな展開になったと思うので、ぜひ見てほしい。
目次
スポンサーリンク
コース詳細
トスカーナ州の中心都市の1つシエナを発着する184km。
全体の実に3分の1を占める未舗装路が最大の特徴。
この時期に多い雨に降られればその道はあっという間に泥となり、選手たちのタイヤを重くして、肉体的にも精神的にも彼らを追い詰めていく。
(ちなみに現時点での天気予報は降水確率50%)
勝負所となるのは残り55kmを切ってから始まるセクター8「モンテ・サンテ・マリエ」。11.5kmにも及ぶ長距離未舗装路の中で真に強い選手たちがリードを奪う展開となることが多い。
そして残り28.3㎞から始まるセクター9「モンテアペルティ」は全長800mと短めだが、急勾配の登りで昨年はここでフルサンとファンアールト、そしてアラフィリップの勝ち逃げ集団が形成された。
また、ゴール前20kmを切ってからは、最大勾配15%のセクター10「ピンズート(全長2.4km)」と、最大勾配18%のセクター11「レ・トルフェ(全長1.1km)」の2つの未舗装路激坂が登場。
強豪だらけの先頭集団の中から、この日の最強が抜け出すならばこの瞬間だろう。
最後、再びシエナの街のカンポ広場に戻る途中で、最大勾配16%のサンタカテリーナ通りの石畳激坂が登場するも、この時点では勝負がすでに決まっていることが多い。
未舗装路と激坂が彩る「フランドルとアルデンヌの合いの子」。
今年これを制するのはクラシックスペシャリストか、パンチャーか、クライマーか。
過去のレースを振り返る
2017年
11.5kmの超ロング未舗装路「モンテ・サンテ・マリエ」で前年2位のゼネク・スティバル、ミカル・クウィアトコウスキー、ティム・ウェレンス、グレッグ・ファンアーフェルマート、ルーク・ダーブリッジ、トム・デュムランが抜け出す。
急勾配のセクター9「モンテアペルティ」(800m)でクウィアトコウスキー、スティバル、ウェレンス、ファンアーフェルマートが先行し、続くセクター10でデュムランたちも追いつくも、ラスト15km地点の舗装路でクウィアトコウスキーが独走に持ち込んだ。
何の変哲もないアスファルトの舗装路で決まった一撃。こういう展開もありうるから油断がならない。独走力の高い選手には注意だ。
2018年
大雨により泥まみれの未舗装路。
セクター8でクウィアトコウスキー、アレハンドロ・バルベルデ、ダニエル・オス、グレッグ・ファンアーフェルマートら10名が抜け出すも、スティバルやペテル・サガンらがペースアップを図るメイン集団がこの区間中に追い付く。
登りでのバルベルデの加速は捕まえられたものの、そのカウンターで飛び出したバルデファンアールトは見逃された。
メイン集団から1分近いリードを保って、残り35kmを切る。
そしてメイン集団からベノートとピーター・セリーが抜け出す。
第10セクター「ピンズート(登坂距離2.4km、最大15%)」でセリーを置き去りにしたベノートが先頭2名に追い付く。
残り12km。最後に未舗装路である第11セクター「レ・トルフェ」の登りでベノートがアタック。抜け出した彼はそのまま独走でカンポ広場に戻ってくる。
あまりにも早く才能を示しながらも勝利のなかった彼が、ついに手に入れたクラシックでの勝利だった。
2019年
この年も残り55㎞から始まる「モンテ・サンテ・マリエ(全長11㎞)」で最初の決定的な分断が巻き起こる。
仕掛けたのはグレッグ・ファンアーフェルマート。ジュリアン・アラフィリップやティシュ・ベノートといった強力な15名の小集団が形成され、ヴィンツェンツォ・ニバリやゲラント・トーマスなどはここで脱落した。
そして、残り28.3㎞から始まる「モンテアペルティ(全長800m)」でヤコブ・フルサンがアタック。ここにワウト・ファンアールトが食らいつき、少し遅れてジュリアン・アラフィリップがついてきた。
この3名が勝ち逃げ集団となる。
残り19.3kmから始まる「ピンズート(全長2.4km、最大勾配11%)」でファンアールトが脱落。続く残り13.3㎞から始まる「レ・トルフェ(全長1.1km、最大勾配18%)」でフルサンが加速するもアラフィリップは離れない。
最後はこの2人でスプリント勝負。となれば、アラフィリップに敵うものはいなかった。
残り55㎞「モンテ・サンテ・マリエ」。
残り28.3㎞「モンテアペルティ」。
残り19.3㎞「ピンズート」。
残り13.3㎞「レ・トルフェ」。
今年もこの4つのポイントで勝負が決まるのだろうか。
注目選手
※年齢はすべて2020/12/31時点のものとする。
昨年の覇者はドゥクーニンク・クイックステップ のジュリアン・アラフィリップ。しかし、今年の彼は実は優勝候補最右翼、とは言えないかもしれない。
たとえば以下のレキップ紙のインタビューで、彼はこう答えている。
「昨年勝ったこのストラーデビアンケとミラノ〜サンレモでのシーズン再開はとても楽しみだ。ただ、それらのレースをトップコンディションで走ることはできなさそうだ」
事実、この「オフシーズン」の最終盤で彼は、ドロミテの山岳地帯でのトレーニングを積んでいた。彼が目指すのはクラシックというよりは、ツール・ド・フランス、そしてその先にあるスイスでの世界選手権のようだ。
よって、今回のストラーデビアンケでは、もしかしたら彼は意外なほどあっさりと遅れていってしまうかもしれない。そうなれば、今年の優勝候補は誰になりそうか?
もう1つ、ヒントになりそうなのがクウィアトコウスキーの次の発言だ。
「3月試走したときと比べると、ずっと埃っぽくてグリップのきかない路面となっている。氷の上を走っているというよりは・・・雪の上を走っているみたいだ。たくさんの小石と誇りとが路面に浮いていて、このレースを走ったことのないような選手にとってはプロトンの動きはいつもと全然違うもののように見えるだろう。非常に危険なレースになると思うよ」
この後に彼がマチュー・ファンデルポールを有力選手として挙げているように、今年のストラーデビアンケは例年に増して荒れ地でのレースを得意とする選手たちにとって有利に働くかもしれない。
そういった点を踏まえて、以下、注目選手たちを紹介していく。
ヤコブ・フルサン(アスタナ・プロチーム)
デンマーク、35歳
昨年のアラフィリップの最大のライバル。そして、春のクラシックの最終戦、最後の最後でそのアラフィリップを打ち倒し、モニュメント制覇の栄冠を掴み取った男。
そして今シーズンも、たった1レースしか出ていないものの、その唯一のレースであるブエルタ・ア・アンダルシアでステージ2勝&総合優勝と絶好調。
ブランクは空いているものの、今年の彼は昨年以上の走りを見せてくれそうな予感がある。
マチュー・ファンデルポール(アルペシン・フェニックス)
オランダ、25歳
優勝経験者ミハウ・クウィアトコウスキーが推す優勝候補の1人。シクロクロス世界王者であると共に、マウンテンバイクでもオリンピック金メダル候補でもある彼は、今回がストラーデビアンケ初出場ながら、このレースにおける適性は誰も疑うものはいないだろう。
今年の彼は同様に初出場予定だったオンループ・ヘットニュースブラッドをインフルエンザで欠場。その後、改めて今年のクラシックデビューとなるはずだったストラーデビアンケが延期になってしまったことで、今年のロードレースにおけるリザルトはまだほとんど出ていない。
その意味で、そのコンディションは不明確。バーチャルレースでもさほど活躍はしなかった。
だが、それでもきっと、結果を出してくれることだろう。彼については、何が起きてもおかしくはないのだから。
ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィズマ)
ベルギー、26歳
マチューが優勝候補ならば、彼だってもちろん、である。実績としてはすでに2018年・2019年と連続で3位を取っている時点で文句なしだ。
唯一の懸念は昨年のツール・ド・フランスで負った大怪我の影響。しかしこれも、前述のマチューが勝ったシクロクロス世界選手権(2月)ですでに4位に入賞するなど回復を見せつけている。
今年出場しているオンループ・ヘットニュースブラッドについては、チームメートのマイク・テウニッセンが前の集団に入ったこともあり彼自身の活躍は見られず。その意味で未知数だが、クウィアトコウスキーの言う悪路への適性が重要な今回のストラーデビアンケの優勝候補から外す理由にはならないだろう。
復活の勝利、期待しているぞ!
ティシュ・ベノート(チーム・サンウェブ)
ベルギー、26歳
2018年覇者。そして、今年も「コロナ前最後のレース」となったパリ~ニースにて驚異的な登坂力とチーム力を見せての総合2位。
今年絶好調なのは間違いない彼が、今回のストラーデビアンケで「2勝目」を飾れるか。
もしかしたら例年以上に悪路系ライダー向きになるかもしれない今年のストラーデビアンケだが、その点、ベノートは過去にロンド・ファン・フラーンデレンで5位を取るなど、決して苦手というわけではない。
あとは問題は暑さ適性がどこまであるか。今年、もしかしたら37度近くに達するかもしれないと言われている「8月のストラーデビアンケ」にどこまで耐えられるかが鍵だ。
シクロクロスでも活躍しているヨリス・ニューエンハイス、昨年のE3ビンクバンク・クラシックなどでも悪路系への意外な適性も見せたマルク・ヒルシなど、若手のチームメートたちとの連携にも期待。
グレッグ・ファンアーフェルマート(CCCチーム)
ベルギー、35歳
彼もまた、ストラーデ・ビアンケとは非常に相性の良い選手だ。2010年から、2014年を除いて毎年出場しており、9回中7回でTOP10に入っている。2位も2回経験している。
そして今年のストラーデビアンケが、より北のクラシックライダー向きになるのだとしたら、今年こそ「勝利」を掴み取る可能性は高そうだ。
そしてその勝利は、チームにとっても大きな意味を持つ。現在、新たなスポンサー獲得に向けてまさに最後の交渉のチャンスについているであろうチームにとって、その交渉をあとほんのわずかでも有利にするために、この勝利は大きな価値を持つことになるだろう。
あるいはまた、彼がもしかしたら行くことになるかもしれない別のチーム――たとえばAG2Rラモンディアル――への手土産にもなるかもしれない?
マクシミリアン・シャフマン(ボーラ・ハンスグローエ)
ドイツ、26歳
今年のパリ~ニースでのまさかの総合優勝もあり、つい先日、ボーラ・ハンスグローエとの破格の4年間契約更新を掴み取った、ドイツのニューヒーロー。
今回、ボーラはペテル・サガンがエースナンバーで出場するという点で、シャフマンがどこまで自由に走れるかは疑問がある。しかし、サガンも今年はツールとジロに焦点を絞っており、その走りの具合は計り知れない。
と、なればやはりシャフマンの活躍に注目したいところ。北のクラシック適性はともかく、なんだかんだストラーデビアンケは「登り」も超重要なレース。
冒頭に挙げたProCyclingManager実況での活躍もあったことだし、最後の推し選手としてこの男の名前を挙げて終わりにしよう。
以上、6名の注目選手とコース、過去のレース結果を踏まえ、本日夜の放送を楽しみにしておこう。
日本ではGrobal Cycling Network日本が木下貴道実況・土井雪広解説で23:50~スタート(女子レースは22:10~)!
GCNアプリのダウンロードと年間5,000円のサブスクライブが必要だが、詳しくは下記で!
せめてブラウザ視聴できるようにしてくれると嬉しいな~
スポンサーリンク