Class:アメリカツアー 1クラス
Country:アルゼンチン
Region:サンフアン州
First edition:1982年
Editions:37回
Date:1/27(日)~2/3(日)
ツアー・ダウンアンダーと並び、南半球で行われる有力選手たちの開幕戦の1つであるブエルタ・ア・サンフアン。
今年は何とDAZNによって日本語実況解説がつくことが決まったこのレースを、徹底的にプレビュウしていこう。
↓簡単な概要はこちらも参照↓
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ブエルタ・ア・サンフアンについて
アルゼンチン西部、アンデス山脈沿いに位置するサンフアン州を舞台に行われる1クラスのステージレース。
かつてアルゼンチンを舞台にしたレースとしては「ツール・ド・サンルイス」が知られていたが、資金難を理由に2016年を最後に開催されなくなった。
代わって、それまで非UCIレースとして開催されていたこのサンフアンが、2017年よりUCI公式レースとして昇格。新たに、シーズン開幕を告げるレースとして、サンルイスの伝統を引き継いで注目されることとなった。
同じ1月に開催されるツアー・ダウンアンダーと並び、南半球で開催されるシーズン最初のレースとして、1クラスでありながら実に数多くの有力チーム・選手たちが出場している。
今年も、ジュリアン・アラフィリップやナイロ・キンタナ、フェルナンド・ガビリア、マーク・カヴェンディッシュなどがシーズン開幕戦としてこのサンフアンを選択。注目の若手レムコ・エヴェネプールも、このレースからついにワールドツアーチームデビューを果たすこととなる。
もちろん、彼らの多くはまだ調整段階かもしれない。特に総合争いにおいては、ワールドツアーの実力者たちよりも、ハイシーズンかつコースをよく知っている地元の選手たちの方が活躍することも珍しくはない。
それでも、ダウンアンダーでは見られなかった有力選手たちの今年の「走り始め」を、見逃すことなくチェックしていきたい。
コースについて
全体的にパンチャー向けであったツアー・ダウンアンダーと比べ、ブエルタ・ア・サンフアンは、非常にバランスの取れたコースを設定している。
一番多いのはやはりこの時期なので、平坦中心のスプリントステージではあるが、12kmと決して短くはない個人タイムトライアルが設定されていたり(第3ステージ)、本格的な山頂フィニッシュが存在していたり(第5ステージ)と、あらゆるタイプの選手たちが活躍し、バリエーション豊かな足慣らしができる作りになっている。総合系の選手たちが開幕戦として利用したくなる気持ちもよくわかる。
また、さすが南米アンデス山脈を利用したステージレースだけに、平坦ステージであっても600m前後の標高で行われ、第5ステージの山頂フィニッシュに至っては、2624mという、グランツールでもほとんどお目にかかれないような標高での戦いが繰り広げられることとなる。
それがゆえにやはり高地に慣れている南米勢が活躍しやすいほか、レース中に高地トレーニングと同じ効果が得られるという点も、開幕レースとして選ぶ選手が多い理由なのかもしれない。
以下、簡単に、各ステージの特徴を見ていこう。
第1ステージ サンフアン~ポシート 159.1km
サンフアン州の州都サンフアン近郊で繰り広げられる平坦ステージ。途中に1~2km程度の緩やかな3級山岳が2つ。とはいえアンデス山脈の只中であるのは間違いなく、標高は600m弱から800m近くにまで達する。
ラストも平坦。3km以上続く直線からのピュアスプリントで決着がつくことだろう。
昨年も同じコースレイアウトで開幕。マキシミリアーノ・リケーゼの完璧なリードアウトを受けてガビリアが(サンルイス時代から数えて)4年連続で開幕ステージを勝利で飾る。
しかし今年はリケーゼが敵。同じコロンビア人のアルバロホセ・ホッジがリケーゼの助けを借りて最大のライバルとして立ちはだかることになるだろう。
果たしてガビリアは5年連続の開幕勝利を飾れるか?
↓第1ステージの振り返りはこちら↓
第2ステージ チンバス~プンタネグラ・ダム 160.2km
サンフアン市街地の北に位置するチンバスを出発したプロトンはそのまま進路を西に。
昨年も第2ステージで使われたプンタネグラ・ダムの28km周回コースを4周する。
この登りは3級山岳となっており、登坂距離は1kmに過ぎないが平均勾配は8.3%。そして、最後の登りからゴールまでは3kmしかなく、パンチャータイプの選手による積極的な攻撃が見られるかもしれない。
昨年はこの登りの頂上から抜け出した3名の小集団スプリントを、コスタリカ人のロマン・ヴィラロボスがギリギリの逃げ切り勝利を果たした。
この3名の中にはティシュ・ベノートも含まれており、彼でもこのコンチネンタルチームの若者に勝てなかったのは、やはり地の利、シーズンの差によるものなのか。
第3ステージ ポシート~ポシート 12km(個人TT)
オールフラットな個人タイムトライアル。コースも、まっすぐ6km進んで、180度折り返してまた6km進むという、芸も捻りもないただひたすらにペダルを回すだけのステージで、はっきりとした実力差が出やすいステージとなるだろう。
機材輸送の不公平さをなくすため、おそらくは昨年と同様に、ノーマルバイクのみ使用可能・TTバーの装着も禁止・ディープリムホイールやディスクホイールは使用可、といったルールで争われることになるだろう。
優勝候補としてはジュリアン・アラフィリップやティム・ウェレンス、トム・ボーリあたりが狙えるのではないか。とくにアラフィリップとウェレンスに関しては総合優勝も見据えることのできる選手なので、このステージの重要度は非常に高い。
第4ステージ サン・ホセ・デ・ハサル~ビージャ・サン・アグスティン 185.8km
コース途中に3級山岳が1つと1級山岳が2つ。だがこれは3つまとめて1つの大きな登りと見ることもでき、その場合、全長20km、獲得標高は700mほどとなる。
いずれにせよ、そのあとは長く緩やかなダウンヒルを経てフィニッシュとなるため、基本的には集団スプリントで決着することになるだろう。
昨年も、集団スプリントの結果、地元アルゼンチン籍のリケーゼが勝利。ガビリアはこのコースの途中で落車リタイアの憂き目に遭っていたが、それでも勝利を手繰り寄せるクイックステップの強さの一端を垣間見たステージであった。
~休息日~
第5ステージ サン・マルティン~アルト・コロラド 169.5km
1つの3級山岳と2つの2級山岳を越え、最後は標高2624mに至る1級山岳を駆け上がる。
平均勾配は4.4%と緩やかだが、18.9kmに及ぶ長い登りは、本格的なクライマーたちだけをゴールに招き、そして今大会の総合優勝者を決める門となる。
昨年は地元コンチネンタルチームであるシンジケートエンプレアード・パブリコスサンフアンが大活躍。2人のアシストの力を借りて飛び出したゴンサロ・ナハルが、最後の15km以上を独走し、最終的に後続に2分近いタイム差をつけて勝利する圧倒的な強さを見せつけた。
しかしのちにドーピング違反に認定。彼のこのステージ勝利と総合優勝は共に剥奪された。
2017年はルイ・コスタが優勝するも、個人TTでタイムを大きく落としていたために、総合優勝はバウケ・モレマに奪われてしまった。
今年も、このステージ最大の優勝候補はナイロ・キンタナのように思われるが、総合優勝まで手に入れるためには個人TTでどれだけタイムをキープできるかが重要だ。
第6ステージ ビリカン・サーキット~ビリカン・サーキット 153.5km
ビリカン・サーキットは今年初登場。それもそのはず、昨年10月に竣工したばかりの
、できて間もない新サーキットだからだ。
ここをスタートしたプロトンはそのままサンフアン市周辺を巡り、最後にまたサーキットに戻ってきてこれを1周してゴールとなる。
サーキット自体は当然平坦ではあるが、そこに至るまでにゆるやかな登りを経ることとなる。4.4km、平均勾配2.3%の、何てことない登りではあるが、その後のサーキットの曲がりくねったレイアウトと合わせ、意外な逃げ切り勝利も考えられるかもしれない。
コースは全然違うが、昨年の第6ステージではイェーレ・ワライスが逃げ切り勝利を果たしている。
第7ステージ サンフアン~サンフアン 141.3km
サンフアン市街地の環状道路「シクルパラシオン通り」(1周16km)を9周する完全なスプリンター向けレイアウト。昨年はジャコモ・ニッツォーロが勝利した。
今年は例年以上に豪華なトップスプリンターたちが勢ぞろいのブエルタ・ア・サンフアン。
大会最後に勝利を挙げ、万全のシーズン開幕を彩ることのできるチームはどこだ?
集団スプリントで決着がつきそうな平坦ステージが3~5ステージ、もしかしたら逃げ切りやアタッカーによる勝利が演出されそうなステージが2ステージ、個人TTが1ステージ、本格的な山頂フィニッシュが1ステージ。
総合優勝もTTと山頂フィニッシュの2つで決まるという非常にバランスの取れた構成となっている。
シーズン序盤ということもあり、誰が勝つか読み切れないところはあるものの、有力選手も数多く出場しているため、まずは彼らの走りの具合をチェックしていきたいところ。
と、いうことで次回は、注目選手をスプリンター/総合優勝候補の2種類に分けて紹介していく。