りんぐすらいど

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ストラーデビアンケ2020 プレビュー

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Class:ワールドツアー

Country:イタリア

Region:トスカーナ州

First edition:2007年

Editions:14回

Date:3/7(土)

 

「春のクラシック」ワールドツアー第2戦は、「白い道」を意味するストラーデビアンケ。

その名の通り白く輝く未舗装路が全体のルートの3分の1を占め、そのうえでアルデンヌ・クラシック並みのアップダウンがプロトンを襲う。

北のクラシックスペシャリストと丘陵クラシックスペシャリストとが混じり合って歯を競い合うこの独特なレースについて、コース詳細と注目選手たちを確認していく。

 

 

・・・と思っていたのだが、最近の新型コロナウイルス問題によって残念ながら中止(延期)となってしまった。

今回は、「幻」に終わったストラーデ・ビアンケ2020のプレビューしていく。

そして、一応今のところの予定としては、この週末に自転車ロードレースシミュレーションゲーム「Pro Cycling Manager」を使用して、このストラーデ・ビアンケ2020を「実況」していこうとも考えているので、その際の参考になれば幸い。

 

↓実際に実況してみました!↓

youtu.be

 

 

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コース詳細

トスカーナ州の中心都市の1つシエナを発着する184km。

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全体の実に3分の1を占める未舗装路が最大の特徴。

この時期に多い雨に降られればその道はあっという間に泥となり、選手たちのタイヤを重くして、肉体的にも精神的にも彼らを追い詰めていく。

(ちなみに現時点での天気予報は降水確率50%)

 

勝負所となるのは残り55kmを切ってから始まるセクター8「モンテ・サンテ・マリエ」。11.5kmにも及ぶ長距離未舗装路の中で真に強い選手たちがリードを奪う展開となることが多い。

そして残り28.3㎞から始まるセクター9「モンテアペルティ」は全長800mと短めだが、急勾配の登りで昨年はここでフルサンとファンアールト、そしてアラフィリップの勝ち逃げ集団が形成された。

 

また、ゴール前20kmを切ってからは、最大勾配15%のセクター10「ピンズート(全長2.4km)」と、最大勾配18%のセクター11「レ・トルフェ(全長1.1km)」の2つの未舗装路激坂が登場。

強豪だらけの先頭集団の中から、この日の最強が抜け出すならばこの瞬間だろう。

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最後、再びシエナの街のカンポ広場に戻る途中で、最大勾配16%のサンタカテリーナ通りの石畳激坂が登場するも、この時点では勝負がすでに決まっていることが多い。

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未舗装路と激坂が彩る「フランドルとアルデンヌの合いの子」。

今年これを制するのはクラシックスペシャリストか、パンチャーか、クライマーか。

 

 

過去のレースを振り返る

2017年

11.5kmの超ロング未舗装路「モンテ・サンテ・マリエ」で前年2位のゼネク・スティバル、ミカル・クウィアトコウスキー、ティム・ウェレンス、グレッグ・ファンアーフェルマート、ルーク・ダーブリッジ、トム・デュムランが抜け出す。

急勾配のセクター9「モンテアペルティ」(800m)でクウィアトコウスキー、スティバル、ウェレンス、ファンアーフェルマートが先行し、続くセクター10でデュムランたちも追いつくも、ラスト15km地点の舗装路でクウィアトコウスキーが独走に持ち込んだ。

何の変哲もないアスファルトの舗装路で決まった一撃。こういう展開もありうるから油断がならない。独走力の高い選手には注意だ。

Embed from Getty Images

 

2018年

大雨により泥まみれの未舗装路。

セクター8でクウィアトコウスキー、アレハンドロ・バルベルデ、ダニエル・オス、グレッグ・ファンアーフェルマートら10名が抜け出すも、スティバルやペテル・サガンらがペースアップを図るメイン集団がこの区間中に追い付く。

登りでのバルベルデの加速は捕まえられたものの、そのカウンターで飛び出したバルデファンアールトは見逃された。

メイン集団から1分近いリードを保って、残り35kmを切る。

そしてメイン集団からベノートとピーター・セリーが抜け出す。

第10セクター「ピンズート(登坂距離2.4km、最大15%)」でセリーを置き去りにしたベノートが先頭2名に追い付く。

残り12km。最後に未舗装路である第11セクター「レ・トルフェ」の登りでベノートがアタック。抜け出した彼はそのまま独走でカンポ広場に戻ってくる。

あまりにも早く才能を示しながらも勝利のなかった彼が、ついに手に入れたクラシックでの勝利だった。

Embed from Getty Images

 

2019年

この年も残り55㎞から始まる「モンテ・サンテ・マリエ(全長11㎞)」で最初の決定的な分断が巻き起こる。

仕掛けたのはグレッグ・ファンアーフェルマート。ジュリアン・アラフィリップやティシュ・ベノートといった強力な15名の小集団が形成され、ヴィンツェンツォ・ニバリやゲラント・トーマスなどはここで脱落した。

そして、残り28.3㎞から始まる「モンテアペルティ(全長800m)」でヤコブ・フルサンがアタック。ここにワウト・ファンアールトが食らいつき、少し遅れてジュリアン・アラフィリップがついてきた。

この3名が勝ち逃げ集団となる。

残り19.3kmから始まる「ピンズート(全長2.4km、最大勾配11%)」でファンアールトが脱落。続く残り13.3㎞から始まる「レ・トルフェ(全長1.1km、最大勾配18%)」でフルサンが加速するもアラフィリップは離れない。

最後はこの2人でスプリント勝負。となれば、アラフィリップに敵うものはいなかった。

Embed from Getty Images

 

 

残り55㎞「モンテ・サンテ・マリエ」。

残り28.3㎞「モンテアペルティ」。

残り19.3㎞「ピンズート」。

残り13.3㎞「レ・トルフェ」。

 

 

今年もこの4つのポイントで勝負が決まるのだろうか。

 

 

注目選手

昨年優勝者ジュリアン・アラフィリップは今年はパリ~ニース出場のため欠席。

代わりに昨年は苦汁をなめたヤコブ・フルサンが、ブエルタ・ア・アンダルシアでの大絶好調を背負って参戦。圧倒的か?

一方、ワウト・ファンアールトとマチュー・ファンデルポールがついに今年のロードレースで邂逅。ファンアールトは怪我明け、ファンデルポールはインフルエンザ明けと好調を疑う材料も揃っているが、期待値とは別にその走りを楽しみにしたい選手たちが揃っている。

 

ヤコブ・フルサン(アスタナ・プロチーム) 

デンマーク、35歳

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昨年、34歳にして大ブレイクを果たす。世界ランキング3位。とくに、ストラーデ・ビアンケを含むアルデンヌ系クラシックにおける成績は圧倒的。

今年も、開幕戦となるブエルタ・ア・アンダルシア(ルタ・デル・ソル)で文句なしの総合優勝。

www.ringsride.work

 

絶好調は止まらず。そして今回は、昨年の最大の目の上のタンコブライバルだったジュリアン・アラフィリップが欠場(あるいはここまで不調)。

となれば、彼が今大会最大の有力候補であることを、疑うものはいないであろう。

 

 

ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィズマ)

ベルギー、26歳

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シクロクロスの世界王者を3年経験し、かつロードレースでは2年前から本格的にデビューし、2年前・昨年と連続でこのストラーデビアンケで3位を記録している。未舗装路と山というレベルまではいかないアップダウン、というのは、一流のシクロクロスライダーにとっては最も得意とするレイアウトなのかもしれない。

もちろん、今年の不安要素はある。何よりも昨年のツール・ド・フランスでの大落車があり、今回はそのロードレースにおける復帰戦のまだ2戦目であるということ。

ただ、復帰自体はすでに「本職」のシクロクロスの方で2ヶ月前に行っており、その世界選手権でも4位とかなり復調してきている(しかもこの4位はパンクのせいによる可能性も大きい)。

そして、ロードレース復帰戦に向けてのスペイン・テネリフェ島での高地合宿では、クリス・フルームの記録した登坂記録を塗り替えたと報告。絶好調ぶりをアピールした。

 

そんな彼の実際のロードレース開幕戦は先日のオンループ・ヘットニュースブラッド。このとき彼は、残り70㎞地点で生まれた決定的な8名の逃げに乗ることができず、追走集団でティシュ・ベノートらともがいたものの、結局は追いつくことができずレースを終えた。

www.ringsride.work

 

ただ、このときチームとしてはもう1人のエース、マイク・テウニッセンを前に置いており、ファンアールト自身も、あくまでも今回は練習のつもりだった(元々はストラーデビアンケを開幕戦にする予定だった中で、中止の可能性もあったため急遽オンループに出場することにした)ため、この結果は決して全くの期待外れというわけではないだろう。

その意味で、今回のストラーデ・ビアンケも、まだ彼の本気を見れるわけではないかもしれない。それでも、2年連続の3位と、相性が良いのは間違いない。

なんだかんだで、期待したくなるというもの。

 

 

ゼネク・スティバル(ドゥクーニンク・クイックステップ)

チェコ、35歳

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こちらもシクロクロスライダーで元世界王者。昨年もオンループ・ヘットニュースブラッドとE3ビンクバンク・クラシックを勝っており、今年も1月のブエルタ・ア・サンフアンで誰もが驚くサプライズ勝利を果たしている。

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そんな彼とストラーデビアンケとの相性はよく、初出場の2015年に優勝。その後も2016年2位、2017年4位、2018年9位、2019年4位と常に上位入賞を繰り返している。

安定感は抜群。あとは勝ちきるだけ。アラフィリップ不在の今年は大きなチャンスとなるはずだ。

 

 

ティシュ・ベノート(チーム・サンウェブ)

ベルギー、26歳

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2018年覇者。それが彼のプロ初勝利であった。ネオプロだった2015年にいきなりロンド・ファン・フラーンデレン5位を叩き出してしまったがゆえに過大すぎる期待を背負わされた早熟の天才が、ようやく掴み取った勝利だった。

 

だが、その前後でも常に、彼はこのレースに安定的にランクインしてきていた。初出場の2016年と2017年は共に8位。そして昨年2019年は5位。

ロンド5位からも分かるような石畳適性と、ときに小さなステージレースでは総合上位に入れるクライマー的な脚質とが、北のクラシックとアルデンヌ・クラシックの「合いの子」たるこのレースに実にマッチしているのだろう。

今年はチーム・サンウェブに移籍。先日のオンループでも常に前に前にというアグレッシブな走りを見せており、気合と調子は悪くない。

チームメートにはアルデンヌ適性のあるマイケル・マシューズもいるが、彼はこれが今年初レースとなるため、まだまだ仕上がってないと見ることもできそう。

 

 

グレッグ・ファンアーフェルマート(CCCチーム)

ベルギー、35歳

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彼もまた、ストラーデ・ビアンケとは非常に相性の良い選手だ。2010年から、2014年を除いて毎年出場しており、9回中7回でTOP10に入っている。2位も2回経験している。

それでも彼が勝ち切れないのは、他のクラシックでも言えることだが、自分で足を使ってしまう場面が多かったり、逆に勝負所で逃げをチェックし切れなかったりすることが原因だ。とくに昨年のCCCチームでは、どうしても終盤に先頭に残れるのがファンアーフェルマートだけになってしまい、クイックステップやEFと比べると選択肢が限られてしまう。

その意味で、今年はマッテオ・トレンティンという強力な相棒を手に入れた。クラシック初戦のオンループ・ヘットニュースブラッドでは、勝負所でファンアーフェルマートが飛び出せなかったところを、代わりにトレンティンがその逃げに乗ってくれた。そのおかげでファンアーフェルマートも「いざトレンティンたちが捕まったとき」チャンスがあると感じながら走ることができ、明らかに戦略の幅を広げることに成功していた。

最終的にはカペルミュールでトレンティンが遅れ、4位に終わってしまったものの、クラシックに向けてこのCCCチームが良い状態でシーズンインできていることが伺い知れた。

残念ながら今回のストラーデビアンケはトレンティンは欠場(パリ~ニースの方に出るため)。ただ、このあとのクラシックに向けて、まずはファンアーフェルマートが良い走りを見せていきたい。

 

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