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2019年シーズンを振り返る⑦  UCIワールドツアー全チーム  勝利数ランキング(9位〜1位)

前回に続き、全UCIワールドツアーチームの勝利数ランキングを確認していく。

今回は9位〜1位の上位9チーム。いずれも今年大活躍したチームばかりで、当然、UCIチームランキング上位のチームたちばかりだが、よくよく見るとUCIチームランキングと勝利数ランキングとで順位が微妙に入れ替わっているところもある。その要因について考えてみるのも良いだろう。

 

とはいえ、1位はやっぱりあのチーム。

ただ、そのチームについても、変化を見出せるポイントはあって・・・

 

各チームの今年の振り返り、そして来期以降への展望も含め、確認してほしい。

 


 

 

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第9位  ロット・スーダル  23勝

UCIチームランキング:10位

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カレブ・ユアン  10勝

ティム・ウェレンス  5勝

トーマス・デヘント  2勝

ヴィクトール・カンペナールツ  2勝(移籍)

トッシュ・ファンデルサンド  1勝

ティシュ・ベノート  1勝(移籍)

ジャスパー・デブイスト  1勝

イェーレ・ワライス  1勝

 

とりあえずはまず、ユアンおめでとう。10勝のインパクトはもちろん、その中身がジロ・デ・イタリア2勝、ツール・ド・フランス3勝というのがまた凄い。今年の「最強」候補の1人である。

ウェレンスもスプリンターではないのに2年前から7勝→7勝→5勝と毎年安定して勝ち星を稼いでくれている。来年もこの2人がチームの軸となってくれるだろう。

来年はデゲンコルプとジルベールが入ってくる。とくにジルベールは今年もパリ〜ルーベ制覇とブエルタ・ア・エスパーニャ2勝を含む通算4勝を記録している。ユアンとの2枚体制で、ミラノ〜サンレモも狙っていけるか。

 

 

第8位  グルパマFDJ  24勝

UCIチームランキング:12位

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ティボー・ピノ  5勝

アルノー・デマール  5勝

シュテファン・キュング  5勝

マルク・サロー  5勝

ダヴィ・ゴデュ  1勝

セバスティアン・ライヒェンバッハ  1勝

トビアス・ルドヴィクソン  1勝

バンジャマン・トマ  1勝

 

相変わらず1クラスでの勝利が目立つが、勝利数自体は減っている。が、チームランキングは上昇。低いことには変わらないが、ジロ、ツール、ロマンディでエース級がしっかりと勝利していったことが大きい。

あとはピノのツールでの不幸がなければ、ツールの総合成績と以降のグランツール/ワンデークラシックでのポイントをもっと稼いでTOP10入りは間違いなしだったのだが・・・。

チームメンバーの入れ替えはほぼなし。新加入も若手中心。勝利数・ポイントの改善はその点では期待できず、今年成長中のサローのさらなる活躍、そしてマデュアスへの期待がかかる。

 

もちろん、ゴデュも。いきなりグランツールのエースって感じではないが、パリ〜ニースあたりの、1週間のステージレースくらいは獲ってほしい。

ソレルにできてお前にできないことはないだろう。頑張れ!

 

 

第7位  チーム・イネオス  26勝

UCIチームランキング:6位

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エガン・ベルナル  5勝

イバン・ソーサ  4勝

フィリッポ・ガンナ  3勝

パヴェル・シヴァコフ  3勝

タオ・ゲオゲガンハート  2勝

ディラン・ファンバーレ  2勝

クリストファー・ハルヴォルセン  2勝(移籍)

クリス・ローレス  1勝

ワウト・プールス  1勝(移籍)

オウェイン・ドゥール  1勝

ベン・スウィフト  1勝

ジョナタン・カストロビエホ  1勝

 

勝利数ランキングおよびチームランキングでともに2位だった昨年から大きく後退。ベルナルで総合優勝を狙っていたジロ・デ・イタリアが彼の怪我によりリザルトを追えなくなり、同様にツール・ド・フランスでもフルームが怪我により欠場。

そういったスケジュールの混乱もあり、準備不足で挑むこととなったブエルタ・ア・エスパーニャでも、結果を出すことができなかった。

昨年勝利数を稼いでいたクウィアトコウスキー、モスコンが共に不調だったことも原因。

 

それでも、今年は、シヴァコフ、ダンバー、ゲオゲガンハートといった若手の強さが光ったシーズン。ガンナも3つのTTで優勝し、世界選手権でも3位。つい最近はトラックレースのインディヴィジュアルパーシュートで世界記録を叩き出すなど、世界最強クロノマンへの道をひた走っている。

来年は、彼ら若手がさらなる成果を出せる年として期待していよう。

 

とくに来年注目したいのはイバン・ソーサ。今年はそれほど目立ちはしなかったものの、パリ〜ニースやグラン・ピエモンテで見せたベルナルのための山岳アシストの強力さは眼を瞠るものがあった。

そしてこのチームには、「2年目のジンクス」がある。きっと来年は、ソーサが驚異的なリザルトを残すに違いない。

 

 

第6位  UAEチーム・エミレーツ  29勝

UCIチームランキング:4位

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タデイ・ポガチャル  8勝

アレクサンドル・クリストフ  7勝

フェルナンド・ガビリア  6勝

ディエゴ・ウリッシ  3勝

ヨウセフ・ミルツァ  2勝

ジャスパー・フィリプセン  1勝

アレクサンドル・リアブシェンコ  1勝

フアンセバスティアン・モラノ  1勝

 

何よりもポガチャルの躍進がこのチームの全てを物語っている。勝利数でも、UCIポイントでも、大きな貢献をすることに。

昨年はドゥクーニンクとイネオスが存在感を示した若手市場への介入だったが、今年はUAEが積極的に着手し、それがきっちりと実を結んだ形だ。来年もブランドン・マクナルティやミケル・ビョーグなど、超期待の選手が加入予定。同様に大成させることができるか。

 

ただ、ポガチャルもクリストフも、今年のこのチームの柱であったものの、共通する課題は「周りのチームメートの不在」。2人はそれでも問題なく結果を出せる選手だったから良かったものの、いつまでもそのスタイルではまずいだろう。

 

その意味で来期、まずはガビリアの元に盟友リケーゼが舞い戻る。今年、ジロの落車以降不調の続いたガビリアが、これで復活してくれることを願う。

そして新加入のフォルモロやドンブロウスキー、既存メンバーのエナオやコスタがうまく有機的に絡み合い、新エースポガチャルを支える存在となってくれれば。

もちろん、個人的にはアルの復活を信じ続けてもいる。

 

 

第5位  ミッチェルトン・スコット  35勝

UCIチームランキング:8位

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ダリル・インピー  6勝(移籍?

マッテオ・トレンティン  5勝(移籍)

アダム・イェーツ  5勝

サイモン・イェーツ  4勝

ルカ・メズゲッツ  3勝

ルーカス・ハミルトン  2勝

エドゥアルド・アッフィーニ  2勝

ニック・シュルツ  1勝

エステバン・チャベス  1勝

スガブ・グルマイ  1勝

ルーク・ダーブリッジ  1勝

チームタイムトライアル  3勝

ハンマー・チェイス  1勝

 

期待されていたイェーツ兄弟は振るわず、チャベスの復活もなく、と総合系ではやや失速。

インピー、トレンティン、そしてメズゲッツなどのスプリンター系がうまく稼いでくれたが、トレンティンは移籍。そしてインピーは・・・この時期に更新が未確定。トレンティンもいなくなる中、彼が少なくともチームから更新を迷われる理由はないと思うのだが、果たして?

 

そんなこんなで、昨年よりはどっちの順位も下がったし、来年も不安はあるのだが、それでも、なんだかんだこの辺りの順位はキープしてくれるだろうと思っている。

イェーツ兄弟はまだまだ進化しそうだし、今年覚醒したルーカス・ハミルトンはそれを力強く支えてくれるだろう。そして、ジャック・ヘイグ。勝利はなかったが、今年はブルターニュ・クラシックとGPブルーノ・ベヘッリで3位と、エース級の活躍をしてみせた。

GPシクリスト・ド・ケベックでは、ダリル・インピーのアシストとしての動きの中ではあるが、終盤の危険な逃げを捕まえる役割を果たすなど、彼もまた、進化を遂げつつあり、来年もエース格での起用がありうる選手となっている。

 

 

第4位  アスタナ・プロチーム  37勝

UCIチームランキング:5位

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アレクセイ・ルツェンコ  10勝

ヤコブ・フルサング  5勝

ルイスレオン・サンチェス  3勝

ミゲルアンヘル・ロペス  3勝

ヨン・イサギレ  3勝

ペリョ・ビルバオ  3勝(移籍)

メルハウィ・クドゥス  3勝

エフゲニー・ギディッチ  1勝

ゴルカ・イサギレ  1勝

ユーリィ・ナタロフ  1勝

マグヌス・コルトニールセン  1勝(移籍)

ダリオ・カタルド  1勝(移籍)

ロドリゴ・コントレラス  1勝

チームタイムトライアル  1勝

 

かつてはエスケープスペシャリストという印象だったルツェンコも、いまやチーム随一のエース格に。総合系ライダーが多い中で、パンチャー向きのワンデー/ステージレースはルツェンコ一択といった印象だ。

そして、フルサングの大躍進。グランツール総合では結局うまくいかなかったものの、ステージ勝利はしっかりと持ち帰り、何よりもアルデンヌ・クラシックでの強さと初モニュメント。

元々モビスター・チームから熱いラブコールを送られており、彼もまんざらでもなかったようだ。それでも、最終的に現チームとの2年契約の更新を選んだのは、今年の躍進を支えてくれたチームへの恩返しだったのかもしれない。

 

問題は来期だ。カタルド、コルトニールセン、ビルバオ、ヴィレッラ、ゼイツ、ヒルト・・・グランツールでよく名前を見る、名山岳アシストたちが軒並みチームを去る。代わって加入するのはファビオ・フェリーネやアレックス・アランブルなどのパンチャー系や、アレクサンドル・ウラソフやオスカル・ロドリゲスなどの実力はあるがまだ若手のクライマーたち。

今年はイマイチ思い通りにいかず来期のリベンジを狙いたいミゲルアンヘル・ロペスにとって、やや不安の残る2020シーズンとなりそうだ。

 

 

第3位  ボーラ・ハンスグローエ  47勝

UCIチームランキング:2位

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サム・ベネット  13勝(移籍?)

パスカル・アッカーマン  13勝

マキシミリアン・シャフマン  6勝

ペテル・サガン  4勝

ダヴィデ・フォルモロ  2勝(移籍)

エマヌエル・ブッフマン  2勝

フェリックス・グロスチャートナー  2勝

シェーン・アーチボルド  1勝(移籍?)

マチェイ・ボドナール  1勝

パトリック・コンラッド  1勝

チェーザレ・ベネデッティ  1勝

ユライ・サガン  1勝

 

チームがワールドツアー入りした2017年は、33勝のうちの12勝をサガンが稼ぎ出し、獲得UCIポイントも3分の1以上を彼が稼いでいた。まさにチーム・サガン。

2018年はアッカーマンがサガンの8勝を超える9勝を稼ぎ出し、サム・ベネットも7勝。3大柱が確立した。

そして今年。アッカーマンとベネットが13勝ずつ。対するサガンは4勝。UCIランキングでも、アッカーマンがチーム最高位の7位。

もはや、チーム・サガンではない。

 

それは、総合勢においても同様である。2017年当時はサガンと合わせてチームが獲得したUCIポイントの50%を稼ぎ出していたラファウ・マイカが失速。代わって、エマヌエル・ブッフマン、パトリック・コンラッド、フェリックス・グロスチャートナーなどのプロコンチネンタル時代からの叩き上げが実績を積み上げていった。新加入のマキシミリアン・シャフマンも、今年輝いた選手の1人だ。

来期はもしかしたらサム・ベネットがチームから去るかもしれない。サガンも引き続き、数字を稼ぐことは難しいかもしれない。

それでも、このチームの屋台骨は揺るがないだろう。また、サンウェブからやってくる若手ジャーマンクライマーの期待株レナード・ケムナの活躍も、楽しみである。

 

 

第2位  チーム・ユンボ・ヴィズマ  51勝

UCIチームランキング:3位

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ディラン・フルーネヴェーヘン  15勝

プリモシュ・ログリッチェ  13勝

マイク・テウニッセン  5勝

ワウト・ファンアールト  4勝

ヨス・ファンエムデン  3勝

アムントグレンダール・ヤンセン  2勝

ヨナス・ヴィンゲゴー  1勝

ローレンス・デプルス  1勝

トニー・マルティン  1勝

アントワン・トールク  1勝

セップ・クス  1勝

チームタイムトライアル  2勝

ハンマー・クライム  1勝

ハンマー・シリーズ総合  1勝

 

今シーズン最多勝利数を誇るフルーネウェーヘンはやはり「最強」スプリンターなのか。ただ、ツール・ド・フランスで1勝しかできなかった彼は、決して満足はできていなさそうだ。ビンクバンク・ツアーでも、サム・ベネットに完全にしてやられてしまっていた。

来期こそは、ツール・ド・フランスやその他のグランツールでの、最多勝利を目指していきたい。また、UCIポイントを多く稼げるワールドツアークラスのワンデーレースでの勝利を、増やしていきたい。

 

プリモシュ・ログリッチェは文句なしのシーズンであった。それを支えるアシスト陣も含め。あとは来年の「ツールへの挑戦」がうまくいくかどうか。

来年についても弱体化はほぼなし。むしろ、ツアー・オブ・ジャパン総合優勝者のクリス・ハーパーや、ツール・ド・ラヴニール総合優勝者のトビアス・フォスが加わることで、強さだけでなく、見所も増えていく。

そして、トム・デュムランの加入である。

こちらも目を離せない。

 

今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネおよびツール・ド・フランスにて、マチュー・ファンデルポールにも負けない鮮烈な走りを見せてくれたワウト・ファンアールトの完全復帰も待ち望んでいる。

 

 

第1位  ドゥクーニンク・クイックステップ  68勝

UCIチームランキング:1位

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ジュリアン・アラフィリップ  12勝

エリア・ヴィヴィアーニ  10勝(移籍)

ファビオ・ヤコブセン  7勝

アルバロホセ・ホッジ  7勝

レムコ・エヴェネプール  4勝

フィリップ・ジルベール  4勝(移籍)

ボブ・ユンゲルス  4勝

カスパー・アスグリーン  3勝

ゼネク・スティバル  3勝

イヴ・ランパールト  2勝

マキシミリアーノ・リケーゼ  2勝(移籍)

エンリク・マス  2勝(移籍)

レミ・カヴァニャ  2勝

フロリアン・セネシャル  1勝

ミケル・モルコフ  1勝

ヤニク・ステイムル  1勝

ハンマー・スプリント  2勝

ハンマー・クライム  1勝

ハンマー・シリーズ総合  1勝

 

昨年は73勝でUCIワールドツアー制度が始まった2010年以降の最多勝利数記録を更新した。

それと比べると減ったとはいえ、それまでの最多記録だった2014年の61勝は大幅に上回る記録。

なおこの61勝もクイックステップである。やばい。

 

これほどの記録を出せる理由は、このチームが常に、「どの選手も主役になる」を体現していることである。アラフィリップやヴィヴィアーニなどのトップ選手はもちろん、若手スプリンターのホッジもヤコブセンも共に、並みのチームのエース並みに勝利数を稼いでいる。

そして、ほかのチームであればずらっと並ぶはずの「1勝」の選手はほとんどおらず、2勝以上している選手がとにかく多い。

それでいて、27人の登録選手中半分以上の16人が勝利しているのである。

トレーニーのステイムルですら勝ってるのは本当におかしい。どんだけ若手にもチャンスを与えられる展開を作っているのか。

 

今年も、多くの有力選手たちが流出する。18勝分がそれで失われる。

それでもきっと、来年もまた新しい若手選手も含め、数多くの勝利を稼ぎ出してくれるだろう。

 

 

と、言いたいところだが、不安要素は3つある。

1つは、これまでカヴェンディッシュの代わりのキッテル、キッテルの代わりのガビリア、ガビリアの代わりのヴィヴィアーニと続いてきた「エーススプリンターの系譜」が、もしかしたら途絶えてしまうかもしれないということ。

サム・ベネットはその候補だったはずだが、現状、ボーラ・ハンスグローエとのいざこざは終わりが見えず。

もちろん、ホッジ、ヤコブセンがその代わりを果たすべきではあるが、2人はまだ安定性に欠けるところがややあり、これまでのようなベテランエーススプリンターと比べると不安が残る。

 

また、リケーゼ、サバティーニの名発射台の離脱も不安要素の1つではある。モルコフが残ることと、新たに獲得したダヴィデ・バッレリーニがその後継となりうる才能を持ってそうではあるが、果たしてどうなるか。

 

そしてもう1つの不安要素が、このチームが少しずつ、エヴェネプールやアラフィリップのための総合系チームに変わるのではないかという思い。

それはそれで、あるべき進化ではある。ツール・ド・フランスを制するこのチームを見てみたくはある。

しかし、それは同時に、勝利数という記録は犠牲にせざるを得ない部分もある。

 

果たして、このチームがこれからどんな変化を見せていくのか。

不安と期待と共に、見守っていきたい。

 

 

 

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