りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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2019年シーズンを振り返る⑥  UCIワールドツアー全チーム  勝利数ランキング(18位〜10位)

 

こちらも毎年恒例、UCIワールドツアー全18チームについて、プロ勝利数でランキング。UCIチームランキングも併催する。

昨年までは上位から順に紹介していったが、今回は他のランキング同様、下位から順番に。今年の振り返りだけでなく、来年の新加入選手なども含め展望も語っていきたい。

 

今年1年間のチームレビューといった感じで見ていただければ幸い。

 

↓昨年の記事はこちらから↓

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9位~1位はこちらから

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第18位  チーム・カチューシャ・アルペシン  5勝

UCIチームランキング:23位

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イルヌール・ザッカリン  1勝(移籍)

マルセル・キッテル  1勝(引退)

ホセ・ゴンサルベス  1勝(移籍)

リック・ツァベル  1勝

アレックス・ドーセット  1勝

 

近年稀に見る大迷走。かつてホアキン・ロドリゲスやアレクサンドル・クリストフが活躍したロシアの強豪チームの面影は今や跡形もない。

そもそも、毎回のレースのスタートリストを見るたびに、チームに勝つ意思を感じられなかった。別に、選手たちが弱いわけではないのだ。その点はCCCチームの方がよっぽどビハインドを抱えている。

ハース、ポリッツ、ゲレイロ、ザッカリン、ウルスシュミット、タンフィールド、これだけの才能が揃っていながらもそれを活かしきれなかった責任は明らかにチームにあるだろう。

 

来年はイスラエル・サイクリングアカデミーと合流。イスラエルはプロコンチネンタルチームながらもしっかりと勝利を重ねていける良好な運営を行なっていた。これにより、状況が改善されることを願う。

しかし、現時点でまだ、その合併がいかなる形で実現するかは明確にはなっていない。誰が残り、誰が放逐されるのか。

このチームを巡る状況は、いまだ予断を許さない。

 

 

第17位  CCCチーム  6勝

UCIチームランキング:20位

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グレッグ・ファンアーフェルマート  3勝

パトリック・ベヴィン  2勝

ハンマー・チェイス  1勝

 

BMCレーシングチームと呼ばれていたこのチームが昨年春、オーナーのアンディ・リース氏が急逝したことをきっかけに、以前から囁かれていたメインスポンサーの撤退が加速。すぐさま次なるスポンサー探しに奔走するも、難航した挙句に、数多くの主力メンバーが流出する事態となった。

結果、旧BMCから残ったメンバーは、オリンピック金メダリストのグレッグ・ファンアーフェルマートを含むわずか7名。新たな17名の中には、プロコンチネンタルチームだったCCCスプランディ・ポルコウィチェからの「昇格」組や、ほかのプロコンチネンタルチームからの移籍組も多く、チーム全体としても半分プロコンのような構成となってしまった。

それがゆえに、年間20勝を目標に掲げはしたものの、この苦しい結果はある意味、致し方なかったのかもしれない。来年は、今年6勝しているマッテオ・トレンティンや、ジロ・デ・イタリア1勝のイルヌール・ザッカリン、さらにはヤン・ヒルト、ファウスト・マスナダなど実力者が多数新加入。

まだまだかつてのようなトップチーム、というわけにはいかないだろうが、それでも今年のこの惨状からは脱せられることを期待する。

 

 

第16位  チーム・ディメンションデータ  7勝

UCIチームランキング:22位

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エドヴァルド・ボアッソンハーゲン  3勝

ジャコモ・ニッツォーロ  3勝

アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー  1勝

 

チームランキング最下位常連チーム。今年はカチューシャがより酷い状況だったために最下位は免れたが、今年から非ワールドツアーも含めてのランキングとなったため、5つのプロコンチネンタルチームに負けているという事実も可視化されてしまった。

そんな中、光明とも言えるのが、新加入のジャコモ・ニッツォーロが、きっちりと勝利数を稼いでくれたこと。それも、登りスプリントも含め、HCクラスのみとはいえ安定した強さを見せてくれていた。来年は彼こそがエーススプリンターとして、チームを引っ張り続けることになるだろう。

もちろん、それだけでは本当にどうしようもない。ボアッソンハーゲンも毎年稼ぎ頭になってくれているが、そろそろ年齢もきつくなってくる。来年はTTスペシャリストのヴィクトール・カンペナールツ、ジャーマンスプリンターのマックス・ワルシャイド、今年アジアツアー中心に7勝しているベンジャミン・ダイボールなどが新加入。チーム名も「チームNTT」に変わり、今度こそ、今度こそ「復活」なるか?

 

 

第15位  チーム・サンウェブ  9勝

UCIチームランキング:15位

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マイケル・マシューズ  3勝

ケース・ボル  3勝

チャド・ハガ  1勝

ニキアス・アルント  1勝

マックス・ワルシャイド  1勝(移籍)

 

かつて、マルセル・キッテルとジョン・デゲンコルプを有する最強スプリンターチームであった。その後は、トム・デュムランを中心とするグランツール狙いのチームへ。しかし、今年、そのデュムランがジロでの落車によりリタイアした後は、どこか歯車が狂い続けていった。

結果として、デュムランは契約を残してチームを離れることに。セカンドエースとして期待されたウィルコ・ケルデルマンも、春先の怪我とその復帰後も不調が続き、全く結果を出せずに終わる。

ここ数年は勝利数自体は低いながらもランキング上位にいたこのチームが、今年は勝利数も、ランキングも、下から4番目という、恥ずべき結果に終わってしまった。

 

恥ずべき、という表現を使うのは、このチームへの期待をまだまだ持っているからだ。来期の新加入は、ディベロップメントチーム・サンウェブやSEGレーシングなどの若手育成チームからの昇格・移籍を除くと、ティシュ・ベノートやヤシャ・ズッタリン、ニコ・デンツといったクラシック系の選手が目立つ。

これまでやや手薄だった分野の強化を図ることで、勝利のパターンを増やすことができるか?

また、チーム残留組でとくに期待したいのは、昨年のU23世界王者マルク・ヒルシ。勝てはしなかったが、E3ビンクバンク・クラシックで10位、イツリア・バスクカントリーの激坂フィニッシュで4位と5位、クラシカ・サンセバスティアンで3位と、北のクラシック/アルデンヌ系クラシック/クライマー向けレイアウトなど幅広い実績を出している。

来年のスイス開催の世界選手権では期待したい選手の1人。彼の覚醒が、来年のサンウェブの鍵を握るような気がしている。

その他、今年のツアー・オブ・カリフォルニアでは惜しいところまでいったヨリス・ニューエンハイスや、怪我でシーズンの3分の2を失いつつもティレーノ〜アドリアティコ総合9位の実績を出しているサム・オーメン、カリフォルニアで強いスプリント勝利を見せたケース・ボルなど、期待できる若手は多数おり、このチームはまだまだ輝けると思っている。

 

 

第14位  トレック・セガフレード  11勝

UCIチームランキング:11位

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バウケ・モレマ  2勝

ジュリオ・チッコーネ  2勝

リッチー・ポート  1勝

ジョン・デゲンコルプ  1勝(移籍)

ライアン・マレン  1勝

トムス・スクインシュ  1勝

ジャスパー・ストゥイヴェン  1勝

エドワード・トゥーンス  1勝

マッズ・ペデルセン  1勝

 

確かに、強くはなかったと思う。期待された北のクラシックシーズンではまったく目立てず、いたのかいないのかわからないくらい。大型移籍だったはずのポートも全くダメダメで、第9ステージを乗り越えられたことが功績であるかのよう。ワールドツアーチームとしては、下から数えた早い位置にいることは納得の結果である。

 

が、それでもなお、このチームは常に印象的な走りを見せてくれた。

実際、新加入の25歳ジュリオ・チッコーネがジロ・デ・イタリア1勝/ジロ・デ・イタリア山岳賞/ツール・ド・フランスでマイヨ・ジョーヌ着用と、次代のエースを担いうる実績を叩き出し、バウケ・モレマはイル・ロンバルディアでモニュメント初制覇。そして何よりも、マッズ・ペデルセンによる世界選手権制覇。

スプリントでも、勝ち星は重ねられなかったものの、ビンクバンクツアーやブエルタ・ア・エスパーニャで、エドワード・トゥーンスやマッズ・ペデルセンがデゲンコルプと共に健闘。勝利まで後一歩という姿を日々見せ続けてくれた。

プリムス・クラシックでのジャスパー・ストゥイヴェンとエドワード・トゥーンスのコンビネーションも胸に迫るものがあった。このチームは、数字だけでは計り知れない「熱さ」を持つチームであった。

 

今年のポートに続き、来年もヴィンツェンツォ・ニバリの獲得という「旬を過ぎたベテランの獲得」感を揶揄されることもあるトレック。

しかし、叩き上げメンバーの活躍こそ、引き続き期待していきたい。そのためにもまた、セガフレード・ザネッティにお布施に行かなきゃ・・・。

 

 

第13位  AG2Rラモンディアル  14勝

UCIチームランキング:13位

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ブノワ・コズネフロワ  5勝

アレクシー・グジャール  3勝

アレクシー・ヴュイエルモ  1勝

アレクサンドル・ジェニエ  1勝

ナンス・ピータース  1勝

ドリアン・ゴドン  1勝

ゲディミナス・バクドナス  1勝(移籍?)

オリバー・ナーセン  1勝

 

昨年のこの企画で「勝利数ランキングの順位としては昨年(16位)よりも上だが、勝利数自体は昨年(16勝)よりも減少。また、UCIランキングも昨年(9位)よりも落ちた」と書いたが、今年もまったく同じような状況。勝利数ランキングの順位は昨年と同じ。勝利数は昨年の15勝をさらに下回っての14勝。そしてUCIチームランキングの順位は昨年の11位からさらに落ちた。順調にゆっくりと下降中である。

バルデの不調、勝てるスプリンターの不在、ナーセン頼みのクラシック。勝てない構造は来年も変わらず維持されそうで、期待が持てない。勝てる人が頑張って勝って!のフリーなスタイルでコズネフロワとグジャールが勝利数を稼ぐが、どれも1クラスで、それならプロコンチネンタルチームと変わらない。

 

だがまあ、勝利数や勝利の質を無闇に追い求めなくても良い体制というのは、そこまで悪くないのかもしれない。とくにフランス人にとっては。来年のバルデはジロも含めたグランツールを2つ出たいと言ってるし、リオ・オリンピックや世界選手権にも意欲的。余計なプレッシャーを背負うことなく、伸び伸びと走ってほしい。

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フランスの次世代グランツールライダーの期待の星であるクレモン・シャンプッサンも、そんなガチガチではない雰囲気の中で無理なく経験を積み重ねていってほしい。

なんだかんだ、AG2Rのこの「ゆるい」雰囲気、みんなワーワーと各々勝利を狙っていくスタイルは好きだったりするので、変わらないでいてほしいという思いはある。

 

ただナーセンはやっぱりちょっとかわいそう。もう少しクラシック強化してあげるか移籍させてあげて(けど弟も入ってきちゃった・・・)。

 

 

第12位  バーレーン・メリダ  16勝

UCIチームランキング:14位

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ソンニ・コルブレッリ  3勝

マーク・パドゥン  3勝

ディラン・トゥーンス  2勝

ヤン・トラトニク  1勝

イバン・ガルシア  1勝

ローハン・デニス  1勝(移籍?)

フェン・チュンカイ  1勝

ドメン・ノヴァク  1勝

ヴィンツェンツォ・ニバリ  1勝(移籍)

マティ・モホリッチ  1勝

フィル・バウハウス  1勝

 

昨年まではオイルマネーチームと思いきや意外にもチームワークに優れたり若手が活躍したりと、不思議な魅力を感じていたこのチーム。しかし、今年はUAEチーム・エミレーツが若手中心の補強を成功させるなど不思議な進化を遂げつつある一方で、こちらのチームはオイルマネーチームの弊害らしきものが段々と出てきた感がある。

全体的にちぐはぐで、各方面で勝利を狙える存在はいるものの、層は薄く、リカバリーが効かない。今年はコルブレッリがやや調子は良かったものの、昨年7勝したモホリッチも、勝ち星を重ねることを期待されたバウハウスもイマイチに終わる。そしてデニスの離反。歯車は完全に狂ってしまった。

 

しかし来年は、また違った色を見せてくれそうだ。ミケル・ランダ、ペリョ・ビルバオ、ワウト・プールス。マーク・カヴェンディッシュの移籍もまた、少し気になるところではある。

イギリスのマクラーレンがスポンサーに加わり、新たなチーム代表として元チーム・スカイのロッド・エリングワースが就任することも、このチームのカラーが大きく変わる可能性を示唆しているだろう。

 

伸び悩む中東チーム。その「改革」は果たして成し遂げられるのか。

 

 

第11位  EFエデュケーション・ファースト  17勝

UCIチームランキング:9位

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ジョナタン・カイセド  2勝

ダニエル・マクレー  2勝(移籍)

ダニエル・マルティネス  2勝

マイケル・ウッズ  2勝

セップ・ファンマルク  2勝

アルベルト・ベッティオル  1勝

ヒュー・カーシー  1勝

アレックス・ハウズ  1勝

ラクラン・モートン  1勝

ジョー・ドンブロウスキー  1勝(移籍)

セルヒオ・イギータ  1勝

チームタイムトライアル  1勝

 

昨年はわずか6勝、チームランキングも16位と低迷していたこのチーム。しかし今年は、十分な資金が投入されたゆえか、TT能力を中心にチーム全体が底上げ。結果、ロンド・ファン・フラーンデレン、パリ〜ニース、ツール・ド・スイス、ブエルタ・ア・エスパーニャ、ミラノ〜トリノなど、ジョナサン・ヴォーターズが何度となく発狂するくらいに鮮烈な勝利が繰り返された。

それでもまだランキング的には真ん中以下ではあるのだが、それでもこのチームの「これから」に期待したくなるのが、活躍したのがダニエル・マルティネスやヒュー・カーシー、セルヒオ・イギータといった若手たちであること。来年はさらにクリストファー・ハルヴォルセン、ルーベン・ゲレイロ、ニールソン・ポーレスなどの有望な若手が入ってくる。

GMもあんなだし、チーム全体テンション高めな感じはあるが、それがゆえにこのチームは、何かワクワクさせるものを持っている。

 

 

第10位  モビスター・チーム  21勝

UCIチームランキング:7位

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アレハンドロ・バルベルデ  5勝

リチャル・カラパス  5勝(移籍)

ナイロ・キンタナ  3勝(移籍)

ウィネル・アナコナ  2勝(移籍)

エドゥアルド・プラデス  2勝(移籍)

カルロス・バルベロ  1勝(移籍)

カルロス・ベタンクール  1勝(移籍?)

ミケル・ランダ  1勝(移籍)

ラファエル・バルス  1勝(移籍)

 

さすがのバルベルデもいよいよ衰えが見えてきたか。世界王者に輝いたことでややハングリーさが失われたか。14勝した昨年に比べると、少し寂しい結果に。

それでもチーム随一の実績を誇り、世界で見てもトップクラスであり続けているのは間違いない。というかブエルタ含め4つのステージレースで総合2位、1つで総合優勝、イタリアの秋のクラシックでもイル・ロンバルディア含め3つで2位、そしてスペイン王者と、やっぱり規格外。

そして、バルベルデと、ジロ総合優勝したカラパス以外が相変わらずイマイチすぎて、さらには上記の通り、チームがこれまでにないくらいに一気にメンバーが入れ替わる。

来期の新メンバーは若手が多い。カラパス、キンタナ、ランダのエース級の代わりは「コンタドールの後継者」エンリク・マスが、ベテランアシストのアマドールの代わりにダヴィデ・ヴィレッラが。

まだまだ強さは健在だとは思いたいが、かつての最強チーム陣の一角というにはやや苦しいか。

 

 

9位~1位はこちらから

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